先輩と後輩がダベってるだけ   作:ハトスラ

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先輩と試験勉強※

 いつものバイト先の、いつもの休憩室。いつもの席で、私は机に突っ伏しながら泣き言を漏らした。

 

「二次関数とかマジムリなんですけどー!」

 

 いつも通り斜め向かいに腰掛けた先輩は一言、「ああそう」と言って、再び自分の手元に視線を戻すと、黙々と手を動かし続けている。

 先輩の手元には『数学Ⅱ』と印刷された教科書が置いてあるからして、彼がやってるのも数学ではあるらしい。

 

「うう……、高校の授業って、中学から急にレベル上がりすぎじゃないですかぁ?」

「……」

「これ、冗談抜きで赤点とか取りそうで怖いんですけど……」

「……」

「ねえ先輩」

「……」

「無視じないでぐだざいよお!!」

「……うるせえなあ」

 

 私の心からの叫びに、先輩はようやく手を止めて私の方へ向き直った。

 

「人が勉強してんのに、横から涙声でチャチャ入れてくるんじゃねえよ。集中できねえだろうが」

「だって、それは先輩が無視するから……」

「そもそも勉強中に声をかけてくんなって言ってるんだが?」

「今はバイト中で、その休憩中です! 塾とか学校じゃないんだから、リラックスしてお話しましょうよー!」

「……数分前まで数学やってた奴がなんか言ってる」

 

 先輩のツッコミに全力で目を逸らす。

 たしかに私も勉強はしてたけども、だってさっぱりわからないんだもん!! あとやっぱりバイトの休憩中は全然集中できないっていうのもある。

 

 と、このタイミングでドタドタガチャン! と騒がしい音を発てて休憩室の扉が開いた。

 

「おーっす、諸君! 元気にやっとる……、んん!? なになにどした? 勉強してんの!?」

「……お疲れさま。試験勉強?」

 

 騒々しく入ってきたのは、ふわふわしたショートカットが今日も魅力的なアキラさん。……と、その後ろから静かに入場した、今日もクールビューティーなユキちゃん先輩だった。

 

「お疲れさまです」

「お疲れさまでーす」

 

 アキラさんたちの方に向き直って挨拶を返すと、私は二人の疑問に答えるべく、教科書を二人にかざして見せた。

 

「そーなんです、試験勉強なんです。もうすぐ中間テストなので!」

「……早々に飽きた奴がなんか言ってる」

 

 先輩のボソりとしてる割に鋭いツッコミに気圧されつつ、私は笑顔を張り付けて、二人の反応を伺う。

 アキラさんとユキちゃん先輩は、私と先輩の教科書を見比べながら緩やかに破顔した。

 

「中間テストかー。懐かしいなー」

「……そういえば連休明けだったね。レイナちゃんは高校生になって初めての試験だし、緊張とかしない?」

 

 ああ、風間先輩とは違ってユキちゃん先輩のこの優しい言葉……!

 さっき盛大に無視されたことへの意趣返しじゃないけど、ユキちゃん先輩の優しさに触れちゃうと、やっぱり嫌味の一つも言いたくなっちゃうよ。

 

「そうなんです。中学と高校じゃ勝手が違うっていうか……。なのにですね、風間先輩ったら不安がる後輩をずっとガンスルーなんですよ」

「え、風間くん……」

「それはひどい」

「おいこら」

 

 ギロリ、と風間先輩が睨んでくるけど、いまはアキラさんとユキちゃん先輩がいるから怖くないですもんねー。

 すすす、と長身のユキちゃん先輩の影に隠れるように移動して、先輩の目を避けると、先輩は盛大なため息を吐いてから口を開いた。

 

「人が試験勉強してるのに、横でギャースカギャースカうるせえんですよ。試験範囲が難しいとか、正直俺の知ったことじゃねえし」

「風間くんひどーい!」

「いや、ヒドくはねえだろ。話きいてたかアンタ? 試験範囲難しいとか言われても俺じゃどうしようもねえって話を」

「だとしても! 可愛い後輩を慰めるくらいできるワケじゃん! 泣きついてきた後輩の、メンタルケアもせずに無視ってのは良くないと思うよ!」

「クソ……」

「クソとか言わない!」

「……」

 

 アキラさん強い。

 ものの数秒で風間先輩が反論できない感じに沈黙してしまった。や、苦虫100個くらい噛み潰した表情でこっち見てきてるけど、それは考えないようにしたい。うん。

 

