刻一刻と、ライブの時間は近づきつつある。
今回のライブは本当に臨時も臨時……誰一人想定していなかった事態ということもあり、曲もユニットも……衣装すらもその場で用意した急造品ばかりだ。
準備不足は否めない。実際、ボクらの衣装もだいたいがさっき買ってきたばかりだったり持参品だったりの水着だし。ただ――それでも気分は悪くない。いつものライブ前の心地よい高揚と、ほんのちょっとの自信が胸に満ちている。
「氷菓ちゃん、調子はどうですかぁ?」
「あ、はい。問題無いです」
横から愛梨さんに声をかけられる。状況が状況だ。緊張していないと言うと嘘になるけれど、でも調子そのものは悪くない。緊張感がいい塩梅で精神を冷やして研ぎ澄ましてくれる。
うん――万全だ。今すぐ行こうと言われても対応はすぐにできる。
「こずえちゃんは?」
「だいじょうぶー……ひょうかはふあんー?」
「ううん。不安は無いよ。でも……」
ただ、ちょっと懸念はある。
プロデューサーはボクらを信頼して愛梨さんと一緒のライブに出した。そのことは分かるし、その期待に沿えるように頑張りたい。
それでも、愛梨さんとボクらとの間には確かな差がある。愛梨さんは346プロのアイドル事業部の立ち上げ当時からいた。芸歴もそれなりに積み重ねてきているし――流石に芸歴という点で言えば
自分の魅せ方、観客のノせ方、映り方……そういったものを既に熟知していると言い換えてもいい。当然、単に模倣ができるというだけのボクでは到底太刀打ちできるはずもない。
「愛梨さんの足を引っ張らないかは、少しだけ」
「大丈夫ですよ~。もっと気楽に行きましょ♪」
「そうは言いますけれども」
当の愛梨さんにそう言われると余計にプレッシャーを感じる。
……いや、本人にそんなつもりは全くないのは分かってるんだけども。それを理解しているからこそ余計にプレッシャーというか。
むぅ……身内以外とライブするのってこんな感じなのか……これは結構気を遣う案件になるぞ……。
「ひょうかはめんどくさいー……」
「ちょっと面倒さんですね~」
どうしてボクはこんなところで心を抉られなければならないのか。これが分からない。
確かにボクはちょっと面倒な人格してるって自覚はあるけど、前と比べればむしろ改善されてる! ……はずだ! ……多分。
……あ、ちょっと待てよ。不安なこと、あったぞ。
今日、結局晶葉と志希さん、何も変なことしてない。
いや、変なことしてないならしてないでそれに越したことは無いんだけど、あの二人が静かにしているってだけで何か言い知れぬ不安を感じる。
単に海を満喫しているだけなのか……いやそもそも、海に行った経験に乏しいボクだから満喫してるだけっていう発想が出ることを否定できないけど……。
いや、考えすぎか。考えすぎだろう。考えすぎのはずだ。
……だったらいいなぁ。
「……ちょっと立ち位置とかの確認しよ。愛梨さん、センターでいいよね?」
「それはいいんですけど~……氷菓ちゃんとこずえちゃんは、歌と、ダンスと、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。やろうと思えば今すぐでも」
「みててー……」
その場でこずえちゃんがすたん、すたたん、とステップを踏む。砂浜という場所柄、少しやりにくそうにはしているが……それでも振り付けは完璧だ。流石である。
これには愛梨さんも驚いた様子だった。ボクも同じようにやってみせると、余計に目を丸くしていた。
外側から見るとやっぱりこれはちょっと異常といえば異常かもしれない。志希さんも似たようなことはできるけど、あれはなんというか、脳の出来が一般人のそれとかけ離れてるっていうか……パソコンに喩えると、CPUとメモリが他の人よりランク高すぎて結果的に記憶「できている」っていうか……それも分かりにくいかな……。
……まあ何でもいいや。
「すごいですね~! それじゃあ、私も――――」
「いや、何を踊るんですか」
「『アップルパイ・プリンセス』を?」
「持ち歌じゃないですか」
「こずえもやるー……」
「やらなくていいから」
持ち歌やっても、もうとっくにマスターしてるんだからそれ意味無いのでは?
というかこずえちゃんみりあちゃんからちょっと影響受けてない?
