ロクでなし魔術講師と戦闘民族   作:カステラ巻き

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 お気に入りが少しずつ増えてきている事がとても嬉しいです!ありがとうございます!!


 今回は主人公の一族の能力が少し解明されます。


第一章 魔術講師、着任
学院へ


 

 

 

 

 

 セリカさんによると、どうやら俺には魔術操作の感覚がずば抜けているそうだ。昨日獣化した際に俺が見せた炎の温度調節や、爆発させた時の威力調節で見抜いたらしい。

 

 

 俺達集落の戦士が使うそれぞれの属性は、魔術師が言う、いわゆる、仕組みが解明されていない「魔法」に分類されていて、獣化した時の俺達は周囲の大気に無限に満ちる「魔力」を何故か使用出来る…と、セリカさんは話してくれた。この事は他の人には秘密だ、とも。俺にはあまりピンとこない話だったが魔術師からしたらこれはかなり凄い事だそうだ。

 

 

 普通、魔術師たちは自分自身の魔力を使って魔術を起動しているので、当然魔力容量にも限界がある。それが俺達に限っては獣化している時限定で、一つの属性に限るが、魔力容量を気にせずにバンバン魔術攻撃が出来る。

 

 

 この説明を受けて、やっと事の重大さに気づいた俺は、もし獣化してしまったとしても炎を出さないようにしようと誓った。大事(おおごと)になっても困るしな。

 

 

 もし変身してしまっても、獣化だけなら誤魔化す方法は何個かあるそうだ。それでも安心は出来ない。極力獣化しないように心がけよう。

 

 

 あれから準備を済ませた俺は、次の日の昼頃、両親と話していた。話題は、家名についてだ。俺は生まれてから一度も自分の家名を聞いたことがないし、聞かなかったので未だに自分の家名を知らない。学院で自己紹介する時に、

 

 

「ウィリアスです。家名は知りません」

 

 

 なんて言ったらクラスで浮いてしまうこと間違いなしだろう。そうならないよう、俺は両親に訪ねた。

 

 

「なぁ、俺達家族の家名って何?」

 

「家名?無いぞそんなの」

 

 

 離れて話を聞いていたセリカさんが堪らず飲んでいた紅茶を噴き出しているのが見えたが、それどころじゃ無い。

 

 

 家名が……無い…?

 

 

 と、俺が硬直していると、母さんが

 

 

「ほら貴方、ちゃんと説明しなくちゃ駄目じゃない」

 

 

 そう言い、俺に向き直り説明してくれた。

 

 

「えっとね、私達と集落の皆には家名は無いの。その代わりに、一族としての名前があって、私達はその一族名を名前の後に名乗る事になるわ」

 

 

 どうやらクラスで浮く事はなさそうだ。心底安心しつつ、気になる名前を聞いてみる。

 

 

「へぇ〜。で、俺達の一族名は?」

 

 

 母さんは答えた。

 

 

「私達の一族名は、ベスティア。だから、貴方が名乗るときの名前は、ウィリアス=ベスティアになるわね」

 

 

 ベスティア。 その名前は初めて聞いた筈なのに、俺の胸にすとんと収まった。

 

 

「ちなみに、誰かと結婚して、家名が付いた場合は、家名の後に一族名を付ける事になるわ。まぁ、大体は集落の誰かと結婚する事が多いから、皆家名が無いの」

 

 

 なるほど、仮に俺が集落の人以外の誰かと結婚した場合、ウィリアス=なんちゃら=ベスティアになるのか。…名前が長いってだけで格好良く感じるのって俺だけかな?

 

 

 名前を聞いていたら、出発時間になった為、集落の皆に出発前の挨拶をした。セリカさんは気を利かせて集落の出口で待ってくれている。俺は一人ひとりにこれまでの感謝の気持ちを伝えた。

 

 

 やがて出発の時間になり、俺は父さんと母さんに向き合った。伝えたいことは沢山あったが一言にまとめた。

 

 

「行ってくる!」

 

「おう!…いいかウィル、虐められたらちゃんと俺達に伝えるんだぞ?それと、彼女が出来たらちゃんと真っ先に母さんに教えなさい。いいな?あと…」

 

「ほら貴方ったら…行ってらっしゃい、ウィリー!」

 

 

 かなり心配げな父さんとしっかりした母さんの声に見送られて、俺は集落をでた。…隣でセリカさんがニヤニヤしながら俺に、ハンカチを差し出しながら言ってくる。

 

 

「ほら、涙は拭かなくて良いのか?ん〜?」

 

「いや、1ミリも涙なんて出てないですけどね」

 

 

 ハンカチを押し返しながらそう言い返す。…実際危なかった……いや、泣いてないぞ!!

 

 

「…ところで、ここからその…フェジテ?って所はどのくらいかかりますか?」

 

「馬車に乗り継いで…ざっと1ヶ月かな」

 

「遠っ!!」

 

 

 今の俺の格好は旅装束に大きなリュックサックだ。そして金属製の武器もかなり持ってきた為、これで一ヶ月はちょっとキツイ。俺の顔と荷物を見て、セリカさんは言った。

 

 

「安心しろ、あくまでも普通に行けば、だ」

 

「ってことはなんか簡単に行く方法があるんですか?」

 

 

 俺がそう聞くと、セリカさんはニヤリと笑い、聞いてきた。

 

 

「お前、魔術を見た事があるか?」

 

「何ですか突然…いや、無いですけど…」

 

「お前はラッキーだな。なんせ、初めて見る魔術がこの私の魔術なのだから!」

 

「え…セリカさんってもしかして凄い魔術師だったりするんですか?」

 

「まあな、これでも私はお前が通う学院の教授を務めているんだ」

 

 

 え、セリカさんが教授…?その学院大丈夫か?

