この日、ボクたちエリクシアの三人は、単独のライブイベントということでロケバスに乗ってライブ会場へと向かっていた。
およそ一か月ぶりのライブイベントだ。今月は合同ライブ含めあと二回ほどが予定されているが……来月になると、ボクたちスターライトプロジェクトにとってのある種の「本番」である夏フェスが控えている。各自の仕事は勿論として、プロデューサー的にはここでひとつ、ライブ経験値を稼いでおこう……という考えもあるだろう。
何にしても、ボクとしては楽しいライブができるならそれが一番だけど。
「しかし君はまーたそのパーカーか」
「いいでしょ別に」
今日のボクの服装はいつも通りのぴにゃこら太パーカーに「松茸」と筆文字で刻んである文字Tシャツだ。
毎度毎度のことすぎてもう言われ慣れてしまったが、ボクとしてはこのスタイルが一番楽でいいのだけど……。
「…………」
「…………」
このやり取りの中、ボクと晶葉はただ窓の外を眺めている志希さんへとそっと視線を向けた。
先日の撮影以来、どうも志希さんはちょっぴりボクら、というかボクから距離を置き気味だ。
仲は、今まで通りだと思う。けども何か思うところがあるようで、特にぴにゃパーカーを着ている時は何だか近づいてきてくれない。これが結構調子の狂う話で、今までは普段一日三回はボクか晶葉のところに来てハスハスしてるところだったのに、今はこうだ。飽きられたとかそういうわけじゃない……と思いたいけど、果たして何を考えての行動なのか……。
「……氷菓、もしや何かしてしまったのか?」
「何にもしてないよ……この前から突然だし……」
「前触れも無く、だものな……うーむ」
正直言って、よく分からない。
志希さん自身よく分からないところはあるが、今回はそこに輪をかけて分からない。考え込んでいるようにも見えるし、遠くを見ているような気もする。
「っと」
と、そんな折、不意に前方車両の急停止にあおられて、プロデューサーがブレーキを踏んだ。
車が揺れるのに合わせ、パーカーのフードが頭に覆いかぶさる。
危ない人もいるもんだな。もしかして運転しながらスマホでも使っていたのだろうか。
「みんな、大丈夫かい?」
「ん。晶葉と志希さんは?」
「私は問題無い。志希、大丈夫か?」
「志希さん?」
確か、さっきからずっと窓の外見てたはず。もしかしたら今ブレーキかけたせいで頭とか打ったりしてるかもしれない。そう思って顔を覗き込む。
「――――――……」
「志希さん?」
特に額が赤くなってるような感じも無い、けど、直後に目が見開かれた。
もしかして何かあったのか、とそう思った瞬間、志希さんはその手を懐に突っ込んで、香水らしきものを撮り出し――即座に、ボクの鼻に向かって噴霧した。
「エ゛ンッッッ!!」
「氷菓ーっ!?」
「え……? あ!?」
眼鼻の奥に強烈な柑橘系の刺激が突き刺さる!
粘膜が焼けるように熱いし痛い! なにこれ!? 何で今ボクこんなことされた!?
眼が! 鼻が!
「ど、どうしたんだ!? 何かあったのか!?」
「助手は運転に集中しろ! 今何をしたんだ志希!?」
「ち、違っ……あたしそんなつもりじゃ……」
不意討ちにもほどがある……! 柑橘系のいい匂いがするようではあるのに、過剰に過ぎてもう暴力的なまでの痛みになってしまってる。
涙まで出てきた。うおおおおお……!
