ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 か、かろうじて間に合った……!!

今日はクリスマスイブですね。でもそんなリア充イベントなんて知ったことか。

 そんなことよりも! 今日!
 12月24日は、システィーナの誕生日です!

わああああシスティーナあああああああああああ! 誕生日おめでとおおおおおおおおおおおおお!!! 可愛いよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!






賭け

 

 

 

 

 

 俺の出場種目である『ハイド・ラン』。

 

 これを無事に乗り切る為、俺は対策を練った。とは言っても、持久力や隠密性を高める為の訓練くらいしかまだ考えていないが。まあそれは今から考えるしいいや。

 

 勝利条件は『生き残る』こと。実にシンプルだ。

 

 言葉の通りに生き残るだけなら簡単だ。なんせ、ここはアルザーノ帝国魔術学院。流石のセリカさんでも、本気で死人が出るほどの危険な競技を発案する筈がないし、そんな案が出ても学院側から即座に却下されるだろう。

 

 なので、重要になってくるのは、競技の際に、()()()()()()()()()()()()()()されるのかだ。

 

 競技名から考えれば、隠れている時に誰かに見つかれば死亡、とはならないだろう、多分。見つかるだけで死亡判定なら競技名は『ハイド』だけで済む。『ラン』とあるからには、見つかった後に走って逃げることも可能なはず…多分。

 

 この競技は、前世でいう鬼ごっこに近いものだと俺は勝手に想定しているが、鬼は生徒なのか、また別の誰かがゴーレムなんかを召喚してするのか、考え出したらきりが無い。

 

「ゔああー」

 

 唸りながら、座っていたベンチの上にゴロンと寝っ転がった。木の葉の隙間から差し込むお日様の光が眩しい。俺は急いで目を閉じた。

 

 今は放課後。針葉樹が囲み、敷き詰められた芝生(しばふ)が広がる学院中庭で、俺たち二組はグレン先生の監督の下、来たる競技祭に向けて、それぞれの出場種目の練習をしている。

 

「うむむむ…」

 

 寝っ転がったまま目を閉じていると、不意に風を感じた。見れば、俺の近くに宙に浮かんだカイとロッドがやって来ていた。

 

「よっ、ウィル。…苦戦してるな」

 

「カイ…俺もう駄目かもしれん」

 

「お前の種目、情報が少ないからなぁ……」

 

 ベンチから起き上がり、伸びをしながら二人の進捗(しんちょく)状況を尋ねる。

 

「二人はどんな感じ?」

 

「俺たちは、グレン先生が言ってたペース配分を意識して練習してるよ」

 

「そっか…」

 

 二人が出場する種目は『飛行競争』。二人で一チームを作り、広大な学院敷地内に設定されたコースを、一周ごとにバトンタッチしながら何十周も飛ぶ競技だ。

 

 短距離ならともかく、長距離なら確かにペース配分が大事になってくるだろうな。

 

 考え込んでいる俺に、ロッドがふわふわと宙返りしながら提案してきた。

 

「先生にさ、お前もアドバイス聞いてきたらどうだ? なんか思い浮かぶかもよ?」

 

「そうだなあ…」

 

 一人で考えるのにも限界がある。俺もなんかいい感じの助言を求めた方がいいかもしれない。気晴らしにもなるだろう……多分。

 

「ありがとう、二人とも。俺、ちょっと行ってくるよ。練習頑張れよ!」

 

「おお、お前もな!」

 

 手を振りながら飛び去っていく二人を見送り、俺は先生を探した。…お、いたいた。

 

 少し離れた木の下の芝生に、先生が寝っ転がっているのを発見した俺は、小走りに先生の下へ向かった。

 

 先生はなんかどんよりした空気を全身から醸し出しているが、それをスルーして声をかける。

 

「先生」

 

「…おお? ウィルか…どーした?」

 

「ちょっとアドバイスを聞きに来ました。……先生、大丈夫ですか、意識あります? 生きてますか?」

 

 俺を見る目があまりにも虚ろだったので、本気で心配になった。先生の目の前で手を上下に振る。

 

「いや、生きとるわ! …で、アドバイスだったか…」

 

 良かった、ちゃんとしたツッコミを入れる元気はあるらしい。ホッとしつつ、先生の横に座る。

 

「俺の種目『ハイド・ラン』についてですよ。なんか助言とかあったら聞かせて下さい」

 

