青空よりアイドルへ   作:桐型枠

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42:王冠の日

 

 

 

 フリルのエプロンには、「今日のまかないゴハン」というコーナーがある。その日の出演者の中で一人、メイン食材を使ってみんなに食事を提供するという内容のコーナーだ。

 このコーナーにおいては基本的に評定は行わない。あくまで出演者のダベりを主題にしたコーナーであり、このコーナーだけ料理番組と言うよりはトーク番組という風でもある。

 レシピなどを公開することはあるものの、やっぱりアイドルを主眼に置いたつくりをしているからこそのコーナーと言えるだろうか。

 毎回出演者は異なり、場合によってはフリルドスクエアの四人が誰もいないということもある。その回で印象的だった人物が主に出演することになっていて、ユルい雰囲気がまた特徴的だ。

 

 

「お待たせしました。えび天蕎麦です」

「おー、来た来た♪」

「おいしそう……」

 

 

 今回の出演者は、色んな意味で功労者という扱いとなったボクと、被害担当であるフリルドスクエアの四人だ。

 五品も食べたその日のうちにまだ食べられるのか……という疑問はあるだろうけど、基本的にこのコーナーはメインのそれから時間を置いての撮影となるのでそれほど問題は無かったりする。そもそも、五品と言っても一人前を五人で分けたものを五品だ。特に問題はないと言えば無い。ボクは除く。

 さて、何はともあれ収録だ。

 

 

「今回は食べやすいように尻尾は取っています。それから、こっちはエビの殻と頭のから揚げです。カリカリにしてありますけど、尖ってるところもあるので気を付けてくださいね」

「はいはーい。いやぁいいねぇ氷菓チャン。家庭的ぃ」

「どこでこういうの習ったのかな?」

「どこでってわけじゃないですけど、家で作ってるうちに覚えて、今はなんとなく趣味みたいにやってます」

「へぇー……」

 

 

 今趣味として料理してることに関して、穂乃果さんたちは寮生だから知ってるんだけど、まあ、この辺はテレビ向けの解説だ。

 柚さんは関東圏だから寮には入ってないけど、何かと泊りに来たりしてるから知ってると言えば知ってる。言ってみれば今回の出演はその辺の縁もあると言えるだろうか。そう考えると、日々の出来事も無駄にはならないんだなぁと思う。

 

 

「こうして見ると、全部無駄なく使えるんですね……」

「そうですね。殻はこうして揚げる以外にもダシ取りに使ったりもできますし、使おうと思えばほぼ全部使えると思います」

 

 

 勿論、下処理は必要だけど。

 例えば背ワタは取らないと臭みが残るし、尻尾も下処理しないと、中にあまり綺麗じゃない水が残って、体にも味にもよろしくない。そういうところに気を配るんだぞという風におじじにも教わっている。ちょっとニュアンスが違ったような気もするけど、まあ、美味しく食べるための秘訣だろう。多分。

 

 

「それにしても今日は大変だったね……」

「ええ……」

 

 

 柚さんがそう話を切り出してボクが答えたその瞬間、スタッフさんから笑い声が漏れた。よくバラエティであるあれと同じような笑い声だ。

 いや笑いごっちゃないぞ。そもそもあれだけのバッティングさせたのスタッフさんたちじゃないか。苦労した理由の半分はキャスティングしたスタッフさんたちだよ!

 ……まあ、言いはしないけど。乗り切ることはできたし。

 

 

「いつもこんな感じなんですか?」

「ううん、流石に今回ほど大変なことは滅多に無いよ」

「アシスタントつけたらどうなるかっていう実験大作戦みたいなところはあったから。そういう意味じゃ今回大成功って感じ!」

「いえ、そこはどうでしょう……」

「? 何で?」

「ってことはこれ、次からハードル上がるってことじゃ……」

 

 

 あっ、と皆が一斉に表情を暗くした。

 スタッフさんは爆笑した。

 

 

「ほ――本当だ! しかも次から氷菓チャンいないじゃん!」

「あ、フリップ出た。『次回のゲストは宮本フレデリカさんと鷺沢文香さんとピュアリーテイルの三名です』だって」

「……あ、安心……?」

「こずえちゃんは分かりません」

「でもこずえちゃんをフォローできれば大丈夫ってことだよね! うん!」

「フレデリカさんは何をするか分かりません」

「助けて葵ちゃーん!!」

 

