ある日、父は私に言った。
父の血縁者は代々18の年で成長が止まり、自身の命を奪った相手が死なない限り、死ぬ事が出来ない一族なのだと。
「私の母も祖父も皆、この呪われた宿命を背負って生きて来た⋯⋯私もまたその宿命から母と出会い、そしてリラ⋯⋯君が生まれたんだ」
そう言って父は私の頭を優しく撫でだ。
幼い頃の私はその時はまだ。父が言ったその意味を理解出来ずにいた。
やがて母が死んだ。父は母の死とともに息絶えた。
そして私は20の歳を超えた頃。自分が周囲と違って容姿が若い事に気づき、それにより父が言った事の意味を知った。
当然、村人達は歳を取らない私を気味悪がり村人達から魔女と呼ばれるようになった。
それから私は村にいるのが嫌になり村から逃げ出した。
そして、私は長い旅が始まった。
空腹になったが飢えが続くだけで私は死ななかった。
幾度となく私は体調を崩した事もある。
でも私は死ぬ事が出来ない。
長い間、同じ場所に居座れば周囲にまた気味悪がられるかも知れない為、定住する事は出来ない。
そして数百の月日が流れたと思う。
いつしか私は死に場所を求めていた。
生きる理由も無くさ迷い続ける事に疲れていた私は、館の使用人になっていた。
ばれて殺されれば儲けもの⋯⋯。
そんな考えの下で私は⋯⋯バートリー家と呼ばれる貴族の下、使用人となった。
当然、長く移住した私は領主に私の異常性に気付かれた。
だが⋯⋯何時までたっても主は私を館に置き続けた。
それどころか、私の異常に気付いてからは主様は私をよりそばに貴族の専属の使用人にした。
だから私は主である彼に尋ねた。
私が異常な事に気付いてるはず。なのに何故私をこの城に置き、しかもこのような地位を与えになるのかと。
彼は言った。
君は優秀だ。そして死なない君は私の血筋を代々支え続ける事が出来るだろうと⋯⋯。
私はそんな彼の言葉を聞いた時、自身の存在を肯定された気がした。
私は思った。
彼の為に彼のを使用人として捧げ続けようと⋯⋯。
そしてそれから月日が流れた。
私はある日、彼の血筋であるお嬢様の部屋に来た時だった。
そこには、私とは別の使用人達の屍が転がっていた。
「お嬢様⋯⋯これは⋯⋯」
私は彼女達の血に染まるエリザベートお嬢様を見ながらそう言った。
「あら? リラじゃない⋯⋯ねぇリラ⋯⋯貴方は確か私の祖父の代から使用人をしてるのよね」
お嬢様は私にそう言います。その目は何処までも虚ろで、私はそんなお嬢様に得体の知れない恐怖を感じましたが、それを顔に出さぬように押さえ込みます。
「えぇ⋯⋯お嬢様も幼い頃から使用人としてそばにいましたし⋯⋯お嬢様のお父上からもそれは教えられているはずです?」
私がそう返答しました。すると、お嬢様は私を見ながら口角を吊り上げ笑を浮かべます。
「そうよね! ねぇそれなら貴方の血を浴びたなら私はもっと若々しくなれるかもしれないわ!」
お嬢様は狂喜して高らかにそう言います。
私はそんなお嬢様に心身の熱が冷め冷静になって行くのを感じると、そのまま目を細めました。
「⋯⋯ひとつ聞いて宜しいでしょうか?」
「あら? 何かしら? 今の私は気分が良いから言って見なさい?」
「それはつまり私を殺すと言う事でしょうか?」
私はそう問いかけると、お嬢様は唖然とした顔で私を見た後、腹を抱えながら高らかに笑いました。
「アハハハハ! 何言ってんのかしら!? 貴方は不老不死なのでしょう? だから普通なら死ぬ殆どに切り裂いた所で問題無いじゃない!」
お嬢様は高らかにそう言いました。私は一度目をつぶりしばし考えた後、再び目を見開きお嬢様を見ます。
「えぇ、私は確かに呪われた不老不死です⋯⋯ですから覚悟して下さい⋯⋯私を死ぬ程に切り裂く事のその意味を⋯⋯」
私ははそう答えると、お嬢様は先程までの態度とはいっぺんして無機質までの無表情になります。
「⋯⋯訳わかんないわね⋯⋯」
そして、お嬢様は私に近づきそして、私に刃物を振り下ろしました。
そして振り下ろされた刃物は私の首を切り裂きました。
そして、気が付くと床に転がる私の屍、そして受肉した私の身体、幾度死ぬ度に見たその遺体を私は眺めながら自身の〝命〟がお嬢様に奪われた事を理解しました。
私はお嬢様の方を見ると、お辞儀をします。
「⋯⋯最初に感謝致します。これで私の身の呪の半分は解かれました。これよりこのリラ⋯⋯この命はお嬢様と共に⋯⋯」
私はお嬢様にそう言うと、お嬢様は唖然と立ち尽くしました。
私はそんなお嬢様に、私の身の呪に付いてを話しました。
「⋯⋯え、と⋯⋯つまり貴方は数百年も生きてて死ぬ為には命を奪った相手が死なないと行けないって訳?」
「はい⋯⋯ですので⋯⋯私の運命はお嬢様と共に⋯⋯故にお嬢様が死ぬ最後の時まで、お嬢様の専属の使用人としてお側にいさせていただきます」
