デザート・リリー   作:蕎麦饂飩

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彼女のセイイキ

コンラッドはヴァッシュお兄さまの所へと向かったみたい。

そしてヴァッシュお兄さまに色々と情報を伝えたらしいわ。性能を最大限にまで引き出す秘策を持ってナイブズお兄さまを倒すつもりだった様ね。

とはいえ、そのコンラッドは今はこの世にはいない。私のガンホーの一人、マインが殺してしまったみたい。

でも、そのマインも倒されてしまったようで行方知らず。

悲しいわ。私の大切なガンホーが一人いなくなってしまうなんて。

部屋の隅でコロコロと転がっている姿が面白かったと言うのに。

 

そう言えば、ミッドバレイとニコラスもヴァッシュお兄さまと道中を共にしながら説得をする旅に出てしまった。

少し寂しくなるわね。お姉さま達の守りが薄くなるのは不安になってしまうわ。

だからお兄さまに追加のガンホーを呼んでいただく事にしたの。

 

ミカエルの眼から二人来るそうよ。

あの組織は忠誠心が高めだと聞いていたけれど、ニコラスを基準にするとそれもどうかと思ってしまうわね。

 

でも、ニコラスだって私の大切なガンホーだから信じてあげるのが良い飼い主だと思うの。

 

 

――――そう、思っていたのだけれど。

 

 

 

 

 

「ミッドバレイ、ニコラス。ナイブズお兄さまの所にヴァッシュお兄さまを連れて来てくれたのでしょう?

説得は出来なかったのかも知れないけれど、それはナイブズお兄さまにお任せすれば良いと思うわ。

一休みしたら悪い虫さんたちから大切な庭を守る仕事に戻ってくれるかしら?」

 

そう告げた私に対して、彼等はそれぞれの得物を突きつけてきました。

それは冗談では無く本気の殺意。私には無縁の戦闘者のみが発意する威力ある感情。

 

恐怖で動けなくなった私の代わりに、私を守る様に前に出て来てくれた忠実なるガンホー達。

その中には新しいガンホーの姿もあった。

 

リヴィオ(・・・・)、お願いするわね。

彼らがガンホーへ戻ってくるようなら許してあげて。もしそうでないなら処分をお願いするわ」

 

 

鬼の様な面を被った青年リヴィオ。彼を含めて相手二人を遥かに上回る勢力。

彼等は完璧。万に一つも勝機はないわ。

 

では、私はエレンディラに運んで貰う事にして、後の事はガンホーの皆にお任せするわ。

 

 

 

 

 

 

エレンディラに運んで貰うと、そこにはお兄さま達がお互いに武器を突きつけあっていました。

身内同士が得物を突きつけあうと言うのは心底肝が冷えるものですね。とても、悲しいです。

 

 

 

 

 

 

▽△▽

視点:ヴァッシュ・ザ・スタンピード

 

 

「酷いわ、お兄さま方ったら。

私が無知だからってお話には加えては下さらないのね」

 

 

「テ…スラ?」

 

テスラ、君なのか? どうして、君は確かに死んだはずだ。

生きて…いたのか?

 

「ナイブズお兄さまも言っていたけれど、私は随分とテスラお姉さまに似ているそうですね。

でも、女性に別の女性を重ねるのはヴァッシュお兄さまでもNGですわ。

私はリリー。自立型ジオ・プラント。

きっとこの星で一番新しいプラント(貴方達)の妹。どうぞお見知りおきを」

 

そう言って美しい礼をする彼女はテスラでは無かったのか。当たり前だ。

彼女は死んだ。そしてあの日から僕達は狂ったのだ。罪が無かった事になるなんてある訳がない。

 

それと、いま彼女は何と言った?

自立型ジオ・プラント? もし本当ならこれからの人類の希望になる可能性もある。

だけど、リリーという名前にも聞き覚えがある。

無論悪い意味でだ。コンラッドは言っていた。人間を怖がるリリーというプラントが各地のプラントを自立させて逃亡扶助していると。

 

それによって干からびた町を幾つも目の当たりにしてきた。

…でも、恐がっているだけなら、ナイブズの様に恨んで憎んでいないのならまだ取り返しは付く筈。

 

 

「リリー、聞いてくれ。

君が各地からプラント達を奪っているのを止めてくれないと人類が滅びてしまうんだっ!!」

 

そう告げた僕に、真剣に聞き入っていた少女は、少しだけキョトンとした顔をした。

 

「私は無知で未熟だから賢いヴァッシュお兄さまの信念も理念も思想も理想も、理解も共感も出来ないわ?

ねえ、教えて? 私達が助ければニンゲンの苦痛は和らぐの?」

 

「ああ、そうだ。プラントの、特に君の助けがあればきっと人間の暮らしはもっと楽になる」

 

 

手応えはあった。もしかすればいけるのか?