「うぐうう……」
「ご、ごめーん……えーっと、えーっと……こういう時は……こう……」
いつもならこういう時何事も笑って済ませる志希さんも、自分が加害者になってしまったせいか色々と精彩を欠いてしまっている。あんまり頭が回ってないみたいだ……。
「どうしたんだ志希、ちょっといつにもましておかしいぞ」
「ん、ん~……ちょっとねー……」
シートに転がって悶えるボクを、あやすようにして軽く背中を叩くと、志希さんはそのままボクの頭に被さっていたフードを降ろした。
そしてそのまま、パーカーごと脱がせようとしてくる。
……いやちょっと待て。
「何゛さ!?」
「にゃっ!?」
「え゛うっ! ……ごめ゛ん晶゛葉、ティッジュ取っで……」
「あ、ああ……」
取ってもらったティッシュで涙と鼻水を拭いて、改めて志希さんの方を見る。何だか……何だろう。おかしい。こんなことはありえない。
いくらなんでもこう……こう……もっとこう、前のボクが言われたことじゃないけど、志希さんらしくなさすぎる。
変なこととふざけたことはしょっちゅうやってるけど、安易に他人を傷つけるような真似はしないはずだ。理由があれば実験の名のもとやるけど、それだってアフターフォローは完璧にこなすし可能な限り遺恨も残さない。今のこれはどう見ても衝動的にやっちゃったやつだ。
確かに、志希さんだってたまには衝動的な行動に出たいと思う時もあるだろうけど……あんまりにもあんまりだ。
ボク自身がやられたからっていう感情面の問題は……まあ多少あるけど。それにしたって、やってしまった後でオロオロするなんてそれこそありえない。
……もしくは、そうまでなるようなよっぽどのことがあったのか……?
「……いや、だから上着脱がそうとしないでよ!?」
「んー……!」
「いや、やめてって……やめ……力強いな!?」
何で唐突にボクの上着を奪おうとしてるんだ!?
東京は死んでないしボクも人修羅じゃないぞ!?
「ぴにゃは……マズい……!」
「ぴにゃこら太の何がそこまで突き動かすのさ!?」
何でこんないきなり穂乃香さんが嘆きそうなことを言われなきゃいけないのか、これが分からない。
そんなにぴにゃこら太嫌いだっけ……と思うけど、だったら何で今? という思いもある。割とボクこの服着てきてるよね?
「志希、脱がすなら下のダサTだけにしておけ」
「何晶葉は誘導してるんだよ」
それでもってまだパーカーを狙ってるのはそれはそれですさまじい。
ぴにゃこら太だけを殺す機械かよ!
……結局、志希さんは会場に着いて着替えるまでずっとこんな調子だった。
@ ――― @
今日のライブは、発表からそれほど間が無かったというのに、チケットが即日完売するほどの盛況だった。
会場そのもののキャパがそれほど大きくなかったのもあるけど、それにしたって思った以上の反響の大きさにプロデューサーも大喜びだ。
勿論ボクたちもそんな状況なのだから大いにやる気が刺激される。
されるが。
「……なあ氷菓、あの黒スーツ集団」
「言わないで」
「いやしかし」
「…………」
「……う、うむ」
ライブの合間の衣装替えの時間、楽屋に引っ込んだボクは、先程の戦慄の光景を晶葉に追求されていた。
……施設の子たちが来るのはいい。そっちは来たいという子にボクから贈っておいた。だからこっちは問題無い。
ただ、おじじのトコの社員が来るのは想定外……いや、それ自体はいい。何だか船室にボクのポスターやらグッズやらが大量に購入してあったし、ありえなくもないと思っていた。
しかしだ。いくら何でもあの
「んにゃーでも人気ってことだからイイと思うけど~♪」
「…………」
「…………」
志希さんはすっかり元の調子を取り戻しているようだ。思わず晶葉と顔を見合わせる。
さっきまでのあの不調、やっぱりぴにゃパーカーのせいだったんだろうか。だとしたら今後ボクはアレ、着ちゃマズいのか?
