きゃあああああ!!評価バーが赤色になってる!?
沢山の評価、お気に入り、感想をありがとうございます!!いきなり増えたお気に入りの数に驚きました。まさかの300超え……!!
「お願いです!ルミアを…ルミアを、助けに行かせてください!!」
「駄目だ」
「そ、そんな……」
あの通話のあと、ずっと考えていることがある。
「だって…あの子は私を庇って…!」
「よせ。無駄死にする気か?」
「ううっ……」
それは、俺と先生、二人に向けられた言葉について。
『本当にヤバイ時は出し惜しみするなよ』
セリカさんが先程、通信を切る直前に言ったセリフだ。俺は正体を隠してこの学院に来た。そんな俺の事情を知っているセリカさんが『うまく隠せ』ではなく『出し惜しみするなよ』と言ったのは、勿論異常事態だというのもあるだろうが、もう少し別の意味もある気がする。まぁ、隠す事に関しては、一度炎を使ってしまったので手遅れ感があるが、まだ変身を解いていないのでセーフだろう。……セーフだよね?
とりあえずそう自分を納得させ、俺はいつしか
先程からグレン先生とフィーベルさんは何やらごちゃごちゃ言い争っていたが、その争いは今も続いていた。
「それでも、私は……」
「お前一人に何が出来んだよ。自分でもわかってんだろ?大人しくしてろ」
有無を言わさない、突き放すような言葉に、次第にフィーベルさんの肩が震え始めた。
「でも…私、悔しくて……だって…」
「お、おい……白猫?」
「うっ……ひっく……うわぁあああん……」
言葉を失う俺達の前で、フィーベルさんが泣き出してしまった。
グレン先生もこれは予想外だったのか、「え、あ、いや、えっと」なんて言いながらオロオロしている。一方の彼女は嗚咽混じりのガチ泣きだ。先程はすぐに泣き止んでくれたが、その時も本当は泣くのを我慢していたのかもしれない。色々と抑えてきた感情が爆発したのかもしれない。
どちらかなのか両方なのか、他にも何かしらの理由があるのか俺には分からないけれど、とにかくフィーベルさんは目を
女の子がこんなに無防備に泣くとは思ってなかったし、こんな状況に陥ったのも初めてだったのでどうすればいいのかわからない。俺は落ち着きなくウロウロとフィーベルさんの周りを歩き回った。
と、とりあえずハンカチを…って今の俺変身してるんだった……。
テレビでよく見る神対応、アレが出来る人なんて世界に何人いるんだろう?俺には無理だということが判明した。いざそういう時が来ると慌ててしまう。
助けを求めて横を見れば、俺より年上の筈のグレン先生も俺と一緒に落ち着きなく歩き回っていた。
オィイ!アンタが泣かしたんだろ!?
そう内心で叫ぶも、グレン先生も泣いている女の子の対処法は知らないらしい。頼りにならない担任だ。俺も人の事言えないけどさ…
その時、フィーベルさんが泣き声混じりに言った。
「先生の言う通りだった!魔術なんて、ロクな物じゃなかった!こんな物が……こんな物があるからウィルとルミアが……ひっく…うぅ……」
その言葉を聞いて、冷水を被った気分になった。ズキリと胸が痛む。俺が死んだ、ということが彼女の心に少なからず負担を掛けてしまっていることに遅まきながらようやく気がついた。同時に、魔術が大好きな彼女にそう思わせてしまったことへの後悔が俺にのしかかった。
この姿のままフィーベルさんの前に姿を現してしまったのは他でもない俺だ。なら、その責任は俺にある。でも……
そっと二人を見る。
…それでも、やっぱり正体を明かす事は出来ない。
ポツリと胸の中で呟く。再び胸が痛むのを感じた。
自身の気持ちとしては、とっとと変身を解いて二人の誤解を解きたい。でも、それをすればこの学院に居られなくなるかもしれないし、最悪の場合一族に迷惑をかけることになるかもしれない。セリカさんや学院長の様な親切な人の方が少数派だろう。別に二人を信用していない訳じゃないけど……とにかく、今はこれからのことを考えるべきだ。
そこまで考えて、いつの間にか
突如、周囲に甲高い音が鳴り響いた。キィイイン、と鳴り続ける少し耳障りなその音は、どこか悲鳴のようにも俺には聞こえた。
「これは…魔術の共鳴音か!?」
「えっ!?」
グレン先生の推測を聞いて身体を強張らせるフィーベルさん。
すぐに変化は起きた。教室中に複雑な模様の魔法陣が出現したかと思うと、そこの空間から何かが出現する。
それは二本の足で立ち、剣や盾といった物で武装した
その数は十数体に見えたが、魔法陣から続々と後続がやって来ている。教室はすぐに骸骨で溢れかえり、俺達三人はあっと言う間に、教室の隅の方に追い詰められてしまった。
「せ、先生…これは 」
「…これだけの数の
冷静に分析していたグレン先生に、待ちきれないとばかりに骸骨 ボーンゴーレムの一体が剣を振り下ろした。
それを素早くステップを踏んで回避したグレン先生。カウンターで右ストレートを顔面にお見舞いするが、あまり効いてはいないようだった。ヒビの一つも入っていない。
「ち、硬てぇ!?」
再び剣でグレン先生に斬りかかろうとするゴーレムに俺は思い切り体当たりをぶちかます。ひとたまりもなく吹き飛んだゴーレムは他のゴーレム達を巻き込んで倒れ込んだ。中には腕や足の骨が変な方向を向いていたり、首が落ちている奴までいた。
なかなかに酷い光景だが、それに目もくれず、グレン先生は俺を見た。
