デザート・リリー   作:蕎麦饂飩

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ちいさな彼女の小夜曲

▽△▽

ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク

所属:ナイブズ配下

▽△▽

 

「チャペル、聞いたぞ。お前はお姫様に銃を向けたんだろ?

理解できる。あの化け物達が要らないと判断した時に俺達の命運は終わるんだあっけなくな。

ゴミ箱に投げ捨てられる玩具のようにな」

 

「逃げるのか? 本気で逃げられるとでも思っとるのか?

不可能や。アレらはそういう次元やない」

 

同じGUNG-HO-GUNSでもしっかりとした現実主義者(リアリスト)はそう多くない。

自分の力に酔っていたり、戦場にしか置く身が無い者だらけの連中の中で、冷静な話が通じる者は稀だ。

仮に話が通じたとしても無関心な者すらいるのだから、チャペル程度しか話相手にならない。

 

「だから戦う力の無い片割れを最初に攻撃してその次元の差を埋めようとしたんだろう?」

 

「そうや。そしてその結果助けられた。殺そうとした相手に」

 

 

だからあのお姫様に忠義を尽くすとでも言うのか?

哂いそうになってしまう。違うだろう? お前はそう(・・)じゃないだろう?

 

お姫様よりも大切なモノが幾らでもある人間の眼だ。

決してお姫様に忠誠を誓う忠実なナイフの眼じゃない。

 

「道理を語るなよ。唇を火傷するぞ」

 

「お互い様や」

 

 

 

最近、お姫様の所から離れてナイブズの弟くんの方へ良く行っている様じゃないか。

おおよそ化け物同士潰し合わせる作戦なんだろう。

だが、化け物達の戦いを停めてしまうかもしれないお姫様の存在は、このまま放置できるものではない事はチャペルだって良く理解しているはずだ。

 

「お前はあのお姫様に借りがあっても踏み倒す類の人種だと思っている。

だから手を組まないか?

俺とお前とヴァッシュ・ザ・スタンピードであの化け物達を倒す。

そしてその後、ヴァッシュ・ザ・スタンピードを殺す。

ビーストはアレ(・・)だし、他の連中は我が身が大事だったり、

者によってはあのお姫様に惚れたのまでいる。

お前にしか頼めないんだ」

 

「そないなことゆうても、アンタも自分が危なくなったら逃げるクチやないか。

逃避の方向が違うだけの話や。

やけど、つまらない話やない。勝算さえあればやぶさかでも無いわ」

 

流石チャペルは良く解っている。

俺としてはいざとなったらチャペルも切り捨てるつもりではあるが、向こうもそれが解っているのなら幾分か心が軽い。

 

では、俺とチャペルは他のプラント、特に自立型のプラントを探すと言う名目でお姫様の傍から離れさせて貰うとしよう。

 

 

 

俺に演奏を習いに来たり、俺の演奏で踊っていたお姫様を殺めるのは少しだけ感傷に浸りそうだが、

割り切る他はあるまい。元より俺の演奏は殺人音楽だ。

標的一人を殺害するために会場全ての人間をも巻き込んで犠牲にする。

そういう生き方をしてきた。

 

だから俺が生き残るためにお姫様を殺害したとしても、それも割り切れるに違いない。

 

 

話が終わった後、一先ずチャペルを部屋から追い出して、演奏の練習を始めた。

 

『演奏とは演目を奏でると書くけれど、これの主体は楽器の事を言ってるのかしら、それとも奏者かしら、それとも指揮者の事なのかもしれないわね』

 

お姫様の顔と声が脳裏に浮かぶ。

 

「クソッ、A()の音が弱い」

 

気がかりなど自分の命の他にある訳も無かろうに、少しあのお姫様の顔が頭に浮かんだ瞬間だけ、上手く音が出なかった。

 

 

だが、仕方ない。

彼女の考えるプラントの楽園には人類という種は、不必要である可能性の方が遥かに高い。

だから俺が生き延びるにはお姫様の余興楽士として残るか、あの兄妹を殺す他は無い。

そして俺はそれをチャペルに話した以上、後戻りはできないしするつもりは無い。

だと言うのに、どうにもあのお姫様の顔がちらついた。

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