 

 まあ、こずえちゃんの場合教えたらすぐにできると思うけど。

 五分間である程度まで教えたらすぐにやってくれる……かもしれないし腕力的に難しい部分もある、かもしれない。

 芳乃さんと聖ちゃんは問題無いだろう。文香さんは……どうだろう。レシピ通りに見ればできるかもしれないけど、この場でメイン食材を発表して、45分という時間制限があって……となると、パニックになってちょっと失敗しちゃうかもしれない。

 フレデリカさんは……分からない。分からないんだ……。

 上手いという話も聞くしそうじゃないとも聞く。適当にやるとも聞くし実はかなり計算してるとも聞く。なんというか一言で言い表せないのだ。流石にわざと不味くするような真似はしないと思うけど、何か一波乱起こすのは間違いない。

 

 

「それで、次回のアシスタントは誰になるんです?」

「『次回は安部菜々さんです』」

「菜々さん……ってお料理得意なの?」

「そういう話はあまり聞いたことはありませんけど」

 

 

 多分上手いとは思う。でも、それはそれとして被害担当だろうな……。

 そんな共通認識がボクらの中に生まれた。

 菜々さんは苦労人なのだ。

 

 

「……まあ、今回ほど苦労することは無いと思いますので……」

「そうですね。今回が特別アシスタントの負担が大きかったかもしれません」

「晶葉と志希さんはダメですよ……」

「ロボットだもんねぇ」

「流石にあれは他の人には任せられませんし」

「ていうか分かんないよ!?」

 

 

 ですよね。

 ……いや、泉さんなら大丈夫な気がする。プログラミングに関しては晶葉よりも随分先に行ってるし。料理も、必要程度だけど割合できる方。今後晶葉が出演するならボク以外では泉さんか真奈美さんがいい……のかな。というかそれ以外思い浮かばないのもあるけど。

 

 

「ところでボク今後ゲストで出る機会あるんですか?」

「…………」

「眼を逸らさないでください」

「あの対応力見てたらねえ……」

「評価が欲しいんですけど……」

「じゃあこの辺で!」

 

 

 と、突如立ち上がった柚さんがボクの名札をスタジオ脇のパネルに貼り付けた。喜ばしいことに金である。位置的には中ごろだけど、それにしても高い順列ではあった。穂乃香さんやあずきさんも頷いているようだ。

 ……いや、しかし……いや、そういうことでいいのか? いやいいか。仕方ない。

 

 

「番組外でこういうことしちゃっていいんでしょうか……」

「番組の1コーナーですから」

「それに、アシスタントやってくれた子はこっちのコーナーで料理披露する形式にしようと思ってるから大丈夫だと思うよっ」

「こっちとしても勿体ないとは思うし」

 

 

 なるほど、そういうことなら文句は……無いではないけど、納得。

 

 

「……あ、そうだ。関係ない話ですけど、今度ソロのシングル出します」

「今それ言う!? でもおめでとう!」

 

 

 個人的にもふっと思い出したから、あ、やらなきゃと思っただけなのでアレだけど、正直タイミング的にもアレだなと思わなくはない。

 この辺もトークスキルの部分ではあるよなぁ……。

 いやでも、こっちのコーナーはユルいトークが軸だからこれはこれでいいのだろうか。スタッフさんたちも笑って見ててカットする様子も無いし。

 

 

「おめでとうございます。曲名は?」

「『Dearest Sky』って言って、近日中に発売です」

「目標は何枚?」

「特に目標は……買っていただけるだけで嬉しいです」

 

 

 これはまあ、正直なところ。日高舞(ひだかまい)さんじゃないんだから、ミリオンは流石に高望みにもほどがあるし。

 まあ、規模だけ考えると、新人なのだしいいところ初動一万行けばいい方……かなぁ。その辺よく分からないし、プロデューサーに一任しておけばいいか。またプロデューサーが過労になるのは正直申し訳ないけど諦めてほしい。自己マネジメントができるほど才能は無いんだ。

 

 ともあれ今回のコーナーはこんな感じで緩やかに和やかに進んでいった。

 こっちのコーナー、実に平和でいいなぁ……。

 

