スカサハの娘に産まれて人理焼却で死にました。 作:ホワイダニット
聖杯云々については彼女達の解釈ですので公式がどうのこうのは遠慮していただきたいと……
とある部屋にて二人の女性が床にサーヴァントを召喚するための陣を書いていた。
「それにしてもまさか私がマスターになるとは思っていませんでしたよ」
二人の女性の内、金の長髪をした女性はため息をついた。
「まあ、出てしまったものは仕方ないと諦めましょう、それに考えようによってはよかったじゃない。適当な魔術師や一般人に令呪が現れるよりよっぽどね」
もう一人の女性が陣を書きながら答える。
「それはそうですが、セスカは参加したことがあるのですからいいですが私なんてサーヴァントとして参加した経験しかありません」
金髪の女性は長方形のケースから一振りの西洋剣を取り出す。
「私だってマスターになったのは初めてよ?それに参加といっても監視が主だし。サーヴァントとして参加したことのあるアルトリアの方がまだましでしょうに、全く形だけとはいえ監督役に負担かけすぎなんですよ、大聖杯の管理だってあるのにユスティーツァは何を考えてるのか」
女性はため息をつくと書き終わったのか立ち上がり、箪笥から小箱を取り出した。
「いえセスカ?さすがに彼女に文句を言うのはどうかと。大聖杯に組み込まれている彼女に自由意思はない訳ですし」
「確かに自由意思はないですが意思自体はあるんですよ。じゃないと『 』に孔を空けるのに障害となる抑止力を誤魔化す為の何でも願いが叶うという触れ込みにも影響しますし。まぁ、正直。願いが叶う云々は副産物なんですけど」
むしろ聖杯の詳しい機能や細々としたのはアインツベルンやマキリの方が詳しいだろう。いくら術式の調節をし、サーヴァントの判定地域を広げたとしてもそれはあくまでもサポートであり、ケルト出身の彼女に大聖杯のような超精密魔術の結晶を隅々まで詳しく理解しろというのは酷というものだ。
セスカは部屋の壁に背を預けてジェスチャーでお先にどうぞとアルトリアを陣へ促す。
「はぁ、仕方ありません。召喚については幸いにも触媒があるので多少安心ではありますが」
正直、この触媒で召喚される英霊は一人しかいないため問題はないのであるが一つ問題を挙げるとすればセイバーでは来てほしくないといったところか。アルトリアは完成した陣に剣を置くと陣の外側へ移動し詠唱を始める。
詠唱を始めると召喚陣からエーテルが溢れだす。詠唱が進むにつれエーテル量は増加していき終盤の頃にはエーテルは部屋全体を覆い激しく乱舞している。
アルトリアの詠唱が終わると部屋は激しい光に包まれた。そして光がおさまり召喚陣に目を向ければ召喚陣の上には、金の長髪をポニーテールにまとめ赤い竜の刺繍を施した白いローブに身をつつみドルイドの杖を携えた女性がいた。
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じて来てやったぜ。この俺さまをキャスターで喚ぶなんて数奇なマスターだな、だが安心しろ。俺さまが……来た……から」
召喚された女性。キャスターは名乗りの途中で自身のマスターの姿を認めるとだんだんと声が途切れていった。
「はぁ、暫く見ない間にずいぶんと態度が大きくなりましたね。これは再教育が必要でしょうか」
アルトリアの言葉にどんどん顔色が青ざめていくキャスター。アルトリアはキャスターの首根っこを掴み引きずり倒すとそのままキャスターを引きずりながら部屋を出ようとする。
「ちょ!?待て!待って父上!!悪かった!謝るから!」
キャスターが暴れながら叫ぶがそれを意に介さないアルトリアはずんずんと歩いていく。暴れるキャスターはそこでセスカの姿を認めると
「お袋!頼む!助けてくれ!!」
セスカに助けを求めるが、セスカは何処から取り出したのか白いハンカチをヒラヒラと降っていた。
「チキショーーー!!」
キャスターのそんな叫びを最後にパタンと部屋の扉は閉められたのだった。
「全くアルトリアも照れ屋なんだから」
どうやら今しがたの一件をアルトリアの照れ隠しと判断したらしい。セスカは召喚陣に向き直り、小箱から取り出した毛髪を陣の中央へ置いた。
セスカも詠唱を始め、サーヴァントを呼び出す。
「サーヴァント、アサシン。召喚の呼び掛けに応じ参上しました。よろしくお願いします…母様」
召喚されたのはくすんだ金色の髪と黒い軽装の甲冑に白い肌をした十代後半と取れる少女だった。
「よろしくお願いねカトリーヌ。でもまさかあなたが本当に座に至ってるなんて……」
セスカが呼び出したのは自身の娘であるカトリーヌ・ダルクだった。セスカはカトリーヌの服装を確かめると洋服棚から女性用衣類をカトリーヌに手渡した。
「とりあえずそれに着替えなさい。軽装とはいえこの時代に甲冑姿は目立ちます」
カトリーヌはサーヴァント故に魔力で編まれた甲冑を消すと渡された服をいそいそと着替えはじめる。
セスカはアサシンとして召喚されたカトリーヌと幾つか確認作業を行い召喚に使った部屋を後にする。確認作業は問題なく、さすが親子といえるほどにスムーズに終了した。
確認作業を終えたセスカとカトリーヌがリビングに移動するとリビング中央に設置された食卓にTシャツにジーンズ姿のキャスターが突っ伏していた。心なしか頭から湯気が昇っている気がしないでもない。
「そんな机に突っ伏して大丈夫?」
セスカは机に突っ伏したキャスターに話し掛ける。キャスターは身体を起こすと。力のない声で
「うるせー、危うく父上にフリフリのワンピースを着せられるところだったんだぞ」
キャスターは心底疲れたといわんばかりに大きなため息をついた。と、そこでセスカの後ろにいるサーヴァントに気づく。
「ん?お前がお袋のサーヴァントか?」
「アサシンです。貴女がキャスターですか?」
「ああそうだ。にしても、あんたがアサシンねぇ…」
キャスターはアサシンを軽く観察すると。
「フランス系だな、大丈夫か?」
キャスターはセスカにアサシンが闘えるのか聞くが。
「私の娘なんだから大丈夫、大丈夫」
「…………は?」
セスカの返答に呆気にとられるキャスター。
「だから、この娘はあんたの妹だって言ってるのよ。それに私とアルトリアで同盟組んでるからモードレッドもカトリーヌもサーヴァント同士とはいえ姉妹仲良くしなさいよ~」
そう言ってセスカはリビングを後にする。
リビングに残されたモードレットとカトリーヌに気まずい空気が流れたのはいうまでもない。二人の気まずさはセスカとアルトリアが料理を運んで来るまで続いた。