スカサハの娘に産まれて人理焼却で死にました。 作:ホワイダニット
アサシンのマスターであるセスカこと藤丸 雪香の朝は早い。毎朝何時に寝ようとも必ず四時半に起床し家の事を始める。数日前から食事をする人数の増えた分、料理の量をいつもの数倍に増やす必要があったため他の作業を後回しにして調理に取りかかっていた。内容は鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたしのごま和えに沢庵、二升炊きの白米と生卵と納豆、出汁から取ったワカメと豆腐の味噌汁、大きなボウルに入ったサラダ。好みでふりかけや豆乳、鮭茶漬けにするための出汁等も用意している。冷蔵庫には他にも食材が揃っており、足りない者は勝手に調理したりすることもある。午前五時頃にキャスターがジャージ姿で家からランニングに出ていく。六時前にはアルトリアも加わって二人で作業を進める。すべての朝食の準備が終わる七時前、まずはアサシンが二階から降りてくる、次に朝のランニングを終えたキャスターがシャワーを浴びにリビングを通り抜ける。そして先日雪香の提案を受けた妻呑がリビングに現れて朝食の配膳を手伝っているとルーラーとして召喚されたジャンヌが半分目を閉じた状態で洗顔に降りてくる。午前七時十五分キャスターがシャワーから、ルーラーも洗顔を終え、朝食の配膳もすべてが整いこの家で夜を明かした全員が食卓につく。
しかし元々同盟を組んでいるアサシン、キャスター陣営はともかくなぜバーサーカーのマスターとルーラーが同じ食卓を囲んでいるかは先日の倉庫街での出来事までさかのぼる。
~倉庫街~
「ところで三人は聖杯戦争中の生活拠点は決まってるの?」
雪香の何気ない言葉に目を背ける三人。
「実は、冬木に着いたのは今日の夕方でまだ宿は決まっていないんです」
「まあ、俺の召喚場所が大江山だったからな。マスターはあいつを呼びたかったみたいだけどよ」
「それはそうでしょうね。頼が首を跳ねるのを止められなかった上、育児放棄の父親より母親を召喚しようとするのは当然ね……なら妻呑、今住んでる私の家にくる?」
「いいの?」
「いいわ。妻呑の見た目だとホテルで相手にされない可能性もあるし、金にホテルの部屋を取るなんて無理でしょ、部屋は余ってるから今さら二、三人増えても大丈夫よ。代わりに家の中では戦闘行為禁止のセルフギアスロールにサインしてもらうけど」
「それぐらいなら」
妻呑はその提案に承諾するが。
「だったら俺はパスするぜ」
バーサーカーは否を示した。
「女だらけのところに俺一人だけとか居心地が悪いしな」
ただのへたれだった。
「「へたれ」」
思わず口に出すのもいるが。
「まあまあ……金、家が嫌なら貴方は一体聖杯戦争中の宿を何処にするつもりですか?貴方のマスターは家を拠点にするのに同意しましたよ?まさかマスターであり娘でもある子を一人で他の陣営においておくつもりですか」
「別にそこは心配してねぇよ。大女将が義理とはいえ自分の娘に手ぇ出すなんざ俺がゴールデンをやめる位あり得ないじゃん。それに俺はサーヴァントだからな、睡眠も飯も必要ねぇ。いざとなりゃ霊体化すりゃいいからな」
「そうですか……寂しくなったら何時でも来ていいですから」
「ゼッテー行かねぇじゃんよ!」
バーサーカーは捨て台詞を吐くと霊体化していなくなってしまった。
「あっ……因みにジャンヌ。貴女は強制です、話しがたっぷりとあるのでそのつもりで」
その一言で裁定者であるはずのジャンヌは恐怖で動けなくなってしまう。
少しして意識を復帰させたジャンヌは直感というよりは生前の経験からくる虫の報せに従いその場から逃走をはかるが、生前から一度として母親から逃げ切れたためしがないためやはり今回もあえなく捕まってしまう。
***
時間は戻り朝食の席。用意した二升の白米の3/4が胃袋に消えおかずが足りないものは自分で用意してさらに食べる。因みに摂取量は上から、アルトリア。ジャンヌ。モードレット。カトリーヌ。雪香。妻呑の順になっている……ジャンヌはちょっと遠慮したらいいと思わなくもない。
そして、朝食を終えた各人は戦闘のほぼない日中はわりと好きに過ごしている。まず、八時五十分頃にモードレットは図書館に漫画の続きを読みに出かけ。十時前にジャンヌはカトリーヌにジャンヌの服を買いに連れていかれる。今現在ジャンヌは妹であるカトリーヌの私服を借りている状態になっていてカトリーヌの聖杯戦争中の私服が足りなくなったからだ。一部の例外はいるがサーヴァントが現代のお金を持っているわけはないので軍資金は母親でありマスターである雪香からそこそこ貰っている……数百年ぶりの娘に再会したせいなのか雪香は母親としてかなり甘やかしているようだ。妻呑は冬木の町並みや裏路地等を自らの足で歩き夜の闘いに備えていた。
さて、大人組でありマスターである雪香とアルトリアはといえば。朝食に使った食器を洗い終えると次は家の掃除に洗濯と完全に専業主婦のそれだが、別に仕事をしていないわけではない。歳を誤魔化し現代に隠れて今なお長い時を生きる二人はなにかと忙しいのだ。