ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

1 / 41
初めまして、カステラ巻きです!
初投稿なのでとんでもない駄文ですが見てくれると嬉しいです。


第零章 新しい世界で
元の世界にて


  

 

 

 

 

 

 

 

    ああ、油断したなぁ。

 

 

 大量の血を流しながら、俺はそんな事をぼんやりと考えた。既に出血多量のせいで手足は動かない。助けを呼ぼうにも声が出ないしそんな気力も無い。声を出せたとしても今は1月の深夜。こんなクソ寒い中、深夜に外出する奴はそうそういない。人通りも少ない道のため、どのみち助けは期待できない。

 

 どうしてこんな事に…と、俺は数分前の事を振り返った。

 

 事の始まりは俺が夜中に腹をすかせてカップラーメンをコンビニに買いに行った際に、表通りの道を通れば良かったのに、近道だからと裏通りを通ったことだ。

 

 スマホをいじっていた俺は、道の角を曲がってきた小柄な男とぶつかってしまった。

  

 ドンッと肩に衝撃が伝わる。

 

「あ、すみません」

 

「………」

 

 (あわ)てて謝り、道を空けるが、男は無言のまま動かない。

 

 深く被ったフードの奥から、男の暗く光る目が俺を射抜いた。

 

 その目を見てゾワリと鳥肌が立つ。上手くは言い表せないが、こいつはヤバイと本能が警鐘を鳴らした。

 

 さっと離れようとした俺に、男が素早く腕を突き出してきた。

 

「ぐあっ!?」

 

 真っ先に冷たい感触を腹に感じた。刺された、と理解すると同時に痛みが俺を(おそ)う。これまで感じた事の無い程の痛みに、(たま)らずその場に座り込んでしまう。

 

     !?」

 

 苦悶(くもん)の声を押し殺しながら、男を見上げるが、

 

「………」

 

 男は無言のまま俺を冷ややかに見下ろすだけだ。(しばら)く俺を眺めた後、男は足早にその場を去っていった。

 

 それが数分前の事だ。思ったより冷静な自分に少し驚いた。少し前までジンジンと(うず)いていた腹は、大量出血しているせいか痛みももう感じない。だんだんと暗くなっていく視界。17歳の男子高校生が死亡しました、というニュースが瞬間的に脳裏(のうり)に思い浮かんだ。

 

 ヒュー、ヒューという、まるで木枯(こが)らしの様な頼りない呼吸音に思わず苦笑しかけるが、こみ上げてきた自分の血に(むせ)てしまう。満足に笑う力すらもう残っていないみたいだ。

 

 仰向けに寝転がる俺の頬に、なにか冷たい物が触れた。いつしか閉じていた瞼をなんとか持ち上げると、視界に白い物が入ってきた。雪だ。

 

 チラチラと降り出した雪が周囲を白く染めていく。そんな風景を、俺は静かに眺める。

 

 ……こんなふうに、一人で死にたくはなかったなぁ。

 

 胸にポツリと浮かんできた思考を皮切りに、様々な思い出が頭をよぎっていく。

 

 それらの思い出達は、楽しかった事、嬉しかった事、(つら)かった事、悲しかった事。いい事ばかりじゃなかったし、後悔した事も沢山(たくさん)あったけど、それでも俺にとっては   

 

「………だ…」

 

 小さな、掠れた声が寒々しい空気を(わず)かに()らした。

 

「……いや…だ…!」

 

 しかし、俺の声は誰にも届かない。

 

「……忘れ…たく……な………い……」

 

 そんな、俺の願いはどうにも叶いそうになくて。

 

 一粒の涙をアスファルトに残し、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

    筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………?……意識がある…確か俺は通り魔に…助かった、のか?

 

 あれだけ血を失ったのに……。自分で言うのもアレだけど、俺って結構しぶといな。

 

 どうやら俺はベッドに寝かされているらしい。身体を動かそうとするが、(なまり)を付けたように手足が重く、(まぶた)も開かない。声を出そうとするが、(かす)れた呼吸音がするだけだ。

 

 ……多分、血が足りてないからかな。

 

 あれ程の出血だ、簡単には回復しないだろう。その証拠(しょうこ)に、さっきから強烈な眠気が来ている。大怪我を負った後だし当たり前かな、と思い返し体の力を抜く。何やら周囲が(さわ)がしいが、もう少し休もうと思い、俺は意識を手放した。

 

 次に目を覚ますと、目がかろうじて少し開くようになっていたが、何かがおかしい。

 

 え、この人達誰?

 

 俺の周りには見たことも無い格好(かっこう)をした人達が沢山いた。大体の人は小さな(くさり)で出来た鎧のような物を着ている。中でも(ほお)に傷がある若い男がニコニコ顔でしきりに何かを話しかけてくる。

 

「@%≮Ⅳ★▲±?」

 

 ……へ?今なんて?

 

 一瞬、血を失いすぎて自分の頭がおかしくなったと思い、とりあえず重い身体を起こそうと手を動かす。が、何度試しても起き上がれない。なんで!?

 

 それを見かねたのか、俺に話しかけていた男がこちらに手を伸ばしてきた。

 

 ちょ、え、待て、おい!なにすんだよ!!

 

 抵抗しようにも身体が動かしにくいため、どうにもならない。と、俺はおかしな事に気付いた。どう見ても男の手が大きすぎる。まるで巨人だ。

 

 まさか、俺を食うつもりなのか……?

 

 某巨人アニメを思い出し、必死に手足をばたつかせて抵抗するが、そのまま抱き上げられてしまった。嫌だああ、せっかく助かったのに、まだ死にたくないいぃ!!

 

 男はニコニコして俺を見ている。と、俺は視界に入った自分の手を初めて見た。

 

 ………え?

 

 ふっくらとしていて、むちむちしている。まるで、ハムの様だ。一瞬、誰の手か分からなかったが、俺が動かすと手も動く。何度動かしても変わらない。……入院してる間にこんなに太っちゃったのか、俺…。ちょっとショックだ。

 

 そんな事を考えながら正面の男の顔を呆然(ぼうぜん)と見つめると、男の目に映っていたのは、黒い髪と、青い瞳の赤ん坊だった。

 

 …………はい?

 

 

 

 

 




ちょこちょこ続きを出していこうと思います!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。