青空よりアイドルへ   作:桐型枠

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 時系列的に9月後半あたりのお話となっています。



51:お祭りは準備が一番楽しい

 

 

 

 ボクたちの通う中学校も、他の学校と同じように文化祭という行事がちゃんと存在している。

 ……とはいえ、中学校の文化祭だ。実際のところ、規模や内容がどうか、なんていうのはたかが知れているものだろう。親御さんを呼んで、体育館で合唱コンクールをして、演劇や自由参加で音楽を披露する……実際、前の学校がそうだったし、同じく公立校である今の中学校もその例に漏れないのでは、と思う。

 

 アニメや漫画で培われてしまった「文化祭」のイメージは、去年経験した文化祭により崩壊してしまっていた。

 日本人ならそこそこ抱く幻想だろう。模擬店があって、ライブがあって、ミスコンなんかもあったりして、芸能人が来たりもするんだ。で、人も自由に行きかう。

 ……実際にそういうことができるのはどうやら大学……か、学校によっては高校くらいからのようで、ちょっと拍子抜けした。まあでも、あと一年強待てばそういう文化祭――というか学園祭? もできるようになるだろうし、別にいいだろう。少し待つだけだ。

 

 

「うちの学校模擬店あるよ?」

「えっ」

 

 

 ――と、思っていたのだが。

 どうやら、前の学校とは違って、こっちの学校だと模擬店があるらしいという衝撃の事実が、法子さんの口から語られた。

 中学校で許可されているというのも、割ととんでもない話ではある。衛生観念の問題もあるし、火を扱ったらマズいという事情もある。万が一の時に教師が監督責任に問われる可能性が高いし、あんまりこういうことはやりたがらないと思ったんだけど……。

 

 

「そうなんれすか?」

「なんか、何年かずっと生徒会で先生たちと交渉してたんだって」

「わざわざこのために何年もって……」

「でもロマンれすよね~。海や川のヌシを釣るような感じれすよきっと」

「多分それは色々違うよ」

 

 

 そりゃあ文化祭という、ある意味大物を生徒の手で獲得しようとしていたのは間違いじゃないけど。

 それは違うよ。多分。

 

 

「それで二、三年生は許可が出たんだって」

「あれ。一年は?」

「小学校から上がったばっかりだからダメって聞いたよ」

「半年は経ってるのに『ばっかり』っていうのもおかしいれすね~」

「だよね」

 

 

 まあ、それは理解できないでもないけども。

 半年って言ったら、別の小学校の生徒が合流して、そろそろ新しい友人や授業にも慣れてきた時期だ。どうしても油断は出てくるだろうし、調子に乗る生徒も増える。その辺を戒めつつ、ある程度常識を弁えさせつつ……となると、やっぱり時間は必要だろう。改めて考えるに、妥当な判断か。

 

 

「まあ、どう転ぶやら分からないけどね……」

「そうなんだよねー。あーあ、ドーナツ作りたいなぁ」

「それは言ったら可決されるから大丈夫だよ……」

 

 

 何せ法子さんのドーナツだ。売り上げが見込めないわけがない。

 揚げ物にしていいかどうかという疑問もあるけど、そこは焼きドーナツにすればいいから結局問題無いか。ボクが同じクラスだったら有無を言わさず可決してるだろう。

 

 

 で、だ。

 問題はここから。文化祭だけあって、模擬店だけじゃなく合唱コンクールや演劇などもやらなければならない。

 ボクらのクラスの合唱曲は「時の旅人」。合唱曲としてはよく歌われる類のものだ。練習の計画も着々と練られているから、こちらは問題無い。

 

 いわゆる「男子ーちゃんと歌ってー」的な通過儀礼……は、無かった。同じクラスの女子に聞くところによると、特に歌の場合、「変にカッコつけるよりマジメにやった方が女子へのアピールになる」ということを主張して教え込んだのだとか。アイドルの多い学校だけに、どうにか自分に振り向いてもらえないかと努力している、ということだろうか。結果が伴っているかは別にして。

 

 さて、問題があるとすると……演劇の方か。

 

 

「えー今回の候補は、アーサー王物語、アルスター物語、ギルガメッシュ叙事詩……もうちょっと真面目に考えてもらえませんかー」

「「真面目でーす」」

 

 

