ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 今回短め。これで1巻は終了です。次は2巻!頑張るぞ!

 短編のエピソードを書こうと思っています。何かリクエストがあればお知らせ下さい!


その後

 

 

 

 

 

 

 

 アルザーノ帝国魔術学院自爆テロ未遂事件。今回の事件は、のちにそう呼ばれることになる。

 

 

 一人の非常勤講師の活躍により、最悪な結末を逃れたこの事件は、関わった敵組織のこともあり、社会的不安に対する影響を考慮されて内密に処理されたらしい。学院に刻まれた数々の破壊の傷跡も、魔術の実験の暴発ということで公式に発表された。……とある壁に刻まれた、なにかの大型動物の爪痕を誤魔化すのには大変苦労したらしいが。

 

 

 この事件に関して、帝国宮廷魔導士団が総力を上げて徹底的な情報統制を敷いた結果、学院内でこの事件の顛末を知る者はごく一部の講師、教授陣と当事者である生徒達しかいない。倒したチンピラと黒コート、ヒューイ先生の三人は帝国宮廷魔術師団が連行していった。

 

 

 事件解決後、当初は生徒達の間で様々な噂が飛び交っていたが、一ヶ月も経った今ではその噂は誰の話題にも上がらなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 朝、珍しく寝坊してしまった俺は登校中にグレン先生を発見。そのまま一緒に行くことに。

 

 

 

「しっかしまぁ、ルミアがあの病死したと言われていたエルミアナ王女だったとはな……」

 

「俺も驚きましたよ…でも、なんか納得しました。ほら、雰囲気とか王女様っぽいし」

 

「そりゃあ、王女様本人だからな!?」

 

 

 ポケットからわざわざ手を出し、ずびしっ!と鋭いツッコミを入れたグレン先生の隣を歩きながら俺は笑う。

 

 

 俺と別れた後、転移塔へと向かったグレン先生は、白魔儀【サクリファイス】という魔術を使い、学院全体を巻き込む自爆テロを(これがヒューイ先生にとっての目的だったらしい)実行しようとしていたヒューイ先生を止め、ティンジェルさんを救出することに成功。計画を潰されたにも関わらず、ヒューイ先生はどこか安心したような表情だったという。

 

 

 俺はヒューイ先生の授業を受けたことがない。俺が来た時には既に彼は失踪していたからだ。だから、彼について知っていることはとても少ない。

 

 

「……どんな人だったんだろう?」

 

 

 独り言のつもりで呟いたが、どうやら聞こえていたらしい。

 

 

「話を聞いた感じ、情に厚い、教育熱心な奴だったらしいぞ」

 

「………へえー」

 

 

 ……それ、まんまアンタやないかい。まあ、本人がそれを自覚しているかは別問題だけど。ったく、うちの担当講師は自己評価が低いのか高いのか……。

 

 

 わざとらしくため息をついた俺に「おい、なんだよそのため息!」と喚き立てる我らが担当講師を放置し、俺は少しだけ前を振り返った。

 

 

 事件が解決した後、グレン先生とフィーベルさんと俺の三人は、事件解決の功労者として帝国政府の上層部に呼び出され、ティンジェルさんの素性を聞かされた。異能者だったティンジェルさんが政治的な理由によって帝国王室から放逐されたということ。帝国の未来のために、彼女の素性は隠し通さなければならないということ。そして、俺達三人は、事情を知る側としてティンジェルさんの秘密を守るために協力することを要請された。

 

 

 そして、俺のことについても、フィーベルさん、ティンジェルさんの二人には話すことにした。その方が今後のことを考えて動きやすくなると学院長やセリカさんに強く言われたのと、俺自身も二人と同じことを考えていたからだ。学院長室に、俺、学院長、セリカさん、グレン先生、フィーベルさん、ティンジェルさんの六人で集まることになった。

 

 

 皆の前で獣化して見せると、学院長とセリカさん、グレン先生は予め知っていた為普通だったが、フィーベルさんとティンジェルさんはとても驚いていた。話の途中で、突然フィーベルさんが顔を赤くして(うつむ)きだし、心配した俺が声をかけても反応しなくなるということがあったが、それ以外は二人とも静かに話を聞いてくれた。

 

 

 俺は内心で彼女達がどんな反応をするか少し不安だった。もしかしたら怖がられるんじゃないか、なんて考えていたが、それは杞憂に終わったようで、俺が話し終えた後も普通に質問を投げ掛けてくるフィーベルさんとティンジェルさんに俺の方が戸惑うほどで。

 

 

 思い切って怖くないのかと尋ねてみれば、首を傾げたあと、小さく笑いながらフィーベルさんが答えてくれた。

 

 

   姿が変わっても、ウィルはウィルでしょ?

