「何事だッ!」
騒ぎを聞きつけ、兵士たちが一斉に部屋になだれ込む。
ただでさえ白雪姫1人に手を焼くのに、この量は厳しい。
「おい、かぐや、お前の魔法で逃げられないのか。」
「できなくもないけど、もう居場所がバレちゃった以上意味は無いわ。それに、アリシアはどうするのよ。」
そうだった。ジリジリと詰め寄ってくる兵士を前に使えそうなものを探す。記念の缶バッジ、リオマワールドの入場券(使用済み)。ダメだ!使えるものがない!護身用のうちわも10本もない。それだけで兵士全員を相手取るなど不可能だ。なにより、先程夢想うちわを作ったことで魔力がほとんどない。となると、
「…頭を潰すしかないか。」
狙いは決まった。勝てるとは思えないが目の前の王女を何とかして無力化する。
「かぐや。少しだけ兵士の相手任せる!」
「え、あ、ちょ!?」
説明している暇はない。白雪姫めがけ走り出す。
「なんなのよっ!」
意図は察してくれたようでかぐやが閃光魔法をだす。兵士が光に目を取られていた隙に距離を詰める。
襲いかかる兵士をかぐやが抑える。コピー魔法ということで雷や炎、氷塊など多様な魔法が踊る。こいつも大概化け物だ。だが流石に多勢に無勢。王女なので手荒なことをするとは思えないが、早く終わらせなければ。
「…ひとつ、聞かせなさい。」
白雪姫のもとに何とかたどり着くと、白雪姫は閉じた目を開く。
「なんだよ。」
「あの子は、かぐやは魔法が使えるの?」
「は?何を今更…。今も使ってるだろ?」
「そう…、だとしたら私たちが間違っていたのかもしれないわね。(ボソッ)」
「なんか言ったか?」
「…ふん、何でもないわ。それより、私になら勝てると思ってきたのかしら?だとしたら私も舐められたものね。」
「あいにくそれしか思いつかなかったんでな。」
コートの内ポケットに隠したうちわをだし、変化魔法を解く。
1つ目は、水魔法を織り込んだうちわだ。このうちわは戦闘になっても使ったことはない。別にこれが弱い訳ではなく。その逆だ。ウォータージェットカッターと呼ばれるそれは、コンクリートすら切ることが可能で、イノシシなどに使うにはあまりにもオーバースペックだった。
下手をすれば、白雪姫は死ぬのではないか、とどこかかったつもりでいた。だが、目の前の王女は俺の想像をはるかに超えていたらしく、まゆひとつ動かさずウォーターカッターを精霊の魔法で氷の塊にしてしまった。ヒュンヒュン、と精霊が空を切る音が響く。10体の精霊が彼女を守っているようだ。
そして残りの精霊たちが俺に向かってきた。数だけなら100を超えている。ただ、かぐやの話なら、こいつらは数だけで、魔法としてはそこまでらしい。というのも、精霊魔法というのはそもそも、精霊と契約し、その精霊を強化することが一番の特徴だ。極限まで自身の精霊を鍛えあげればその戦闘力は計り知れない。
だが、彼女の場合、それは弱点になりうる。多くの精霊と契約している分、どうしても使用頻度に差が出てしまい、数の優位があまり機能しない、との事だった。
が、あくまであまり、機能しないとのことで。全方角からの攻撃はさすがに凌ぎようがない。そこで、2本目のうちわの登場だ。こうやって使うのは初めてだが。
そのうちわは念動魔法というもので、俺の後ろに回ろうとする精霊の動きを阻害する為、床が反り上がり、壁を作る。これ、後から弁償金とか支払い請求されないだろうか少し心配だが、仕方がない。
背後を固め、後ろに回り込めなくなった精霊達が一斉に魔法を起動する。百もの魔法はまさしく魔法の集大成なのだろう。これは避けられない。
ならば。新たなうちわを取り出す。そして、自分自身に風を浴びせた。
雨のように、魔法が降り注ぐ。爆炎と雷鳴が轟き砂煙が高瀬の体をおおう。
取った、と白雪姫は直感した。だぎ。
ボフン、と煙を切り裂き、彼女に向け何かが飛んでくる。魔法で落とそうかと考えたがそこまでのものでもなさそうで、サイドステップでかわす。
続けて煙から出てきたのは体が黒く変色した高瀬だった。見たことない魔法だが、硬化魔法がそこらかと仮定付けた。
下位の精霊とはいえ、100を超える魔法を受け、まだ立ち向かってくる勇気に敬意を評し、白雪姫も自身の全力を使うことに決める。
自身の護衛に回していた20の精霊に魔力を込める。数では先程の5分の1だが、威力はこちらのほうが桁違いに上だ。
まっすぐに走ってくる高瀬はそれでも足を止めない。さらばだ、と短く呟き、最高火力を叩き込む。
高瀬の思惑通りに。
護衛の精鋭を相手取るより、攻撃に回させたほうが隙をつきやすい。魔法の発動を確認すると、指を鳴らし、彼の姿が消える。代わりに現れたのは、先程煙の中から投げたうちわだった。うちわは、その身に莫大な魔法を受け跡形も残さず消えた。
そして、うちわのあった場所、白雪姫の背後に、高瀬が現れる。位置転換の魔法で強力だが、20メートル圏内でしか効果がないのが欠点である。
ともあれ、護衛の精霊を攻撃に回し、無防備となった白雪姫の体に、硬化魔法で固めた自身の拳を思いっきり叩き付ける。
拳が、彼女の体を捉えんとした刹那、先程めりあげた、床の壁から爆煙があがり、2人を飲み込む。
彼の拳は、しかし、彼女の元に届くことはなかった。一つの精霊が、彼の拳を止めていた。ひとつ残しておいたのだ。
だが、彼の動きを止めたのはそれではなく。爆煙とともに一瞬でこの場に現れ、白雪姫越しに高瀬の首元に刀を突きつけるフッドだった。
戦闘の描写は自信がないです。いや、自信があるものなんてないんですがね?どうやって収束させようか悩み中です。考えなしここに極まれりですね泣