ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 今回やっとグレン先生が登場します。


非常勤講師

 

 俺とティンジェルさんがフィーベルさんに勉強を教えて貰いはじめてから、早くも一週間が経つ。俺は魔術の事を少しずつではあるが覚えていった。俺が抱いていた疑問は相変わらず分からずじまいだが、それとは別にここ最近わかった事が一つある。

 

 

 それは、この学院の生徒達や先生達は、生まれながらに魔術に触れてきた、つまり、この人達にとって、()()()()()()()()()()()の生活を送ってきたと言うことだ。これでは俺の質問に答えられない訳だと納得した。当たり前の出来事に対して疑問を持つことは難しいだろう。この事に関しては自分で地道に調べていこうと思う。

 

 

 物思いにふけっていると俺の側に座る一人の少年、カッシュが明るく声をかけてくる。

 

 

「なあなあ、今日から来る先生ってどんな人なんだろうな!」

 

 

 今は教室中がその話題でいっぱいだ。なんせ、わざわざ一から七まである魔術師の位階、その最高位の第七階梯(セプテンデ)であり、大陸屈指の魔術師であるセリカ=アルフォネア教授が直々にこのクラスに(おもむ)き、今日から新しい教師がこのクラスに来る事を発表した。

 

 

 その教師は、セリカさん曰く、「なかなか優秀」らしい。あの大陸最高の第七階梯(セプテンデ)がそう評価しているのだ。これで話題にならない方がおかしい。さっきは珍しくフィーベルさんも少しテンションが高かった。

 

 

 

「ああ、そう言えばさっきフィーベルさんもそんな事言ってたな…」

 

 

 俺がぼ〜っとしながらそう返すと、カッシュの横にいた小動物的な雰囲気を持つ少年セシルが、俺に訪ねてくる。

 

 

「どんな人なんだろうね?」

 

 

「さあ?もうそろそろ来るんじゃないか?」

 

 

 昨日は休暇だったため、俺は生活費を稼ぐため、かなりハードなバイトをしていた。両親が仕送りをしてくれてはいるが、それはあくまでも家賃だけだ。というか俺が自分で頼んだ。いざという時に自分でも金を稼ぐ事に慣れておいた方が良いと思ったからだ。

 

 

 一応傭兵の仕事で貯めた金がありはするがほとんど置いてきていた。

 

 

 そこらへんの事情があり、疲れていた俺は寝てしまった。

 

 

「ちょっとウィル、起きなさいよ!」

 

 

 俺を誰かが揺さぶっている。なんとか重い瞼を開けると、怒り顔のフィーベルさんがいた。もう少し寝かせてくれ…

 

 

「もうすぐ授業が始まるから起きなさい、最初から寝てたら今日から来る先生に失礼でしょ!」

 

 

 そう言いながら、フィーベルさんは俺の背中をバシバシ叩き始めた。…おおぅ…そんなに叩かないでくれ…

 

 

 そう思いつつなんとか顔を上げた俺を見て、フィーベルさんは言い放った。

 

 

「よし!今日から貴方が寝てたら叩き起こしに行くからね。ちゃんと起きてるのよ」

 

 

「了解であります」

 

 

 適当な返事を返した俺を最後にどつくと、フィーベルさんは自分の席である一番前の机に戻っていった。すると横にいたカッシュが声を掛けてくる。

 

 

「なぁ、前から気になってたんだけど、お前とシスティーナって仲良いよな?」

 

 

「そうか?まぁ確かに勉強教えて貰ったりはしてるけど、普通じゃないかな?」

 

 

 寝起きの頭でぼんやりしながら水筒のお茶を飲んでいた俺に、コイツは一応周りに気を使ったのか声を潜めながらも、とんでもない爆弾を落としてきた。

 

 

「お前って、システィーナの事好きなのか?」

 

 

「ぶふぉっ!?」

 

 

 堪らず口に含んだお茶を噴き出した俺に、教室中の生徒が注目している。

 

 

「げほっごほっ、……カッシュお前、いきなり何を…」

 

 

「大丈夫、大丈夫、俺は分かってるぞ」

 

 

 気色悪いニヤニヤ笑いを浮かべたまま、カッシュは俺の肩を叩いてくる。……うぜぇ。

 

 

 確かに他の女子に比べたらフィーベルさんとはよく話すけど、別にそういう感情があるわけじゃ無い…と思う。が、彼女には何故か既視感を覚えているのは感じる。何処かで会ったことでもあるのか、何故か放って置けない…というか…

 

 

 と、そこまで考えた俺は、一つの違和感に気づいた。今の時間はもうとっくに授業開始時間を過ぎている。それでも教師が来ないのは流石におかしい。フィーベルさんもそう思っていたのか、我慢ならないとばかりに叫んだ。

 

 

「…遅い!」

 

 

 ティンジェルさんがフィーベルさんを宥めているのを眺めつつ、俺はお茶を飲み直した。

 

 

 (何かしらの事情があって遅れてるのか?)

 

 

 周りも少し騒がしい。そりゃそうだ。授業時間はもう半分近く過ぎている。

 

 

 と、その時だ。

 

 

「あー、悪りぃ悪りぃ、遅れたわー」

 

 

 そんな声と共に、がちゃ、と教室前方の扉が開いた。

 

 

 すかさずフィーベルさんが食ってかかる。

 

 

「やっと来たわね!ちょっと貴方、一体どういう事よ!貴方にはこの学院の教師としての自覚は…」

 

 

 フィーベルさんの説教が途中で止まる。珍しいな、どうしたんだろ?

 

 

 そう思いつつ、様子を見守る。

 

 

「あ、あ、あああ、貴方はッ!?」

 

 

「…………違います。人違いです」

 

 

 その若い男は、何故か全身ずぶ濡れの上に、様々な汚れがついた服を着ていた。どうやらフィーベルさんとその男は知り合いらしい、やいやいと言い争っている。一段落ついたのか、男は自己紹介と挨拶を始めた。

 

 

「えー、グレン=レーダスです。本日から約一ヶ月間、生徒諸君の勉学の手助けをさせて頂くつもりです。短い間ですが、これから一生懸命頑張っていきま…」

 

 

「挨拶はいいから、早く授業始めて下さい」

 

 

 かなり苛立っているのだろう、フィーベルさんに言われた男…グレン先生は、途端に面倒くさそうに敬語をやめ、タメ口で喋りだした。そして、あくびをしながら教科書を開き、黒板に向き直る。

 

 

 その途端、皆は意識を切り替え集中し始めた。かく言う俺も真剣にグレン先生を見つめている。

 

 

 俺達が見つめる中、グレン先生は凄いスピードで黒板に文字を書いた。……そう、誰もが予想していなかった事を…

 

 

 黒板にデカデカと書かれた「自習」という文字を俺達は呆然と見つめた。

 

 

「え〜、今日の授業は自習にしま〜す。………眠いから…」

 

 

 そう言って教卓に突っ伏したグレン先生。

 

 

 

 教室を沈黙が支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回も頑張ります!
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