2006年9月7日10時、南野邸到着。
僕達はバスを止めた駐車場からお屋敷に移動した。お屋敷に着くとお祖父様と長男一家と使用人達が出迎えてくれた。
「それにしても、4年経ってもあまり変わらないわね。」
「まぁ、たった4年でかなり変わってたらそれはそれでやばいだろうよ。」
「芽亜里の言う通りだね。」
客間への移動の途中で優妃が足を止めた。
「前からこんなのってあったっけ?」
「魔女様の碑文だろ。5年前からあったぜ。外の銅像は2年前のだ。」
『黒き月夜に蝶は飛び回る。蝶は花にも目もくれずに飛び回る。巨大な迷宮に迷っても蝶は飛び回る。蝶は魔女の元へと誘う。蝶は魔女の待つところを知っている。魔女を求めし者は以下に従え。
第1の生贄に偉大なる者の心臓を燃やして捧げよ。第2の生贄に対になるものが選びし者を捧げよ。第3の生贄に腹を切られし者を捧げよ。第4の生贄に手足を外されし者を捧げよ。第5の生贄に額を貫かれし者を捧げよ。第6の生贄に杭を打たれし者を捧げよ。第7の生贄に首を落とされし者を捧げよ。第8の生贄に血を抜かれし者を捧げよ。第9の生贄に魔女への手向けに6人を捧げよ。
そして魔女は復活し、ウィッチガーデンに導くだろう。
そこで財宝と当主の座と愛と自由が与えられるだろう。魔女には安らかな眠りが与えられるだろう。
偉大なる黒月の魔女クロノエルよ。安らかに眠れ。』
その魔女の碑文を優妃は興味深そうに読んでいた。
昼食を食べ終えて、僕達は花畑に行った。そこでも優妃は碑文のことを考えているようだった。
「おかしい。5年前と内容が変えられてる気がする。」
「優妃ちゃん、何か言ったかい。」
「ううん。何でもないよ。」
優妃の様子がいつもと違った。難しい顔をして考え事をしている。推理小説が好きでたくさん読んでいる彼女には解けない謎は無いって感じなのに、あの碑文は解けていないようだ。
それから風が強くなってきたから僕達はお屋敷に戻った。
「まさか、あの碑文の内容が提示されるなんてね。」
「そろそろ碑文に関係したゲームが起こってもいいと思いましてね。思い切って内容の提示しました。」
まぁ、あんな意味不明な物を解ける人なんていないと思うけどね。
「あの碑文は未来でも解けた人間は存在しないわ。それを過去に解かれたとでも言うのかしら?」
「零羅は敵意むき出しだね。」
「零羅の言う通り。未来でも解けるはずが無いわ。でも、死人の中には解けた人間が居たのかもしれないわ。」
確かに誰かが解いていてもおかしくは無い。碑文が解かれたから殺人が起きたのかもしれない。
「くふふ。ゲーム盤上では魔女の手紙が読まれているね。もうすぐ本番が始まるよ。」
僕達は夕食を終えてすぐにゲストハウスに移動した。大人達は食堂で魔女の手紙について議論しているようだ。しかし、眠気には勝てず。24時までに全員が眠った。
翌日、目を覚ますとベッドから優妃の姿が消えていた。扉には鍵がかかっていて密室から姿を消したことになる。優妃のことを大人達と使用人達の力を借りて捜索したが見つからなかった。
「どういうことだ。優妃が姿を消すだなんて、俺の娘が心配すぎて泣きそうだぜ。」
「あの子が自分から姿を消すとは考え難いわ。誰かが誘拐した可能性もあるわ。」
「だとしたら、誰が犯人だと彩芽さんは言うんだ。」
「私と相馬さんはあり得ないわ。実の娘を誘拐してなんの得があるのかしら。秋楽お兄さんと春香お姉さんと蓮司さんと紫音さんと城助さんと優香さんも違うわ。この6人にはあの部屋に入る方法がないわ。」
「まさかとは思うけど、彩芽さんは使用人が犯人だと思ってるのか。」
それを聞いて彩芽は微笑した。
「蓮司さんの言う通りよ。鍵を閉めるなら使用人の可能性が高いのよ。マスターキーで外から閉めればそれでいいはずよ。」
その時、莉亜と芽琉が反論した。
「それはおかしいよ。優妃お姉さんは自分からベッドを出て行ったよ。」
「優妃お姉ちゃんが出て行った後に誰かが閉めたんだよ。」
その時、奏太が震える声で言った。
「鍵は俺が閉めたんだ。あいつが夜中に会う人がいるから出かけてくるって言って俺に鍵を閉めさせたんだ。」
「莉亜と芽琉が証人になるよ。」
だとすると、優妃は自分で出て行ってから戻らなかったってことか。
「なぁ、優妃が呼ばれて会いに行くような人って親父以外に居ると思うか。」
「私は居ないと思うわ。」
「それなら、子供達以外でお父さんのところに行こう。相馬、彩芽さん、それでいいか?」
「兄貴に賛成だ。早速行こう。」
そして、僕達は客間に取り残されて、大人達と使用人達が当主部屋に向かった。
「くひゃはは!また優妃がゲームから消えた!前回同様、優妃は身動きが取れない!『優妃には殺人は不可能である』この赤により優妃犯人説は使えない!さぁ、これから起こる殺人をどう解くのかな?」
一体莉亜と芽琉は何を考えているのだろうか。二回続けて優妃が犯行不能なんて、それだと第1と第2の犯人も優妃じゃないのかもしれない。考え直す必要が出てきた。
「リアボリスとメルヘリアは真実を知ってるよ。薫さんはその真実にたどり着けるかな?」
「そんなこと不可能だよ。だって、優妃が犯人だと思ってた人だよ。真実も真犯人も分かるわけがないよ。」
僕には何も言い返せなかった。彼女達が言っていることは本当だから反論できない。
「ゲームはこれからでしょ。第4ゲームで真実を薫お兄さんが掴めばいいんだからね。」
「くふふ。最後に勝つのは誰なのか。どんな終末を迎えるのか楽しみにしてるよ。」
いきなり姿を消した優妃。このゲームは誰が犯人で動機はなんだと言うのだろう?メルヘリアのゲームが動き出す。