「風間くんも数学の勉強?」

 

 気を取り直して、という感じでユキちゃん先輩が先輩に問いかける。先輩は苦い表情のまま「そっすね」とそっけない返事。

 お世辞にも礼儀正しいとは言えない風間先輩の態度に特に不快感をあらわすこともなく、ユキちゃん先輩は「そうなんだ」と先輩の隣に着席した。

 一方で、まだ頬を膨らませて不満顔のアキラさんは、ユキちゃん先輩の斜め向かい────風間先輩の正面に着席する。最後に、一時的に立ち上がっていた私がアキラさんの隣へと着席して、全員が休憩室の小さいテーブルに着いた。四人もの人間が同時にこの休憩室の机に並ぶのを、私は初めて見たかもしれない。

 

日向(ヒナタ)先輩たちは、このあと上がりじゃなかったですか? なんで座ってんです?」

「風間くんはホント、そういうとこだよね」

「はあ?」

「せっかくだから後輩と親睦を深めていきたい美人先輩の心遣いって奴を理解しなさいよ」

 

 アキラさんのその台詞に「美人先輩……」と呟いた風間先輩は、すぐ隣に向き直って、

 

「ユキ先輩。お心遣い、ありがとうございます」

 

 なんて頭を下げた。

 「ぷっ」とユキちゃん先輩が思わず吹き出し、先輩の正面に座ったアキラさんが不満そうな様子を隠しもせずに声を上げる。

 

「ちょっとぉ! ユキちゃんだけに言うってのはどーゆー了見かねっ!」

「いや、美人先輩の心遣いって言われたんで」

「つまりアレかー? アタシは美人じゃないと!?」

「すんません。俺、ウソ吐けないタイプなんすよ」

「ちくしょー! 風間くんのアホー! そりゃユキちゃんに比べたらアタシなんかミソッカスだけど、こっちだってそれなりにプライドあるんだからねー!!」

 

 二人のやりとりに、私は『どっちも強いなー』って感想しか浮かんでこなかった。

 アキラさんレベルの美人を前にして『美人と認めるのはユキちゃん先輩レベル』って言える風間先輩も、『ユキちゃん先輩には叶わないものの自分だって美人』って言えるアキラさんも、どっちも心臓強いっていうか、図太い。私にはちょっとマネできないな、って思う。

 あと最強なのは、二人が認めるパーフェクトクールビューティー・ユキちゃん先輩なのは言うまでもない。

 

「……まあまあアキラ、そのくらいにして。風間くんだって、本心から言ってるワケじゃあないでしょうし。あんまり騒ぐと、二人の勉強の邪魔になっちゃうだろうし」

 

 そのパーフェクトクールビューティーが、とても落ち着いた声音でアキラさんを宥めると、興奮気味だったアキラさんも少しだけ落ち着いたみたいだった。

 

「ユキちゃんは後輩に甘いんだよー」

 

 もっとも、こういう風に不満を隠しもしないあたりがとってもアキラさんらしい。そしてその台詞が、全然嫌味に聞こえないあたりも。

 

「そう? ……うん、そうかも。

 とにかく、二人とも邪魔してごめんなさい。出来るだけ静かにするから、勉強を続けて?」

「いや、もういいっすよ」

 

 穏やかな口調で言ったユキちゃん先輩にそう返して、先輩が私の方を見た。

 

「誰かさんのおかげで、とっくに集中切れてたし。まあ先輩からの心遣いも、受け取っとかにゃまずいだろうし」

「そんな私のせいみたいな言い方ー」

「範囲難しいだの、テストが不安だのギャーギャーわめいてた奴の台詞か」

 

 先輩の台詞に、思わずぶーたれてみたけれど、先輩はどこ吹く風。……っていうか、実際にわめいたのは事実だから強く否定できない。

 

「つーか、範囲難しいったって、一年最初のテストなんか中学のおさらいみたいなものじゃねえか。別に今までどおりだろ」

「先輩はもう二年生だから、一年生の恐怖を忘れてるだけですよ」

「恐怖て……。別に死ぬわけじゃなし、なにをそんなビビってんだ?」

「高校は義務教育じゃないんですよ!」

 

 高らかに宣言した私に、先輩とアキラさんは首を傾げた。

 一方でユキちゃん先輩は『なるほど』とばかりに頷いてくれている。表情は特に変化してないけど。

 

「中学までは義務教育だから、どんなに成績悪くても卒業させてくれるけど……」

「そうです、ユキちゃん先輩さすが! 高校は成績悪いと卒業できないとききました! なんて恐ろしい!!」

 

 そして成績の優劣を決めるのが定期テストである以上、私の恐怖だって妥当なものではっ!? テスト結果で卒業できないとか、マジ恐怖の対象でしかないもの!