もう六月も中盤。衣替えには丁度いいといえばいいんだけど……なんだかなぁ。
「……晶葉、ボク明日から衣替えでもした方がいい?」
「とりあえずあのTシャツはやめておけ」
「えー……」
いいじゃん松茸。輝子さんは喜んでたし……。
そこまで言うなら英字Tシャツでも着てきた方が良いかな。確か当たり障りないところだと、
ともあれ、話している間にも衣装替えは終わった。スタッフさんを呼んで、準備が完了したことを伝える。
後半のセットリストは、先輩たちの個人曲のカバー曲が主体だ。志希さんが
で、今回はいつもの衣装は一旦置いておくことになっている。後半からの衣装はそれぞれ少しばかりデザインを変えて、曲の本来の歌い手……つまるとこ、みくさんや未央さん、美波さんのイメージを取り入れてもらったもの――らしい、とプロデューサーからは聞いている。
実際、見てみると何となくそんな風な印象がうかがえる。その一方で、元のデザインを損なわずに新鮮なデザインに落とし込んでいるあたり、デザイナーのセンスが良いってことなんだろうと思う。
「それじゃ、そろそろ行こっか♪」
「ああ、
「いやプロデューサー死んでな……待って今なんて?」
「これをデザインした助手も浮かばれるだろうと」
「これプロデューサーのデザイン!?」
うっそ……嘘だろ!?
割と何でもできる人だと思ってはいたけど、そっち方面の素養もあったの!?
会場に出ていく直前になって明らかにされたその事実に驚愕していると、もう二人は会場に出て行こうとしていた。
ああ、もう……! せめてもうちょっとこう……こう……あるだろ、何か! というか直前になって言うんじゃない!
「志希さん知ってた?」
「んにゃ? 初耳だよ?」
そういうことなら安心し……あんし――――安心していいのか……!?
さっぱりわからん……!!
ともあれその程度の困惑がライブに影響することというのもそうそうない。ステージが見えてきたところで全部頭の外に追いやった。
このライブでこの白河氷菓に精神的動揺によるミスは決してないと思っていただこう!
実際無かった。
そしてボクの精神を一番削るのは、例の黒服どもの姫コールだった。
顔真っ赤になるし、後で志希さんと晶葉にからかわれるしプロデューサーには笑われるしで実に精神的によろしくない。
なお一番ウケが良かったのはライブ後のトーク中、楽器演奏を披露したところである。
……歌の方に食いついてくれないかなぁ。
@ ――― @
さて。
ところでボクだって一応花の(?)女子(?)中学生なのだから、仕事が無い日は学校に行かなきゃいけなくなる。
入寮してから転校することにはなったものの、元からそれほど親しい相手もいなかったので割と転校自体はスムーズだったわけだが、問題はその後だ。
ボクと七海ちゃんは、転校するに際して仕事がしやすいよう、当初から「この春にデビューするアイドル」だということを校内に向けて報せている。
最初の頃はデビュー前だし、メディアへの露出も無かったから当然だけど注目度はそこまででもなかった。
しかし、それなりの舞台でのデビューや346プロという大組織のバックアップを得てのドラマ出演や地上波放送への出演、ラジオ、ライブ……といった活動のおかげもあり、今となっては良く悪くも注目の的となってしまっているのだった。
その辺は、同じ学校に通う他のアイドルの人たちも同じと言えば同じなのだけど……やっぱり大きなプロジェクトに属していると、注目度も否応なしに高まってくるわけで。
靴箱を開けると、ガサッと音を立てて大量の便箋が落ちた。
「………………」
「モテモテれすね~」
「あんまり嬉しくない……」
結論から言おう。
