異世界なのにうちわ職人になりました。   作:柊彩

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決着ですよ。

うちわ魔法と一概に纏めても、うちわの種類によって扱える魔法に適性がある。

 

丸亀うちわなら炎や氷など物質的な魔法を組み込みやすい。使い勝手や作りやすさからも俺が1番作るうちわである。

 

京うちわは夢想や安眠など精神的に安らぎを与える性質の魔法に適している。ただ、差し柄の構造など独自の製作法を用いる必要があり、量産しにくい。

 

そして最後のひとつ、女竹を用いて作るのと、格子状の窓と言われる作りが特徴的な房州うちわは精神的な魔法ではあるが、京うちわと異なり、精神攻撃に長けたうちわであり、その特殊性から、作った房州うちわは1度限りだった。

 

「悪く思うなよ、丸亀うちわじゃあんたには届かないからな。」

 

丸亀うちわの閃光魔法で牽制しつつ、手のなかに現れた房州うちわを白雪姫にふり抜く。

 

どじゅ、という鈍い尾とともに、地面に鮮血が溢れる。

 

ただし、それは、俺の体から出たもので。

「…隠してやがったのかッ!」

閃光魔法を発動するまえに後ろに精霊を配備していたようで背後からの樹木魔法による木製の矢に腹を貫かれていた。致命傷に至らなかったのが不幸中の幸いで。

 

「ううっ!?」

仕留めきれなかった白雪姫の敗因だ。

「何を、したっ!?」

白雪姫が膝をつき、呻く。物理的には何の影響もないからと対応をおろそかにしたのが間違いだ。

 

唯一の房州うちわ、その効果は、精神汚染魔法。

風を浴びた対象に、トラウマなどを元にした幻覚を見せる魔法で、禁術指定された魔法のひとつだ。

 

 

「ううっ…」

さすがの白雪姫も精神系の魔法には耐性がないようで、苦しげな声を上げる。

 

勝利を確信した瞬間、わずかな風と共に、身体が宙に浮いた。そして、目の前には刀が突きつけられていた。

 

フッドだ、とギリギリ分かったのは彼の顔が白刃に歪んで映っていたからだ。

 

「…姫様に何をした?」

それは今まで聞いたことのない凍てついた口調だった。

ちらと横を見ると、かぐやが地面に伏していた。息はあるようだがぴくぴくと動いて立ち上がれなさそうだ。

それを、目の前の男はしたのか。

まだ全力ではなかったのか。

まだだ。まだ虚勢を張り続けなければならない。

「いいのか?これを解けるのは俺だけだぞ。」

「適当なことを。そのような魔法あるはずなかろう?」

 

口ではそう言いながらも、フッドの顔には若干の逡巡がある。当然だ。嘘だと断じるにはリスクが大きすぎる。無言のままフッドの拘束が少し解かれた。

 

「…やめな、さい、フッド。その男は私のものよ。」

かすれながらも確かに聞こえたその声に、体が凍る。

 

「嘘だろ…ッ。」

あり得ない。解除するためにうちわの効果を抑えはしたが、それでも十分なダメージは与えているはずだぞ。

 

「…大丈夫ですか、姫様。」

「問題ないわ。」

 

これはまずい。もう打てる手がない。丸亀うちわはまだあるものの、それで対処するには敵が強すぎた。

 

頭を抑えながらも立ち上がってくる白雪姫に戦慄を覚えつつ、なんとか手持ちのうちわをかきあつめる。

 

フッドの手が緩んだ瞬間、変化魔法をとき、土魔法の柱水魔法のウォーターカッターを白雪姫の体にたたき込む。

 

「…少しは待ちなさい。まだ頭は痛いんだから。」

背後から、白雪姫の声がした。

後ろに振り向くのと同時に激しい痛みに襲われる。

高威力の樹木魔法をもろに受けたらしく、肩が大きくえぐれていた。

言葉にならない痛みに、とっさに距離をとろうと後ろに飛んだ。

 

ただ、それは相手が予期したとおりのようで、地面は粘着魔法がかかっており、身動きがとれなくなる。

 

