とにかく、感想ありがとうございました!これからも頑張ります!!
グレン先生にフィーベルさんが突撃し、叩き起こす光景を俺達は呆然と見つめた。……教師が生徒に叩き起こされるって…普通逆じゃね?
頭に大きなたんこぶを乗せたグレン先生は、ぶつくさ言いながらも授業を始めた。が、それがまた酷かった。
と言うのも、グレン先生はダラダラと間延びした声で教科書を読み、黒板にミミズがのたくったかの様なもはや解読不可能の文字を書き始めたからだ。もはや何の授業か解らない。あまつさえ、生徒の質問にすらマトモに答えない。俺の前世でもこんなに酷い授業は見たことも聞いたことも無かった。
最悪な空気のまま、グレン先生の最初の授業は終わった。
昼休みになり、俺は昨日稼いだバイト代を手に、魔術学院の食堂へと向かっていた。
(今日は何を頼もうかな……こないだは魚のフライだったし、今日はがっつり肉料理を…うん、肉たっぷりのシチューにしよう。付け合せは…)
俺が昼飯について思いを馳せていると、ボロボロになった何かが廊下の隅に落ちている。不思議に思いつつ、近寄ってみると、グレン先生だった。………全く動かないから、てっきり巨大なボロ雑巾かと思った。
「…………大丈夫ですか?」
とりあえず声を掛けると、ボロ雑巾…もとい、グレン先生はのそのそと身体を起こし、俺を見上げた。見れば、全身に引っ掻き傷がある。
「…一体全体どうしたんですか?コレ?………」
「いや、ちょっとな………」
俺はちらりとグレン先生が倒れていた廊下に近い部屋の扉を見た。
「……えーっと、俺の目がおかしくなかったら、ここ、女子更衣室ですよね……?まさか、入っちゃったんですか…??」
そう言いつつ、グレン先生に手を貸し起き上がらせる。
「いや、昔ここは男子更衣室だったんだ。で、俺は間違えてここに入っちゃった訳だ」
なるほど、つまりグレン先生は悪気は無かったのに女子からの一斉攻撃を受けたってことか……。少し哀れに感じた。
「……ご愁傷さまです。………昼飯奢りましょうか?」
「おお…。お前、良い奴だな。えっと……」
どうやら俺の名前を知らないらしい。まぁ、自己紹介なんてする暇もなかったしな。
「先生のクラスのウィリアス=ベスティアです。ウィルでいいですよ」
「おう、よろしくなウィル。つっても俺は一ヶ月で辞めるけどな?」
「あ、そっか。非常勤講師でしたね。じゃあ一ヶ月間よろしくお願いします」
会話をしつつ、食堂に入る。話した感じ、悪い人ではなさそうだ。それぞれの料理を注文し、二人分の代金は俺が払う。それにしても、グレン先生って結構食べる人なんだな。俺のバイト代が……
表情に出したらかっこ悪いのでポーカーフェイスを意識する。幸いなことにグレン先生は気付かなかったらしく、何も言われなかった。
食堂は沢山の生徒で賑わっていて、座る席が見当たらない。席を探していると丁度二人分空いている所を見つけた。…が、その席の向かい側に、説教女神ことフィーベルさんと、天使ことティンジェルさんを発見してしまった。グレン先生はそれに気づいていないらしい。
「お、丁度よく二席空いてんじゃねーか。あそこ座ろうぜ」
「すいません、財布をさっきのとこに置いてきたみたいなんで取ってきます。先行ってて下さい」
勿論嘘だ。グレン先生には悪いけど、今グレン先生とあそこに行く勇気は俺には無い。
素早くその場を離れる。
不思議そうにしながらも、グレン先生はそこに向かって行く。俺はそれを遠目に見ながら、丁度良く空いた別の席に座った。
やがて恐れていた通り、フィーベルさんとグレン先生が言い争う声が聞こえてきた。……あ、危なかった。
巻き込まれずに済んだことに安堵しつつ、俺は食事を始めた。
