長い間更新できず、誠に申し訳ありませんでした! そして待ってくれていた皆さん、ありがとうございます!! 就職活動が一段落ついたので投稿します。
ひと悶着
朝。
日の光がカーテンの隙間をすり抜けて顔を照らす。今日もゆっくりと寝ることができた。
「……ふぁあ〜あぁああ………」
欠伸を噛み殺しながらベッドからのそりと起き上がり、伸びをしてから、洗面台で顔を洗う。冷たい水を手で受け止め、顔に大量にかける。冷水を浴びて、ゆっくりと覚醒していく意識の中で、さて朝食だ…いやその前にいつもの鍛錬を…と寝ぼけ
「……?」
不思議に思い、カーテンを開けるが、庭に異常は見られない。タオルを肩に引っ掛けながら、う〜ん?と首を捻り、ひとまず家の周囲を見て回ろうと玄関に向かう。カチャリ、と鍵を開け、適当な外履きをつっかけてドアを開けると、玄関から少し離れた庭の薪割り用の切り株の上に、見覚えのある一羽の白い
「ああ…長旅お疲れさん」
「ピィー!」
俺が
この鷹
腕を真っ直ぐに伸ばすとその鷹は掴んでいた荷物をポトリとその場に落とし、嬉しそうにクチバシを鳴らしながら腕に飛び乗ってきた。かわいい。何よりサイズが丁度いいよね。
腕に乗せ、荷物を拾いながら家に入り、古雪の朝露に濡れていた身体を、肩に引っ掛けていたタオルで軽く拭いてやる。その後戸棚から小皿と深皿を出し、小皿に肉の欠片を、深皿に水を入れて机に置くと、机に飛び移った古雪がちょんちょんと肉を
「さて、と」
古雪が肉を突いている間に荷物を開く。中から出てきたのは、手のひら程の大きさの小さな薄茶色のポーチと、封筒に入った一通の手紙。ポーチも気になるが、先に手紙を取り出して読む。えーっと、なになに……
『 ウィリー、元気にしていますか? 私達は元気です。貴方はちゃんと毎日ぐっすり眠れていますか? 怪我や病気はしていませんか? 食事はきちんと摂っていますか? 友人は出来ましたか?』
心配性なのは父さんだと思っていたが、どうやら母さんもらしい。苦笑しながら続きを目で
『送ったポーチは、貴方への入学祝いのプレゼントです。遅くなってしまってごめんね。本当は何か武器を送ろうと思っていたけれど、大きすぎて古雪が持てなくて……それで、このポーチにしました。これは昔、お父さんと遺跡を探検している時に見つけたもので、便利な魔法が掛かっているの。使い方を書いた紙をこの封筒の中に入れておくから、読んでね。』
へぇ〜、このちっちゃいポーチに魔法がねぇ。……え、魔法? これってもしかして
仰天しながら、手に乗せた小さなポーチをためつすがめつ眺めるが、見た目はただのポーチにしか見えない。
ひとまず使い方を書いてある紙を読んでみる。…あったあった、これだな。
『〜不思議なポーチの使い方〜
ポーチには生物以外の物体なら、何でも幾らでも収納可能! 食べ物を入れても腐らないよ! 物を出したい時はポーチに手を入れて、欲しいものを思い浮かべると手に収まるから超出しやすい! 物を仕舞いたい時はポーチに近づけると小さくなるから仕舞いやすい! とっても便利なこのポーチ、ぜひ使ってみてね!!』
誰だよこれ書いたの。絶対母さんじゃないだろ。
ツッコミたくなるのを堪え、字をよく見てみれば、その筆跡は父さんのものだった。ウケを狙ったらしい。……コレについてはノーコメントで。いい歳の大人が何やってんだよ…。
時計をちらりと見る。余裕はまだあるが、かといってのんびりし過ぎも良くない。それに鍛錬もまだしていないし、朝飯もまだだ。
俺は寝間着を動きやすい服に着替え、武器庫から剣と槍、弓と矢を数本、取り出した。ふと思いつき、ポーチにそれらを近づけると、近づけた
おお、持ち運びに便利だな。これならポーチを身に着けている限り、
新たに武器庫から取り出した、鍛錬で使う武器を何本かポーチに仕舞い、俺は庭へと向かった。
〜数時間後〜