自分で言うのもなんだけど――今のボクは、かなりモテていた。
当然だけど男に。
最近忘れかけてる部分もあるけど、ボクは元々男だったわけで。
とはいえそもそも男として生きることができた過程というのがまるでないから、そっちの意識もかなり薄いのだけど、それはそれとしてやっぱり直接的に男性にそういった欲を向けられるのは今は勘弁してほしい気持ちがある。
アイドルなんてそういう職業じゃないかという意見もあると思うけど、それを正しく許容できるような生まれも育ちもしていないし。正直なところ、割とこう、困惑が先に立ってくる。
更に言えば、かなり嫌なモテ方だ。
アイドルという立場「だからこそ」モテる。外見が良い「からこそ」モテる。
ボクの性格や性質といった内面的な部分は一切触れられないのだ。
それもアイドルとしては必要な素養だとは思うけど。だからって辛くないわけじゃない。
「また断って回らないと……」
「大変れすよね~……」
ややアクの強い性格はしてるけど、七海ちゃんもボクと境遇としては殆ど同じだ。告白だって何度されたか知れない。
ただその度、「さかなクンさんと同じくらいの知識が無いと恋愛対象として見られないれす」ときっぱり断っているのだから流石だと思う。
しかしそれ、つまりさかなクンさんならOKなのか? と思わなくもないけど、深く追求はしないことにした。ただの基準だろう。そこまでディープな知識を持ってる人がどれだけいるのかは置いといて。
「それにしてもラブレターって、今時珍しいれすね~」
「前のライブで『ラブレター』歌ったからじゃないかな」
卯月さんたち
多分それを聞いてた学校の男子が「じゃあラブレター送ろうぜ!」みたいな話になって、靴箱に詰め込むという昭和の漫画もかくやという暴挙に出たのだろう。安直にも程がある。
そして残念ながらボクの
前提からして間違えてるじゃないか。
「普段はLINE教えて攻撃がすごいんだけどね」
ごくプライベートなところまでは流石にプロデューサーも追及はしてこない。が、それはそれとしてイメージ戦略という以上にそもそもボクはあまり知らない相手に個人的な連絡先を教える気は無い。怖いし。下心丸出しの猛獣にエサを与えるようなものだ。
そもそも大多数はボク自身に興味があるんじゃなく、ボクを経由して知り合うことができる可能性のある他のアイドルの人たちに興味があるだけだ。
きわめて一握り、割と本気で告白して来た人もいるが……そっちはそっちで丁重にお断りしておいた。アイドルどうこうという事情もあるけど、それ以上にやっぱりほとんど話したことも無いような人たちだ。嬉しいよりも先に恐怖が湧く。お前ら外見だけ見てるのかと。
別に一目惚れって現象を否定までする気はないけど……ボク個人としては、もしそんな関係になるとするなら相手の内面も知っておいてはじめてそういう段階に行くべきものだと思っている。
「氷菓さんのお眼鏡に適う人はいるんれすかね~?」
「それ七海ちゃんもでしょ」
「そもそも氷菓さんの理想はどんな人なんれすか?」
「ボク? ……あんまり考えたことないけど……常識と倫理観が備わってて、実直で、あんまり騒がしくない優しい人……とか?」
「高い理想れす」
「ホントにね」
この現代、大和撫子が絶滅危惧種(346プロに生存を確認)なのと同じように、寡黙で硬派な男性というのもまた絶滅危惧種(346プロに生存を確認)と言っていい。
欲を言えば、更にそれプラス施設出身者に偏見や差別感情が無くて、精神的・肉体的に強い人がベストじゃないかなと思ってる。
先日、みんなで徹夜の映画鑑賞を敢行した際、伊吹さんおすすめの恋愛映画をみんなで観るタイミングがあった。