 

 

 @ ――― @

 

 

 

 さて。

 残暑も厳しい九月の初め頃、ボクと志希さんは二人でクローネのプロジェクトルームに訪れていた。

 清潔感のあるシックな内装だ。既にみんなの私物が溢れる――いちばん多いの晶葉のだけど――スターライトプロジェクトのプロジェクトルームと異なり、生活感に欠けるような印象を受ける。

 ……が、部屋の端を見ると、どうやらアニメや映画のDVDがあるようだし、予備と思しきタブレット端末やハードカバーの書籍なども見える。メンバーの皆さんの私物だろう。

 机の上にはファッション誌が。あれは……特定は難しいな。フレデリカさんかもしれないし美嘉さんかもしれない。

 隣を見る……と、どうも部屋の様相を見てうずうずしているようだ。

 

 

「志希さんステイ」

「え~?」

「ステイ」

「ぷー」

 

 

 どうやら綺麗すぎるのが気になるらしい。志希さんの部屋もうちのプロジェクトルームも割と小物が溢れてるから、綺麗すぎると落ち着かないのだろう。

 だからと言って実験がてらちょっと散らかしてみたら面白いかなとか、流石に思ってもやらせない。ボクもちょっぴり思ったりしないでもないけど。

 

 

「すまない、待たせたな」

「あ、お疲れ様です」

 

 

 と、そんなやり取りをしている間に、他の人を集めてきたのだろう。部屋の扉が開くと共に専務さんがこちらに呼びかけた。

 と言っても、仕事の関係上ここにいるのは数人。奏さん、フレデリカさん、周子さん、美嘉さん……こうして見ると錚々(そうそう)たる顔ぶれだ。いずれも、押しも押されぬ346プロの一流アイドルの皆さん。ここに志希さんが加わるのだと思うと、自分のことじゃないっていうのになんだか嬉しくなってくる。

 それからもう二人、一人はもう既に顔なじみになったアリスさん。もう一人は、クローネとラブライカの二足のわらじで活動を続けている才媛、アーニャさんである。

 

 

「紹介しよう。本日よりプロジェクトクローネに参加する一ノ瀬と白河だ」

「よろしく~♪」

「よろしくお願いします」

「Спасибо……あ、よろしく、お願いします」

「よろしくお願いね」

 

 

 専務さんの紹介に応じて頭を下げると、皆さんも同じように礼を返してくれた。

 相変わらず、こういう当たり前の挨拶をしてくれるとちょっと嬉しくなる……というのは、ちょっと変な考え方だろうか。

 

 

「諸君らには今後ユニットとして活動してもらう機会が増えるだろう。一ノ瀬は速水、宮本、塩見、城ヶ崎の四名と。白河は橘、もしくはアナスタシアと状況に応じてユニットを組み換える形で活動をしてもらう」

「分かりました」

「りょーかいで~す♪」

 

 

 なるほど、今回呼んで来た人の基準はそういうことか。

 よく考えればアーニャさんはだいぶ多忙な身。普通の時間にこうして会うのもなかなか難しいところだろう。その辺のスケジュール管理は大変だったんじゃないかなって思うけど……専務さん、普通に涼しい顔してるあたり、それを人ににおわせないのは経験の違いというものなのかな。

 

 

「さて、私はこれから仕事に戻る。今日は紹介までだ。諸君は各自の判断で交流するように」

「はい、お疲れ様でした」

「お疲れ様です」

「お疲れ様でーす★」

 

 

 ……いやでもやっぱ忙しいの見てて丸わかりだわ専務さん。

 普通、交流って言ったらこの後もうちょっと時間取って自分も、ってなるはずなのにとんぼ返りって。考えれば考えるほど相当なことではなかろうか。うちのプロデューサーもそれに並ぶレベルとはいえだけど。いやそもそもプロデューサーは17人プロデュースしてる時点で確実にどこかおかしいが。

 

 

「大変そうですね、専務さん」

「そうかしら? クローネの発足当初はもっと忙しそうだったわ」

「そりゃそうだろうけどね……」

 

 

 涼やかに言う奏さんに対し、美嘉さんはやや苦い表情をしている。何か前にあったのだろうか……と思うけど、そういえばライブラリで見る限り、美嘉さん、一時期変に路線を変えてた時期があったな。シンデレラの舞踏会からその路線の仕事もあまり見なくなった。その頃に何かひと悶着あったらしいことは明白だ。

