ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

3 / 41
 第三話です。やっとここまで来ました。小説書くのって凄く大変ですね!小説家の方々を尊敬します!
 
 最近はインフルエンザが流行っているので皆様お気を付けて。


出会い

 

 

 

 

 俺が転生してから10年が経った。つまり、あの地獄のトレーニングメニューを5年も耐え切ったと言う事だ。よく死ななかったな俺。

 

 あれから毎日トレーニングを繰り返し、何かと自分が強くなったのがわかる。俺にも戦闘民族の血が流れているからか、怪我の治りも速いし、視力も聴力も前世の俺とは比べ物にならないぐらい優秀だ。と言ってもまだ、集落の皆に比べたらペーペーだけどな。それでも今は集落から出て森に行く許可を(もら)った。

 

 俺は元からアウトドア派だったので、これはかなり嬉しい。嬉しすぎて、初めて森を一人で探検したときは危うく遭難(そうなん)しそうになったのは秘密だ。折角(せっかく)だからヘンゼルとグレーテルを試せば良かったかな?まあ、今はもう迷うことは無い。ここの森ははもはや俺の庭だと言ってもいいだろう。いぇい。

 

 そんな事を考えてついニヤニヤしてしまう。

 

 ここ最近は、夕方から夜にかけて森で狩りばかりしている。武器の扱いも上達したので獲物(えもの)は狩り放題だ。狩った獲物は集落の皆と分けて食べている。大抵は(うさぎ)や鹿、猪などだ。

 

 集落には小さな子どももいるので、狩りに出れない人達のためにも、なるべく大きな獲物を持ち帰る必要がある。重いけど、ちびっ子達の為だ!頑張れ、俺!

 

 今の俺の格好は薄いチェストアーマーを、動きやすい長袖の服の上にかさね、その上からマントのような外套(がいとう)羽織(はお)っている。ズボンも動きやすいゆったりとした物だ。手には指ぬきグローブを()めている。森の影に溶け込めるように全体的に黒っぽい色合いだ。

 

 武器は弓と矢を数十本と、投げナイフ、剣を持ってきている。まぁ剣と言っても大人からすれば短剣くらいの大きさだ。剣と投げナイフはベルトに付け、矢は矢筒(やづつ)に入れて腰に付けている。弓は矢筒に入らないので背負っている。

 

「さて、獲物はどこかな?」

 

 そうつぶやきながら俺は獲物を探すため近くの木に登った。木登りももはや大得意だ。鍛えた腕力に任せ、するすると木の(こずえ)まで登り、暗くなりかけた森を見渡す。かろうじて森を抜けた先にある小さな町が見えた。

 

 あの町は、父さんと何度か行ったことがある。町自体は小さいが、自然が豊かなので仕事の息抜きなどで都会から観光に来る人が多いらしい。

 

 こっちの世界の仕事もいろいろ大変そうだと町を見ながらぼんやり考えていると、ガサガサという草をかき分ける音とともに何かの足音が聞こえてきた。足音は何かを追いかけているかのように、結構なスピードで近づいてくる。俺は木を半ばまで降り、ちょうどいい太さの枝の上で弓を構えた。地面からは6メートル程の高さだ。

 

 耳を澄まし、足音を聞く。

 

 これは…鹿とかじゃないな。足音的に二足歩行…かな。そんな動物この辺りにいたっけ?

 

 疑問に思いながらも、いつでも矢を放てるように弓を引き絞り、そのまま待機していると、草むらから飛び出してきた兎と、それを追いかけて来たらしい一人の女の子が俺の視界に入った。女の子は、兎を触りたいのか、俺の視線の先で、ジリジリと兎に近づいている。

 

 ……あの子、集落の子…とかではないな。集落には銀髪の女の子なんていないし…迷い込んで来ちゃったのか?

 

 そう思いながらも、俺は女の子の綺麗な銀髪に少しの間見惚れていた。って危なっ! 弓引きっぱなしだったわ。

 

 慌てて構えを解き、矢を矢筒にしまう。

 

 女の子からあと1歩で触れるほどの距離にいた兎は、ジリジリと迫ってくる女の子から素早く離れ、そのまま何処かへ行ってしまった。

 

「あっ!」

  

 女の子は残念そうな声を上げた。兎が消えた方向を名残惜しげに見つめている。(しばら)くして、帰ろうとする素振りを見せたが、どうやら兎を追いかけるのに夢中で来た道を忘れてしまったらしい。不安げな表情で辺りを見渡している。

 

 とっくに夕日も沈み、かなり暗い森は女の子からすれば恐怖でしか無いだろう。俺は構えていた弓を仕舞い、女の子を怖がらせない様にゆっくりと木を降りた。あまり夜目が効かないのか、女の子は俺が立てた音に、ビクっと反応した。

 

「だ、誰!?」

 

 女の子が怯えた声を出した。俺は彼女を(おど)かさない様に、ゆっくりと近づいた。その時、雲に隠れていた月が俺を照らした。

 

 俺を見た女の子は、警戒心とほんの少しの怯えを(あら)わにした目で真っ直ぐに俺を(にら)みつける。俺はこんな時どんな言葉をかければ良いのか分からなかったが取りあえず話しかけてみた。

 

「えっと……君、迷子?」

 

 ヤバイ。俺ってこんなにコミュ力無かったっけ?