 

 

 そう考え、少し不安になった俺を尻目にセリカさんは足元の地面に何かを物凄いスピードで書き始めた。魔術に関してはまだぼんやりとしか説明を受けていないが、それでもこれが凄そうなのだけは解る。何かを書き終えたセリカさんは、その陣?の中心に立った。そして手招きしてくる。

 

 

「私に掴まってろ」

 

「は、はい」

 

 

 緊張しつつ、セリカさんの肩を掴む。すると、まばゆい光が辺りを包み込んだ。思わず目を瞑る。次に目を開けたとき、俺の視界に入って来たのは何処かの森だった。近くに街の門が見える。

 

 

「よし、到着だ。あの門をくぐり抜ければ、そこはもうフェジテだ」

 

「……おお!ほんとに瞬間移動した!!」

 

 

 感動していると、セリカさんが言った。

 

 

「悪いが、私はこれからやる事があるからここまでだ。まぁ、後は真っ直ぐに進めばいいから道案内は要らないよな?」

 

「はい、多分大丈夫です」

 

「お前の家は地図に書いてるからそこに行け。じゃあな、また明日」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

 

 セリカさんは俺に地図を渡すと何処かへ瞬間移動していった。俺は地図を片手にフェジテに向けて歩き出した。

 

 

 街に入ると、まず俺は人の多さに驚いた。都市だからか店も多く、色んな物を売っている様だった。取り敢えず俺は地図を見ながらこれから過ごす事になる家を探した。

 

 

 幸い、家はすぐに発見した。思ったより遥かに大きい。おまけに庭まである。ひとまず俺は家に荷物を運びこんだ。家は二階建てで、部屋が多い。二階に二部屋、一階に四部屋あり、なんと地下室まである。とりあえず二階の部屋の一つを寝室にし、地下室を武器庫にした。あとの部屋は追い追い埋めていこうと思う。

 

 

 ちなみに家賃は両親からの仕送りで払うことになっている。「傭兵の仕事で貯めた金があるから大丈夫」と断ろうとしたが、「勉学に集中して欲しいから」と押し切られてしまった。まぁ、両親は豪華な暮らしをしているわけでは無いが、父さんも傭兵の仕事をしているので金は沢山あるのだろう。有難く仕送りを受け取ることにした。

 

 

 荷解きを終えた俺は、街を散歩する事にした。明日から学生として過ごす事になるので、それまでに街の様子を見ておく事にしたのだ。

 

 

 楽な格好に着替え、俺は家を出た。もちろん家の戸締まりはキッチリと確認してある。

 

 

 特に目的も無いまま街をぶらついていると、色々な物が目に入ってくる。花崗岩(かこうがん)で綺麗に舗装(ほそう)された道路。俺の知らない食べ物や飲み物、初めて見る道具。人で賑わう商店街。全てが森で暮らしてきた俺にとっては新鮮に感じられた。

 

 

「俺、今日からここで暮らすんだなぁ」

 

 

 と感慨深く呟いたその時、俺の腹がなった。街の柱時計を見やると、いつの間にか夕方だった。結構な時間外をぶらついていたらしい。

 

 

 どこへ行っても正確な腹時計に苦笑しつつ、俺は帰路についた。その日の夕飯は商店街で買ってきた肉を加えた野菜シチューにした。美味しかった。

 

 

 次の日、(あらかじ)め家に届けられていたアルザーノ帝国魔術学院の制服に着替え、俺は家をかなり早めに出た。セリカさんから、「早めに来いよ」と言われていたからだ。昨日学院までの道も通ったので迷うことは無い。

 

 

 あっと言う間に学院に着いた。そのまま正門に向かうと、正門の側にある建物からこの学院の守衛らしき人が来た。

 

 

「おはよう!君が今日からここに編入して来る子だね?話は聞いてるよ。学院長室まで案内してあげよう。ついておいで」

 

 

 そう言うと守衛さんは俺を手招きした。そしてそのまま歩き始める。俺は慌てて守衛さんの後を追った。

 

 

 守衛さんの案内のお陰で無事学院長室に到着する事が出来た。

 

 

「親切にありがとうございました」

 

 

 俺が頭を下げてそう言うと、守衛さんは、

 

 

「ははは、どういたしまして。学院に慣れるまで大変かもしれないけど頑張って!」

 

 

 と、言い残して去っていった。親切でいい人だったな。

 

 

 さて… 俺は自分の前にある扉に手をかけた。少し緊張している。呼吸を整えると、コンコン、とノックした。

 

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

 

 扉を開いた俺は奥の机に腰かけている初老のおじさんに名乗った。

 

 

「初めまして、俺はウィリアス=ベスティアです。今日からよろしくお願いします」

 

「ほっほっほ、セリカ君が言っていた通り、礼儀正しい子じゃの」

 

「だろ?流石はあの二人の息子だ」

 

 

 突然後ろから聞こえてきた声に思わず俺は大声を上げた。

 

 

「おわぁ!!」

 

「相変わらずお転婆(てんば)じゃのう、セリカ君」

 

「まあな、イタズラは私の生きがいでもある。それより、リック学院長」

 

 

 リック学院長と呼ばれた初老のおじさんはセリカさんに「おお、そうじゃった」と言うと、俺を見て。

 

 

「改めて、入学おめでとう。ウィリアス=ベスティア君、そして、ようこそ、アルザーノ帝国魔術学院へ。君を歓迎するよ」

 

 

 ニカッと破顔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 主人公の一族名であるベスティアの意味は、スペイン語で獣(けもの)という意味です。
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