本編ですが、ウィリアスとシスティーナはお互いに会ったことを忘れています。その内思い出させたいと思います!
学院長はどうやら俺の能力を知っているらしい。何故かと言えば、一通り俺とセリカさん、学院長とで話をした後に学院長がこう言い出したからだ。
「ところで、ウィリアス君は、獣化すると何に変身するのかな?」
心なしかそわそわするような、期待する様なキラキラした表情でこちらを見つめてくるリック学院長。獣化しても良いのかと、セリカさんに視線で尋ねる。セリカさんは目で大丈夫だと伝えてきた。
許可を頂いた俺は、遠慮なく獣化する事にした。そもそも、獣化する時は魔力を使ったりしないので、感知される心配もないだろう。最初は獣化するのにも時間がかかっていたが今では一瞬で変身できる。
光が学院長室を照らした、と思った時にはもう、俺の姿は黒いライオンになっていた。
「おお!!」
学院長は俺の姿に感激したのかこちらにパタパタと走ってくる。そして、俺の立派な
「凄いな…これがかの有名な百獣の王、ライオンか…」
え……まさか見た事無いの?と動揺していると、セリカさんが教えてくれた。
「この大陸にはライオンが全くと言っていい程いないんだ。だから、実物はかなり珍しい」
そうだったのか…と思っていると、セリカさんが壁に掛けられている時計を見て、
「その姿をもう少し見ていたいのは解るが、もう獣化解いたほうがいいぞ。それに、もうすぐ授業も始まる。挨拶も終わったし教室へ行こうか」
そう言うが早いがさっさと学院長室を出て行こうとする。慌てて俺は獣化を解き、名残惜しそうなリック学院長に
コツコツコツ、と歩く音が静かな廊下に反響する。堂々とした足音と、少し遠慮しがちな足音。勿論、後者は俺の足音だ。今はホームルームの時間らしく、廊下には誰もいない。
今、俺達が向かっている教室は二年二組の教室だ。そこで俺はこれから過ごす事になる。正直言ってめちゃくちゃ不安だ。表情に出ていたのか、そんな俺に
「オイオイ、そんなに緊張すんなよ。百獣の王だろ、もっと堂々としてろ」
とニヤニヤしながら理不尽なアドバイス?らしき物をしてくる。
「いや、ここでそれは関係ないですよ。それに、緊張するのはしょうがないでしょう!だって俺、知り合いと言えば集落の皆か、傭兵仲間ぐらいしか居ないし…」
不満げにそう呟く。…大体、集落には同年代の友達なんていなかったし…
言い訳じみた事を考えているとセリカさんが笑いながら俺を見た。
「それだけペラペラ喋れるなら大丈夫だろ」
どうやら俺の緊張をほぐそうとしてくれたらしい。この人はこういう所があるから憎めない。そうこうしている間に教室に着いた。心の準備をする暇もなく、セリカさんがドアを開けた。
「え、ちょっとまっ…」
小声でセリカさんに声をかけると、セリカさんは一言「ついて来い」とだけ言い、教室に入っていった。やむなく俺も後を追う。
教室に入ると、俺は黒板の前に立つ。広めの教室の中には大体二十人程の生徒たちがいた。皆、珍しい物を見るかのように俺を見ている。セリカさんが俺を紹介し始めた。
「コイツは今日からこの学院に編入してくる事になった。魔術に関してはまだまだ知らない事が多いペーペーだから、色々と教えてやってくれ」
そこまで言うと、隣に立つ俺を小突いた。挨拶しろって事だな。……噛まないようにしないと。
「初めまして、ウィリアス=ベスティアです。今日からよろしくお願いします」
なんとか噛まずに名乗る事が出来た。挨拶の間、俺は教室の後ろにある壁を見つめていた。こういう場では、緊張しないように相手をジャガイモだと思うようにしているが、やっぱり少し緊張してしまう。煮っ転がしてやるぞおお!と脳内で叫んでいるとセリカさんの声が聞こえた。
「ウィリアス、後ろの空いている席に座るといい」