積極性を持つのはいいことだと思うけど、こずえちゃんがやるーしたらそれはそれで色んな意味で破壊力が凄いと思う。色んな意味で。文字通り何でもこなしてしまいそうだ。
「し、白河さん、少しいいか!」
「ん?」
と、そんな話をしている間に、プロデューサーがこちらに駆けてくる。どうも慌てたような様子だ。何かあったのだろうか。
「どうしたの?」
「一ノ瀬さん見てないか!? さっきから姿が見えなくって……」
「あっ」
「今何を察したんだ!?」
ああ、これ何かやらかすな……十中八九。
プロデューサーが来たってことはだいたいそういう意味だ。ボク知ってる。
「……多分今なにか実験してるか、しようとしてるから外だと思うよ」
「そ、そうか……困ったな。一ノ瀬さんが見つからないと何をしでかすか分からないし……」
そこでチラチラとボクを見るあたり、どうも志希さんのことならボクに聞けばだいたい大丈夫……とでも思ってるのかもしれない。
というか、実際ボクならだいたい分かるといえば分かる。けど……。
「今後の方針だと、ボクも晶葉もいない状態で、志希さんのソロ活動をするってこともあるんだろうし……その時対応しなきゃいけないのはプロデューサーなんだから、今のうちに慣れとかないと」
「それは……そ、そうだな……」
ついつい楽な方に流れちゃう、か。分からなくもない。
分からなくもないがそれはそれとして、志希さんの場合は飽きたら失踪もするんだし、もうちょっと志希さんについて詳しくなっていてもらいたいところだ。下手しなくとも多分週一ペースで実験台にされるだろうし。
「それと……なんだが。少し、外を見てくれるか?」
「外?」
言われるまま外を見る――と。
「……うおっ!?」
未だかつて見たことがないくらいの人数が、会場に詰め掛けているのが見える……!
な、何でこんないきなり!? さっきはまだだいぶ少なかったはずだぞ!?
「……ぷ、プロデューサー……これ何?」
「二時間か前くらいに、プログラムの変更を通知したんだ。そしたら『あの346プロの十時愛梨や凸レーションがいる!』ってことがSNSや口コミで広まってしまって……ほんの二時間だってのに、大勢押しかけてきて……」
「当日券売ったら売れて……?」
「……ご覧の有様」
……いや、まあ。その、分からんでもない。
愛梨さんは一回の公演で万越えの観客動員数を叩き出すこともあるほどの人気アイドル。それが唐突にこんなところに現れてライブするなんてことになったら嫌でも人は集まってくるだろう。
ボクたちなんて今まで千人超えるような
うわぁぁ、ヤバい! 緊張してきた! お腹冷える!
「ひょうか、あたまぜんぶまっさおー……」
「ホントですねぇ。うふふ、爽やかな感じ♪」
「爽やかて」
その言葉聞いて逆に緊張消えたよ。
髪も青いし瞳も青いし顔も青くってブルーハワイってか。笑えない。
「……逆に考えよう。この先、特に夏フェスだと今よりもっと人数が増えるんだ。今回のは他の出演者のおかげもあるとはいえ、突発的な事態……今後のことを思えば、精神を鍛える訓練になるはずだよ」
「そ、そっか……うん、分かった」
うん……確かに、これも良い経験だ。そう思えばなんてことは……なくもないけど、少なくとも精神的な負担は大きくはならないはず。
……まあ、ボクの場合そもそも精神状態がパフォーマンスに影響することは無いんだけど。真理に達した模倣というのはそういうことである。
とはいえ、ライブ以外の模倣を必要としない状況を想定するなら、こういう訓練も非常に有効だ。必要、と言い換えてもいい。
「とりあえず、伝えなきゃいけないことは伝えたし、俺は他の子たちに一ノ瀬さんの行方を聞いたりしてくるよ。それじゃ!」
「あ、ちょっ……」
と、引き留める間も無く、プロデューサーはそのまま別の場所へと走り出した。
いや、まあ……このライブでの目的を通達しておくのは決して悪いことじゃないし、それでいいと思うけど。
それはそれとして、プロデューサーに代わるようにして愛梨さんがこちらに近づいてくる。
……すごい迫力だ。具体的に言うと、ちょうど真正面。ボクの目線のすぐ先……雫さんのそれをこんな間近で見ることは無かったし、正直言うとボクは今、ものすごくこう、圧倒されている。
相対的に見るとそれなりってだけで、絶対数値で見るとモノスゲーイんだよな……愛梨さんのお山……。
「ところで氷菓ちゃん、ちょっといいですか?」
「あ、はい。何ですか?」
「ええっとですねぇ。例の、『あの』お話なんですけど……」
例の、あの――――ああ、そうか、分かった。そういうことか。アレね。
