プロローグ
我が家に妹がやってきたことを、いつも思い出す。
今から4年前の春、親父が再婚し 妹ができた。
初めて妹に会った時、妹は少し恥ずかしがっているように見えた。
「今日からお前の妹になる子だぞ」
「ほら、灯、お兄ちゃんに挨拶しなさい」
母親に促され、その女の子はおずおずと俺の前に出てきて、俯いたまま少し頰を赤らめ、俺に、小さな声で言った。
「はじめまして・・・お兄ちゃん」
その声は虫の音(ね)のような小さな声だったが、妖精のような透き通った声だった。
その姿はまるで夜空をとり巻く雲の隙間から顔をだ出し、静かに輝く小さな星のようだった。
これが 俺 紲星 拓斗 と 妹 紲星 灯 の、出会い。
そして新たな家族とともにまた平凡な日々を過ごそうとしていた
が、悲劇は その翌年に起きた。
夏休みも終わり2学期が始まって間もない休日、
俺が部活動が終わり家に帰ると、いつもはリビングにいる母親の姿は、その日はなかった。
部屋にでもいるのかと 一度自分の部屋に戻り、着替えたあと、帰ってきた事を報告しようと、母親と父親の居るであろう部屋に入るとそこにあったのは、【血まみれで横たわっている、両親の無残な『遺体』】だった。
近寄ってみると、まだかすかに、温かみがあった。
俺は直ぐに110番通報をした。
警察がここに到着するまでに、あかりを家中探した。だが、見つからず、あかりを見つける前に警察が到着した。
あかりの声が玄関から聞こえたのは、警察がきて10分くらいしてからだった。
友達の家に行っていたらしい。
しかし、あかりはすごく怯えていた。
俺はあかりに、2階にだけはいかないように言い、落ち着かせる事に必死になっていた。
警察が調べた結果、やはり両親は亡くなっていたそうだ。
警察からそう告げられた時、
あかりはこの時点でかなり困惑しながら動揺して泣き出していた。
俺はそれを見て、あかりを抱きよせた。
死因は刃物で殺害されたとの事。
詳しいことはその日には分からなく警官達はもう一度詳しい事を調査するため、一日中家で調査をしていた。
俺達は親戚の元で1日泊めてもらった。
あかりはずっと泣いていた。
俺はずっとあかりを抱き寄せ頭を撫でてやることしかできなかった。
すぐに犯人は見つかり、葬式も無事終わったところで、ひとつ、問題が生じた。
それは
俺達兄妹の今後についてだ。
叔父叔母の所(田舎)で過ごす、又は、
親戚の方々は1人ずつなら預かる事は出来るらしい。
だが、親戚に預かってもらう場合、俺達は離れ離れになってしまう。
ただ、何より嫌だったのが、この一年、ここに引っ越してようやく友達もでき、この街で慣れてきたあかりが、また友達がいなくなり、見ず知らずの街に行く事になってしまう事、それと1年かけてようやく打ち解けてきた、俺達の仲を失うことだ。
俺と親戚の大人たちの間で意見が食い違った。
しかし、俺が出した案で双方納得がいった。
それは、俺とあかりが二人暮らしをする事だ。
親戚の大人たちは最初は反対していた。
遺産がいつまで持つか分からないし、何かあった時はどうするのか、
と問いただされた。
「遺産、お金については自分には宛があります。それは、俺が、
アニメの声優の仕事をすることです。」
親父の友達にアニメ作家の人がおり、半年前 その人に、
「お前 高校生くらいになったら声優をやってみないか?」と言われていた。自覚はないが、どうやら俺の声にはひかるものがあるらしい。その時はその誘いを断ったが「気が向いたらこれに連絡しろ」と電話番号は教えて貰っていた。
それを聞いた親戚はその親父の友人 山田さんに連絡を取り、条件付きで俺達兄妹が二人暮しをする事を了承してくれた。
1つ目
必ず高校に進学し卒業する事。
2つ目
何かあったら必ず誰かに頼る事。
(内容によっては2人暮らしを中断 、俺達は叔父叔母の居る所で過ごす事になる。)
3つ目
必ず、その仕事を続ける事、及び、必ず成果を残す事。
俺はその条件を了承した。
しかし、ここであかりの口から意外な、いや、何となく予想は付いていた、ある一言が飛び出した。
「私も声優やりたい!」
あかりにも条件付きだが、それに了承してくれた。
1つ目 必ず高校に進学し卒業する事。
2つ目 その仕事をし年に必ず成果を残す事。
この二つを守ってくれれば良いとの事だった。
俺は部活を辞め、兄妹そろって声優業に専念した。
最初はボイストレーニングに通い、その約3年後。
俺が高一になる時にはアニメのモブから俺達のところに声優の仕事がくるようになり、
その声に何故か人気が出て、俺たち二人は、山田さんが担当することになった次回作【竜姫の使い】の主人公とヒロインの声優の仕事を頼まれた。