 

「なのに内容は中学よりパワーアップしてるわ、二次関数とか将来なにに使えばいいのかわかんないもの勉強させられるわ、勉強を早々に飽きてくるわで、ちょっとくらい泣きたくなっても仕方なくないです!?」

「おいこら、最後。飽きてくるのはもう、周り関係ねえから。お前のせいだから」

 

 先輩は呆れたような口調で言ってくるけど、そこは関係ないのです。この、私の恐怖とか焦りをわかってほしいの!

 

「っていうか、風間くんの学校ってそんな厳しいの? テスト一回で卒業かかってくるとか、相当だよ?」

「なわけないでしょうが。桐原、誰に吹き込まれたか知らんが、別に成績悪くても卒業できないってことはないと思うぞ」

 

 きょとんとした顔のアキラさんと同じく、風間先輩の言葉にきょとんとする。

 

「そりゃ、よっぽど悪けりゃそういうこともあるかもしれんが」

「やっぱりあるんじゃないですかー!」

「聞け。……そういうこともあるかもしれんが、どっちかってえと、出席日数のが大事だからな?」

「……そうなんですか?」

 

 思わず聞き返すと、隣でアキラさんが「普通はそうだよねー」と笑っていた。

 

「アタシも、成績が悪すぎて卒業できなかった人間は見たことないかも。出席足りずに留年ってのは結構みたけどさ」

「大体、うちの学校だと欠点取っても追試あるし。追試ダメでも補講受けりゃ、出席足りてる限り単位くれるハズだぞ。テストの成績で一発アウトってことはないから安心しろ」

「それにレイナちゃんは今の高校に入学できたんだから、心配しなくても能力は足りてるハズだよ。自信持って」

 

 怒濤の励まし(?)によって少しだけ気分が浮上する。

 そっか、テストだけで一発アウトってことはないんだ。良かった。……冷静に考えたらあり得ないな。うん。これは完全にからかわれたってことかな? 友人(リカ)め、絶許案件だよ。

 

 私が友人への怒りやら、自分自身への羞恥やらを感じてる隣では「ところで欠点って?」「赤点のことです」「へー、学校ごとに特色でるなあ」「うちだと平均点の半分以下を取ってると欠点ってことになって追試です」「アタシんとこは30以下だった」「わたしのところは45以下」「ユキ先輩んとこ厳しいッスね」「お嬢様校だからね!」「なんでアンタが得意げなんだ?」なんて、ちょっと楽しげに盛り上がっていたり。

 

「あの、先輩は」

「あん?」

「赤点……欠点って取ったことあります?」

「ねえよ。普通に授業聞いてりゃ、さすがに平均の半分以下なんて点数取らねえしな」

「おー、風間くんつよーい」

「いや、別に褒められるもんじゃないでしょ。30以下とか、よくいって40点以下が対象ですよ? さすがにそんな点数は取らんわ」

 

 それを聞いて、安心したような不安なような。

 こう、今まで高校の授業をまじめに受けてきた身としては、先輩の言うとおりそんな点数取りようもないと思う。けれど、今さっきテスト範囲復習してた身としては、やっぱり中学時代より難しいと感じちゃうから。

 要するに、高校生のテスト内容の普通がわからなくてビビっている感じ。

 

「んー、なになに? レナちゃんまだビクビクしてる感じ? 心配しなくてもなるようになると思うよ」

「……テスト内容が不安なら、ここには先輩もいるんだし、頼りにしてくれればいいんだよ」

 

 うっ、アキラさんとユキちゃん先輩の優しい言葉が心にしみる。

 

「数学って、難しいですよね……」

 

 思わずそんな言葉が口から漏れた。ついでに言えば、古文とか物理とかも難しい。なんだったら英語とかも、もう日本語で良くない? って思うくらいには難しい。要するに高校での勉強って、思っていたより難しい。

 

