ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 短めです。
 いやあああああ誰か休みをくれえええええ


エンカウント

 

 

 

 

 

 

 

 隠れることに徹した方がいいな。

 

 しゃがみ込み、辺りの草や地面を一通り観察した俺は、そう結論付けた。

 

 情報収集もしたいが、下手に動いて見つかるのは怖い。

 

 逃げるにしても、こんなに草が生い茂っている場所では獣化しているのならまだしも、人の姿ではまともに走れない。

 

 草を燃やすことも思い浮かんだが、鬼ゴーレムや他の選手達がどこに潜んでいるかも分からないし、この草は結構な水分を含んでいる。きっと思うようには燃えないだろう。変に鬼ゴーレムの注意を引いて捕まるのも嫌だし。

 

 

 

 周囲の音に耳を傾ける。

 

 聞こえてくるのは、そよそよと風に揺れる草の音だけ。

 

 競技前まではやかましいくらいに聞こえていた実況の声も観客席の声も、いつの間にか聞こえなくなっている。上を見ると、透明な膜のようなものが。きっと競技の邪魔にならないように、何かの魔術でフィールドには声が届かない様にしているのだろう。

 

「………」

 

 他の選手達はどうしているだろうか。移動か、待機か、もしくは   

 

「あっははははは!!」

 

 考え事をしていたその時、誰かのやたら馬鹿でかい笑い声が耳に飛び込んできた。

 

 いや誰だよ!? 馬鹿じゃねぇの!? 馬鹿じゃねえの!?

 

 語彙力ゼロな叫びを脳内で上げつつ、声が聞こえた方向  上を見る。

 

 フィールドの上空を、一人の選手が飛んでいた。

 

「鬼ごっこ? ハッ! そんなの、この僕にかかれば余裕だよね!!」

 

 浮遊魔術を使ったのだろう。地上から、大体10メートル程の高さをふわふわと飛んでいる。どうやら頭もぶっ飛んでいるらしかった。

 

 触らぬ神に祟りなし。

 

 俺は可及的速やかにぶっ飛び野郎から離れるべく、なるべく音を立てないように注意しながら移動を開始した。

 

 鬼ゴーレムが音に反応するのであれば、ぶっ飛び野郎のすんばらしい活躍(皮肉)によって、間違いなくここへ集まって来るだろう。鬼ゴーレムが何体いるのかも分かっていないこの状況でそれはマズイ。とんでもなくマズイ。

 

 後方では、楽しげに高度を上げたり下げたりしているぶっ飛び野郎の姿が。その反応から、今のところは鬼ゴーレムの姿は無いらしい。

 

「〜っ!!」

 

   あのなあ、アンタは飛んでるからいいかもしれないけど、こちとら徒歩なんだよ! 飛んでるアンタと違って、素早く動けねぇんだよ!

 

 俺は鬼ゴーレムが来ない事を強くつよく祈った。

 

 天にまします我らが神よ! もしくは偉大なるご先祖様! 誰でもいいからお助けぇ!!

 

 ちなみに我らが一族ベスティアでは、一族のご先祖様に祈ることが多かったりする。まあそれは今はさておいて。

 

 

 果たして。

 

 

 

 

「……ん? んぎゃあっ!?」

 

 

 

 

 俺の願いは、届かなかった。

 

 聞こえてきた悲鳴に、思わず振り返ると、そこには空中でぶっ飛び野郎を鷲掴みにしている鬼ゴーレムの姿が。

 

「なんてこった、こんなところで僕は   

 

 最後まで騒がしく転移されていったぶっ飛び野郎を見送り、鬼ゴーレムは空中で着地体勢を取った。

 

 なんてこった、どうやらあのゴーレムには跳躍機能があるらしい。

 

 ズシンッ!

 

 最悪な事に、そいつは俺の正面に着地しやがりました。マジかよ。あと一歩前に出ていたらぺちゃんこになっていたかもしれない。

 

 着地の衝撃でグラグラと地面が揺れ、まともに立てない。もうもうと立ち込める土煙の中で、紅い一つ目が妖しく輝いた。

 

 まずい。

 

 びゅお! と土煙を切り裂いて突き出された鬼ゴーレムの腕が、視界いっぱいに広がった。

 

 

 

      魔術じゃ間に合わない。

 

 

 

   カチャリ、と。

 

 一瞬、硬直した俺の耳に小さな音が届いた。

 

 咄嗟に右手が動いていた。流れる様に、左腰のレイピアを握る。

 

「ぬああッ!」

 

 抜刀の勢いを乗せたまま、レイピアの腹を滑らせる様にして何とか腕の軌道を逸らす。ギャリィンン、と不協和音を奏でながら、鬼ゴーレムの腕は俺の顔から数センチ離れたところを通り過ぎた。

 

「あっぶねえ!」

 

 すたんっ! とバックステップを踏んで鬼ゴーレムから距離を取り、走る。

 

 レイピアは刺突武器。華麗に相手を穿ち、華麗に攻撃を避けるのが主流の剣だ。その刀身は細く、受け流しには向いていない。そのうえこの剣は実戦用ではなく、儀式用だ。無理に受け流したせいで、刀身に小さなヒビが入ってしまった。

 

    ごめん。ありがとう。

 

 納刀したレイピアの柄頭を撫でて、俺はチラリと後ろを振り返った。

 

 鬼ゴーレムは、草を放射線状に踏み倒しながら追いかけてくる。速い。

 

「《雷精の紫電よ》!!」

 

 最近習得した【ショック・ボルト】の一節詠唱で、鬼ゴーレムの一つ目を狙う。が、命中はしたものの、効果はあまり無さそうだった。

 

「く  !」

 

 とにかく差を広げて隠れるつもりだったが、草が邪魔で思う様に走れない。少しずつ縮まっていく距離に、じわじわと焦りが芽生え始める。

 

 こんにゃろーめ! このまま捕まってたまるか!

 

 前に向き直り、必死に足を動かし続ける。しかし。

 

   がくん、と。

 

 足を何かに引っ張られるような感覚。俺は体制を崩し、受け身を取ることも出来ずにその場に倒れ込んだ。

 

「がっ!!」

 

 全力疾走からのいきなりの転倒に、身体に衝撃が走る。痛みを堪えて素早く足元を見ると、他の草で隠れて見にくいが、そこには何本か束ねられ、草同士を結んだもの  草結びが。

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"(誰だよおおおお)!?!?」

 

 明らかに人が結んだであろう草結びに、思わず怒りの咆哮を上げる俺。

 

 立ち上がろうとするが、焦っている時ほど、こういう物は外れない。後ろからは鬼ゴーレムが迫る。

 

 万事休すか。

 

 捕まる事を覚悟した俺の目の前で、鬼ゴーレムはその腕を伸ばし   転んだ。

 

「……!?」

 

 見れば、俺の周囲には似たような草結びが何本か仕掛けられていた。

 

「……えーと?」

 

「ごがが…」

 

 鬼ゴーレムはどこか悲しげな音を立てながら、両腕を俺に伸ばしてわちゃわちゃさせている。しかし、俺までは1メートル程の距離があるので、届きそうにない。

 

 とにかく、これはチャンスだ。

 

 足に絡みついた草を強引に引き千切り、俺は大急ぎでその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

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