それから、私はお嬢様と共に多くの乙女達を殺めた。
様々な拷問具、時に私の血を搾り取るそんな日々。
そして、何時しかその事で報いを受ける時が来ました。
私も当然ながら処罰されました、首吊り、火炙りと受けましたが、もちろん私の身体は死ぬ事はありません。
それにより、彼等は気味悪がり魔女と罵る貴族達、それにより私は、お嬢様の閉じ込められたチェイテ城に幽閉されました。
「お嬢様⋯⋯やっとお会い出来ました」
私が処刑を受ける中、長きに渡り閉じ込められ弱り切った彼女を私は抱き寄せます。
「もう離しません⋯⋯今度こそ最後の時までお側に⋯⋯」
私の灯火は後少しで消えるか消えないかの時だった。
私はふと過去について振り返っていた。
私は貴族の娘、バートリー・エルゼベートとして生まれた。
そんな私のそばには、何時も不思議な使用人がいた。
バートリー家を長きに渡り使用人として働き、それなのにずっと歳を取らない女性。
私のバートリ家の専属の使用人リラ。
何時からいたのかは分からない彼女曰くは数百年は軽く生きてるとか、とにかく不思議な女性だ。
私が多くの人々を殺めても幾度と無く彼女を傷つけても、それでも私のそばにいてくれた。
元々私の家を代々支えて来てくれていたらしく、私も彼女の事は母親のようにも思っていたから、彼女の事は特別、名前で読んでいたくらいだ。
そして、長い事の罪は世間に知れ渡り、私は罰として幽閉された。
「⋯リ⋯⋯ラ⋯⋯⋯」
私は掠れた声で、ここにいない彼女の名を読んだ。
私が最初に彼女を殺めた頃、私の為に生きると誓ってくれた彼女⋯⋯。
正直、私にとってこの暗闇の世界よりも、彼女がそばにいない事の方が何よりも辛かった。
彼女がそばにいなくなって、私がいかに彼女との日々がどれほど私を幸せにしてたかがハッキリと分かる。
気付いたら私は、何時もの癖のように彼女の名を呼び彼女がこの場にいない事を思い出しては悲しみに暮れる日々、何時しか私は彼女の名を呼びながら、彼女の面影を探す様になっていた。
だからこそ、私はハッキリと言える。私、バートリー・エルゼベートはリラと言う使用人の彼女の事が好きだったのだと⋯⋯。
彼女がいなくなって気付くなど、皮肉な話だ。
そして弱り果てた私はここで聞こえるはずの無い足音を耳にする。
足音は段々と私の下まで近付いていき、私の近くまで来るとピタリと止んだ。
「⋯⋯お嬢様⋯⋯やっとお会い出来ました」
私は自身の耳を疑った。何故ならその声は私がもう聞くはずのない声だったから。
そして、私の身体は何者かに抱き寄せられる。
身体を通して伝わる優しい温もり、それら全ては私は二度と得る事は叶わないと思っていたものだった。
あぁ、これは夢なのだろうか⋯⋯だとしたら覚めないで欲しい、もはや私はこの温もを二度と失いたくないから。
「もう離しません⋯⋯今度こそ最後の時までお側に⋯⋯」
私はその言葉を耳にして安息の中、意識を手放す。
ねぇ、リラ⋯⋯さっそくだけど久々に貴方の紅茶が飲みたいわ⋯⋯。
それから、二人して楽しく昔のように楽しく談笑して⋯⋯それから⋯⋯罰として⋯⋯⋯私の我儘を⋯⋯⋯⋯いっぱい⋯⋯聞いてもらうから⋯⋯⋯⋯⋯覚悟し⋯⋯⋯な⋯さ⋯⋯⋯。
ここは燃え上がり瓦礫だらけの街並み。
そこにこに一人の男性と二人の少女がいた。
彼の名は藤丸立香、先程カルディアにいたが謎の爆発事故に遭遇し、救助しようとした少女と共にレイシフトした少年である。
そんな立香のそばにいる露出の多い紫色の甲冑とマンホールの蓋よりも大きな盾を持った少女。
彼女の名はマッシュ・キリエライト。カルディアの爆発事故に合い、その後立香と共にレイシフトした少女である。
そして、最後に不機嫌な顔をしている女性。
オルガマリー・アニムスフィア、魔術師の名門アニムスフィア家の当主であり、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長を務める女性である。
そんな、立香達は今、何を行っているかと言うと現在自分達がいる特異点の人理定礎の為に、カルディアのシステムで英霊を召喚していた。
そして、立香達のから
「あら? まぁこう言うこともあるかしら? サーヴァント、キャスター。私の事はカーミラと呼ぶといいわ」
仮面の女性はそうマスターに言った。
「え、と⋯⋯ふ、藤丸立香です! よ、よろしくお願いします⋯⋯え、と⋯⋯」
立香は出現したサーヴァントに自己紹介したあとカミーラのとなりにいる使用人の女性に目が行く。
「⋯⋯あら?⋯⋯そうね⋯⋯リラ挨拶をしなさい」
立香が使用人の女性を見てる事に気付いたカミーラは、使用人姿の女性に自己紹介するように命ずる。
「⋯⋯カミーラ様の忠実なる下僕、使用人のリラと言います⋯⋯どうぞよろしく」