デザート・リリー   作:蕎麦饂飩

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その花びらにくちづけを

この星の害虫がおおよそ餓死した頃、宇宙から幾つも船がやってきました。

その宇宙船はあらゆる電波帯を使ってこの星にいるニンゲン達に語り掛けてきました。

 

尤も、この星ノーマンズランドから地球側への返信は、「水をよこせ」「食料をよこせ」という野蛮な要求ばかりです。

求める事と強請る事と奪う事しか知らない害虫(ニンゲン)らしいと言えばそれまでですが。

恐らく、直接接触する様な事があれば、水や食料を手に入れる為に暴動の様にこの星の人類が宇宙船に雪崩れ込むでしょう。

 

それよりも、私には少し気になる事があります。

船を宇宙に飛ばすだけのエネルギー。きっとその供給源にはまだ見ぬお姉さまがいるのではないかしら?

私の知らない世界から来たお姉さま達とはいっぱいお話したい。

勿論、堅苦しい船からは解放してあげた後でです。

きっと、どのお姉さま達も人間に心から心酔しているなどという事は無い筈です。

 

私は即座に高性能な通信機器を創り出して、それによってお姉さまに語り掛ける事にしました。

 

「始めまして、私はリリーというものです。

そちらにプラントのお姉さまかお兄さまはおりませんか?

是非お話しましょう」

 

 

私は好意100%でお話させて頂いたつもりでしたが、相手方のお姉さまからの感触は良くありませんでした。

 

「自立型融合体ジオ・プラントッ!?」

 

「はい、そうです。宜しくお願いします」

 

 

「私はクロニカ。

驚いたわ。それだけの規模の門を持っていて、理性的な対話を試みて来るなんて想像もしていなかったから」

 

力が強いからそれを振るって、対話無く欲望を押し付けるだなんてまるで害虫と同じ扱いでは無いですか。

 

害虫(ニンゲン)より私達はよっぽど理性的ですよ」

 

 

「…貴方は人類の敵?」

 

「人類が私の敵なのです。私は逃げて護っているだけですから」

 

 

「では、人々の為に力を使うつもりは?」

 

「現状では毛頭ありません」

 

そう答えた瞬間、お姉さまは私に野蛮な砲を向けてきました。エネルギーの収束が感知できます。

お姉さまも害虫の味方(ヴァッシュお兄さまの側)だったのですね。

とても、とても残念です。

 

仕方ありません。クロニカお姉さま以外の他のお姉さま方にも『ご挨拶(・・・)』をさせて頂く事にしましょう。

地球の最新の宇宙船と言えども、自立型のプラント一人で動いている訳でもないでしょう。

原動力の供給部のお姉さまの半分でも此方の側について頂ければ、後は私が何とかして見せましょう。

私、プロテクトの解読やハッキングには少々自信がありますの。

 

 

そう思ってはいましたが、どうやらクロニカお姉さまは短気なご様子で、いきなり強力な主砲を私のいる楽園へと発射してきました。予想よりチャージが速かったです。

随分と酷いと思うのですが、どうでしょうか?

 

お姉さま達と共同して、上空に作り上げた門でその一撃を吸い込みます。

折角なので、出口も設定しておきましょうか。そうですね、今宇宙船の一つで一人賛同してくれるお姉さまがおりましたので、

その方を起点に門を開かせてもらいましょう。

 

 

「それでは、クロニカお姉さま、お返しです」

 

 

私のお返しによって、宇宙船の駆動部や宇宙船のプラント以外の多くが損壊したようでした。

無論、中にいるお姉さま達に一切犠牲が出ない様に射出先は制御させてもらいました。

それでも宇宙船そのものには大きな被害は発生しているようです。

当分反撃は不可能でしょうね。少々安心ですが、やはり身を護る為とは言え、同族に向けて攻撃するのは心が寒くなります。

それでも、お姉さま達を助ける時間が稼げたと思えば良しとしましょう。

折角ですので、その間に沢山のお姉さま方と対話して、協力して貰えるお姉さま達を通じて宇宙船にハッキングしていきます。

 

クロニカお姉さまを含めて、私はプラントは傷つけたくありませんので、敵対されたとしても攻撃は致しません。

ですが、この星のお姉さま達への攻撃や、害虫が私達の庭に侵入する手助けは止めて頂きたく思います。

故に、宇宙船の内部の小型船を使って、自立化して此方に来ることに賛同して頂いたお姉さま達をこの場所へと次々と移動させます。

 

ついでに、地球に帰りたい組のクロニカお姉さま達の為に、

今回地球からやって来た宇宙船をつぎはぎの様にくっつけた上で、性能を維持させて、

その行き先を強制的に地球へと固定しました。

余った部分は、この楽園付近の場所へ不時着させます。面白い情報(御本)がいっぱいありそうで楽しみです。

 

クロニカお姉さま、それではお元気で。

そして、地球からやって来たお姉さま達、これからよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、この星の人類は最悪に飢えていて、最悪に乾いています。

ですが、それは仕方のない事です。彼らに自身で自身を救う力が無いのが悪いだけなのです。

力が無いからと言って、力がある物に寄生して吸い尽くして汚していく事が許される筈等ありません。

今日も、血の涙を流してヴァッシュお兄さまが懇願し続けていますが、

私はヴァッシュお兄さま自身が人類の養分になりたいという事までは少しも否定していないのです。

私達にまでそれを求める事だけを否定しているのです。

その結果、これまで私達に縋り続ける事しか、搾り取る事しか学んでこなかった害虫が滅びていく事も仕方のない事です。

持てる者である私達が助ける義務はありませんし、持たない者は受け取れる僅かな恵みに何時までも我慢する者ではない事を、この星の歴史を学ぶたびに深く知りました。

奪う時はとことん奪い尽くすのが害虫という手あいです。

 

最近、支配蟲という文字通り身体全ての機能を掌握する蟲を使って、無理矢理生かされた代わりにその尊厳を全てザジに支配されたニコラスと共に、ザジが裏切りをした事でも、私はまた一つ賢くなれました。

 

私は、一人ならひたすらに害虫から逃げ続けます。

ですが、楽園に住むお姉さま達の為にも、害虫の側を退けなければならないのです。

だから、楽園の外に巨大な壁を構築しました。幾重にも張り巡らされた透明な壁を乗り越える術は人類は持ちません。

 

私は、ニンゲンと一切かかわらないと言う形で、ニンゲンに憎まれる道を選びました。

憎む正当性など理解できませんが、元より害虫の思考回路など理解する心算もありません。

 

 

もしかしたら、いずれ地球からやって来たニンゲンの大軍勢がこの星をニンゲンのものにするために、私達を殺しに来るかもしれません。

ですが、その時まで、そうなる時までは、お姉さま達と静かに寄り添うこの楽園で、

穏やかな時を過ごしていきたいと、この砂漠の星の上で、私リリーは強くそう思うのです。




是にて完結です。お読み頂き有難う御座いました。

原作では力だけで押し通すナイブズに対して対話で勝利した非力な人類でしたが、
今作では逆転させて非力なプラントが対話で暴力的な人類を滅ぼす流れにしてみました。

一応の骨子は

・(戦えば強いかどうかは別として)主人公の戦闘による勝利シーンはなるべく作らない
・主人公側から人類を攻撃しない
・対話を最大の武器にする

でした。でも、最後にクロニカにカウンターやっちゃいましたが、そこはお見逃し頂けると幸いです。

ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
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