そんな時にみんなの好みの男性は、という話題になったので、ある程度ボカしながらそんな風な話をしたのだけど……そんなボクに、奏さんは無言でキャプテン・アメリカのBDを差し出してきたのだった。
見事にハマった。
「まあ、今そういうこと考えても仕方ないけどね……」
「れす」
そもそもを言えばボクたちアイドルだし、まず恋愛って時点で御法度みたいなものだ。
思考実験としては面白いかもしれないけど、あんまり本気になって考えるべきことでもない。
「おはようございます」
「おはようございますれすー」
言いながら教室に入ると、そこはいつもよりも遥かに静かな空間と化していた。
おかしい。普段だったらもっと男子連中が騒いでいるはず……と思っていると、遠くからクラスメイトの男子が渾身のドヤ顔でこちらを見るのが見えた。
成程、会話だけ聞いておいて、言葉の表面だけを捉えてマネをするっていう典型例か。
クラスの男子全員でやってるあたり、コイツら驚異的なまでに連帯感があるのかただのアホ揃いなのか分からないな……。
さて、それは置いておこう。
六月という時期は、正直なところ学校行事という面から見るとかなり不思議な時期だと思う。
世間一般には梅雨という印象が強いだろう。曇り空を見ることも少なくないし、雨なら尚更。だというのに体育祭を催すのだ。外で。
中止、順延も普通にありうるし、効率はあまり良くないと思うんだけど……何だっけ。行事が秋に集中することを避ける措置なんだっけ。
ともあれそこは一旦置こう。ここで重要なのは、体育祭となるとボクのこの……いっそ、やや振り切ってるとすら言える体力の無さが露呈することにある。
同じ組の仲間はと言うと、氷菓はダンスやってるからな――と言って基本、取り合ってもらえてない。早くも詰みである。
「体育祭の日都合よく仕事入らないかな……」
「なぁーに弱気になってんのよッ!」
「そん通りじゃ氷菓。気持ちで負けてどうする!」
「…………」
今回、ボクと同じ組になったのは、巴さんとレイナさんの二人。こっちは紅組。光さんと七海ちゃん、それからこの学校に同じく在籍中の
元々巴さんはかなり熱くなりやすい部分があるが、レイナさんは……光さんが相手チームにいるからだろうということは分かる。逆にボクのモチベーションは、正直に言ってそれほど高くなかった。紗南さんはゲーム貸し借りする仲だし、光さんとは娯楽室でニチアサ見る時に一緒になる。七海ちゃんは同じクラス・同じプロジェクトだし……と、本気で競い辛い。
あと何より運動というところがキツい。
「当日は叔父貴も来るんじゃろ? 良いトコ見せてやろうとか思わんのか」
「ボクの運動ダメっぷりは知ってるからいいよ」
「ハンッ、始めっから諦めてどうすんのよ! ……紗南かくるみにぶつければ勝機はあるでしょッ!」
「逃げとらんか?」
「逃げてないわよ」
でも適切な考え方ではある。
ボクの体力は、全力疾走した場合は多分50m前後で尽きる。そして今回のトラックは200mだ。4倍ある。
くるみさんは体力にあまり自信が無いらしいし、そこまで……うん。まあ…………どっこいどっこいの勝負ができるんじゃないかな……。
しかし紗南さんはあれで出不精ってことは無い。ゲームセンターにもしょっちゅう行ってるし、ダンスゲーム、音ゲーなんかも網羅する程度には体力もある。勝ち目が無い。
「こういう時は作戦を練るのよッ! ……悠貴が別の学校でホント助かったわ」
「陸上部じゃからな。光以外誰も勝てん」
「その光が敵だから色々考えなきゃいけなのよッ! 氷菓も賢いんだから何か案出しなさいよ!」
「え、ええ……?」
と言っても、頭脳が活かせるような案なんて……。
……いや、あるかも?