 そのあたり疲れたような私の声色から察してくれたのか、アキラさんとユキちゃん先輩は『ああー』と苦笑い。

 

「二次関数とかクソバカなに勉強させとんじゃい将来なにに使うんか言ってみぃボケ! って言ってたもんねえ」

「アキラ、アキラ。レイナちゃんそこまで言ってない」

「でも似たようなこと言ってたでしょ? そしてそれは大多数の学生の代弁でもある」

「え、えー?」

 

 アキラさんの言葉の切れ味に、ユキちゃん先輩が少しだけ困ったような顔をしてこちらを見る。

 確かに私はそこまで言ってない。けれどまあ、テスト勉強し始めてからアキラさんの言うように思ったことは一度や二度じゃないので、数学くんのこと擁護はできないなって。あとできれば滅んでほしい。

 

「や。はい。実際使い道わかんないもの……っていうか、使うかわからないもの勉強するのは辛い。勉強しなくてもいいじゃん、って思っちゃいますよ……」

「関数っていうか、数学は」

 

 私がひたすらネガティブな考えを募らせていると、ぽつり、と言った感じで先輩が口を開いた。小さな割によく通る低い声に、自然と休憩室のみんなの視線が引き寄せられる。

 

「俺たちが直接数式を目にする機会ってのがないだけで、普通に周りにあふれてるし。スマホとかパソコンとか、身近なもの動かすのに使われてる。っていうか、なんだったらそれがなけりゃあ、江戸時代くらいの生活水準に戻りかねないものだし、なくなったら私生活が詰むレベルで必要だわ」

「……風間くん、数学畑の人?」

 

 思いもかけない言葉に、思わず、といった風にアキラさんが問うと、風間先輩はため息を吐きながら答えた。

 

「数学は嫌いですけど、一般常識的にっていうか。まあ俺もあんまりどれになんの数式────二次関数だの三角関数だの使われてるかは知らねえですけど。でもそれ知らねえのに今の生活できてるのって、高校とか大学でこういうこと勉強して、それを使って仕事してる人たちのおかげでしょ? それを指して『将来使うかわからないからいらん』とは言えないでしょうよ」

「……そうだね。確かに自分の将来に使うかはわからないけれど、それを使って生活の基盤を支えてくれている人はちゃんといるものね」

 

 生活の基盤。数学を使ってそれを支える人たち。

 そういう視点で数学ってものを見たことがなかった私は、二人の言葉に少しだけ黙って。けれど怠惰な私はこんな風にも思ってしまう。

 

「……使う人だけ勉強すれば、とかは?」

「将来使うか使わないかの判断が、勉強はじめてもいない人間に出来るか疑問だな。っていうか高校での最低限の勉強すら『必要ないから』の一言で投げ出せる人間が、いざ自分の進路に必要になったときに勉強できるとは思えねえし」

 

 ささやかな反論は、鋭い舌鋒で切り返されてしまった。

 

「数学をいらないって思っちゃう人は、数学を使う進路を無意識で避けてしまうだろうし、ここで勉強しないことで、最終的に自分の進路狭めているだけになるだろうね」

 

 ついでとばかりに、数学が必要な職種って結構多いよ? とユキちゃん先輩がトドメ(本人にその気はなくとも)を撃ってくる。

 

「別にお前がいらんと思うなら勉強しなけりゃいいし、それで後悔しようがしまいがどうでもいいけどな。それこそ義務教育じゃねえんだし。ただ、いるかいらないかで言ったら圧倒的に『いる』し『必要』なものだから、真面目に勉強してる人間の前で『いらないでしょ』とかいうニュアンスで話をするのはどうかと思う」

「要約すると?」

「こっちだって好きでやってる訳じゃねえし、正直かったるい中勉強してんのに、テメエの集中力のなさでこっちのモチベーションまで下げんな」

 

 やや強い先輩の語気に思わず肩が震える。

 もしかしたら、ううんきっと、私の情けない泣き言のせいで先輩をそうとう怒らせた。

 

「……ごめんなさい」

「まあまあ、レイナちゃんもそんなショゲないで。大体、煽ったのアタシだし」

 

 私が発した暗い声に、すかさずアキラさんが割ってはいる。先輩はため息一つ吐いて、アキラさんに矛先を変えた。

 