 そもそもを言えば、プロデューサーにしろ専務さんの話を出すとほんの僅かに弱ったような表情を見せる。普段の困った時のそれとは異なり、どうも専務さんに対して上司という以上の苦手意識を抱えているように見えた。

 仮にシンデレラの舞踏会以前のことを話しているのだとすると……ボクはその時期アイドルに興味が無かった時期だし、知らないのも仕方ない部分はある……のかもしれないけど、それにかまけて知らないままでいるのは問題か。今度調べておこう。

 それにしても、今の厳しくも優しい専務さんのことを知っていると、前はあまり良い上司じゃなかったと言われてもちょっと現実味に欠けるな……。

 

 

「ん、まーでも今はいいんじゃない? 気にしたって仕方ないよ」

「そだねー。あ、お菓子食べる? フレちゃんが作ったんだよ~」

「え、本当ですか?」

「んーん、嘘だけど♪」

 

 

 ……何で今フレデリカさん別につかなくていい嘘を……?

 

 と、そんな風に訝しんでいると、不意に志希さんとフレデリカさんの視線が交わった。

 一瞬の交錯。そうして次の瞬間、志希さんは何故かボクの背後に回って珍妙なポーズを取り、フレデリカさんはボクの目の前で蛇拳の如きポーズをキメた。

 全く意味が分からない。二人は一体何を考えてどうしているのだろう。しかしボクが不思議に思っている一方で何か通じるものがあったのか、二人は瞬時に目を輝かせて手に手を取り合った。ボクを挟んで。

 

 

「何でさ」

「楽しいかなって」

「氷菓ちゃんが楽しいとフレちゃんも楽しいんだよ~♪」

「ボクは楽しくないです」

「でもフレちゃんは楽しいし」

「あたしも楽しいし?」

「強引すぎやしませんか」

「?」

「?」

「やっぱいいです」

 

 

 次は何故かダンスを始めた。ボクを挟んで。既にアリスさんは状況の変移に付いていけず、奏さんは意味深に笑うばかり。美嘉さんはオロオロしていた。カリスマはどこへ行ったのか。じゃあ助けて周子さん……と視線を向けると、無言でスマホを向けて写真を撮っていた。くそう。

 

 

「自助努力!」

「あっ、逃げられた」

「惜しかったにゃーん」

 

 

 何が惜しかったのかはまるで分からないが、とにかく一瞬のほころびを見つけてとっとと抜け出した。

 これも実験の一環だったのかもしれない。いや、あるいはただの遊びだったのかもしれないけど。

 そんな風になんとか抜け出せたタイミングを見計らってか、スッと割り込むようなかたちで奏さんが前に出てきた。

 

 

「そろそろいい頃だし、お互いの紹介も兼ねてそれぞれ分かれて話しましょ」

「Я понимаю……あ、分かりました」

「はい」

 

 

 ともかく、ボクはアリスさんとアーニャさんと一緒に部屋の片隅に移った。

 少しすると美嘉さんの悲鳴や美嘉さんのツッコミや美嘉さんの悲鳴が聞こえてきたが、まあ、あの四人相手じゃああなるだろう。ボクには手が出せない。頑張ってください美嘉さん。ご飯くらいは作ります。

 さて。

 

 

「……って言っても、あんまり新鮮な感じも無いんですけどね」

「そうですね。氷菓さん、ずっとドラマの撮影で一緒ですし」

「Да。私も……寮で一緒、なので……」

「ですよね」

 

 

 元々、アリスさんとはドラマでしょっちゅう一緒になってる。

 アーニャさんは多忙とはいえ未成年のための就業規定もあって夜間は寮に戻ってくるので交流の機会は少なくない。あっちに行ったことがあるという境遇も境遇だし、話す必要もあったりするのでそれなりに会話もする。

 ということで、どっちも知らない相手じゃないのだ。なんともやりやすい話である。

 ただ、うーん……改めて話すとなると、ちょっと緊張もするなぁ。

 

 

「……ご趣味は?」

「Астрономические наблюдения……アー、天体観測、を、少々」

「お見合いですか」

「ご趣味は」

「ゲームと読書を少々。いえそうじゃなくって」

 