確かに、よく考えたら愛梨さんもだし凸レーションの三人も同じようにあっちの世界に行ったことがある人だ。志希さんたちが伝えるよりも先に何とかしてあっちの世界に行ったことのある誰かに伝えとかなきゃ、と思って、撮影で一緒になる機会の多い美波さんと凛さんには既に伝えてある。愛梨さんにもそっちの方向からちゃんと伝わっていればいいんだけど……。
「えっと……愛梨さん、悪いんですけど、周りに人が多いとちょっと話しづらいことですし、人がいないところで……っていうのじゃダメですか?」
「あっ、それもそうですね。それじゃあ……えっと……どうしましょう?」
「愛梨さん、いつも忙しいでしょうから時間が空いた時に携帯の方に連絡ください」
例の件について話したいのはやまやまだけど、その話をするためには少し……どころじゃなく、環境がよろしくない。
愛梨さんはあまりゲームやアニメに詳しい風でもないし、誤魔化すのも難しい。ここじゃ嫌でも注目を受けてしまうし、せめてこの会場以外の場所なら、応じてもいいかなとは思うんだけど……。
「スマホ……は今無いか。えっと、うちのプロデューサー経由で愛梨さんの担当プロデューサーさんに電話番号を伝えてもらいますから、それで」
「はい、分かりました。それじゃあまた今度、お話しましょうね♪」
ぎゅっと手を握りに、愛梨さんがこちらに近づいてくる。お山も近づいてくる。
結構な圧迫感だ。何せ正面を見ればそのままお山がそこにあるという状況でもある。ぽよぽよふにふにゆさゆさどたぷん。すごい。愛海さんが熱中するわけだ。凄まじい母性の象徴がそこにある。いっそ顔をうずめてこのまま眠りたいような衝動に――――。
「うわああああああっ!!」
「氷菓ちゃーん!?」
――――駆られる前に、腕を用いずブリッジのような格好をしてそのまま頭を砂浜に突っ込んだ。
あ……危なかった……! 危うく
お山の道は修羅の道。セクハラで訴えられることを頭に入れて、なお行動を起こせる人間のみが突き進むことができるものだ。ボクには覚悟が足りない。ここで止まらなければ危なかった。
その点愛海さんのブレなさはいっそ清々しいほどだ。ボクには到底真似できることではない。ボクは止まるからよ……愛海さんは止まるんじゃねえぞ……。いやどうせ止まらないか。
「だ、大丈夫ですか~……?」
「い、一応……」
このくらいなら死にはしない……はず。痛いことは痛いけど。
「髪……砂だらけだけど、洗ってあげましょうか?」
「……い、いえ、自分でやります」
「ほんとにできるー……?」
そういや人に髪洗ってもらったことってそんなに無いなー……とか思ってしまったけど、海のシャワーでやることでもないだろう。せめてお風呂……いやお風呂もマズいか。もういちいち考えずにおこう。
なんか最近ボクの頭もちょっとゆだってきてるな……夏だからかな……?
「……と、ともかく! 雑事は一旦置いておいて、まずライブのこと考えよう!」
「あんまりしんぱい……ないよー……?」
……うん、こずえちゃんに言われちゃ心配すること何にもないんだろうなーなんて、確信めいたものが湧いて来るけどさ。
それに、いつまでも緊張してなんていられない。
これはチャンスだ。愛梨さんのネームバリューのおかげで多くの人がこの会場を訪れている。それに伴って、ボクらのパフォーマンスも見てくれる可能性は高まるはずだ。それどころか、愛梨さんのパフォーマンスのそれに匹敵するものを披露できれば尚のこと……ファンが増えてくれるってこともあるかもしれない。
なら、俄然頑張らないと。ボクの知名度が上がれば、晶葉と志希さんの知名度だって一緒に上がっていくんだ。ここでやらなきゃ嘘ってものだろう。
「あ、いたぁ☆」
「あれ、きらりさん?」
「おっすおっす☆ 折角だから、みんなで円陣とかどーぉ?」
「あ、いいですね~♪」
「……円陣かぁ」
……身長的に大丈夫かなぁ。
いや、大丈夫か、流石に。愛梨さんとも更に違って、きらりさん相手だと胸元より更に下あたりにボクの頭があることになるんだけど……。そこは合わせてくれるだろう。きらりさん、かなり気遣いの達人だし。もっとも、それはそれでやや心苦しいんだけど……。
「掛け声、どうするの?」
「いつもどおりいこーよ! 346プロファイトー! で!」
「それじゃあ、愛梨ちゃん、お願い☆」
「はぁい! それじゃあみんな、346プロ、ファイトー!」
「「「「おーっ!!」」」」
みんなで一致団結――やっぱりいいなあ、こういうの。
みんなと気持ちが一つになっているみたいで、楽しい……というか、嬉しい。ちゃんとボクもプロダクションの一人なんだなぁって実感できる。
なんだか、心がほんわりするというか……どうなんだろ、これはこの表現でいいのかな?