「まあそうですね。半分くらいは日向先輩が悪いです」

「おおう、辛辣。……しかし、ユキちゃんはともかく、風間くんがそんな真剣に勉学に向き合ってるとは思わなかったよ。こう、男子高校生って『勉強なんかかったるいよなー』『ゲームしようぜー』『酒とタバコとあと女ァ』みたいなイメージだったから」

「いや最後。最後のヤツ、現役男子高校生的には全部アウトじゃねーか」

 

 話の誘導の仕方というか、感情のコントロールのさせ方というか。アキラさんは、そういうのが絶妙だ。

 呆れたような先輩の声には、既にさっき感じた怒りみたいなものは残っていなかった。

 

「つっても、俺だって別に真剣に勉強と向き合ってるわけじゃねえですよ。ダルいもんはダルいし、できりゃずっと遊んでたいし。今のだってツレの受け売りだし」

「そうなんだ?」

「高校受験のときに、ツレにさっき俺が言ったことみたいなこと言われて……。まあ耳に痛かったんで、出来る範囲で真面目に勉強しようとは思いましたね」

 

 それはまた、達観してるというかなんというか。

 先輩の友達は二人くらい知ってるけど、そのどっちかなんだろうか。咄嗟に思い返してみるけど、あんまりそういうこと言うタイプには見えなかったなあ。

 アキラさんも私と同じように思ったのか、少し思案するような表情で口を開いた。

 

「……高校受験ってことは中学生ってことか。その友達って同級生? スゴいね、中学生でそういうこと言うんだ」

「……まあそいつも先輩からの受け売りだったみたいですけど」

「ふうん。なかなか良い友達と、そして良い先輩を持ってるみたいだね」

「……そっすね。俺もそう思います」

 

 やや遠い目をして、先輩が答える。

 優しい、というよりはまるで何かを思い出すような表情。

 この二ヶ月くらいの間で、風間先輩がそんな顔をするところを、私は初めて見る。

 

 それに何かを口にするより早く、アキラさんが元気よく口を開いた。

 

「まあとりあえず、勉強はできる範囲で真面目にやろうね、ってことで一つ。それはそれとして息抜きも大切だと思うし、風間くんたちのバイト上がったらご飯でも食べにいかなーい?」

 

 アタシおごっちゃうよーん、とニコニコ笑っている。

 

「そうだね。勉強も邪魔しちゃったし。わたしも半分出すよ」

 

 アキラさんに続いてユキちゃん先輩までそんなことを言い出す。

 思わず先輩の顔を見ると、先輩は軽くため息を吐いて頷いた。

 

「せっかくなんで、厚意に甘えますよ。上がりまで、あと一時間くらいありますけど。それでよければ」

「はい風間くん確保ー。レナちゃんは?」

「あ、私も行きます行かせてください!」

「オッケー! ぷち交流会だ。場所はどこにしようかな」

「別に、ここでよくないっすか?」

「職場で食べるの、なんか抵抗ない?」

 

 真顔で言ったアキラさんに、私は内心で「わかる」と笑った。





※簡易キャラ設定

【3B達成】風間先輩
不器用、無愛想、ぶっきらぼうの三冠を達成した男。
作中では主に先輩として描写されるが、5話中に1話くらいは後輩な感じで現れる。
実のところ後輩含めた周囲には、それなりに気を遣った行動を心がけているが、それを相手に悟らせるにはあまりにも口調と表情が凶悪すぎた。
APP17とか15とか13とかの顔面偏差値をもつ連中とバイトしててもメゲない精神力を持つ16歳(一話時点)。


【頑張ったら付き合えそう】私こと桐原
割合整った容姿を自覚しつつ、お肌のケアとか身体のケアとかしっかりこなす、自分の外見に慢心しない系女子。作中での視点はだいたいこやつ。
内心はともかく、外面は常に明るい笑顔を振りまいているように見えるので、基本的に好かれやすい。
人生で一度も告白されたことはないし、告白したこともないが、友人からはモテ女子認定をもらっている。(『私の昼休み』での友人評がだいたい正しい)
周囲のミーハー女子のことをちょっとどうかと思いつつ、なんやかんや自分も少女マンガ脳な15歳(一話時点)。

簡易キャラ設定とか載せていますが、これ見たいものなんでしょうか?

  • 見たい
  • 正直いらない
  • 簡易じゃなくて詳細を載せて
  • そんなことより先輩の中学時代が見たい

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