薫はクロノエルに言われた通りお屋敷の前にやってきた。
「きゃふふ。ちゃんと来たようだな。」
「あぁ、僕は言われた通りここに来た!あなたに聞きたい!なぜこんな殺しをするんだ!」
クロノエルは雨が降る中二階のベランダから見下ろしながら言った。
「殺す理由を言う必要は無い。知りたければこれから出題するテストで私に勝ってみせろ。そこに手紙が置いてあるだろ。それにテストの内容が書かれている。」
薫はその手紙を拾い内容を確認した。そのテストの2つ目の選択肢が空欄になっていた。
「2つ目の選択肢が空欄になってるけど、これはどういうことだい?」
「そこには愛する人の名前が書かれるはずだったが、そなたには美紅利を愛する資格がないから空欄になった。」
「どういうことだ!僕達はちゃんと愛し合ってるのに資格がないなんて意味がわからないぞ!」
「きゃふふ。真実を知らないとは何と悲しいことか。だが、真実を知っていようとお前には愛する資格がない。それは変わらないぞ。」
本当に意味がわからない。なぜ愛する資格が無いのか。
「きゃふふ。2つ目の選択肢には代わりに親でも入れるとしよう。それか他の愛してる人間にでもしよう。一族の誰かとかな。さぁ、選ぶがいい。」
薫はクロノエルに色々と追求したかったが、それを我慢して回答することにした。
「僕の回答は3番だ。愛する人のためなら何でもする。人を殺さないと手に入れられない愛なら殺して手に入れる。僕は愛する人のためにどんな努力でもするつもりだ。」
クロノエルは真顔で回答を聞いていた。
「それなら、なぜあなたはあんな罪を犯したんですか?あなたには誰かを愛する資格なんてない!」
そのクロノエルの目には涙が浮かんでいた。
「もう一つのテストをこれから行う。これはクロノエルとしてではなく。メルヘリアとしての出題だ。」
クロノエルは姿を変え、メルヘリアの姿となった。背は縮み、ドレスは白と赤になり、髪はルビーの髪留めで止められていた。
「この問いに答えよ。そなたは南野薫であるな。」
「そうです。僕は南野薫です。」
「しかし、そなたは4年間南野家で姿を消した者を気にも留めなかったな。まぁ、そのことは別にいい。南野家の裏を知らないことがそなたの罪だ。」
「南野家の裏って何ですか!」
「それは自分で追い求めるがいい。だが、そなたはこの呪われた南野家のであることに間違いはないな。」
「僕は南野家の人間です。それがなんだというんですか!」
「貴様に問う。4年より前、5年前に貴様は罪を犯した。貴様はその罪を覚えているのか?」
「言っていることがよく分からない。一体何を僕の罪だと言うんだ。」
「覚えていないのだな。」
メルヘリアは冷たい目で薫を見下ろした。その目にはまだ涙が浮かんでいた。
「貴様は罪を重ねた。南野家の闇を貴様も背負っている。源蔵の罪と貴様の罪は似ている。貴様は5年前から今に至るまで罪を背負っている。そして、源蔵は貴様よりも長く罪を背負っている。」
薫にはその罪がなんなのか。いくら考えても分からなかった。
「今一度問う。貴様は罪を覚えているのか?覚えているならざんげせよ。」
「僕は5年前に何をしたのか覚えてない。しかし、僕は優妃を傷つけてしまったのかもしれない。それが罪なら謝るよ。」
それを聞いたメルヘリアは歯を強く噛み締めた。
「貴様の罪はそんなに軽くはない!優妃を傷つけたことだけが罪なら、源蔵の罪とは全く似ていないわ!源蔵はその罪で押しつぶされそうになりながら生きてきた!貴様のように簡単に忘れられるような罪では無い!」
メルヘリアは涙を浮かべながら怒りをまき散らした。
「もうよい。貴様のテストはこれで終わりだ。私は源蔵の元に戻る。」
そう言ってうつむいた薫を置いてメルヘリアは中に戻っていった。
「メルヘリア!お前は僕に何を求めてるんだ!」
「私の目を見なさい。貴様の罪は決して軽くない。貴様の罪は人を悲しませ、人を殺した。」
「僕が原因で人が死んだと言うのか!ふざけるな!」
「ふざけてなどいない。『貴様は罪を犯した』『貴様の罪が原因で人が死ぬ』2006年の親族会議に貴様が来なければ殺人は起こらなかった。だから、貴様が原因だ。」
薫はメルヘリアの冷たい目を見つめていた。それと同時に今言われた赤を自分の中で繰り返していた。
「今から貴様に一つの真実を教えてやろう。」
バアルは何を言おうとしているか察して止めようとした。
「待ってください。メルヘリア卿。それだけは言わないでください。薫様がもちません。」
「バアルの制止など聞かない。『美紅利と神威は存在しない』『美紅利と神威は偽名である』これが一つの真実よ。」
薫は絶望した表情になった。そして、薫は絶望した表情でバアルの方を向いた。
「バアル、どういうことだい?メルヘリアの言っていることは本当なのかい?」
「すみません。薫様。赤は真実のみを語ります。私は確かに実在しません。人前に出れても美紅利と神威という人間は居ません。美紅利千尋と神威将也としても存在しません。」
「そんな、こんなことがあるのか。」
「バアルが言ったことはまぎれもない真実。私が赤で言ってあげられるほどのものよ。」
バアルは申し訳なさそうに姿を消した。リアボリスはメルヘリアの姿をにらみつけていた。薫はあまりのショックに立ち直れなくなっていた。それを確認したメルヘリアはリアボリスとともに姿を消した。対局部屋には薫と零羅だけが残っていた。
薫は立ち直って戦えるのだろうか。薫の罪とはなんなのだろうか。メルヘリアとの決戦へと話は進むだろう。