京うちわ。
うちわの中で最も歴史が長いうちわで、その独特の製法は江戸時代に御所うちわという形で定着していく。狩野派や土佐派の絵師と共同で作られたそれは、もはや美術品ど言ったほうがいい。
男竹を細く切り分けて作られた竹ひごにのりを付け、『仮貼り』といわれる薄い紙に貼り付けて形を整えていく。この薄い紙は後に剥がすため、完全につかないようにしておくのがポイントになる。
100本の竹ひごの形を整え終わると、『裏張』だ。うちわの後の紙を貼る作業で、これをし終えると、表面の薄い紙を剥がしていく。
「…っは!」
声が漏れる。京うちわを作る時は特に息をすることと忘れる。繊細な京うちわと、組み込む魔法は特に集中が必要である。
次は『合わせ』というそのうちわの華を作る作業に移る。
貼り絵を終えた表紙を貼る作業だ。今回は亀の模様が描かれた和紙を用いる。ちなみにだがこの用紙を作るのも超難しい…。
慎重に貼り、竹へらで骨の両際に筋をつけ、紙を固定する。繊細な竹ひごを折らないように力加減を調整する必要がある。
原型が完成すると、『なり廻し』という作業でうちわの形に成型する。ヘリをとりおえ、柄を差し込む。
うちわとしても繊細な作業だが、魔法構築でも、一切のぶれなく魔法回路を繋ぐ。目に見えない為、完全な感覚で行うそれは、この京うちわ制作の肝とも言える。
「すごい…」
アリシアの声が漏れる。彼女が見てきたのは丸亀うちわだけだからだろう。
日本列島四島の最も小さな島の、日本で最も小さな県で発達した丸亀うちわは庶民を対象に生産性を追求し、発展したのに対して、天皇が鎮座し、文化と政治の中心で生まれた京うちわは、貴族や幕府に献上され、美を追求したうちわである。その本質は大きく異なるのだ。
「これで、姫様の依頼は完了、ということでいいですかね?」
手に持つ3つのうちわ。温風、冷風、そして、新作のうちわを見せる。
「最後のは…その前のうちわとはだいぶ作り方が違っていたが、何のうちわなのです?」
「製法を京うちわと言います。この魔法のうちわには京うちわでないといけないのです。」
めんどくさい京うちわにしたのはそうでないと魔法の効果が十分に出ないからだ。実際、丸亀うちわでこの魔法のうちわを作っても満足な結果は得られなかった。
「そのうちわの魔法はなんなのです?」
「これは夢想うちわといい、夢想魔法を織り込んでいます。あおげば夢うつつとなり、心が安らぐものです。」
「すごい魔法、、、なぜ売らないのです?」
「これを作るのは大変な魔力を消費しますので。」
実際、これを作るのはほぼ1日分の魔力を使うので売れたものではない。
「なるほど。では、ありがたく頂戴いたしますわね。」
白雪姫が近ずき、俺の腕のうちわを手に取る。
だがその時、白雪姫の眉がひくついた。
「これは…!?」
なんだろう?なにか不手際があったのだろうか?
「…すみません、うちわ職人さん。ちょっとご同行願えるかしら。」
「…え?」
連れられたのは小さな部屋だった。お供1人つけず俺に何の用だ?何か気に入らなかったから処罰とか?え、嘘だよね?いや、もしかしたら男と女の事情なのか…!?
冷静になって考えるんだ。
…冷静に考えたら惚れる要素なんもなかった。
びくついていると扉が閉められかぐやが入ってきた。
「…えと、俺になんの用が…。何か至らぬところでもございましたか…?」
「もっと大切なことです。」
白雪姫はめっちゃクールトーンで話しかける。正直怖い。
「えーと…」
答えに窮していると白雪姫は静かに口を開く。
「あなたから、かぐやの匂いがしたのです。」
「……は?」
「正直に答えなさい。かぐやを、妹を知っているでしょう?というか、暮らしてたりしてますか?うん?どうなんです?」
な、なんでこの人そこまで分かっているんだ??魔法で心を読んだとかだろうか?いや、しかし、、
無言が拒否と捉えたらしい白雪姫は魔力を出す。そして。
「真意の精霊よ、その男の本心を映しとれ。」
言葉に反応し、蛍の光のようなものが現れた。
「うちわ職人、貴様は今どこに住んでいる?」
低く問う。ここで答えると本当にかぐやを知られてしまう。だが、
「…飯山の柏工房。」
意志に反し、口が勝手に動いた。理解が追いつかない俺を置き去りに、白雪姫は新たな魔法を出す。そこで、俺はフッドに言われた彼女の魔法を思い出した。精霊王魔法。精霊魔法の究極で、千以上の精霊を使役することが出来る。つまり、化け物だ。
「座標の精霊よ、その場所と繋げ。転移の精霊よ、かぐやをここに。」
言うが早いか、何も無い空間が歪み、黒い空間が生じた。そして。その場所から、かぐやが現れた。転移魔法まで使えるのか。
…ただ、俺が驚いたのはむしろ。
かぐやは風呂に入ろうとしていたところだったらしく、そこにいたのはパンツをずり下げて…。
かぐやははじめ理解が追いつかず茫然としながら、自分の衣類の状態、そして目の前の男の存在を確認するとハッ、と息をこぼし。
「ヴェアアア!!!」
思っきり蹴られた。超痛いんですが。
「え、え、ここは何!?私はどこ!?」
おおっと、相当混乱してらっしゃる。まぁ無理もないよね。おそらく風呂場にいたのに突然部屋に移動してて目の前に知り合い(男)がいるもんね。
「かぐやぁぁぁ!」
と、更に信じられないことに、そこに居たのはかぐやに抱きついていた白雪姫だった。
「ちょ!?お姉様!?これはお姉様の仕業か!」
「会いたかったよぉぉ、おねーちゃんさびしかったよぉぉ!」
「ちょ!?くっつくな暑苦しい!」
…なるほど、これが有名なキャットファイト…!まぁ片方抱きつくしかしてないけど。
にしても、やり取りからして白雪姫は相当の…
「離れなさいよシスコン!」
「やーだね、どこにも行かせないよかぐやー!」
うん、シスコンだ。てかはやくかぐやに服きさせてあげなよ。
「姫様!?ご無事ですか!?」
と、そこに、扉が開かれ、護衛の兵士が入ってきた。
そして、そこにいたのは下着姿のかぐやと、そこに抱きついている白雪姫、そして地面に倒れた俺。
彼らはこの事態についていけてないようでショートしていた。ま、当然だね。
とか思ってたらかぐやが肩を震わせていた。これやばい!そう思って立ちあがあったのだが、それが裏目に出た。
「うぎゃぁぁぁ!!!」
雷速の蹴りの元に兵士たちが一蹴される。そして、そこには俺も入っていたようで2発目を食らった。
…ねぇ、俺悪くないよね?
というわけなのでシスコン姉様が無事(?)登場できました。もうすこし詳しく書きたかった気もしますが。
シスコンの姉って個人的に結構好きなんですが同意者はいないものでしょうか。いないですか、そうですか。