そんな高瀬に三つの氷柱が狙いを定める。

それらは高速で彼の心臓へ噴出され。

 

ゴウ、という、爆発音とともにかき消された

かぐやの爆発魔法に助けられたようだ。

 

「かぐや、邪魔をしないでッ!これはあなたのためなのよっ!」

「お姉ちゃんに従う義務なんてない。私は、わたしのために戦う!」

 

かぐやの檄に白雪姫が一瞬ひるむ。そうだ。おびえるのは今じゃない。

 

恐怖心を抑え、心を奮い立たせる。

…だが。

 

「…足が…!?」

心より先に体が悲鳴を上げる。症状からしても毒を受けているようだが。

 

「かぐや。あなたの意思はわかったわ。でもね。私も譲れないものぐらいあるのよ。」

 

見上げた先には多くの炎系の精霊の魔法を束ねて人一人を十分に包み込むほどの炎球を展開した白雪姫。

必死でかぐやが止めようと向かってくるがそれをフッドが抑える。

 

「残念ね。あなたのこと、そこまで嫌いではないのだけれど。」

「…は、なら見逃してもらいたいんだが。」

「残念ね。私のかぐやでなければ私の宮廷魔法士に据えていたところよ。」

 

パチン、という指なりとともに、高熱を伴った炎球が向かってくる。

 

「高瀬ッ!!」

かぐやの声がかすれた意識の中で響いた。

同時、それに手が届く。スイッチを入れ、それを全力で投げる。ただ、それは白雪姫とは逆の方向で。炎は確かに体を焼き尽くす。

 

はずだった。

極大の火炎の球はしかし目前で止まる。

 

「???」

「…っ!?なにが!?」

 

白雪姫自身も訳がわからないといった顔を浮かべている。

 

「何が、どうなってっ!?」

炎が消えていく。その台詞は俺が言うべきだと思うのだが。

 

その時、いくつかの精霊が集まり、人型となる。

「…我が主よ。もうおやめなさい。」

精霊は静かに口を開く。

「…どういうことです?私はあなたを呼び出してはいませんよ。」

「もう決着はついています。あなたが運ぶべき相手はどこにいるのですか。」

 

そして、そこで初めて白雪姫は俺の狙いに気づいたようだ。

 

先程投げたのはシーナの作った転移魔法の機械だ。

そして、目の前にある転送装置は来る前に試験場に置いた本体で。課題の対象となる男を試験場に連れてくるのが課題ならば、この勝負は、俺の勝ちだ。ただ…。

 

「…っ。」

白雪姫が憎らしげにこちらを見る。それも当然だろう。あまり褒められたやり方ではない。だから、俺がどうなってもこの際仕方がない。ただ、これでもし新竜が約束を守ってくれたなら、かぐやの身はとりあえずまもれただろう。

 

「…ま、いいわ。負けは負けね。」

だが彼女のこたえはとても素直で、逆に驚く。

「刀をしまいなさい、フッド。かぐやも。悔しいけど、あなたたちの勝ちなんだから。」

 

その言葉に、フッドは目を見開き、かぐやは笑みをこぼす。そして俺の方に向き直ると、口を開いていないにも関わらず、白雪姫の声がした。

「…なんてね。今の嘘。そんなに悔しくないの。私以上にかぐやを思っている人に託すなら心配なさそうですし。」

「え…」

「多分かぐやも持っているでしょうが、私の精霊の一つに心を読む魔法があるの。ずっとかぐやのことを考えているもの。私の負けだわ。」

「な、な、な、」

ずっと見られていた?それはつまりいろいろ恥ずかしいことも?

 

「どうしたの、高瀬?」

「ひあ!??」

「わわ、何よ!?」

「う…いや。なんでもない。」

「ふぅん?」

 

そんなやりとりを白雪姫がにやにやしながら見ているのが見えた。ただ、どれだけ憎みごとを心の中で言っても、答えは返ってこなかった。




更新だいぶ遅くなりました。
日常系の話を2、3話考えてたんですがここからどうやってつなげるかわからず結局没になりそうです。
…言い訳です、はい。
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