異世界なのにうちわ職人になりました。   作:柊彩

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披露ですよ。

男が来た翌日、柏工房の前には馬車が止まっていた。

俺とアリシアはそれに乗り込んだがかぐやは絶対に行かないと駄々をこねたので置いてきた。最近気づいたがかぐやは無理やりなにかさせようとすると泣かれる。勘弁して欲しい。

 

1時間ほどかけ、俺たちは街へ来ていた。思えば、うちわの納期日以外で街に降りるのは久しぶりだ。

街の中は以前よりはるかに人が多く、馬鹿騒ぎだった。

「おおー!すごい人!お父さん、今日はお祭り?」

俺の膝にちょこんと座るアリシアは馬車の窓をのぞき込み、感嘆した。

「ん。そうか。今日は…」

「ああ。今日はこの神竜都市の建国記念日だからな。王都の使者として白雪姫様がこちらに来られている。」

俺より先にフッドが喋っちゃった。

「建国記念日…?」

アリシアが首を傾げる。

 

神竜都市。国の産業の大半を抱えるこの都市は王都と並び、この国で最も栄える都市だ。その理由はこの都市のヌシ・神竜の存在だ。

強力なドラゴンは土地のヌシとなるが、神竜はその中でも格別であり、彼の存在がこの都市を護る絶対の盾であり、矛である。彼の元でこの都市は千年の平穏を手にし、繁栄を享受していた。

 

今日は彼がこの地を治めた日だ。住人は勿論、別都市に住む人や王都からも首脳陣が来ては、かの竜に献上品を送ったりする。今年王都からも来た使者が白雪姫というわけか。超大物だな。

 

「…あれ、てかお前白雪姫の護衛なんじゃないの?こんな所に来て大丈夫なのかよ?」

普通の質問をしたはずなのだがフッドはけたけたと笑う。

「お前さん、さては姫様を知らないな?」

「まぁ、名前ぐらいしかな。」

「なら、知っとくといい。姫様の魔法は精霊王魔法・通称最優の魔法。俺の出番なんてねぇよ。それより、どんなうちわ作るんだよ?」

「ああ。それな、俺が作んのは柏工房一の失敗作だ。」

「…は?」

 

かぐやから白雪様のことを聞いてはいたが、実物を見るとその雰囲気に気圧される。

 

腰までかかる青い髪に銀のティアラを載せ、天色の双眸が俺を捉える。

「綺麗…。」

アリシアが呟く。アリシアから見ても目の前の女性は綺麗なのだ。

 

「あなたがうちわ職人さん?」

「あ、は、はい!」

思わず声がのけぞってしまった。

「ふふ、完成を楽しみにしているわ。」

 

 

さて。持ってきた男竹(つけこみ完成ver.)をはじめとする材料を運び終え工具を取り出す。

「まずは、温風魔法。」

時期的に、ずっと作ってきた温風魔法のうちわを作っていく。竹を割り、穴を開け、編んでいく。

「へぇ…。」

王女様が目を細める。それほど見つめられると困るのだが。

内心びくつきながらも『貼り』を終え、温風うちわが完成した。すこしだけ扇ぎ、魔法を確認した後側に置いた。

「次は…冷風…」

新作のうちわ制作に打ち込み終わり、まさか今になって冬に冷風うちわを作ることがあるとは思わなかった。

最後に作ったのは夏なので3ヶ月ぶりぐらいか。

…といっても冷風うちわは温風うちわとほぼ工程が同じなのでそれほど意識はしない。先ほどと同じ作業を繰り返し、魔法種類のみを氷魔法にしたうちわの完成だ。

 

「最後か。」

 

先程までのはあくまで前座。何千、何万と作ってきた温風、冷風とは違い、このうちわを完成させたのはただ一回のみ。

 

取り出した竹は、先程の2本のうちわを作った太くどっしりした男竹ではなく、女竹と呼ばれる細長い竹と、昨日作っておいた総数100本の竹ひごである。

 

「さぁ、最高の失敗作を作ろうか!」

 

3大うちわのひとつに数えられながら、ほかのふたつには見られない〈挿柄〉といううちわ面と柄の部分が分離して作る特殊な工程を経る。

 

その名は、『京うちわ』。




更新が遅れ、輝かしい毎日更新が止まってしまいました。ちょっと京うちわの資料集めとかで手こずり…(嘘)。
ちなみにこの京うちわ、高級なやつはめっちゃ高いです(震え)
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