 大真面目に考えてこれなら、もうちょっと自分がゲームやアニメやマンガの影響を強く受けていることを自覚した方がいいと思う。

 

 

「桃太郎とか赤ずきんとかこの歳でやりたくねーし!」

「他に何かあんの?」

「オリジナルとかあるでしょ!」

「脚本とか考えられんし」

「女子こそできんのかよ脚本」

「できないし」

「無理だし」

「…………」

 

 

 ……しかし、なんというかこの、何だろう。前の学校でも似たようなことはあったけど、こういう……クラス全体で何かやらないとという時、責任を押し付けあうというか、人任せにしがちというか……それでいて出た意見に対して文句をつけがちというか……。人間の習性のようなものなのだろうか。

 ボク自身も意見は出していないが、何をやるにしても特に文句は無いから置いておく。前例から考えれば出演者は基本的に立候補制だ。営利的な目的は無いとはいえ、万が一のことがあってもいけないので基本的には裏方を志望しておくのが筋だろう。多分。

 

 

「激論ってやつれすね~」

「多少はするだろうね」

 

 

 それに、なんというか……中学校という風土だからか、こうして見るところ、男女仲はあんまり良くない。

 今時の子供は進んでいるという話も聞くけど、それとは別……と言っていいのだろうか。付き合ってる子もいるようなのだけども。

 こういうのは、人類にとって永遠に付きまとう問題とかそういうアレなのかもしれない。めちゃめちゃスケール小さいけど。

 

 

「氷菓ちゃんは何か無いんれすか?」

「『マクベス』とか、『オペラ座の怪人』とか……って言ったって、そこまで大掛かりなものが準備できるわけじゃないしね。難しいだろうし……特別何かっていうのは無いよ。七海ちゃんは?」

「『人魚姫』とかれすかね~……?」

 

 

 それも題材としては悪くない。けど有名な劇団がやってる分、どうしても意識してしまうだろう。みんな中学生だから、その辺はなんとも敏感だ。

 そしてその結果、題材かぶりを過剰に恐れて、やたらとオリジナリティあふれる脚本にしてしまうのだ。

 

 

「ンだよ!」

「何よ!」

「何なのよ!」

「……そっちこそ何よ!」

「何ふざけてるのよ!」

「なんだっていうのよ!」

「キィー! 踏んずけてやるわ!」

「お〇ぎです!!」

「ピー〇です!!」

「ぶっ殺すぞ!!!!」

 

 

 ゴメンさっきの男女間の云々訂正するわ。仲いいな君ら。

 

 

「他、誰か意見ありませんかー」

「新撰組!」

「階段落ちとか殺陣とか誰ができるのよ却下!」

 

 

 よく階段落ち知ってるな。

 いや、むしろシン撰組ガールズ見たから知ってるのか。

 あと多分ボクはできる。

 

 

「じゃあ果てしなく仁義なき戦い!」

「ダメ却下!」

 

 

 というか明らかに中学生のやっていい題材じゃない。

 当時中学生の諸先輩方がやってたけど。

 

 

「しら……古宮さん、何かいい案ありませんか?」

「えっボク?」

 

 

 司会進行役を務めていた女子生徒に名指しされて、思わず自分を指差してしまう。

 どうにもこうにもなんともならない、という表情を前面に押し出され、オマケに拝まれるようにして頼まれたともなると、流石に断るのは心苦しい。

 

 

「お願い! 何かあったらでいいんだけど……」

「ちょ、ちょっと七海ちゃんと相談させてください」

「えっ」

「ありがとう!」

「氷菓ちゃーん……」

「ごめん」

 

 

 ちょっと巻き込んでしまうのは申し訳ないが、これもクラスメイトの義務ということで諦めてほしい。 

 ともあれ、である。

 

 

「プランがあるんれすか~……?」

「う、ウチでやった公演をアレンジする形式とかが……って思ったんだけど……」

「れすかー……んー、例えば?」

「加奈さんたちのやってたシング・ア・ソングとか……幻想公演とか、刑事モノとかもありかなと思ってるんだけど」

「ファンタジーはやめといた方が無難れすよ。でも、それなら沙紀さんたちのやってたアラジンもいいかもれす」

「アラジンかぁ……」

 

 

