ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 突撃ラブハートさん、高評価ありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします!


合流

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       困った事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ヴルル」

 

 

 自然と(うな)り声が漏れる。

 

 

 警戒と(おび)えが混ざった視線を向けてくるクラスメイト達を前にして、俺は数分前を振り返った。

 

 

 いや、途中までは良かったんだけどね……。

 

 

 俺が取った行動はこうだ。

 

 

 四階から落ち、地面に叩きつけられる寸前で咄嗟(とっさ)獣化(じゅうか)し、衝撃を吸収、そして着地。同時に降ってきた瓦礫に埋もれてしまうが、ここまではまだ良い。

 

 

 俺の上に積もっていた瓦礫(がれき)を、爆炎で吹っ飛ばし(すみ)やかに脱出。中庭が爆炎でメチャクチャになってしまったが、まぁここまでも良いだろう。……きっと。

 

 

 平らな壁に爪を引っ掛けて強引に登り、教室の窓のすぐ外まで辿(たど)り着いた。爪痕がくっきりと壁に残ってしまったが、ここまでも良い方だろう。……緊急事態だし、いいよね…?

 

 

 (すべ)って落ちそうになり大慌(おおあわ)てで窓を盛大にブチ破り、獣化したまま教室に侵入。はいアウト。

 

 

 

 窓からライオンが飛び込んできたらそりゃ誰だって怖いだろう。クラスメイト達は皆教室の(すみ)っこに小さく固まっている。すいません、(おど)かす気は全く無かったんです。どこか人がいない所で変身()かないとな…。

 

 

 そう思いながら身体のあちこちに着いたガラスの破片を振り落とす。ガラスってチクチクするから気になるんだよな。特にタテガミ付近はマジでヤバイ。……いや、今はそんな事してる場合じゃない、と思い返し生徒達の様子を確認する。

 

 

 全員後ろ手に(なわ)でガッチリ(しば)られているが、見た感じ怪我人はいないみたいだ。しかし、人数を数えてみると二人()りない。誰がいないのかは目立つ銀髪が見当たらなかったのですぐに分かった。フィーベルさんだ。彼女だけではなく、ティンジェルさんもいない。

 

 

 

 アイツらに連れて行かれたのか?だとしたらマズイ、すぐに二人を探しに行かないと!…いや、その前に  

 

 

 

 俺は一番近くにいた生徒   カッシュに飛び掛かり、前足で(おさ)えつけた。暴れられたらちょっと面倒だし。

 

 

「うわぁああっ!?」

 

 

 悲鳴を上げるカッシュに、ゴメン、マジで時間が無いからちょっと荒っぽいけどご了承(りょうしょう)下さい☆と脳内で語りかける。生憎(あいにく)とこの姿でいる時は会話が出来ない。これは獣化状態での最大の欠点だ。

 

 

 皆はこの生き物が俺だとは夢にも思っていないだろう。皆の認識では俺はさっきの爆発で死んだ事になってるからなぁ、少し寂しいけどしょうがないか。

 

 

 そんな事を考えながらも、俺の牙は頑丈(がんじょう)な縄を呆気(あっけ)なく切り裂いた。

 

 

 

    ぶちぶちっ!

 

 

 

 そして、怖がらせない為に(もう手遅れかもしれないが)サッと足を退()け、少し離れる。

 

 

 

「え…?」

 

 

 ポカン、とした様子で俺を見上げるカッシュ。

 

 

「アイツ……(なわ)だけ切ったぞ」

 

 

「…味方なのか?」

 

 

 

 カッシュの呆然とした声に続き、そんな疑問の声が聞こえてくる。味方ですよー、最初から。全員分の縄を千切っている時間はないのでカッシュに縄解(なわほど)きを(まか)せることにして、フィーベルさんとティンジェルさんを探さないと。

 

 

 俺はドアに駆け寄り、前足でドアを開けようとしたが鍵がかかっているらしく、開かない。

 

 

「…………」

 

 

 バキャッ

 

 

 ……鍵穴を爪で破壊し、もう一度ドアをスライドしようとするが、開かない。

 

 

「………ヴヴゥ」

 

 

 ……あああああもう!こーいう地味にウザい嫌がらせみたいなのやめろよ!!