二年二組の必修授業を全て受け持つことになったグレン先生だが、その全ての授業が適当に行われた。この学院では珍しく、グレン先生には魔術に対する情熱や探究心が全く無かった。だからだろう、生徒たちやその他の教師達とは深い溝が出来ていた。俺は魔術を学び始めてからまだ日が浅いし、そもそもグレン先生が悪い奴に思えなかったので普通に接していた。
「先生、ここはどうするんですか?」
「ん、ああ、俺もわかんねーわ。ははは、悪いな、ウィル」
グレン先生は空笑いをした。俺もそれに空笑いで返す。
「ははは、しょうがないですね、自分で調べてみますよ」
「あははは」
「あはははは」
………どうも
勘ではあるが、なんとなくそう思いながらもそこには触れない。まぁ、人には色々な事情があって当然だ。
かれこれグレン先生が来てから一週間が過ぎた。その日、最後の授業でとうとうフィーベルさんの怒りが頂点に達した。
「いい加減にしてください!!」
バンっと机を叩き、立ち上がったフィーベルさんの怒りの声を聞いても、グレン先生は
「うん?だからいい加減にしてるだろ?」
今のグレン先生は黒板に教科書をトンカチと釘で打ちつけていた。アイデアは
ボケッとしながら馬鹿な事を考えていると、教室がざわめきだした。
見ると、グレン先生の足元にフィーベルさんの手袋が落ちている。ティンジェルさんが慌ててそれを拾うようにフィーベルさんに促しているが、フィーベルさんは動かない。じっとグレン先生を睨んでいる。
落ちている手袋をグレン先生は珍しく真面目な顔で見ている。……なんだ、あの手袋に何の意味があるんだ?
俺が頭にはてなマークを浮かべていると、黙っていたグレン先生が口を開いた。
「お前…マジか?」
「私は本気です」
……何?何が本気なんだ?少なくともこの場の空気でただ事じゃ無いって事はわかる。
「…お前、何が望みだ?」
「その態度を改めて、真面目に授業をして下さい」
「……辞表を書け、じゃないのか?」
「もし、貴方が本当に辞めたいのなら、そんな要求に意味はありません」
「そりゃ残念だよ。ただお前、忘れてないか?お前が要求できる以上、俺もお前になんでも要求できるんだぞ?」
「承知の上です」
その後も
俺は初めて見る魔術師同士の決闘に、不謹慎だが少しわくわくしながら学院の中庭へ向かった。
そして感想はと言うと、少し期待はずれだった。と言うか、グレン先生は真面目に戦う意思が無かったように感じる。俺の思い込みかは解らないが、頑なに魔術を使おうとしないようにも思える。一体、何が先生をそこまでさせているのか。
何も解らないまま、時間だけが過ぎていった。
グレン先生がフィーベルさんの要求を無視してから何日か経った。相変わらずいい加減な授業をするグレン先生に、皆は諦めたのか自然と自習をするようになった。かく言う俺も、一応教科書を開いてはいるが、特に何かをしているわけでも無い。筋トレメニューを考えたり、バイトの事を考えたりと思考はあっちこっち行き来している。
解らないままになっている魔術の仕組みに関しては、あれから色々と調べているが、何の進展も無い。
「あの、先生…今の説明に対して質問があるんですけど…」
授業が30分程経ったとき、一人の女子生徒がおずおずと手を挙げた。リン=ティティスさんだ。
「あー、なんだ?言ってみ?」
そう言うグレン先生にティティスさんは呪文の訳を聞いていたが、グレン先生はルーン語辞書の引き方を教えだした。すると、我慢できなくなったのか、フィーベルさんがティティスさんに声をかけた。
「無駄よ、リン。その男に何を聞いたって無駄だわ」
「あ、システィ」