ポーチの性能に満足した俺は、早速そのポーチを腰のベルトに着けて学院に来ていた。もちろん、ポーチには武器を何本か入れてきている。これまで学院には無手で来ていたが、やはり自分の馴れ親しんだ
脳内で数々の武器達を想像していると、一人の講師とすれ違った。名前は…ハ、ハ……バンデッド先生? だったかな。彼は何故か、こちらをギョッとした顔で見ながら通り過ぎていく。……そんなに酷い顔をしていたのか、俺は。
朝から緩みそうになる(既に緩んでいた)顔を引き締め、シャキッと真顔を意識する。……よし、完璧だ。
教室のドアを開ける。と
「おはよう、ウィル……何だよニヤニヤして。何かあったのか?」
丁度同じくらいのタイミングで登校してきたらしいカッシュが声をかけてきた。彼には俺の真顔が見えていなかったらしい。机にカバンを放り投げ、カッシュの隣に座りながら、おはようの挨拶も程々に語りかける。
「誰がニヤニヤしてるって? お前には見えないのか? この俺の完璧な真顔が」
「いや完全にニヤけてんじゃんかよ」
笑ってないし、いや笑ってたろ、と言い争っているとセシルがやってきて、ストンと俺の隣に座った。
「おはよう、二人とも。朝から元気だね……」
「おはようさん、セシル。眠そうだな」
珍しく目をショボショボさせているセシルは「僕だって眠たい時くらいあるよ」と言いながら机に突っ伏した……本当に珍しい。
「……教科書を枕にすれば寝やすいぞ」
「……お前は何のアドバイスをしてるんだ」
「……? 快適な睡眠を得るためのアドバイスだけど? おやすみ、先生が来たら起こすよ」
よほど眠かったらしく、セシルは無言で俺のアドバイス通りに教科書を枕にして夢の世界へ旅立って行った。
教室にチラホラとやってくる生徒達を横目に見ながら、羽ペンでセシルのほっぺたにホクロを増やしていく。…よし、北斗七星の完成だ。次はオリオン座を……。
「おやすみとか優しげに言っておきながらイタズラするとかお前鬼かよ」
「わかってないなぁ、カッシュは。いいか、寝ている人……これすなわちキャンパスだ。らくが……アートを描かないと失礼だろう」
「おい、今らくがきって言いかけたよな?」
なんだかんだ言いながら、カッシュも楽しげに俺の筆捌きを見ている。俺は前世では友人とこんなふうにふざけた事が殆どなかったので、今がとても新鮮に感じる。
「気のせい気のせい。……よし、できた。我ながら素晴らしい出来だ。将来は画家にでもなろうかな」
適当にカッシュの言葉を誤魔化す。完成した美しいアートに満足していると、羽ペンがくすぐったかったのか、グレン先生が来る前にセシルは起きてしまった。慌てて羽ペンをカバンに押し込み、そっぽを向く。セシルはほっぺたをごしごしと擦り、手についたインクをこれ見よがしに俺に見せてきた。
「ねぇ、ちょっと。僕の頬にインクがついてるんだけど」
「カッシュの仕業です」
「おいい!? 俺じゃねーよ! セシル、犯人はウィルだ!!」
秒で指差した俺に食って掛かるカッシュ。セシルはこれまた珍しく、ニヤリと笑みを浮かべて羽ペンを二本構え、俺達の顔に素早く突き出してきた。
「やぁっ!」
「うわっぷ」
「ちょ! なんで俺までぇっぶ!?」
しばらく顔をこちょこちょされた後、お互いの顔を見ての第一声は
「「これは酷い」」
「二人とも、すごく似合ってぶふっ」
猫のひげらしきものをほっぺたに書かれた俺と、インクで極太眉毛になったカッシュをホクロだらけのセシルが笑う。
結局三人とも、先生やフィーベルさんが来る前に急いで顔を洗いに行った。
時は早くも放課後。
『魔術競技祭』という学院行事を来週行うらしく、その種目決めということで生徒達は教室に残っていた。司会はフィーベルさん、書記がティンジェルさんだ。
「はーい、『飛行競技』の種目に出たい人、いませんかー?」
壇上に立ったフィーベルさんがクラス中に呼びかけるが、誰も応じない。クラスメイト達は皆