 

 

 本気で叫びたくなるのを我慢し(この姿で本気で叫べば大変なことになる)やむなく後ろに下がり、軽く助走してドアへ思い切り突進した。

 

 

 バガァアアン!という耳をつんざく轟音を立てて吹き飛んだドアの残骸(ざんがい)を乗り越え、俺は廊下を疾駆(しっく)する。

 

 

 

 ……取り敢えず、どっかで獣化を解かないとフィーベルさん達と合流した時にパニックになりかねない。きっとフィーベルさんからは【ショックボルト】が飛んでくることだろう。いや、【ゲイルブロウ】かな?どちらにせよ喰らいたくはないな。

 

 

 すん、と空気中の匂いを()ぐ。

 

 

 俺は今、とある(にお)いを辿(たど)っている。教室に(わず)かに残り、(ただよ)っていたその匂いは、簡単に言えば『血』の匂いだ。実際に誰かが出血しているとかではなく、その人物に染み付いて簡単には離れない、言わば  

 

 

 

    幾人もの人間を殺してきた者だけが放つ独特の匂い。

 

 

 

 そんな匂いをここで嗅ぐ時が来るとは思ってもいなかったが、この姿でいる時の俺の嗅覚は鋭敏(えいびん)だ。間違い、という事は無いだろう。そう判断し、匂いを頼りに進んだ結果、どこかの教室に辿り着いた。

 

 

 教室の中から話し声が聞こえてくる。

 

 

「悪いがそりゃできねぇ相談だ……ここまで来ちゃ引っ込みつかねぇーよ」

 

 

 中にいるのはチンピラのようだ。そして  

 

 

「……やだ……やだぁ……お父様…お母様……助けて…誰か助けて……」

 

 

 

 そんな、とても弱々しい誰かの声。

 

 

 

「うけけ、お前、最っ高!てなわけでいただきまーす!」

 

 

「嫌……嫌ぁあああああ   ッ!!」

 

 

 

 気付けば俺は、目の前のドアを吹き飛ばしていた。

 

 

 

 〜〜システィーナ〜〜

 

 

 

 

 負けてたまるか。屈してたまるか。私は誇り高きフィーベル家の娘だ。魔術師にとって身体なんて所詮(しょせん)、ただの消耗品よ。

 

 

 そう、思っていたのに   

 

 

 駄目だった。どうしようもない嫌悪感が、恐怖が、私の涙腺(るいせん)を緩め、口を勝手に動かす。

 

 

「……あ、あの……」

 

 

「ん?何?」

 

 

「……やめて……ください…」

 

 

 涙が次々と(あふ)れ、頬を伝っていく。だが、そんな懇願(こんがん)を聞き入れてくれるような相手ではなく。

 

 

「悪いがそりゃできねぇ相談だ……ここまで来ちゃ引っ込みつかねぇーよ」

 

 

 心が悲鳴を上げる。

 

 

「……やだ……やだぁ……お父様…お母様…助けて…誰か助けて……」

 

 

「うけけ、お前、最っ高!てなわけでいただきまーす!」

 

 

「嫌……嫌ぁあああああ   ッ!!」

 

 

 

 チンピラの手が、必死に身じろぎする私に伸びてきた、その時  

 

 

 

 

 

 

 バコォォン!

 

 

 

 

 

 

   ドアが、吹き飛んだ。

 

 

 

「え…?」

 

 

「あ?」

 

 

 チンピラがドアの方に振り返ろうとした。(いな)()()()()()()()()

 

 

 黒く大きい、生き物が凄いスピードで近づいてきて、私の上からチンピラを叩き落としたからだ。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「ぎゃあああ!?」

 

 

 床をバウンドしながら転がっていくチンピラには目もくれず、その黒い生き物は真っ直ぐに私を見た。黒い生き物を、私もマジマジと見返す。

 

 

 生き物は、首周りにふわふわしていそうな長い毛が生えていて、身体はどことなく猫に似ている。

 

 

 こんな生き物初めて見た……。

 

 

 この時、何故か私はその生き物の恐ろしげな牙や爪を見ても全く恐怖を感じなかった。その青い瞳に、優しい色を見た気がしたからだろう。

 

 

 というか…この目、どこかで………?

 

 

 

「………ヴゥ」

 

 

 

 至近距離で静かに私を見つめていた謎の生き物は、おもむろに私の腕の縄を爪で切ると、未だ立ち上がれない様子のチンピラへと向き直った。

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜ウィリアス〜〜

 

 

 

 

 

 

   間に合って良かった。ホントに良かった。

 

 

 俺を見上げるフィーベルさんの顔を見て、素直にそう思った。素早く状態を確認するが、特に何かされたわけではなさそうだ。ふぅ、と安堵(あんど)のため息をつく。そして、この姿でのため息は威嚇(いかく)にしか聞こえないということを思い出し、慌てて口をつぐんだ。彼女もクラスメイト達と同様に腕を縛られていたので、チンピラに注意を払いながら爪で縄を切る。

 

 

 以外だったのは、俺の姿を見ても怖がる素振りを見せなかった事だ。怖がられると予想していたので、少し驚いた。

 

 

 

「な、なんなんだよソイツ!?」

 

 

 

 チンピラが若干ふらつきながら立ち上がった。先程の俺の前足叩きつけ(ねこパンチ)が顔にクリーンヒットしたらしく、その鼻は骨が折れたようで曲がっていた。

 