「お前……手伝ってくれるのか?」
「グルル…」
投げかけられた問に対し返事を唸り声で返すと、俺はグレン先生の隣に並んだ。そんな俺を見たグレン先生はニヤリと笑うと。
「よぉーし!ならお前は退路を作ってくれ。頼むぞ……。白猫!」
「は、はい!」
「お前は俺達の援護を頼む。…やれるか?」
「…はい!やってみます!」
「流石は優等生、いい返事だ」
それだけ言葉を交わすと、俺達はそれぞれの役目を果たすべく動き始めた。
突破力のある俺がゴーレムをなぎ倒し、教室の出口までの道を作り、卓越した格闘術を持つグレン先生がその道を広げる。そして、それを援護するフィーベルさん。
俺達が教室から脱出するまで、そう時間はかからなかった。
廊下を走ってはいけません。
誰だって一度は聞いたことがあるセリフだろう。聞いたことが無い人はいないんじゃないだろうか?少なくとも俺は聞いたことがある。幼い頃の俺はそのフレーズを聞くたびに疑問に思ってきた。「何で走っちゃだめなの?」と。
答えは単純。危ないからだ。今となっては懐かしい、小学校の先生方のそんな答えを聞くたびに、俺は考えたものだ。なぜ危ないのか。これも簡単。滑ったり、階段などの段差で
だが、廊下を走ることで生じる危険性には、あと一つ、大きな要因があると俺は思う。それは人にぶつかること。俺の前世の小学校時代の頃の怪我と言えばズバリこれだった。
だが、今の俺が走っているのは人がいない校舎。クラスメイト達は教室にいるはずなので、誰かにぶつかることはあり得ない。なので、走ってよし!……よい子の皆はマネしないでね。
今現在、俺はグレン先生とフィーベルさんを背に乗せて廊下を疾駆していた。
「走れ走れ走れ !!」
俺の背中に乗ったグレン先生がそんな激を飛ばしている。
「ヴォヴ!!」
それに吠えて返事をする俺。グングン上がっていくスピードに、グレン先生の後ろに乗ったフィーベルさんが小さな悲鳴を上げた。
「きゃっ!ち、ちょっとスピード出し過ぎじゃない!?これじゃ急には止まれないわよ!?」
と、廊下の曲がり角から五体のゴーレムが姿を現した。それを見たグレン先生が叫ぶ。
「止まる必要はねぇ!全部ふっとばしてやれ!!」
「ヴァオオオ!!」
速度はそのままに、俺はゴーレムに突っ込んだ。背中に乗っている二人は身を伏せて衝撃に耐える。
ガラガラガラという大きな音を立ててゴーレムの骨の身体は崩れた。彼らが武装していた剣や盾、弓などが地面に転がる。地味にボーリングのような爽快感を感じるのは何故だろう。したいなぁ、ボーリング。
散らばった骨を踏み散らしながらも走り続ける。
「よーし、これで大体のゴーレムは
グレン先生が俺の背中をバンバン叩いた。結構痛い。「ちょっと!痛いんでやめてもらえます?」と言いたくなるのを我慢して、尻尾をパタパタ揺らすに留めておいた。
やがて、ボーンゴーレム達の足音が聞こえなくなり、俺はスピードをゆっくりと落とした。
俺達が足を止めたのは二階の階段付近。周りに魔法陣が出現する気配は無い。俺の背中から降りたフィーベルさんがねぎらうように頭をそっと撫でてきた。
「ありがとね、助けてくれて」
少し気恥ずかしい。というか、普段はもっとツンツンしている話し方が少し優しくなっている。俺が猫にみえるからかな…?図体はだいぶ大きいけど。
大人しく撫でられているとフィーベルさんの手が俺の左目に触れた。反射的に目を閉じてしまう。
「あっ、ごめんね……?」
慌てた様子でパッと手を離したフィーベルさんだったが、毛並みに違和感を感じたのか、
マズい。
俺はフィーベルさんから顔を不自然じゃない程度に背けると、背中に乗ったままだったグレン先生を軽く揺さぶった。
何やら考え事をしていたらしいグレン先生は「この毛皮を売り捌けば…」とか何とか洒落にならない事を呟いていたので、慌てて床に転がり落とす。
「あでっ!」
「ほら、ふざけた事言ったからですよ、先生」
呆れたように見下ろすフィーベルさん。彼女の顔に先程までの訝しむ様子はなかった事に安堵する。
一方のグレン先生は「冗談に決まってんだろ」と笑いながら立ち上がったが、その目は全く笑ってはいなかった。……次から先生には自分で走ってもらおうかな。
窮地を脱した事から、二人には少し余裕が出来たらしく、先程より表情は少しだけ明るい。
しかし、休憩時間をくれる程、敵は優しくはなかったらしい。
突如飛来した二本の光線が、一本は俺の右後ろ足を掠め、もう一本は左肩の辺りを貫いた。パッと血が床に飛び散る。突然の痛みにたたらを踏んでしまった。
「ヴヴヴ……!?」
「猫ちゃん!?」
「ちぃっ 」
舌打ちしたグレン先生が懐から見覚えのあるカードを取り出し、構えながら
「誰だ!もう魔術は使えねぇぞ。コソコソ隠れてねぇで出て来い!」
その声に答える者はいない。代わりに聞こえてきたのは、ガシャガシャと騒がしい足音。撒いた筈のボーンゴーレムだ。
「くそっ、一旦引くぞ!こっちだ!」
グレン先生が指し示した階段に向かう。肩を撃ち抜かれたせいで左前足に力が入らないので不格好にしか走れない。獣化している時の俺は四足歩行なので、足を怪我するとバランスが取れなくなり、移動速度がかなり落ちる。
こういう時はやっぱり人型の方が便利だと強く思いながら、俺は階段をひょこひょこと駆け上った。