「あー…正直、助言といっても、あんまり俺の言えることは無いぞ?」

 

 先生はガリガリ頭を掻いて、表情を改めた。

 

「……勝利条件は『生き残る』ことで、競技時間やフィールド、配点は一切不明。『生き残れば勝ち』とは書いてあるが、恐らく何らかの死亡判定が設定されている筈だ。競技名的には、何かから逃げ回ることになる。そうなると大事なのは、長い間走り回れる体力と持久力、くらいか。隠密性もあればなお良い」

 

 ふむふむ、大体俺と同じ意見だ。やっぱりその辺の強化をしておこう。うんうんと頷く俺をちらりと見て、先生は声のトーンを不意に変えた。

 

  ただ、この種目を発案したのは()()セリカだ。何が起こるか分からん。油断はするなよ」

 

 このひと言で一瞬で不安になった。そうだった。セリカさん発案の種目で、何か起きない方がおかしい。

 

「……俺がお前をこの競技に選んだのは、お前が環境適応能力と状況判断に長けた奴だと判断したからだ。他のもやしっ子と比べれば、圧倒的にな。自信持って良いぞ」

 

「はぁ…」

 

「……悪いな、あんまアドバイスらしいこと言えんで。取り敢えずお前は、体力とかの強化と、イメージトレーニングをしろ。どんな状況になっても素早く動けるようにな」

 

 やっぱり先生に意見を聞いて良かった。俺と似たような意見ではあったが、身になる助言を聞けた。競技中は「何か起きるかも」ではなく、「何か起こるぞ」の心構えでいこう。

 

 先生にありがとうございます、と言おうとしたところで、誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。この声は   

 

 パッと立ち上がり、その方向に目を向けると、マイフレンドであるカッシュが、他のクラスの男子生徒たちと言い争っているのが見えた。

 

「あれま」

 

「何やってんだ……ったく」

 

 ため息をつきながら、先生は気だるげに起き上がるとその場所へ向かった。俺も特にすることがなかったので着いていく。

 

「……おーい、何があったんだ?」

 

「あ、先生!? こいつら、後から来たくせに勝手なことばっか言って   

 

 カッシュが興奮気味にまくし立てる。かなり怒ってる様子で、顔が真っ赤だ。

 

「うるさい! お前ら二組の連中、大勢でごちゃごちゃ群れて目障りなんだよ! これから俺たちが練習するんだからどっか行けよ!」

 

 他のクラスの男子も、やはり興奮気味に言葉を吐き捨てる。

 

「なんだと   ッ!?」

 

「はーいはい、ストップ〜」

 

 取っ組み合いを始めた二人を、先生が首根っこを掴んで、左右へ強引に引き離した。見かけによらず豪腕だ。

 

「あがが……く、首が…」

 

「い、息が……苦し……」

 

「ったく、くだんねーことで喧嘩すんなよ……お前ら沸点低過ぎだろ」

 

 二人が大人しくなったのを確認して、先生は手を離した。解放された二人は苦しそうにむせながら地面に膝をつく。カッシュの背中をさすってやると、掠れた声で「わりぃ…」と聞こえてきた。ちょっとは落ち着いたかな?

 

「えーと? そっちのお前ら…その襟章(えりしょう)は一組の連中だな。お前らも今から練習か?」

 

「え……あ、はい。そうです……その…ハーレイ先生の指示で場所を……」

 

 へー! あの先生、ハーレイって名前なんだ。今まではっきりしてなかったからな。ちゃんと覚えとこ。

 

 会話の合間に聞こえてきた名前に、一人得心する。

 

「ふーん、そう……確かに俺たち、場所取り過ぎか……悪かったな、全体的にもちっと端に寄らせるからさ、それで手打ちにしてくんねーか?」

 

「ば、場所を空けてくれるなら、それで……」

 

 先生と男子生徒の会話も丸く収まりかけ、見守っていた生徒たちが安堵の息をついた、その時。

 

「何をしている、クライス! さっさと場所を取っておけと言ったろう! まだ空かないのか!?」

 

 そんな怒鳴り声が聞こえた。見れば、こちらに向かってハーゲイ、じゃなかったハーレイ先生が足早に歩いてくる。

 

「あ、ユーレイ先輩、ちーっす」

 