 

 

 よく考えてみれば、魔術に触れたことが無い人達からすれば獣に姿を変える者がいれば恐怖を感じるだろうだろうが、魔術に日常的に触れている彼女ら魔術師からすれば、姿を変える方法なんて沢山ある。それ故の慣れもあったんだろう。

 

 

 そうとわかっていても、胸がじんわりと暖かくなったのを鮮明に覚えている。彼女からすれば何気なく放った言葉だったかもしれない。でも俺にとってはその言葉はとても嬉しかった。

 

 

 思い出してほんわかした気分になっていると、グレン先生が声を掛けてきた。

 

 

「それはそうとウィル」

 

「? はい」

 

「今の時間わかるか?俺の時計壊れちまって使えねぇんだ」

 

「なにやってんですか、ちゃんと替えの時計くらい持っといて…下さ…い……?」

 

 

 懐中時計をちらりと見て、なんとなく違和感を覚えたのでもう一度見る。時計は、止まっていた。

 

 

「……ッ!」

 

 

 慌てて辺りを見渡す。確か、この通りには柱時計があった筈……。

 

 

 程なくして柱時計を発見。直ぐに時間を確認する。

 

 

「…………」

 

「で、何時だった?」

 

「……は、ははは、大丈夫ですよ先生。(まった)くもってノープロブレム。ゆっくり歩いてて下さい。俺はちょっとした急ぎの用事ができたんで、それじゃ」

 

 

 走り出そうとした俺の肩をグレン先生がガッシリと掴んだ。

 

 

「まぁ、待てよ」

 

 

 彼はとても爽やかな笑顔を浮かべていた。まるで、同士を見つけたと言わんばかりに。そんな表情とは裏腹に、掴まれた俺の肩はミシミシと嫌な音を立てている。

 

 

「ほら、空を見てみろ。こんなにも綺麗に晴れ渡っている。そして、そこに浮かぶは天空城。…折角だし、この雄大な空を眺めながらゆっくり歩こうじゃないか」

 

「はは、生憎と俺は夜空観察の方が好きなので今回は遠慮しときますよ」

 

 

 俺も穏やかな笑みを浮かべ、肩を掴んでいる手をさり気なく、全力で外しにかかる。

 

 

「ははは、まぁそう言うな。大人しく歩こうぜ、なぁ? ……さもないと、夜空ではなくお前の頭上にお星様が舞うことになる」

 

「朝から冴えたジョークですね、流石です先生……ただ、この手を離してくれませんか? うっかり先生の目を潰してしまいそうだ」

 

 

 朗らかな笑い声を響かせる俺とグレン先生。だか、俺もグレン先生も顔は恐ろしい程の真顔だ。

 

 

「「………」」

 

 

 無言で睨み合う。

 

 

 先手を打ったのは俺だった。

 

 

 バシィッ!(肩を掴む手を振り払った音)

 

 ガシィッ ミシミシミシィ!(再び肩を掴まれた音)

 

 ドゴゴッ!(膝蹴りをガードされた音)

 

 

「……おい、離してくれ。遅刻、欠席ゼロが目標な俺としては、これ以上時間を潰している暇はない」

 

 

 敬語すら忘れてタメ口で放った言葉に、俺の肩を掴んでいるグレン先生は慈愛の笑みを浮かべ、言った。

 

 

「オイオイ冷てえな。俺達、唯一無二の親友だろ?親友なら……互いの苦しみを分かち合うのは当然だよな?

 

 

   コイツ、俺を生贄(いけにえ)にする気だ!

 

 

 手を引き剥がし、俺はその場から逃げ出した。全速力で学院への道を駆け抜ける。

 

 

「待ちやがれぇえええ!!」

 

「誰が待つか! そもそもアンタ、説教仲間が欲しいだけだろ!?」

 

「ああそうだ、それがどうした! いいか、よく聞けウィル!……人はな、決して一人では生きていけないんだ!……お前なら、この言葉の意味がわかるだろうッ!?」

 

「わかりますけど、その言葉の使い方は完全に間違ってますよ!?」

 

「隙ありぃいいい!」

 

「ぐあっ! おい卑怯だぞ!アンタそれでも講師か!?」

 

「フハハハハ! 卑怯?何それ美味しいの? 狡猾(こうかつ)だと言い(たま)えよウィリアス君〜?」

 

「上等だこの野郎!もう手加減なんてしてやるか!!」

 

 

 ぎゃあぎゃあ言い争いながら学院へ向かって爆走する俺達。足払いを掛け、相手の足を引っ張って転ばせながらも前へと進む。

 

 

 いつしか説教を逃れるという目的は俺の頭から綺麗サッパリ消え、どちらが早く学院に辿り着くかしか考えていなかった。きっとそれはグレン先生も同じだろう。

 

 

 結局、学院には二人とも同着。お互いの健闘を(たた)え合い握手し、いい笑顔で自分達の教室のドアを開け   フィーベルさんのお説教を受けた。

 

 

 勿論、遅刻していた。

 

 

 

 

 

 




 遅刻してきたグレンとウィリアスに白猫の説教が炸裂。グレンはしばらくぶすくれていたが、ウィリアスが昼ご飯を奢ったところ、機嫌が治った。ちょろい。
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