ともかく、あとは野となれ山となれ。今目の前にあることを全力でやり遂げていくとしよう。
そして十数分ほどして、公演が始まった。
この公演自体は346プロの主催じゃない。ボクたちはあくまでピンチヒッターで、メインになるのは他のアーティストの皆さんだ。当然、ボクらの出番までにはまだ少し間がある。
……と思っていたけれども、その時と言うのは思ったよりも早く訪れた。配分が一人当たり一曲ということもあって、どうも回転率が良いようだ。
ボクらの一組目は、
熱狂……うん、まあ、熱狂だ。というかちょっと熱狂しすぎな気もするけど、これもある意味では仕方のないことだろうか。
とときら学園は地上波で放送している番組だ。その知名度も相応に高く、出演者であるジュニアアイドルのみんなも同様。もういっそのこと彼女ら目当てで見ているような人も大勢いるくらいだ。
そのみんながこんな風に出演しているとなれば、当然こんな風に熱狂もする……ということだろう。それにしてはいささか異様に籠った熱気を発しているような気がしないでもないけど。
次いで、二組目は
しかし、そんな不安も実際に演目が始まれば消えて失せる。確かにまだきらりさんや莉嘉ちゃんには及ばない、が――それでも重ねてきたレッスンは裏切らない。二人に負けないくらいに、しかし、ちゃんと二人を主役として立てて――しゅがはさんは前へ前へ出ようとしてたけど――五人の息の合ったパフォーマンスで見事に不安を捻じ伏せていた。
そして――――三組目。ボクたち三人の出番だ。
五人と入れ替わりで、勢いよく飛び出していく。同時に、およそこれまでに感じたことの無いほどの大きな歓声が胸を打った。
「それじゃあ、次もどんどん盛り上げていきますよ~!」
「夏だからこそのハイテンポなナンバー、お届けします!」
「いくよー……」
こういった、出演者が入れ代わり立ち代わりしていくからこそのアドリブと口上。うん、やっぱりこういうのはテンションが上がる。
ところで愛梨さんが出てきた瞬間に体育座りをし始める男性客が増えたんだけど、あれは何でなんだろう? ステージ、だいぶ見えづらいはずなのに。
まあ何でもいいか。
しかし、当然とはいえやっぱり愛梨さんはスゴい。ボクとこずえちゃんは確かに完璧に振り付けも歌もこなせているし、そこから発展させることもできる。けれど愛梨さんは当然にその上を行く。
それは例えば、お客さんの目を惹き、一切視線を切らされることなく最高のパフォーマンスを披露する技術。場合によっては小悪魔的とすら言えるほどの絶妙なタイミングで視線を送り、あえて振り付けや歌の一節を崩す大胆さ。記憶力や成長性はややボクらの方が上かもしれないが、それだけではたどり着けない領域の技術や心構えをこれでもかと言うほどに見せてくれる……!
敗北感……を感じるというのは、いささか以上におこがましい。ボクはまだ一年目の木っ端アイドル。経験も発想も、ましてや精神性も何一つとしてその背には届かない。
だから、この技術をここで少しでも吸収するんだ。いずれ自分が披露するという時のため。今後できるであろう後輩に伝えていくためにも……!