「いくつかできることはあるかも」
「本当か?」
「うん。頭脳プレーって感じじゃないけど……玉入れとか」
「ハァァン? 玉入れ? それで何ができるのよ」
「そこらへんにある玉持って来てくれたら全部かごに入れるよ」
「アンタ人間じゃねえわ!?」
「いや、けどスゴいぞ! こりゃあ行けるじゃろ!?」
しかし他に競技は山ほどある。ボクたちが出ないのもあるし……できるだけ頭を動かしてリードできる方法……。
「大玉ころがしの最適ルートの算出とか」
「できるの氷菓だけでしょ!?」
「複数人数でやるってことを忘れんでもらえるか」
と言っても、あとは騎馬戦に組体操、障害物競走、綱引き……体育祭でポピュラーな競技だけあって、体力以外に使いどころがないようなものも多い。
こういう場面はそれこそ体力に勝る人たちが主役と言っていいような場面なんだし、ボクみたいなモヤシが出しゃばるようなものじゃない気がするんだけどな……。
「…………あ」
「どうしたのよ巴」
「……二人とも。ちぃっと……紅組の女子呼んでこいや」
「何か思いついたの?」
「応……と言ってええんか分からんがな。ちぃっと……うちらが割食うが、ええんじゃな?」
「早く言いなさいよッ!」
「……わぁーった。したらな――」
…………えっ。
@ ――― @
そうして訪れた体育祭の当日。ボクたち三人は体育館の裏手で悶えていた。
紅組の女子を総動員して実行する計画、それは、ボクたち三人を前面に押し出しての応援合戦――――それを、チアリーダーの格好でやる、というものであった。
「ぬ゛ぅぅぅぅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ん゛!!」
「おう覚悟決めえよ氷菓、レイナァ! うちも恥ずかしいんじゃ!!」
「じゃあ何でこんな露出度高いの選んだのよおッ!?」
「クラスん女子が選んだんじゃコイツを!!」
「「自分で選(びなさい/んで)よ!!」」
揉める。そりゃあ揉める。
事前に覚悟していたとはいえ当然揉める。
何せ今日のこれは仕事じゃない。舞台でもない。だというのにあんな露出度高いチアリーダーコスで応援合戦に出ると言うのだ。揉めるし悶えるしもだえ苦しみもする。
「最悪だ……!」
「じゃけどもうこれ以外無いぞ! 白組は確かに正統派に学ラン応援じゃけど、インパクトっちゅうところだと若干薄い!」
「……………………氷菓!!」
「ぬ゛ぅぅぅぅう゛う゛う゛う゛!!」
たっぷり葛藤した様子を見せつつも、決心した様子でボクを呼びつけるレイナさん。
確かに! 確かにそれは分かるんだ!
しかしこれは! 見世物にされるし今後の学校生活で後を引くことは確実!
明日にはまた外面だけ見て告白しに来る連中が増えるだろう、けどインパクトを重点に置いて得点を目指すならここでこれを着て応援合戦に出るのが……!!
レイナさんも巴さんも早生まれでもう三年生……今年が最後の一年……!
……………………ここまで来て今更友達を裏切れるかッ!!
――その後、意を決して三人で赴いた応援合戦は、当初の巴さんの目論見通り、後出し+凄まじいインパクトのおかげで前半の白組の印象をぶっちぎり、見事に得点差をつけるのに成功。
もういっそ突き抜けようということで髪ポニテにしてみたり思いっきり動いてみたりして、顔も真っ赤になったり凄まじい勢いで
ここ最近で忘れたい出来事ナンバーワンに躍り出たけど。
しかし直後に行われたリレーでは、走り辛そうに腰回りを叩いたり、走るのに適していない前かがみな体勢で走り出す男子が続出。
白組紅組に関係なく行われた無差別テロなどと称されたり、光さんに「あれはやりすぎ」と
なお、チアガール作戦の成果はプラマイゼロで、むしろボクの玉入れの方が点数的には遥かに猛威を振るっていた。
結果的には勝てたけど解せぬ。
みんな聞いてくれ。
(担当が圏外で)俺が死んだ。
大事な総選挙がまた一回終わっちまった。
けどここで足を止めるわけにはいかねえ。俺の執筆はまだ終わってねぇからよ……。
それはそうと南条と茄子さんと日菜子、CDデビュー&声優追加ほぼ確定。
そしてウサミンについては、シンデレラガールおめでとうございました。
※ 5/20 微修正