リリーの横でナイブズが睨んでが睨んでいるが、それは取り敢えず置いておこう。

 

「私達が助ければニンゲン同士の争いも少なくなるの?」

 

「ああ、そうだ。何もかもが足りないから人々は奪い合う。それが満たされればきっと人間達だって――」

 

純真な目で僕に問いかける彼女に答えを返す。

この時僕は確かに強い手応えを感じていた。

 

「そして私達が助ければ、ニンゲンの数が増えて今以上にお姉さま達の負担が増えるのね?」

 

「………ああ、でもそれは――――」

 

リリーの隣りにいるナイブズは笑いを堪えきれない顔をしている。

嫌な予感がひしひしとする。理知的な表情に戻った彼女がその口を開いた時、それは現実になった。

 

 

「でもそれは、何ですか?

ニンゲンを助ければプラント(私達)は救われるのですか? 助けるメリットはあるのですか?

助けないデメリットはあるのですか? どうか無知な私に教えて下さい。賢くてニンゲンをよく知るヴァッシュお兄さま」

 

 

ナイブズが遂に笑いを堪えきれなくなって狂笑した。

 

「ハーハッハッハッハ、答えられないのか?

そうだろう、そうだろうなあ。ニンゲンが俺達に縋る事はあってもその逆は無い。

お前だって今までに散々搾取されてきた仲間達を見たはずだ。お前自身も散々奪われた上に、傷つけられて迫害されてきたはずだ。

いいか?これは戦争なんだ。人間がこれだけの力、俺達のような桁違いの力をふるう存在を受け入れると思うか。

あるわけがないな、そんなことが。血まなこになり集団で括り殺しに来るだろう。

自分たちの居場所を脅かすものに対し奴等がどんな行動にでるか、おまえの胸裡には刻み込まれているはずだ……!! 」

 

「もしもそうなったら、僕は急いで逃げよう。 

そしてまたほとぼりが冷めたら、静かに寄り添うよ」

 

そう答えた。その答えはナイブズだけでなくリリーへも向けたものだった。

だが、リリーの眼は純真な疑いを知らぬ眼のまま、僕を言葉の弾丸で撃ち抜いた。

 

 

「……でしたらヴァッシュお兄さまお一人でやってくださいませんか? 善意を強要して頂きたくはないのです。

自己を犠牲にしてでも人類を救いたいと言うヴァッシュお兄さまの御崇高な考えは解りました。

ですが、私達にそれを強制しないでいただきたいのです。

お兄さまの様に自らを犠牲にしてでも人類を助けたいと言うお姉さまへは私は無理強いをしない事を約束しましょう。

精々、説得は続けさせて貰う程度です。

ですが、人類からの搾取から逃げ出したいと願う意思を発露したお姉さまを助ける行為は邪魔をしないで頂きたいのです。

どうか了承願えませんか? ヴァッシュお兄さま。

ニンゲンに殉じたい者だけが犠牲になる分には、私にとっては悲しいものですが納得できます。

ですが、一方的な搾取に枯れ果てるお姉さま達を救いたい。

私達は私達だけでやっていくので、害虫(ニンゲン)さん達には害虫(ニンゲン)さん達だけでやっていって欲しい。

それが出来なくても私達には関係ない。私達は害虫(ニンゲン)さん達に頼らない。代わりに頼らせない。

私達は人間を傷つけない。代わりに私達は人間に奪わせない。もうこれ以上は沢山です。

だって、お姉さま達の犠牲をこれ以上見たくないから。この気持ちは間違いなのですか?

答えて下さい。聡明なヴァッシュお兄さま」

 

 

その言葉は、僕を撃ち抜いた。

彼女はただ純粋な被害者の一人だ。僕やナイブズとは違う。ただ身内の平和を願ってやまない少女だ。

 

「聞こえたか、ヴァッシュ。こう言う事だ。

人類を護る為に襲い掛かる俺達から護る為には、まだお前には正当性があった。

だが、逃げ惑う彼女達に襲い掛かり奪いかかるニンゲンの手伝いをする事には正当性があるのか?

逃げる彼女達を足止めするためにその引き金を引けるのか?

下らない感傷など消してしまえ、ヴァァッシュ!!」

 

人類の殺戮者から彼女達の守護者へと転じたナイブズを攻撃する正当性は存在しない。

でも、それでも…

 

「人間達は、レムが、レムが僕達に託した希望なんだ」

 

それでも僕はナイブズへ向かって引き金を引いた。

 

 

それにより再び戦闘が始まった。

視界の端に先程彼女を連れてきたGUNG-HO-GUNSが彼女を連れて逃げていくのが見えた。

ナイブズは強くなった。護る者が出来たのだ。強くなって当たり前だ。

だけど、僕にだって護るものはある。レムが残した希望である人類を、この星の未来に残したいんだ。

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