隣を見れば、朝はあれ程元気だったカッシュとセシルも静かに
「…じゃあ、『変身』の種目に出たい人ー?」
フィーベルさんが声を上げるが、誰も何のアクションも取らない。俺としては種目全てが気になるし、魔術の使える数が少ない俺でも、一つくらいは何らかの種目に参加してみたいとも思うが、周りがこの調子では挙手しにくい事この上ない。
というか、年に一度の行事だというのにこんなに盛り下がるとか、そんなに酷い行事なのか? ちょっと不安になってきた。
困った様に眉を下げたフィーベルさんは、書記を務めていたティンジェルさんに目配せした。それに一つ頷いたティンジェルさんがクラスの皆に明るく呼びかけた。
「ねえ、皆。せっかくグレン先生が今回の競技祭は『お前達の好きにしろ』って言ってくれたんだし、思い切って皆で頑張ってみない? それにほら、去年競技祭に参加出来なかった人には絶好の機会だよ?」
穏やかだが、意外とよく通るティンジェルさんの声が静かな教室に響く。だが、それでも皆が顔を上げる気配はない。教室に気まずげな空気が充満していく。
「……無駄だよ、二人とも」
その時、この膠着状態に飽きたのか、一人の眼鏡をかけた男子生徒が声を上げた。確か彼の名前は…ギイブル=ヴィズダンだ。まだ直接話したことはないが、ちょくちょくカッシュが絡んでいるのを見たことがある。俺の抱いた第一印象は、知的なメガネボーイ。…うん、見た目そのままだな。
メガネボーイ ギイブルは、淡々と言った。
「皆気後れしてるんだよ。そりゃそうさ、他のクラスは例年通り、成績優秀な生徒
「それは、そうだけど…でも、せっかくの機会なんだし…」
フィーベルさんがムッとした様に言いかけるが、それを無視してギイブルが続ける。
「それに、今年は女王陛下が直々に
ほー、国のトップが来るのか。そりゃあ確かに参加しづらいだらうな。
俺は正直、王室に対しての忠誠心とかはあまりない。俺たちの一族は、大昔には王室に仕えていたらしいが、その王室からの『異能』扱いで迫害された事があったそうな。酷い時には何度も討伐隊が組まれた事もあったと集落の長老から聞いた。そのせいで随分と同胞たちは数を減らしたらしい。今はあちこちに隠れ住むことで存在自体が忘れられつつあるが、そういった『異能』に対する差別意識は完全に無くなったとは言えないだろう。特にこの国は『異能』に対して厳しいしな。
俺は直接差別されたりした経験は無いし、女王陛下と会うこともないだろうが、なんとなく気まずいと言うかなんというか…。ううーん、難しいな。言葉に出来ないモヤモヤ感がある。こういう時ボキャブラリーに乏しい自分が嫌になるな。もっとこう、知的な言葉と振る舞い方を勉強するべきか。
すっきりしないまま、ふと前の方に視線をやると、少し表情が暗いティンジェルさんの様子が目に入った。彼女の母親は女王陛下だったよな……。やっぱり、寂しく感じたりするんだろうか。
俺が少し痛ましい気持ちで見ていると、ティンジェルさんの表情が少し暗いのに気づいたフィーベルさんが、さり気なく自身の肩をティンジェルさんの肩にほんの少し触れさせた。それだけでティンジェルさんには何かしら伝わったようで、上げた顔にはもう陰りは見られなかった。
……友情って素晴らしいね。感動しちゃったよ。
尊敬の念をまたギイブルと話し始めたフィーベルさんに送る。ぶっちゃけ話は聞いていなかったけど、まあいいよね。
段々とヒートアップしていく熱弁を、わーよく噛まないよねーと思いながら眺めていると、俺が過去に吹き飛ばしたせいで新しくなっていた教室のドアが、ばあぁぁあんっ!! とやかましい音を立てて空いた。
そして教室中に響く大声。
「話は聞いたッ! ここは俺に任せろ、このグレン=レーダス大先生様にな ッ!!」
我らが担当講師のお出ましである。
まだリアルがごたごたしてるので投稿ペースはかなり落ちますが、途中でほっぽり出すつもりはないです。