 いずれにしても、男女比を調整すれば悪くないんじゃないかなと思える。

 アラジンと魔法のランプなんかは元々が有名な話でもある。映画になった方は元の話をアレンジしてあるし、その点でも差別化はできるだろう。

 ……まあ、元の話ったって、そもそもの千夜一夜物語の中にアラジンと魔法のランプは存在しないらしいけど。

 

 

「アラジンとか、前に346でやったシング・ア・ソングとか……」

「良かった! やっとマトモな意見が出てきた! ありがとう、しら……古宮さん!」

「七海ちゃんが『白子』を連想して物欲しそうな目でこっち見てくるし言いにくかったら白河でいいから」

「ごめんなさい」

 

 

 あの場ではああするしか無かったとはいえ、流石にこうも言い間違えられると、名字が変わったことについてちょっと悪いような気もしてくる。

 いや、別に何が悪いって言うんでもなく、あれはあの時っていう状況が悪かったとしか言いようがないんだけど。

 

 

「他に意見ある人いないわねいないでしょうねいないねよし採決入ります!」

「「「待てや!!」」」

「やかましい! どうせアニメとかゲームとかのネタでしょうが!」

「チクショウあのアマよく分かってやがる!」

「クソッタレぇぇ!」

 

 

 変な方向でノリがいいねキミら?

 

 

「シング・ア・ソングがいい人! ……次、アラジン! ……よし、アラジン決定で!」

「オーボーだー」

「俺たちの意思も尊重しろー」

 

 

 そんな男子諸君の文句に対し、文化祭実行委員の子は首にあてた指をクイッと横にずらした。「知るか死ね」というあまりにはっきりした意志が見て取れた。

 それでいいのか実行委員。

 

 

「じゃ、脚本書ける人かそういう人に心当たりある人ー……オッケー、じゃあ佐野さんお願いします」

「役者はー?」

「立候補でお願いします。ただぶっちゃけ白河さん出てほしいんですけど」

「えっ」

 

 

 その瞬間、クラスのみんなの目線がこちらに向いた。

 いやちょっと待って。そこでボクか!? できるだけ出ないよう出ないようにしてたっていうのにここでこっちに目を向けられちゃあ困る!

 

 

「い、いや、事務所の契約関係とか、あるかもだし……」

「三年の南条さんとかよく出てるよ?」

 

 

 光さーん!!

 ……いや、こう……あれだ。そう言われちゃあ、断ったりするのも良くはないか。別にボクだって、こういうことでクラスに貢献するのが嫌だってワケじゃない。ただ、まあ、あれだ。一応いち組織に所属している以上、そのコンプライアンスに抵触しないかってのは気になるし……ね? そういう、ね?

 いやまあやらないとは言ってないけど。

 

 

「でもボクは一体何をすれば?」

「ヒロインとか?」

「いや、それは、ちょっと……」

 

 

 できないとは言わないけど、多少でも周りと軋轢を生みかねないのは勘弁してほしい。

 一つのお話のヒロインともなると、やりたい人は多いはずだ。目立つのが恥ずかしいと思う人も同数いるだろうけど……アイドルだからってことで贔屓されてヒロインに据えられる、となっては流石にマズい。何であいつが、なんて思われたら非常に面倒だ。となると、推薦した側の顔を立てるためにも、そこそこ目立つ、けど……という程度の役どころは……。

 

 

「……個人的には、ランプの精霊がいいかな」

「ランプの精霊?」

「うん。実はこういう役柄、結構好きで」

 

 

 そこに関しては嘘じゃない。サブキャラクターとしてはそこそこ以上に目立つ役柄だし――本家本元のランプの精霊って、アニメ映画のそれと違って、物語上そこまで重要な役割じゃないんだよね。

 いや、重要は重要なんだけどね。精霊の人格にはあまりフォーカスを当てられないし、叶えられる願いは三つじゃないし、最終的に自由にもならない。あくまで舞台装置って感じだ。それをどのように演じるか、という点が、個人的には重要だと思っている。その演じ方一つでどう印象に残るかが決まるんだ。責任は重大だけど、やりがいもある。

 

 

「じゃあ、それで行こうかな。じゃ立候補者を……」

 

 