 

 実に和やかな空間である。

 実を言えば二人とも趣味という意味では少し似通った部分があったりする。ボクは空の観察が趣味だけど、アーニャさんは天体観測が趣味。アリスさんもボクもゲームが趣味……と。なのでちょくちょく話の合う部分があったりする。

 もっとも、ボクがコンシューマの据え置き型ゲームを好むのに対してアリスさんは携帯ゲームが主体。その点で少しばかり話がかみ合わない部分もあったりはする。でもスイッチはどっちにもなれるのでこの話ならいくらでもできる。素敵。

 

 

「アー、ヒョーカは、何がスキですか?」

「空の観察と、ゲームです」

「よくお話しますよね」

「うん」

 

 

 もっとも、話せる内容というのがやや限られているので、基本は例のイカゲーだったり配管工兄弟だったりがメインになるか。あとはポケモンとか。ありすさんは比較的ライトなゲームがメインなんだよね。ややコアなゲームは紗南さんの方が詳しい。

 

 

「Небо……空、ですか……」

「うん、空」

「今度、一緒に、天体観察……しますか?」

「いいですね。行ってみましょう」

「Хорошо!」

「あ、今のは分かります。ハラショーってよく聞きますよね」

「いいですよ、って意味……ですね」

「結構万能な返事っていうのも聞くけど」

「Да。だいたいなんでもハラショー、です」

 

 

 ごく簡単な返答として使う、という話は聞いたことがある。了解、とか、分かった、とか。

 もっともボク、基本的にロシア語は分かんないんだけどね。近くならともかくあんまり行ったこと無いし。もしかしたら日常会話程度でも怪しいかもしれない。いやそれはほかの言語でもいつものことか……。

 

 

「折角です、し……寮で、みんなでホームパーティをしながら、というのは……どうでしょう?」

「あ、それもいいですね。ボク、そういうの初めてかも」

「あの、それパーティが初めてってわけじゃないですよね?」

「あはは、流石にそれは無いよ。うちでも誕生日パーティくらいはするし」

 

 

 あくまでこれは寮でのパーティが初めてじゃないかな、という話だ。

 プロフィールを見る限りどうもアーニャさんはホームパーティが好きだということが書いてあったし、今後もこういったことができるといいなあとも思う。

 

 

「あ……そうだ。アーニャさん、ゲームとかって、やりますか?」

「Игра……ゲームは、たまに、少しだけ……です」

「それじゃあ、私のおすすめを紹介したいんですけど、これがですね……」

「アリスさん、趣旨変わってきてる」

「……あっ。すみません」

 

 

 気持ちは分からないでもない。自分の好きなことを布教していきたいという人は多いだろうし。

 それにアリスさんのやってるゲームは割かしライトめなのが多いし、パーティゲームなんかもそこそこあるからみんなで楽しむにも適している。

 ……もっとも、パーティ系のゲームって人を熱中させやすいだけに、同時に喧嘩になりやすくもあるから、一長一短な部分はあるのだけど。園の子たちがやってる時なんか、そりゃあもう……うっ、頭が。

 

 

「じゃあ、今日の夜は歓迎会もあるみたいだから、そっちでお話します」

「あ、歓迎会ってあるんだ」

「Да。ナオが張り切ってました」

「かんじ、でしたっけ。やってくれるみたいですよ」

「奈緒さんが幹事……」

 

 

 奈緒さんが幹事かぁ……。

 健全な歓迎会になることは間違いないけど、何なんだろうこの微妙な不安感。安定してるといえば安定してる……というか、少なくとも変なことはしないはずなんだけど、何か、こう、変に振り回されたり予想外のことが起きたりしそうだ。これが凛さんや奏さんだったりしたら、想定外も含めて歓迎会に混ぜ込みそうな安心感があるんだけど。

 見れば、二人も少し苦笑していた。

 

 

「どうなるんだろうね……」

「ですね……」

「ネ……」

 

 

 ともあれ、交流の本番は夜だ。

 ボクたちはそれからしばらく今後の方針や活動内容の予想について話し合った。

 

 

 

 







 アーニャのロシア語は翻訳サイト任せなので誤訳があるようでしたらご指摘お願いいたします。

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