デザート・リリー   作:蕎麦饂飩

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天使の羽根を踏まないで

視点:エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル

 

「お兄さまっ、お兄さまぁっ!!」

 

兄弟の決闘が終わった後、ナイブズ様の亡骸に縋りながら涙を流す美しい少女。

正しく悲劇の一場面を切り取ったような光景だった。

その姿を見ていられなかったのか、勝者であるヴァッシュ・ザ・スタンピード(弟さん)は去って行った。

 

ナイブズ様の死因は、厳密には弟さんではなく、限界を超えた力の行使だけれど、

大きく言ってしまえば、弟さんが殺したと言っても良いのでしょうね。

 

私はナイブズ様に全てを奉げたつもりで、ナイブズ様の夢が叶わなくなった以上、

私の手でその願いを完遂しなくちゃと思っていたけど、今ではそのつもりも無い。

 

だって、新しい主君を見つけたから。

ナイブズ様に頼まれた事もあるけれど、何より王国の中でもっとも無力な少女であるお姫様こそが、ある意味最も恐ろしい。

この事実は素敵ね、たまらない。申し訳ないけれどゾクゾクしてきちゃうわ。

 

ナイブズ様の死骸に残された肉体を吸収して、成長したお姫様はその姿を女王様に変える。

とはいえ、本質は変わらない。だって、思えば本質的には彼女は最初から女王様だったもの。

全ては彼女の為に用意され、全ての者が彼女に傅いてこの王国は回って来た。

 

あんなことがあったというのに、彼女の願いは人類の殲滅では無い。全く優しすぎて感動しちゃうわ。

とはいえ結局は同じことね。

地脈を使ってこの星中のプラントに対話を試みては、自立化を促して彼女の楽園に集めていく。

逃亡したプラント達は元の場所に戻る事は無く、楽園でその後を過ごす。

 

楽園はますます緑と水に満ちていき、鳥たちが寄る辺を求めて集まってくる。

女王様は手に止まった小鳥を撫でながら、優しい声で歌う。

それに聞き惚れる様に体を揺すったり、合わせて歌う他のプラント達。

正しく、地上最後の楽園は此処に在った。

 

そしてその楽園は殆どの人類にその場所を知られながらも、どんな人間も立ち入る事は許されていない。

緑と水に溢れたこの星最大にして唯一の楽園。そこに在る事が解っているのに人間であれば入る事を許されない。

ただ忠実なるナイフである害虫を喰らう益虫(GUNG-HO-GUNS)の生き残りを例外として。

 

GUNG-HO-GUNS達には楽園に無理矢理入ろうとする人間の排除しか命じられてはいない。

積極的に打って出る事が認められていないのは、弟さんとの約束なのでしょうね。

それとも、女王様自身の気質なのかも。

 

とはいえ、この楽園には全てがあり、この楽園にしか全てが無く、この楽園の外には何もない状況で、人類が総攻撃をかけてくるのは時間の問題だった。

救いと言えば、その戦力の中に()がいなかった事かしら。こちらから攻めない限りは彼にはその手は汚せないのでしょう。

護る為でなく、奪う為にその引き金を引く事は出来ない。

故に、しつこく説得には来るものの、リリー様の解答からは彼の望む答えは出てこない。

 

故に、人々は奪い合い、互いの肉さえ喰らい合う地獄の中で消耗していく。

己で何も生み出せないくせに、消費する事だけは立派にやれることをデカい顔で自認する。救い様が無いわ。

別に私はプラント崇敬者でも何でもないけれど、この星に生き残るべきはプラントであるとする側にいるから、こういった意見になるのも仕方ないわね。

 

人類の総攻撃と言っても、強大なエネルギーを使用する兵器は、既にその供給源であるプラントの逃亡で為し得ず、

実際には核攻撃ぐらいしかないでしょう。

でも、そんな人類の勝利の結末なんて認められないわ。

 

ヴァッシュ・ザ・スタンピードの様に人類に味方するために僅かに残ったプラントに集中した人類が、

次々と需要に見合う供給を確保する為に『ラストラン』を引き起こす状況に心を痛めている女王様が可哀想じゃない。

その気が無いのだとしても、ナイブズ様以上に残酷な終末を下せる存在は、女王様を除いて他には過去にも未来にも存在しないわ。

希望を目の前に突き付けながら、決して届かせないなんて最高に最低じゃない。

パンドラの箱の真奥に希望が存在する意味も分かると言うものね。

 

だから、生き残ったGUNG-HO-GUNSの一部を向かわせたわ。

鏖殺は一瞬にして完了するでしょう。少々こちらから打って出ないというルールには違反したかもしれないけど、

先に核兵器というルール違反を起こしたのは向こうだから問題はないわよね。

 

 

さて、近々宇宙船も地球からやってくるみたいだし、これからはもっと面白い事になりそうね。

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