 と、まあ一度決まればあとはそこそこ早い。アラジン役への立候補者がやたら多いのは主役として当たり前だけど、悪役の魔法使いまでもがそうだとは思っていなかった。案外みんなそういう役もやってみたかったりするんだろうか? ボクも時々やるから、気持ちは分かるけど。

 

 で、何はともあれ演劇の方の必要事項は、あとは後日ということで今日は解散となった。

 ……の、だけれども。

 

 

「バンドを組むわよ」

「えっ」

 

 

 バンドを組むぜ。バンド名は346バスターズだ。

 ……いや何アホなこと考えてるんだボクは。いきなりレイナさんからこんなことを言われたからって、混乱しすぎだろう。

 

 

「え、何で……?」

アイツ(バカ)が出るのにアタシが出ないワケ無いでしょ!」

「把握」

 

 

 極めて分かりやすい事情がそこにあった。

 つまり、光さんが文化祭の自由参加枠でバンドを組んで出場するから、それに対抗して自分も出る、と。

 分かりやすい。うん。間違いなくそこは分かりやすいのだけど……。

 

 

「でもそれ、勝ち負けはつかないと思うよ……」

「ハァ? そんなわけないじゃない」

「いやつかないよ。だってこれ見てるの、みんな中学生だよ」

「それが?」

「レイナさんと光さんでそれぞれ違うバンド組むんでしょ。ってことは色々方向性が違うよね。音楽のジャンル自体違うかも。ってことは、見る人からすると『どっちも良かった』で終わりやすいってことでもあって……」

「……ああ!?」

 

 

 基本的に――だけど、こういう芸術分野のお話となると、人間は明確な優劣を付けられないことが多い。特に一定以上のレベルに達すると、素人にとっては「良いことは分かるけれども、自分たちでは優劣は分からない」ということになりがちだ。どっちも良いものだから。ボク個人としてもその辺りを問うのは好ましくない。順列を付けてしまったら、どんなに良いものでも陳腐化してしまう。

 

 

「だから個人的には、明確に数字の出る……競技とか、テストとか以外は……あんまりオススメできないかな……」

「くっ……う、迂闊だったわ……」

「お願いされた以上、断る気は無いけど……」

「……いや、よく考えたら光に敗北感を味わわせればいいだけだから氷菓一人いれば十分ね」

「い、いや、ボク一人で人に敗北感を味わわせるような演奏はできないよ……」

「ハン、こういうのはね、こういう時に頼りになるヤツを誘ったけど来なかった、って事実があればいいのよッ」

 

 

 そして、自分の敵に――いや敵ってほど剣呑な関係じゃないけど――回ってるのを見て、悔しがらせると。

 ちょっと面白そうだと思ったことは否めない。

 

 

「他の人のアテはあるの? ボク一人じゃ精々ギター弾きながらハーモニカ吹くくらいしかできないよ」

「それができるだけでもキモいくらいなんだけど」

「いくら慣れてるとはいえキモいはちょっと傷つく」

「悪かったわ」

 

 

 レイナさんは正直に言えばそこそこ謝ってくれる。

 そこそこ程度だけど。

 

 

「で、誰がアテあんの?」

「他には、特に……かなぁ……」

 

 

 巴さんは演歌専門……いや専門じゃないけど、多分和楽器はできるだろうけど、趣旨が変わっちゃう。

 七海ちゃんはあれでピアノとかできる……とか言ったらそれはそれでグッと来るんだけど、そういう話は特に聞かない。

 法子さんは……ううむ。ドーナツ型のオカリナとか渡したら意地でも吹けるようにはするだろうけど。

 

 

「晶葉がこっちの学校だったらロボ使って適当に解決してくれるんだけどなぁ……」

「頼めないわけ?」

「あっちもあっちで忙しいだろうし、ねぇ……」

 

 

 一台でも引っ張って複製すればイケるだろうけど、あんまりにも非現実的すぎてどうやったのか疑われそう。

 それにあれはあれで仕事道具みたいなもんだし、晶葉自身も日常生活でロボばかり、ということは少なくなったと自己申告している。それはそれとしてアイドルの仕事に僅かでも関係あれば即ロボ作ったりするけど。そこは趣味だしライフワークだしで別に止めるところじゃない。

 

 

「打ち込みで何かやってみるかな。電子ドラムとキーボードくらいなら再現できるだろうし、ベースとギターとがあれば……」

「結局それ一人でもできるって言ってるようなモンじゃない?」

「どこまで行っても生演奏には敵わない部分があるから……」

 