座る許可を得て安心しつつ、後ろの席に向かう。と、ふと机の一番前の列に座る一人のジャガイモ じゃなかった、女子生徒と目があった。その女子生徒は珍しい銀髪をしている。その髪を見て、何かを思い出しそうになったが、その子をずっと見ているわけにもいかない。
まぁ、気のせいだろ。そう思いながら空いている席に着いた。
「それと、このクラスの担任教師についてだが、新しい教師が見つかるまではもう
そう告げて、セリカさんは出ていった。途端に俺の周りに生徒たちが集まってくる。矢継ぎ早に投げかけられる質問に俺は戸惑いながらも、一つ一つなるべく丁寧に答えていった。
〜〜システィーナ〜〜
ヒューイ先生が突然仕事を辞めて一週間が経った。親友のルミアと共に学院に向かいながら私はため息をついた。
「ヒューイ先生なんで辞めちゃったんだろう?」
「しょうがないよ、先生にも都合があるし」
学院へと綺麗に舗装された道をトボトボと歩きながら、私は諦め悪く呟いた。
「ああ、ヒューイ先生の授業は分かりやすかったのになぁ」
「まあ、確かに残念だよね。分からない所もちゃんと丁寧に教えてくれるいい先生だったし…」
ルミアも少し残念そうだ。
現在、私達二年二組の担任教師だったヒューイ先生が辞めてからは他の先生方が授業を交代でしてくれている。新しい教師が見つかるまではこのままらしい。
ヒューイ先生みたいにいい先生が見つかるといいんだけど、と考えていると、ルミアが思い出したかのようにパチンと手を合わせた。
「それはそうと、今日は私達のクラスに編入生がくるらしいね!どんな人かなぁ?」
そう、今日は編入生がくるらしい。今の時期にこの学院に編入生が来るのはとても珍しく、クラスの皆は最近はもっぱらこの話題に夢中だった。かく言う私も少し気になっている。どんな人が来るのかな?
そうこうしている内に学院に着いた。階段を上がり、自分のクラスへと向かう。教室には、既に大半のクラスメイト達が集まり、騒いでいた。
「なあなあ、俺さっき編入生らしい男子を見たんだけどさ、かなりのイケメンだったぞ!」
「へぇ〜、君とは大違いだね、カッシュ」
「うっせーぞ!ギイブル!!」
「ちょっとそこ、今は仮にもホームルーム中でしょ。静かにしなさいよ!」
騒がしい男子を注意していると、廊下から微かな足音が聞こえてきた。途端に静まり返る教室。
やがて、教室のドアがいきおい良く開いた。そしてアルフォネア教授と一人の男子生徒が教室に入ってくる。
私は男子生徒を見た。黒いつんつんした髪に、綺麗な青い目、整った顔立ち。そして何より特徴的なのが、左の眉を切り裂くように縦に残る3センチ程の傷だった。
アルフォネア教授に紹介されている間、彼は緊張しているのか、教室の後ろの壁を見ている様だった。やがて、紹介が終わり、教授に小突かれた男子生徒が自己紹介を始める。
「初めまして、ウィリアス=ベスティアです。今日からよろしくお願いします」
男子らしい、少し低めの声が教室に響いた。それにしても、珍しい家名だ。この辺りの出身ではないのかもしれない。
自己紹介を終えた彼…ウィリアスは、教授に勧められた席に向かい歩き始めた。と、その時彼を見ていた私と偶然目があった。
あれ?
何故か、私を見た彼が少しだけ目を見開いた…ような気がしたが思い違いだろう。すぐに目をそらし、自分の席へと向かっていく。
その後、教授から担任教師の話を少しして、ホームルームは終わった。
教授が教室を出ていった途端に好奇心旺盛な男子たちが転入生 ウィリアスに質問を投げかけまくっている。いきなりの事で彼は戸惑っているようだ。
「こらー!いきなりそんなに質問したら困っちゃうでしょ!!」
私はそう言いながら、席を立った。
ちなみに、獣化した状態でも傷は共有なので、ライオンの左目付近にも傷があります。