グレン先生とフィーベルさんに挟まれたティティスさんはオロオロしている。こらこら、ティティスさん困ってるじゃんか。ああいうのって結構きついんだよな。
「その男は魔術の崇高さを何も理解していないわ。そんな男に何を聞いても無駄よ。大丈夫、私が教えてあげるから。一緒に頑張りましょう」
そう言ってティティスさんにフィーベルさんが笑いかけたその時、いつもならそのまま放置しておく筈のグレン先生が口を開いた。
「魔術って、そんなに偉大で崇高なもんかね?」
フィーベルさんがその言葉に反応する。
「何を言うかと思えば。偉大で崇高な物に決まってるでしょ。最も、貴方には理解できないでしょうけど」
刺々しく言い放ったフィーベルさん。そのまま会話は終了するかと思いきや、その日は違った。
「なにが偉大で崇高なんだ?」
お?珍しいな。そう思いながらも黙って二人を見守る俺。グレン先生はフィーベルさんに淡々と
すると突然、手のひらを返すようにグレン先生は言った。
「悪かった、嘘だよ。魔術は立派に人の役に立ってる」
その返しに、フィーベルさんはおろか、皆戸惑っているようだ。
「ああ、魔術はすげぇ役に立ってるさ。……人殺しにな」
その時のグレン先生の表情は、まるで何かに取り憑かれているかのようだった。それは、俺に警戒心を抱かせた。……この人、ただのロクでなしじゃ無い。
周りの生徒たちも少し怯えている。そりゃそうだ。俺だって少し怖い。
「実際、魔術ほど人殺しに優れた術は他にないんだぜ?剣術が一人殺す間に魔術は何十人も殺せる。戦術なんてそれごと焼き尽くせる。な?立派に役に立つだろ?」
流石に黙っていられなかったのか、フィーベルさんが叫んだ。
「魔術はそんなんじゃない!魔術は、」
だが、グレン先生はフィーベルさんに次々と言葉を投げつける。
「お前、この国がなんで栄えているか解ってんのか?この国は魔術で発展してきた。なら、その魔術はどうやって発展した?……魔術は、人を殺す事で進化、発展してきたんだよ!!」
それは極論だ。少なくとも俺はそう思う。確かに、考えてみれば殺しを目的に発展したのかも知れない。でも、それだけじゃないはずだ。そう考えつつ、二人を見守る。
「全く俺はお前らの気が知れねーよ。こんな人殺し以外に何の役にも立たん術をせこせこ勉学するなんてな。こんなくだ欄事に人生費やすなら他にもっとマシな…」
そこまで言いかけたグレン先生の頬を、歩み寄ったフィーベルさんが叩いた。
ぱぁん、と乾いた音が響いた。
「いっ……てめっ!?」
グレン先生は非難めいた目でフィーベルさんを見た。そして、彼女の顔を見て、やっと自分が何を言っていたのか気づいたんだろう。
「違う…もの……魔術は……そんなんじゃ…ない…もの…」
フィーベルさんはいつの間にか、泣いていた。
「なんで…そんなに……ひどいことばっかり言うの…?大嫌い、貴方なんか」
そう言い捨てると、彼女はとめどなく溢れる涙を袖で
教室を圧倒的な沈黙が支配した。グレン先生は、舌打ちした後に、「後は自習だ」と言い残し、教室を出ていった。
気まずさが残る教室で、二人をどうしようか悩んでいると、ティンジェルさんが俺に近づいてきた。
「ウィル君、システィを頼んでもいいかな?」
「えっ、なんで俺?」
「いいから」
ティンジェルさんは今までで一番真剣な顔で俺に頼んできた。
「探してきてあげて。グレン先生は私に任せて」
「……わかった」
俺は教室を飛び出した!
それはそうと、10話いきましたね。これも皆様の応援のお陰です。
ただ、リアルが少し忙しくなるので、投稿が3日に1回になるかもしれません。申し訳ありません。個人的にはまだまだ書き続けていくつもりなので、これからもよろしくお願いします!!