大人達は目を覚ますと牢屋の中にいた。
「ここはどこなのかしら?」
このお屋敷の中にこんなところがあることを知っている者は少ない。
「ここはお父さんがお屋敷を建てた時に一緒に作った地下室の1つよ。多分、ここは隠し屋敷の『夜烏庵』の地下牢ね。」
「夜烏庵だと。なぜそんなものを彩芽さんは知っているんだ。」
「私の実家の紅坂家は南野家と長い付き合いだから私にもお父さんが話してくれたのよ。夜烏庵にも一度連れて行ってもらったことがあるわ。」
そんな話をしていると奥から誰かがやって来た。
「くっくっくっ、なんの話をしてるか知りませんが楽しそうですね。この私、バルバトスとマリオネット兵がいる限り、あなた達はここから逃げられないし、脱出なんて考えさせないからね。」
バルバトスは牢の中を見回してからマリオネット兵と共に監視を開始した。
「あぁ。そうそう、そこに鏡があるでしょう。これから悪夢のような次期当主決めテストが開始されるわ。その様子をその鏡で見ているといいわ。」
牢の中の者達は緊張した状態になった。
芽亜里は自室の前に来た。
「大丈夫だ。どんな内容だろうと私なら乗り越えられる。」
そして芽亜里は自室の扉を開けておそるおそる中に入り扉を閉めて鍵を閉めた。
「どうやら中には誰もいないみたいだな。」
「芽亜里様ですね。お待ちしておりました。」
「えっ。一体どこから入って来たんだ。」
芽亜里の目の前に突然バティンが姿を現した。
「芽亜里様、私はバティンと申します。源蔵様の命令でこれより次期当主を決めるテストと執り行います。芽亜里様、これをお受け取りください。」
そう言ってバティンは当主の封筒を差し出した。中にはテストの内容が書かれた紙が入っていた。
「これはどういう意味なんだ。」
テストの内容はこうだ。4つの選択肢から一つを選ぶ形式で、自分が得るために、自分が手にするために捧げるものを選ぶものだ。一つ目は自分の命を捧げる。二つ目は自分の愛する人の命を捧げる。三つ目はそれ以外の命を捧げる。四つ目は全ての命を捧げる。
「当主の器にふさわしいかを決めるのに源蔵様はこのテストを用意しました。自分もクロノエル様との契約の際にこのテストを受けたそうです。さぁ、答えが出ましたら芽亜里様の好きな時に申してください。」
「乙女としてなら殺せと言う。大好きな神威君に全員を殺して会うなんて私には出来ない。神威君にまで十字架を背をわせるなんて出来ない。だから殺せと言う。」
バティンはそれを静かに聞いていた。
「それなら、他の回答も聞きましょう。」
「私個人としての回答は3番だ。好きな人と結ばれるのを邪魔する奴は全員殺してやる。そして神威君を手に入れる。」
「それなら、あなたには一族を殺せる覚悟あるのですね。なら、やってみなさいな。」
芽亜里の目には強い意志のこもった光が宿っていた。
「なぜそれを選ぶんだ。芽亜里。どうしてなんだ。」
秋楽は娘の選択に涙を流していた。
「お嬢様、なぜ僕のためにそんなことが出来るのですか。僕は理解に苦しみます。」
「実際に私にはあいつらを殺せる。なぜなら。」
芽亜里の姿が変化した。白髪で真っ白なドレスに変わった。
「私は魔女なのだから。白月の魔女として、当主として言わせてもらいます。私はあなたを殺します。私が当主なら一族を守ることも使命です。それに、神威君にいいところを見せるならチャンスはこれくらいしか無いですからね。」
「なるほど、それ以外の全ての命ですから、源蔵様の使役する悪魔もそこに入るわけですか。面白い考え方です。それではお相手いたします。」
「神威君は見てるんだよね。私も頑張るから、そっちも頑張ってね。」
その瞬間、メアリ・ホワイペルンは戦闘態勢に入った。
「さぁ、どこからでもかかって来てください。」
「うふふ。それなら遠慮なく行かせてもらいます。エンチャント、攻撃上昇、防御上昇、速度上昇、獄炎付与、鋼鉄装甲付与、天使の羽根付与、自動回復付与、反応速度上昇。これであなたの攻撃をほぼ無効に出来ますよ。」
「大量のエンチャントとは、チート級の戦い方をするのですね。」
「クロノエルとの約束で第4ゲーム以降で私は戦えないので、最後の見せ場でとして全力を出すだけですよ。それには、このドレスだと動きにくいわね。」
そう言うとホワイペルンはドレスを身動きのしやすいものに変えた。
「これで準備万端、戦闘を開始できるわ。」
「ホワイペルン卿。いえ、芽亜里様。最後に確認します。あなたは当主としてなら全員を守り、私を殺す。それでよろしいのですね。」
芽亜里は閉じている両目を開き、膨大な魔力を解放して言った。
「それで間違いは無い。私は私の南野家の正義を貫くだけだ!」
「魔女となるために両目を捨てたあなたに敬意を表して私も全力で戦わしていただきます。」
その時、芽亜里は自室の壁を拳で叩いて言った。
「この部屋にエンチャント。絶対密室、鋼鉄装甲付与、耐火付与。これで瞬間移動も使えない。私がいくら燃やしても燃えない。この部屋は私の味方だ。」
「それでも私はあなたに勝つ自信があります。」
「減らず口はその辺にしときな。」
二人はにらみ合った状態になった。
黒月の魔女と同等の力を持つ白月の魔女は、バティンに勝つことが出来るのだろうか。