異世界なのにうちわ職人になりました。   作:柊彩

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第二章 神竜都市編
怖い依頼者ですよ。


「…で、何が目的だ?」

「そんな警戒しなくても。俺は別に何もしないよ。」

 

はにかむ彼からは、確かに一切の敵意を感じなかった。しかしそれでいてどこか掴みどころがなく、気を抜けば知らない間に首が飛んでいきそうな、嫌な雰囲気だった。

 

「ちょっと街で君の噂を聞いてね。ぜひうちわを作って欲しいんだ。できれは新作で。」

「…俺の噂?俺ってそんなに有名じゃないと思うんだが。フローラさんにでも聞いてきたのか?」

「いや、たしかシーナちゃんとかいう子だよ。」

 

あいつか!くそっ、シーナのやつ俺に押し付けやがったな!?

 

工房に帰るとアリシアが外で遊んでいた。どうやら先に帰っていたらしい。アリシアは俺を見つけると走って近づいてきた。

「…へぇ。」

アリシアを見つめ、男が目を細めた。コイツ、もしかしてロリコン…!?

「あなたは…。」

「高瀬、帰ってきたの?」

男が何か言う前に、工房からかぐやの声がした。玄関の扉を開け、その目に俺たちを捉える。そして、俺の横に立つ男に気づいた瞬間目を大きく開いた。

「高瀬っ、アリシアっ!その男から離れなさい!」

大声で叫び、俺の横に雷鳴が響く。雷魔法。雷の速度でかぐやが男に襲いかかったのだと気づくには少しかかった。だが、それよりも。

「…まさか、こんなところにおられるとは。一応、探しましたよ、かぐや姫様。」

雷の速度で繰り出されたかぐやの拳を腕ごと抑える男の姿だった。

「…最悪だわ。あんたに見つかるなんて。」

どうやらかぐやはこの男を知っているようだ。そして、男の口ぶりから、本当にかぐやは王女らしい。

「こんなところで話もなんですし、家に入れてくれると助かるんですがねぇ。」

 

…王女相手にこの軽いノリ。何者なんだこいつ。

 

――――――――――――――

 

工房に入り、とりあえずお茶を出す。かぐやはさっきから白髪の男に敵意丸出しなので空気は最悪だ。アリシアも震えてお茶をこぼしていた。…まぁそれはいつもの事だが。

 

「…いやはや、王都中探し回って見つからないわけだ。こんな山奥にいらしていたとは。」

「ふん。それで、あんたは私を連れ戻しに来たの?」

「残念ながらただの依頼客ですよ。ま、姫君に知らせればすぐにでも連れ戻せと言われるでしょうがね。」

 

また火花ぶつけあってるよこいつら。何この空気。アリシアも…アリシア…、クッキー食べて超幸せそうじゃねぇか。それお客のだよ?

 

「…なに、お前ら知り合いだったの?」

「ん、そういや言ってなかったな。俺はフッド。仕事は…聞かないほうが身のためだと思うぞ?」

「うわぁ…。」

なに、知っちゃったら秘密保持のため抹殺とかですか、そうですか、帰ってくんないかな。

「別に隠す必要も無いでしょう。」

え?いや俺まだ死にたくないんだけど?

「王都には3つの軍隊があるの。知ってる?」

 

 

王都の3つの軍隊。

都市内の警備、治安維持の部隊である憲兵隊。

ドラゴンなどに代表される危険種や超大型種などの襲来に対処する国防隊。

そして王宮を守る近衛隊。

どれも一級の戦力を誇り、王都の平穏は彼らによって守られている。

それは世情に疎い俺でも知っている。何故か。

 

―あれは、俺が魔法を会得しまもなくのこと―

王都には優秀な魔法使いを募集しているという話を聞き、もしかしたら国防隊に入って国の英雄になれるんじゃね?とか考えて入隊選抜に向かった。そして履歴書。保有魔法の欄にはうちわ魔法とでかでかと書いた。

結果、受付の人に鼻で笑われた。

…あの女マジで許さん…。でも俺も若気の至りだった気もしなくはない…。

 

――――――――

 

「おまえ、軽く俺のトラウマ掘り返してきたな。」

「何もしてないわよ。で、その3つの軍だけど、実はもう一つだけあるの。」

「あん?そんなもん聞いたことないぞ。」

「そうでしょうね。実際王都に住む人の中でも知ってる人はほとんどいない。だって、その部隊にいるのはただ1人なんだから。」

「おい。まさか。」

「そういうこと。その部隊の役目は王の刀。ここにいるフッドがそう。」

「………」

「………(ニコッ)」

こええ。笑顔がこええ。俺殺されるんじゃねえの!?もう帰ってくれよ。

「だからこいつ怒らせないでね?絶対死ぬから。」

「やだなぁ。人を殺人鬼みたく。」

「それで。あんた何しに来たの?私を捕まえに来た訳では無いみたいだけど。」

「あー、それですよ。ここのうちわを作ってもらいたくて。」

「…うちわ?」

「お姉様がご所望でしてね。温風と冷風うちわ、あと何か一つ欲しいということなので。」

「嘘言わないで。そんなくだらない事のためにあんたみたいなのが来るわけないじゃない。」

くだらない言うな!嬉しいことだぞ王族にまで噂が広まってるなんて!俺泣くぞ!嬉し泣きで。

「まぁうちわ自体は下らないですがなにか記念が欲しいと言われたので。」

やっぱ悲し泣きだわ。アリシアがテッシュ持ってきてくれた。俺の傷ついた心を癒してくれるのはアリシアだけだ。

「まって、じゃあ姉様がこっちきてんの?」

「はい。1週間ほどはこちらに。」

そこで何故かかぐやは顔が青白くなっていく。

「姉様?お前の姉さんって…。」

「白雪姫様さ。あんたには姫様の前でうちわを作って欲しいんだ。姫様だけのをな。」

「ダメよ、絶対!」

「あん?なんで?」

「とにかくっ!姉様は…!」

「ちなみに拒否された場合、俺の立場のためにかぐや様は無理矢理連れて帰らせていただくのですが。」

「うっ、うぐぐぐ…!ひ、卑怯な…!」

「使えるものは使うのが俺の主義なんで。」

「分かったわよ!作ればいいんでしょ!」

「ありがとうございます。」

 

…あれ?俺のいない間に話つけられてんだけど!?かぐやがなんで決めてんの!?

 

「じゃ、宜しくね(ニコッ)」

こえっ。フッドさんの笑顔まじ怖い。しぶしぶ頭を振った。

 

余談だがアリシアは途中から俺の膝で寝てた。ヨダレが…。




本当はこの人はもっと後で出す予定だったのがネタ切れで早くなりました。魔法はまぁおいおい出すとして。
そろそろ毎日更新の限界が…。
いつまで続くかな…(小声)
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