「ハーレイだ! ハーレイ! ユーレイでもハーレムでもないッ! ハーレイ=アストレイだッ! グレン=レーダス、貴様、何度人の名前を間違えれば気が済むのだ!? というか貴様ッ!私の名前を覚える気、全ッ然ないだろ!?」

 

 そんなにカッカしてると剥げますよ、と言いそうになるのを堪える。いや、もう既に    よそう。心が痛くなる。

 

 先生たちを見守る生徒たち。会話を聞いている感じ、グレン先生のことをハーレイ先生はとても嫌っているらしい。露骨に舌打ちなんかしている。教育者としてはどうなのかと思わずにはいられないが……先生も煽ったりしてるから何も言えない。

 

「まあ良い。それよりもグレン=レーダス。聞いたぞ、貴様は今回の競技祭、クラス全員を何らかの競技に出場させるつもりだとな?」

 

「え? ああ、うん、はい、まぁ、そうなっちゃったみたいですね……不本意ですけど

 

 おいこら、なんか聞こえたぞ。

 

「はっ! 戦う前から勝負を捨てたか? 負けた時の言い訳作りか? それとも私が指導するクラスに恐れをなしたか?」

 

「いやあ、そうかも知れませんねー、なにせ、先輩のとこは学年でも優秀な奴の集まりですからねー、いやー、もう優勝は先輩のとこで決まりかもしれないっすねー、あー、女王陛下の勲章羨ましいなー」

 

 へらへらした態度であしらう先生に苛立ったのか、ギリギリと歯噛みするハーレイ先生。

 

「ちっ……腑抜けが。まあいい。さっさと練習場所を空けろ」

 

「はいはい、今すぐ。えーと…あの木の辺りまで空ければ充分(じゅうぶん)ですかね?」

 

「何を言っている? お前たち二組のクラスは全員、とっとと中庭から出ていけと言っているんだ」

 

 ………マジかよ。ちょっと横暴過ぎだろ。

 

 ハーレイ先生の先程からの先生に対する侮辱行為に、正当性のない練習場所の主張は目に余る。

 

 同じことを思ったのか、先生が渋面を手で押さえた。

 

「先輩……いくらなんでもそりゃー通らんでしょ…横暴が過ぎますよ」

 

「何が横暴なものか」

 

 フン、と鼻を鳴らし、ハーレイ先生は吐き捨てるように言い放った。

 

「本当にやる気があるのなら、練習場所も公平に分けてやってもいいだろう。だが、貴様には全くやる気が感じられん。なにしろ……そのような成績下位者を使うくらいだからな!」

 

   っ!?」

 

「勝つ気のないクラスが、雑魚同士で群れ集まって場所を占領するなど、迷惑千万だ! わかったならとっとと失せろ!」

 

 その言葉を聞いたクラスメイトたちが、シュンとした様子で俯いた。皆の表情は暗い。

 

「あぁ……ったく、もう、今日は本当に次から次へと思い出したくねーことを……あー、やだやだ……」

 

 いきなり、先生が何やら小さな声でブツブツと呟き、頭を乱暴に掻いた。競技祭になにか嫌な思い出でもあるのだろうか?

 

 困惑する周囲の生徒たちをよそに、先生は、いきなりハーレイ先生の鼻先へと、びしりと指を突きつけた。

 

「お言葉ですがね、先輩。うちのクラス、これはこれで最強の布陣なんですよ。さっきから聞いてりゃ、やる気がないだの勝負を捨てただのと……ふっ、馬鹿言わんといてくれませんかね? 無論、俺達は狙ってますよ…優勝をね。まあ、せいぜいウチに寝首を掻かれないことっすね」

 

 不敵な笑みを浮かべた先生の、謎の威圧感に気圧されたのか、ハーレイ先生が脂汗を浮かべた。

 

「く、口ではなんとでも言えるだろう。事実、貴様のクラスは優秀な生徒たちを遊ばせているではないか……っ!」

 

「ほう? なるほど……つまり先輩は、あくまでウチの布陣を伊達や酔狂の(たぐい)だとおっしゃりたいわけですね……?」

 

 やたらとお口が強気なグレン先生が、グイグイとハーレイ先生を押していく。大丈夫なのか、アレ…? 自滅とかしないだろうか?