 

 自分のコミュ二ケーション能力に軽く絶望しそうになるが、今は女の子が優先だ。 

 

「違うわ!たまたまここに来ただけよ!!貴方だって迷子でしょ!」

 

 いや、それを迷子って言うんだよ。そう言い返したくなるのを堪える。

 

「俺はこの森に住んでるから、道がわかるし迷子じゃないよ」

 

 ツッコミたい衝動をなんとか堪えた俺は、頑固そうな女の子に少し意地悪な質問を返すことにした。

 

「君は、自分の家まで帰れる?」

 

「………」

 

 黙り込んだ女の子。わかりやすいなぁ。

 

「えっと…君は町の子だろ?送っていこうか?」

 

「!…貴方、道分かるの?」

 

「まぁ、一応は」

 

 女の子は(いぶか)しげに俺を見ている。ま、当たり前か。見知らぬ森の中で、自分と同い年ぐらいの武装した子どもがいたらそりゃ警戒するよな。でもこのままほっとくのもアレだし……。

 

「ついてきて」

 

 そう言って俺はゆっくりと町に向かって歩き出す。やむなく女の子も俺についてくる。お互いに初対面だったのもあり、会話は最低限だ。

 

「そこ、(くぼ)みがあるから気をつけて」

 

「あ、うん」

 

「あ、木の根っこがあるから(つまず)かないようにね」

 

「わ、わかった」

 

 俺は女の子がちゃんとついてきているか確認しつつ、女の子が転んだりしないように大きな石や枝をどかしながら歩いた。時折木に登り、町への方角と距離を確かめた。

 

 女の子が疲れた素振りを見せると少し休み、持ってきていた水を飲ませる。それを繰り返しているうちに、女の子の俺への警戒心は、徐々に薄れている様だった。

 

 だいぶ打ち解けたかな…?

 

 そう思っていた時、近くの木から大きな鳥が羽音を響かせて飛び立った。

 

「きゃっ!?」

 

 それに驚いた女の子が足元の落ち葉に足を取られ、よろめいた。

 

 咄嗟(とっさ)に女の子の手を(つか)み、転ばないように支える。女の子が体制を立て直した所で、サッと手を離す。手を握りっぱなしだと女の子も嫌だろうし。

 

「あ、ありがと」

 

「…どういたしまして」

 

 思わぬお礼に一瞬言葉が遅れる。そんな俺の顔を覗き込んだ女の子が小さく笑った。

 

「ふふっ、変な顔」

 

「そ、そう?」

 

 顔に手をやる俺を見て、女の子は再び笑い声を上げた。

 

 そうこうするうちに、町の門に着いた。女の子はだいぶ疲れていたが、町が見えると元気を取り戻したようだった。町では女の子の両親だろう、若い夫婦が女の子を探しまわっていた。俺は少し笑いながら女の子の背中を軽く押した。

 

「ほら、探されてるぞ」

 

「う、うん」

 

 女の子は俺に何かを言おうとした様だったが、先に夫婦に見つかり、抱き締められていた。俺といるときは我慢していたのだろう、安心したのかそのまま両親にしがみついて泣き始めた。俺はそれを見届けた後、自分の家に帰るべく森へ引き返した。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 あれ?あの男の子はどこにいったんだろう?

 

 お父様とお母様に抱き締められ、泣いてしまった後、お礼を言おうと、森から連れ出してくれた黒髪の男の子を探すが、彼の姿が見当たらない。そういえば彼は森に住んでいると言っていた。もう帰ってしまったのだろうか?

 

「ちゃんとお礼が言いたかったな…」

 

 今思えば、お互いに名前も名乗っていない。この町には旅行で来ていたので、明日には帰らないといけない。

 

 せめて名前ぐらい聞いておけば良かった…。彼とは、会話らしい会話は殆どしなかったけれど、握った手の暖かさは今も覚えている。

 

 またいつか会えたら、その時はちゃんと、助けてもらったお礼を言おう。

 

 私、システィーナ=フィーベルは、そう思った。

 

 

 

 

 




 ヒロインは悩んだ結果システィーナにしようと思います。ルミアは原作10巻を読んでからはグレンとくっつけてあげたいなと思ったので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。