fate/brave gunfighter 作:ひもきゅうり
なおのび太は出ない模様
「ロマン、彼をどう思う?」
「唐突になんだいレオナルド、彼っていうのはのび太のことであってるかな?」
レオナルド、かの有名なモナリザの作者であり万能の天才と名高いレオナルド・ダヴィンチその人である。もっともその見た目はモナリザであったが、彼、或いは彼女にとって性別などというものは些細な問題でしかなかった。
「そうだ、はっきり言って私は彼が恐ろしい。いや正確にいえば彼自身ではなく彼の持つ道具がだけれどね」
「まあ、言いたいことは分からなくもないよ。彼の道具はどれもこれも魔法の域に達している、持つ者によって恐ろしいことになりかねない事は僕だって理解してるさ。でもそんな心配はいらないと僕は思うんだ」
「なぜだい?」
「決まってる、彼がとっびきりの善なる者だからだよ。これといった根拠があるわけじゃないけれど、彼は信頼に値する者だと思うんだ」
「確かにそれは私もなんとなく分かる。ただ私が最も恐れていることは道具が敵に奪われる事だ。彼の道具を調べてみたがあれは彼の宝具とは異なる物だった、詳しい解析は済んでいないから原理は分からないが、あれらの道具は少量の魔力を呼び水にしてどこからか取り出している物だ、道具自体は魔力は欠片も感じられなかった」
「ということは道具は誰にでも使えてしまうということか」
「そうさ、使おうと思えば私だって使える」
こんなふうにね、なんて彼、或いは彼女であるダヴィンチは頭の上に竹トンボのような道具を乗せて、道具のスイッチを押した。すると竹トンボは自動で回り始めた。その様子は小さなヘリコプターのようであったが、事実その通りにダヴィンチの体は宙に浮き始めた。
「確かタケコプターと彼は言っていたかな? こんな小さな機械で私を浮かび上がらせる程の浮力を発生させているなんて到底信じられない、私がかつて考案したプロペラ機が確か直径4、5メートル程だったことを考えると、在り得ないとすら言える。彼はこれを科学による道具だと言っていたが、万能の天才たる私から言わせてもらえば、科学なめんなとしか言いようがないね」
少しの間、ダヴィンチは空中浮遊を楽しんでいたが、とても自由に飛び回れる程の広さがある訳でもないカルデアの管制室では長時間飛び続けた所で大した面白みもなく、ゆっくりと床に戻ってきた。
「と、まあ個人的には非常に興味をそそられる訳だが、今はそれどころではないからね。このタケコプター一つでさえ悪意を持った誰かの手に渡ればそれなりに悪用出来そうなものだ」
「なら、無事に彼らが特異点から帰還した時はその辺りの事を相談する必要があるわけだ」
「そういうことさ、出来ることなら早めに手は打っておいたほうがいい。ところで話は変わるが、君も確か何かの道具を彼から受け取っていたと思うんだけれど、何を受け取ったんだい?」
「ああ、これさ」
そう言ってロマンは懐に大事に仕舞ってあった本のような道具を取り出した。ロマンがページを開き数ページ捲るがそこには何も書かれていなかった。
「白紙の本じゃないか、彼はこれを何だと言っていたんだい?」
「魔法辞典、彼はそう呼んでいたよ。なんでもここに自分で好きな呪文と効果を書くと実際にその呪文が使えるようになるらしい」
「本当にそんな事が可能なら、それは万能の願望器どころの騒ぎじゃないぞ、それこそ名前の通り魔法の領域だ」
「うん、まあそう思ってなんとなく恐ろしいから僕もこれを使う予定は今のところはないよ」
「賢明な判断だ、それにしてもやはり彼の道具は恐ろしいものだね」
「うん、あ、でもどれもこれもが危険な物ばかりじゃないみたいだよ」
「例えば?」
「夜間布団の中からおしっこできるホース」
「は?」
「だから、夜間布団の中からおしっこできるホースだって」
「なんというか、病院とかであれば役に立ちそうだ」
「まあ、そんな道具もあるわけだからあまり彼の事を危険視するのはよしたほうがいいさ」
「確かにそうかもしれない」
「あー、やめようやめよう、変に深刻に考えていると胃が痛くなってくるよ。今はともかく彼らの存在証明に集中しよう」
ロマンはそう言い切ってコンソールに向き直る。そこから暫くの間、管制室での私語はなかった。
これは特異点修復中のカルデア管制室の記録である。
プロペラを設計したダヴィンチちゃんにタケコプターを使わせたいだけの話
なおアイルーが可愛いため狩りが進んでいないので続くかは未定の模様