 

 微細な空気の揺らぎとか、場合によってはちょっとした失敗とか……言ってみれば、それもある種の味なわけだ。

 ライブに行くと演奏や歌そのものにアレンジを加えるということも少なくない。全く同じじゃCD聞いてりゃいいってことにもなるからね。

 

 

「ま、こっちも募ってみることにするわ。当日は頼むからねッ」

「あいあいさー」

 

 

 ……と、言った流れでバンドについての話はその日はここまでとなった。

 しかしなんというか、それにしても……文化祭、準備でここまで大変とは思わなかった。

 いや、今はまだ準備の準備って段階か。それでコレなんだから、本当の意味での準備となるとどうなることか――。

 

 

 ――と思っていたのがいけなかったのか、その後の準備ははっきり言って惨事と言って過言じゃないくらいの惨状だった。

 

 

「模擬店って言ったらやっぱメイド喫茶でしょ!!」

 

 

 具体的にはこの一言のせいで。

 

 メイド喫茶、となると――自然、女子が表に立って接客をする必要が出てくる。で、男子は後ろで料理番。

 これに対して女子から盛大な文句が噴出した。女子ばっかり負担が大きいんですけど、と。

 しかし料理もこれはこれで重労働ではある。加えて問題としては……このクラスで一番接客に出て欲しいらしいボクが、恐らく一番料理ができるという点だ。どうにもこうにも、あちらを立てればこちらが立たずという状況の典型例みたいになってしまっていた。

 とはいえ、料理というのはレシピ通りに作りさえすれば、ある程度は美味しく作れるものだ。レシピを守れる人でさえあれば、それなりのものを作って提供することはできるだろう。

 

 さて、じゃあそれが解決したら、あとはボクが接客に出れば残りは全部オッケー……というわけでもなく、文化祭実行委員の子曰く「仕事もあるのに負担が増えすぎるでしょ!」とのこと。

 お気遣いが大変嬉しいが、じゃあその分誰がどう接客の方に出る? という話になるとまたみんなの顔が難しくなる。

 しかしながら、そこに一石を投じる生徒がいた。

 

 

「性別逆転喫茶はどう?」

「性別」

「逆転」

「つまり男子がメイド服を、女子が執事服を着るわけ」

「地獄かよ」

 

 

 でも個人的には悪くないとも思う。ネタ的な意味でも、人目を引くための意味でも。

 新しい試みはどうしたって人の目につくし、そこで完璧な対応ができさえすれば人気になるのは間違いない。あと個人的に執事服みたいな男装をちょっとしてみたいのがある。なので、そこまではそこそこ納得いくし、個人的にも賛成できる意見ではあった。

 が。

 

 

「……このままだと予算足んないし四組と合体しない?」

 

 

 コレである。

 

 いや分かることは分かるよ。衣装にもお金かかるし、喫茶なら単にお茶やコーヒーを出すだけじゃなく、他にも色々要るだろうし。

 しかし四組――法子さんたちのクラス――を巻き込んで、実質お金をタカりに行くようになっちゃってるのはどうなのだろうか。

 

 オマケに説得に成功してるし。

 ほとんどその場のノリで行動してるのに、なんだかんだでなんとかなってるのは何なのだろう。勝負はノリの良い方が勝つとかそういうアレだろうか。

 

 ……まあ、最終的に二つのクラスで協議した結果「性別逆転は流石にニッチすぎるしやめておこう」ということにもなったけど。

 

 ともあれそんなわけで、今回のボクらの模擬店は「メイドドーナツ喫茶~執事もあるヨ!~」ということになったのだった。

 もう何がなんやらワケがわからんことになってしまってるんだが大丈夫だろうか。

 

 

「あたしはドーナツ作れるからいいかなぁ」

「れしょうね」

「いいんだ……」

「ちなみに佐賀の方にはおさかなドーナツというものがあるのれす」

「……再現してと?」

「うん!」

「くらさい」

 

 

 ……そして、更についでのように、喫茶店のメニューに一品ほど追加されることになった。

 今更だけどこの文化祭の準備、ちょっと行き当たりばったり過ぎないかなと思う。

 

 

 





 次回の文化祭本番に続きます。

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