平和情事ー犬とかごー   作:安幸 広

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第1話

「あれからみんな少しずつ変わったんだね」

 

「そりゃあんなに時が経てばな...」

 

犬夜叉はかごめの横顔を見ながら答える。かごめがこの世に戻ってきて1週間になる。

 

「そういえばかごめ、もうこの世になれたか?随分あっちの世界にいたから鈍ってただろ」

 

奈落との戦いを終え、かごめを元の世に返した瞬間骨喰いの井戸が閉じた。一生会えないかと思った。しかし2年後、再び井戸から帰ってきたかごめ。奇跡に思えた。

 

「そうね...でもだいぶ慣れたわよ!みんなサポートしてくれたし!」

 

「なんでぇ、サポートって」

 

「あ...手助けよ!珊瑚ちゃんや七宝ちゃん、楓ばあちゃんが色々教えてくれたから!」

 

「そうか...なら良かった」

 

と言いつつ、少しばかり苦労したのは内緒である。薬草の種類やこの村のしきたり、弓の扱い方などほぼ忘れている部分が多かった。

 

「あはは、それにしてもあの戦の毎日が嘘みたいね....」

 

犬夜叉、かごめともに平和な世の中で一緒に暮らせることを喜んでいた。

 

「帰ろうぜ、そろそろ日が暮れる」

 

「うん!」

 

その夜。

 

「すごいわよねぇ、弥勒様と珊瑚ちゃん!子ども3人も生まれて...子宝に恵まれてるわね」

 

「いつも俺はあの子どものおもちゃになってるぞ」

 

「まあまあいいじゃない、襲われるわけでもないし(笑」

 

「けっまあそうだけどよ...」

 

そんなたわいもない話をしている最中にも、犬夜叉は悩み続けていた。

 

《俺とかごめは子を作っていいんだろうか?》

 

犬夜叉は半妖。当然、子どものころ受けてきた差別やいじめ、そして母への他者からの冒涜は今でも心に焼き付いている。

 

《かごめと子を作れば...子とかごめがいじめられる...》

 

そんな思いが犬夜叉の心にあった。

 

《いや、そんな奴俺がぶっ殺してやる。...いや、人間を傷めつけると逆にかごめが悲しむか...》

 

そんなことをかごめが帰ってきてからずっと考えていた。

 

「犬夜叉?」

 

「んお!?なんだ?」

 

「いや、なんかボーッとしてたからどうしたのかなって」

 

「い、いや何でもねぇ!ほら寝るぞ!」

 

「えっ早くない!?」

 

「うるせぇ!ほら、布団に入れ!」

 

こうして1日が終わる。正直、考えて1日が終わる感覚はもううんざりだった。

 

翌日。

 

「おい、弥勒」

 

「おや犬夜叉、今日は遅いですね」

 

いつもは朝早い犬夜叉だが、今日は昼に外を出た。

 

「どうしたのです、こんな昼間に出てくるなんて」

 

「うるせぇ、昨日の夜考え事してたら起きるのが遅くなっちまったんだよ!」

 

「考え事...?」

 

「うっ...まあ、弥勒には相談していいか...」

 

「どうしたのです、まあ向こうの河原にでも行って話しましょう」

 

そうして弥勒と河原へ向かった同時刻。かごめと珊瑚。

 

「ねぇ珊瑚ちゃん。相談、いいかな...?」

 

「...? 珍しいね、どうしたんだい?」

 

ほぼ同じ時刻。二人は全く同じ質問をしていた。

 

 

 

 


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