このライブは、とにかく「学ぶため」のものだと自ら位置づけていたためだろうか。必死になって愛梨さんに食らいついていくと、あっという間に時間は過ぎていった。
名残惜しくも、清々しい……得るものの多い時間だった。それはきっと、こずえちゃんも同じだろう。
ステージから退出するまでの間、愛梨さんは、優しげな笑みでボクらに視線を送っていた。それはきっと、先達としてボクらに贈るエールだったのだろうと信じたい。
舞台袖にはけていくと共に、七海ちゃんたち三人のユニット――今回が初めての運用となる、「ファタ・モルガーナ」が駆けていく。
イタリア語で言う「蜃気楼」。あるいはアーサー王物語に登場する湖の精霊「モルガン・ル・フェイ」。あるいは三位一体の女神を意味する言葉だ。
水に関わる名前と、マキノさんの名字の「神」をかけた命名だろう。プロデューサーのセンスはこんな感じで時々蘭子さんに近づいていく。
魔女、と思うとなんだか違和感があるけれど、水辺の妖精だという風に考えると、なるほどと頷ける。
本人たちが練習していたと豪語するだけあり、そのパフォーマンスは非常に優れたものだった。クールな印象のある「夏恋 -NATSU KOI-」だが、その印象を損なうことなくしっかりと自分たちの色を出して表現できている。元々マキノさんと泉さんが比較的クールな性格をしているというのもあるだろうけど、そこにややほんわかした雰囲気の七海ちゃんが入っていくのがある意味で功を奏した。どうしても鋭い印象になりがちなこのユニットに優しい雰囲気が組み込まれたのだから。
……さて、とりあえずこれでボクらの出番はちゃんとやり切ったと言えるだろう。あとはフィナーレとして、出演者で一曲歌って終了――となるわけだけど。
(それにしてもあの二人、結局何もしなかったな)
その懸念があったのだけど、まあ流石にライブを台無しにはするまいか。
……いや、台無しにしないだけでその気になったら何でもするだろうけど。ともあれ今はこの状態が喜ばしい。
ボクら三人を含む複数のユニットが、司会の方の紹介に合わせてステージに飛び出していく。やがてボクたち346プロのメンバーも呼ばれ、同じように駆けだして行った。
フィナーレを飾る歌が終わり、ステージの幕が降りる。心地よい疲労感と達成感が満ちて、自然と笑顔がこぼれた。
――――そして次の瞬間、背後で轟音と共に謎の色彩が宙を舞った。
「「「!!!??」」」」
「氷菓ちゃん、あれ何ですかぁ?」
「……さぁ」
空高く打ちあがる極彩色はその直後、花火にも似た――というよりそのものの――爆音を発し、周囲に赤や青や緑や黄色の火花を撒き散らす。
昼の空、だというのにその色合いは空の青にも負けず、むしろそれらを彩る存在として存在感に満ち満ちている。観客は思わぬサプライズに大喜びだ。
同時に、ボクはこの状況の犯人について大まかに目星は付いていた。昼の花火でこんなことなど普通、ありえない。ありえない、んだけど……。
「……でも、思ったより綺麗にできてるね」
「そうですね~」
まあ多分あの二人だろう。どこかから大袈裟なくらいの笑い声が聞こえてくる。後でクラリスさん(カレー好き)からのお説教は避けられまい。
流石に、ボクも監督不行き届きになる……ということは無いだろうけど、今は巻き込まれないようにそ知らぬふりをしているとしよう。実際知らないし。
「どうでしたか? 氷菓ちゃん。今日一緒にやってみて」
と、ふと隣の愛梨さんがそんなことを聞いてくる。
聞いてはくるが……ボクの答えとしてはもう決まっている。
「楽しかった。また、いつか愛梨さんと一緒にやれたらな、って思います」
「うふふ♪ じゃあ、また一緒にライブしましょうね~♪」
「こずえもやるー……」
まだそれやってたんかい。
……いや、でもこの組み合わせでも、他にやる機会あったらやってみたいな。
今回のことは良い経験になったし、愛梨さんとも仲良くなれた……と思う。こういう副次効果を狙って編成したのだとしたら、プロデューサー、結構したたかでちゃっかりしてるのかもしれない。元々、仕事のことではかなり有能だけどね。
……全くの余談だけど、あの後戻ったらやっぱり志希さんと晶葉は砂浜に正座させられていた。
どうやら水中から発射して爆発する色付き花火なるものを試してみて、実際成功だったとのこと。今まで静かにしていたのはこの準備のためだったのだという。
全く懲りない悪びれない。