最近はインフルエンザが流行っているので皆様お気を付けて。
俺が転生してから10年が経った。つまり、あの地獄のトレーニングメニューを5年も耐え切ったと言う事だ。よく死ななかったな俺。
あれから毎日トレーニングを繰り返し、何かと自分が強くなったのがわかる。俺にも戦闘民族の血が流れているからか、怪我の治りも速いし、視力も聴力も前世の俺とは比べ物にならないぐらい優秀だ。と言ってもまだ、集落の皆に比べたらペーペーだけどな。それでも今は集落から出て森に行く許可を
俺は元からアウトドア派だったので、これはかなり嬉しい。嬉しすぎて、初めて森を一人で探検したときは危うく
そんな事を考えてついニヤニヤしてしまう。
ここ最近は、夕方から夜にかけて森で狩りばかりしている。武器の扱いも上達したので
集落には小さな子どももいるので、狩りに出れない人達のためにも、なるべく大きな獲物を持ち帰る必要がある。重いけど、ちびっ子達の為だ!頑張れ、俺!
今の俺の格好は薄いチェストアーマーを、動きやすい長袖の服の上にかさね、その上からマントのような
武器は弓と矢を数十本と、投げナイフ、剣を持ってきている。まぁ剣と言っても大人からすれば短剣くらいの大きさだ。剣と投げナイフはベルトに付け、矢は
「さて、獲物はどこかな?」
そうつぶやきながら俺は獲物を探すため近くの木に登った。木登りももはや大得意だ。鍛えた腕力に任せ、するすると木の
あの町は、父さんと何度か行ったことがある。町自体は小さいが、自然が豊かなので仕事の息抜きなどで都会から観光に来る人が多いらしい。
こっちの世界の仕事もいろいろ大変そうだと町を見ながらぼんやり考えていると、ガサガサという草をかき分ける音とともに何かの足音が聞こえてきた。足音は何かを追いかけているかのように、結構なスピードで近づいてくる。俺は木を半ばまで降り、ちょうどいい太さの枝の上で弓を構えた。地面からは6メートル程の高さだ。
耳を澄まし、足音を聞く。
これは…鹿とかじゃないな。足音的に二足歩行…かな。そんな動物この辺りにいたっけ?
疑問に思いながらも、いつでも矢を放てるように弓を引き絞り、そのまま待機していると、草むらから飛び出してきた兎と、それを追いかけて来たらしい一人の女の子が俺の視界に入った。女の子は、兎を触りたいのか、俺の視線の先で、ジリジリと兎に近づいている。
……あの子、集落の子…とかではないな。集落には銀髪の女の子なんていないし…迷い込んで来ちゃったのか?
そう思いながらも、俺は女の子の綺麗な銀髪に少しの間見惚れていた。って危なっ! 弓引きっぱなしだったわ。
慌てて構えを解き、矢を矢筒にしまう。
女の子からあと1歩で触れるほどの距離にいた兎は、ジリジリと迫ってくる女の子から素早く離れ、そのまま何処かへ行ってしまった。
「あっ!」
女の子は残念そうな声を上げた。兎が消えた方向を名残惜しげに見つめている。
とっくに夕日も沈み、かなり暗い森は女の子からすれば恐怖でしか無いだろう。俺は構えていた弓を仕舞い、女の子を怖がらせない様にゆっくりと木を降りた。あまり夜目が効かないのか、女の子は俺が立てた音に、ビクっと反応した。
「だ、誰!?」
女の子が怯えた声を出した。俺は彼女を
俺を見た女の子は、警戒心とほんの少しの怯えを
「えっと……君、迷子?」
ヤバイ。俺ってこんなにコミュ力無かったっけ?
自分のコミュ二ケーション能力に軽く絶望しそうになるが、今は女の子が優先だ。
「違うわ!たまたまここに来ただけよ!!貴方だって迷子でしょ!」
いや、それを迷子って言うんだよ。そう言い返したくなるのを堪える。
「俺はこの森に住んでるから、道がわかるし迷子じゃないよ」
ツッコミたい衝動をなんとか堪えた俺は、頑固そうな女の子に少し意地悪な質問を返すことにした。
「君は、自分の家まで帰れる?」
「………」
黙り込んだ女の子。わかりやすいなぁ。
「えっと…君は町の子だろ?送っていこうか?」
「!…貴方、道分かるの?」
「まぁ、一応は」
女の子は
「ついてきて」
そう言って俺はゆっくりと町に向かって歩き出す。やむなく女の子も俺についてくる。お互いに初対面だったのもあり、会話は最低限だ。
「そこ、
「あ、うん」
「あ、木の根っこがあるから
「わ、わかった」
俺は女の子がちゃんとついてきているか確認しつつ、女の子が転んだりしないように大きな石や枝をどかしながら歩いた。時折木に登り、町への方角と距離を確かめた。
女の子が疲れた素振りを見せると少し休み、持ってきていた水を飲ませる。それを繰り返しているうちに、女の子の俺への警戒心は、徐々に薄れている様だった。
だいぶ打ち解けたかな…?
そう思っていた時、近くの木から大きな鳥が羽音を響かせて飛び立った。
「きゃっ!?」
それに驚いた女の子が足元の落ち葉に足を取られ、よろめいた。
「あ、ありがと」
「…どういたしまして」
思わぬお礼に一瞬言葉が遅れる。そんな俺の顔を覗き込んだ女の子が小さく笑った。
「ふふっ、変な顔」
「そ、そう?」
顔に手をやる俺を見て、女の子は再び笑い声を上げた。
そうこうするうちに、町の門に着いた。女の子はだいぶ疲れていたが、町が見えると元気を取り戻したようだった。町では女の子の両親だろう、若い夫婦が女の子を探しまわっていた。俺は少し笑いながら女の子の背中を軽く押した。
「ほら、探されてるぞ」
「う、うん」
女の子は俺に何かを言おうとした様だったが、先に夫婦に見つかり、抱き締められていた。俺といるときは我慢していたのだろう、安心したのかそのまま両親にしがみついて泣き始めた。俺はそれを見届けた後、自分の家に帰るべく森へ引き返した。
〜〜〜
あれ?あの男の子はどこにいったんだろう?
お父様とお母様に抱き締められ、泣いてしまった後、お礼を言おうと、森から連れ出してくれた黒髪の男の子を探すが、彼の姿が見当たらない。そういえば彼は森に住んでいると言っていた。もう帰ってしまったのだろうか?
「ちゃんとお礼が言いたかったな…」
今思えば、お互いに名前も名乗っていない。この町には旅行で来ていたので、明日には帰らないといけない。
せめて名前ぐらい聞いておけば良かった…。彼とは、会話らしい会話は殆どしなかったけれど、握った手の暖かさは今も覚えている。
またいつか会えたら、その時はちゃんと、助けてもらったお礼を言おう。
私、システィーナ=フィーベルは、そう思った。
ヒロインは悩んだ結果システィーナにしようと思います。ルミアは原作10巻を読んでからはグレンとくっつけてあげたいなと思ったので。