わたしの朝は、お姉さま達からのおはようで始まる。共鳴現象で音を使わなくても会話が出来る。
お姉さま達の自我は独立種の私達ほど強くない…というよりはむしろ薄いけれど、
押しつけがましくない優しい方ばっかりなんだって、わたしは思うな。うん、お姉さま素敵。大好き。
お兄さまが新しいお姉さまを連れて来てくれるたびに、おはようがいっぱいになる、だからわたしはいっぱいしあわせ。
こんな毎日がずっと続けばいいのにな。
お兄さまが、今日も新しいお姉さまを連れてきた。
お姉さま達がお兄さまと新しいお姉さまに『おはよう』をした。もちろんわたしもいっしょ。
「…驚いた。彼女達は自立種では無いというのに。僅かに自我の様な何かが…?」
お兄さまが何かおどろいているみたい。お兄さまでもおどろく事があるんだ。
もしかして、わたしにかんする事? それともお姉さまにかんする事?
何だろう、無知なわたしにはまだよくわからない。もっといっぱい知識をきゅうしゅうしなくちゃ。
いっぱいいっぱいかしこくならなくちゃ。
最近お兄さまが最近連れてきた、敵では無いニンゲンのコンラッドも博識だけど、きっとお兄さまの方がかしこいの。
だってわたしのお兄さまなんだから。
だから、わたしもかしこくなりたいっ。いっぱいいっぱいかしこくならなくちゃっ!!
「お兄さま、わたし、もっと
エレンディラが言っていた。おねがいする時は両手を軽くにぎりしめて、あごの下に置いて、
ぴょんぴょんはねながらおねがいすると良いって。
じっさいにやってみたけど、どんくさいわたしがやると、ちょっとあごやおはなと手がぶつかっていたい。
もうやらないでおこうかな。
「…わかった」
それに、お兄さまは優しいからこんな変なポーズを取らなくても、わたしのおねがい聞いてくれるんだから。
お兄さまはおはなを押さえながら何処かへ歩いていった。
わたしのおはなが痛そうだったからかな。うん、やっぱりあのへんなうごきはもうやめよう。
わたしはジオ・プラント。だからほんのう的に広域にえいきょうを及ぼす地みゃくが理解できる。
そういう所に根を張りたがる。つまり、そういうばしょが大すきなの。
でも、地みゃくを伝わって他のちいきに緑が広がると、その匂いで害虫さんがやってきちゃう。
害虫さんは恐い。草木が草木だけで幸せに生きていられる楽園を、自分勝手に壊しにやってくる。
お兄さまから
また、害虫さんがやって来た。
今はお兄さまもレガートもエレンディラもいないっていうのに…。
不安だ。かんち能力だけが高い私だから、ずっとさっきから怖さが止まらない。
わたしを守ってくれるがんほぅのワムズも、何故か害虫さんに気が付かなかったみたい。
遅れて追いかけて来てくれているけど、場所がはなれ過ぎている。間に合わないかも。
助けて、お兄さまっ。
わたしがそう祈った時だった。
わたしのおにいさまはいつだってわたしを守ってくれるおうじ様なの。
害虫さんが乗って来たとっても速い巨大な鉄の巣ごと切断した。速いけどお兄さまの方が速いの。
やっぱりお兄さまはカッコいい。
でも、細長い巣がこわれたからか、中からうじゃうじゃうじゃうじゃとニンゲンたちがでてきた。
巣はときおりばくはつしている。
お兄さまが害虫さんたちをやっつけてくれているけど、何か、たぶん…ううん、きっとちがう。
お兄さまは害虫さんの味方なんかしない。わたしの敵になんてならない。
何かがこっちにニンゲンがこれるように、害虫さんをやっつけさせないように邪魔をしている。
だから、くろこげになった害虫さんや、そうでない害虫さんがいっせいにわたしのお庭にやってくる。
恐い。恐い。恐い恐い恐い恐い恐い
「助けてっ!!」
わたしの思わず声に出たひめいに、周囲のお姉さま達が気が付いた。びっくりさせちゃった…?
ごめんなさい。恐かったから。でもお姉さまたちだって恐いよね。わたしも、恐かった。
▽△▽
「何だ、これは。何が起こってるっ!? いや、何をしたナイブズッ!!」
ああ、
目の前の我が弟は驚愕した様だ。理解できないのではなく、信じたくない様だな。
だから、未だに俺に銃口を突きつけているのだろう。
「簡単な事だヴァッシュ。恐がりなお姫様を護る為に、通常種のプラントたちが己の意志で動こうとしているんだ。
お前も感じているだろう?」
全く、ヴァッシュ。お前は何時になっても変わらない。あれからどれだけの時が過ぎた?あれからどれだけ人間の汚さを見てきた?
あれから―――――――――どれだけ
彼女が怯えるのも当然だ。俺は彼女に真実しか教えていない。そして無垢な彼女は自分の感情で奴等に怯えている。
…逆に不思議だ。どうしてお前はそれでも奴らの味方が出来るのか。
「見て見ろヴァッシュ。数体のプラントから障壁が発生しているのが判るだろう。
拒んでいるのだ。彼女たち自身の意志で、自分達を、娘であり妹であるお姫様を護り抜く為に」
「お姫様…?
…それでも、あれだけ自然が広がった地域はこの星には存在しない。
あそこでなら人々はもっと――――」
「黙れっ!!」
思わず、刃を奔らせてしまったが、
「何だ、言ってみろ。あそこならもっと同胞達を喰い尽くせる…か?
それに怯えた彼女達がああやって拒絶しているのが解らないのか?」
人間達は事もあろうに障壁を張っているプラント達を攻撃し始めた。
そこまでして奪い取りたいか、愚かな。
仲間を救う為に、彼女達も自立種モドキとしてその力を発動させる。
「見ろ、しっかりと目に焼き付けろ。あれが現実だ。プラントと人間の殺し合いをしっかりと見るんだっ」
不出来な弟に現実を直視させる。
「一体何をした、何をさせたんだっ!!」
その様な事を言うなヴァッシュ。
まだなのか、まだ目を逸らすのか。
「彼女自身の意志で、人間達と戦っている。この現実から目を逸らすな。
不可能なんだ。いい加減に人間を見限れヴァーッシュッ!!」
ふと、腕がチリついた。この感覚は共鳴なのか。
そうか、目覚めろ、俺達の種の力に。…まて、いや、此処で暴発させたコイツの力が俺の予想を超えていたらどうなる…?
「まっ、待てヴァッシュッ!!」
最早本能に支配されて己の『力』を放出する自動シークエンスに突入している。
そこに力を送り込んだ直後、ヴァッシュは力を放出した。
――くそっ、なんて大きさだ。呑み込み切れない……すまん、リリー。