 

 フッ、ただのねこパンチだと(あなど)るなかれ。俺のねこパンチは通常の可愛らしい猫ちゃん達とは威力もスピードも段違いなのだよ…。近くにフィーベルさんがいたので、彼女を巻き込まないようかなり弱めに殴ったが、本気で殴ればチンピラの首の骨が粉砕されていただろう。

 

 

 

「グルルル…」

 

 

 

 フィーベルさんから離れ、チンピラと対峙(たいじ)する。俺はいつでも動けるように四肢に力を込め、大気中から魔力を集め始めた。できればフィーベルさんの前では炎を使いたくなかったが、相手は魔術師。そんなことも言ってられない。

 

 

「お、おい…なんだよそのふざけた魔力量はぁ!?」

 

 

 俺の魔力が急激に膨れ上がったのを感じたのか、チンピラが青い顔をした、その時。

 

 

 

 ふと、俺の耳が誰かの足音を捉えた。新手(あらて)を想定し、素直にフィーベルさんの側まで下がる。

 

 

 

「そこまでだ、この不届(ふとど)(もの)(ども)め!」

 

 

 そんな大声と共に教室に走り込んできた誰かが、見事な飛び蹴りをチンピラの側頭部に叩き込んだ。

 

 

「ぶべらぁっ!?」

 

 

 派手に吹き飛び、壁に激突したチンピラは、ピクリとも動かない。それを確認した乱入者  グレン先生は、今度はこちらに向けて拳闘の構えをとった。……ちょっと待って。俺、完全に敵だと思われてるよな。

 

 

 たじたじと後ずさっていると、その様子をおかしく思ったのかグレン先生は(いぶか)しむように眉をひそめた。それと同時に。

 

 

「先生待って!この子は私を助けてくれたの!」

 

 

 そう言いながら、フィーベルさんが(かば)うように俺の前に出た。その言葉に戸惑ったのか、グレン先生が上体を少し揺らした。

 

 

 

     と。

 

 

 

 そんなグレン先生に向けて、壁にもたれながらも左手を上けるチンピラの姿が目に入ってきた。人差し指が向けられているのは   グレン先生の、頭。

 

 

 

  っ!させるかっ!!

 

 

「オオオ!!」

 

 

 

 フィーベルさんの後ろから弾丸の様に飛び出し、大きく跳躍(ちょうやく)。目を見開くグレン先生の上から(おお)い被さるように床に伏せる。

 

 

「《ズドン》ッ!」

 

 

 直後、チンピラの呪文らしきモノが完成、指先に魔法陣が展開され、そして  カシャン、という(はかな)げな破砕音を残し、砕けた。

 

 

「……は?」

 

 

 チンピラがそんな声を出した。再び呪文を唱えるが、結果は同じ。

 

 

「《ズドン》ッ!クソ、どうなってやがる!?」

 

 

 何が起きたのか俺もさっぱりだが、ヤツが呆けている今がチャンスだ。

 

 

 思い立ったが吉日。俺は素早く立ち上がると、溜めに溜めていた魔力を開放、炎へ変換する。

 

 

「なっ!?」

 

 

「えっ!?」

 

 

 グレン先生とフィーベルさんの二人の驚く声を聞きながらも、赤い炎を身体に(まと)った俺は、一気にチンピラへと肉薄。ヤツめがけて思いっきり……訂正、少し手加減して前足を振り下ろした。

 

 

 バキバキッ!!

 

 

「ぐわああああっ!?」

 

 

 狙ったのは左肩。寸分(たが)わず命中した俺の右足は、チンピラの左肩の骨を砕いた。教室に響いた嫌な音に、グレン先生とフィーベルさんが顔をしかめたのが見えた。俺も顔をしかめそうになるが、その音を生み出したのは紛れもなく俺自身なので自重(じちょう)する。

 

 

 とにかく、これでもう当分チンピラの肩は上がらないだろう。

 

 

「ぐうっ…この化け物がぁ!」

 

 

 肩を抑え、立ち上がったチンピラは(ふところ)から刃渡り15センチ程のナイフを取り出そうとしたが、そのナイフをグレン先生が蹴り飛ばし、そのままチンピラを綺麗(きれい)に投げた。「お見事!」と言いたくなる衝動を堪える。

 

 

「ぎゃあああ!?」

 

 

 受け身を取る暇もなく床に頭をぶつけ、チンピラは呆気なく気絶した。グレン先生の投げる速度がハンパないから無理もないか。

 

 

 

 白目を()き、ブクブクと口から泡を出しているチンピラを放置し、グレン先生とフィーベルさんは同時に俺を見た。片や強い警戒、片や戸惑いが込められた視線を浴びる。

 

 

 

 ……どうしようこれから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
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