 

 俺の心配をよそに、会話は続く。

 

「成績上位者を使い回す? ……くっくっく……どうやら先輩だけでなく、学院の講師共は皆、ボンクラの無能だったようだ……まーさかまさか、そんな布陣で勝てると思っていらっしゃったとは……ふはーっはっはっは! 笑止!」

 

 ひとしきり笑った先生は、真剣な声と表情で、堂々と宣言した。

 

「いいっすか、先輩。俺たちは全員で勝ちに行く。全員でな。誰が足手まといだとか、そんなもんは関係ない。チームの一体感こそが、何よりも最強の戦術なんですよ。わかりませんかね?」

 

「そっ…そんな  

 

 ハーレイ先生が何かを言いかけようとした、その刹那。

 

「給料三ヶ月分だ」

 

「な、何ぃ……ッ!?」

 

「俺のクラスが優勝する、に俺の給料三ヶ月分だ」

 

 ……マジかよ、先生。いや、最高にカッコいいけど、マジかよ……。

 

 その宣言に、その場にいた全員がどよめいた。二組の生徒たちが、ポカンとした顔でグレン先生を見つめている。

 

「し、正気か、貴様……!?」

 

「俺は正気ですよ、どうします? 先輩…。この賭け、乗りますか? よほど、自信がないと乗れないでしょうけどねぇ?」

 

 煽るような挑発だが、これを言えばハーレイ先生が逃げられなくなるとグレン先生もわかっているのだろう。顔が本気だ。

 

「ぐっ……良いだろう! 私も、私のクラスが優勝する、に給料三ヶ月分だ!」

 

 賭けは成立。

 

「ふっ……良い度胸ですね、流石は先輩。気に入りましたよ……いやあ、ごっつあんです」

 

「ちぃっ……この私に楯突いたこと、必ず後悔させてやるぞ……ッ!」

 

 そんな二人をハラハラと見守る生徒たち。

 

「おのれ、グレン=レーダス……貴様という男は……ッ! 魔術師としての誇りも挟持もない、たかが第三階梯(トレデ)の三流魔術師がこの私を愚弄するなど……ッ!! それに   

 

 ハーレイ先生の視線が、不意に俺へと向けられた。

 

「崇高な魔術を扱うに値しない(やから)を、何故未だにこの(ほま)れ高き学院で学ばせている? 魔術はそう簡単に誰彼構わずにひけらかす様なものではないぞ!」

 

 そう強く言い放ったハーレイ先生。

 

「…ええ、確かにそうでしょうね」

 

 静かに俺はそう返した。ハーレイ先生に納得できる部分も、確かにあるからなあ。

 

「ふん…珍しく物分りのいい奴だ。わかったなら  

 

「ただ、俺には、貴方の方が珍しく見えます」

 

 遮るように発言した俺に、少し苛立ったような表情を浮かべかけたハーレイ先生は、俺の珍しいという言葉に、打って変わって笑みを浮かべた。

 

「それはそうだろう。何せこの私は   

 

    思いやりに欠ける」

 

「……は?」

 

 俺が無造作に放った言葉に、唖然とした顔で固まるハーレイ先生と、周囲の生徒たち。あのグレン先生ですら、動きを止めて、唖然とした顔で俺を見ている。

 

 ちょっと皆、そんなに見ないでくれ。緊張しちゃうから。

 

「魔術の存在を知らない、俺たち()()()()()()()の中でも、そうそうお目にかかれるものじゃない。貴方の様な人は」

 

「なっ! ど、どういう意味だ!?」

 

「言葉通りの意味ですよ、ハーレイ先生。貴方は、思いやりに欠けている。生徒たちを戦力や駒としか見ていない」

 

 魔術師からすれば、そっちの考え方の方が正しいんだろうけど。

 

「別に貴方が誰をどう見ていようが勝手ですが、俺たち生徒は人間です。俺達にだって感情があります。魔術師だろうが魔術師でなかろうが、()()は変わりません」

 

 気づけば、周囲は静まり返っている。

 

「教育者であるのなら、もっと生徒のことを考えて下さい。生徒は、良くも悪くも、手本となる教育者を見て成長するんですから」

 

 最後にそう締めくくり、俺は「生意気言ってすみません」とハーレイ先生に頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 




 
それはそうと、皆さんはサンタさんに何を頼みましたか? 私の友人は、こんな物をサンタさんに頼んでいました。

友人「私、プレゼントには恋人が欲しいな! サンタさんならきっと持って来てくれるよね!」

友よ……。
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