シーナ・リチャード、13歳。まだ若干のあどけなさの残る金髪の美少女である。
そして。才能と容姿の面で神の寵愛を受けた者として、町中にその名を轟かす天才発明家だ。
その才能は幼少期から突出しており、わずか8歳で新たな炎魔法を用いた魔法工程式を完成させ、街の技術力を10年進化させたとまで賞賛された。その時の功績が認められ特例的に10歳の若さで固有魔法を授与された。
彼女の魔法は創造物能力付随魔法というとても長い魔法名をもつ。文字通り彼女の作ったものに魔法の力を付随させるというもの。簡単に言えばうちわしか効果のない俺のうちわ魔法の上位互換だ。
まぁそれも完全なものではない。俺のうちわ魔法は俺自身が多様な魔法属性を持ち、俺個人で魔法を加えられるのに対して彼女のは他人の協力が必須だった。例えば炎魔法のギミックを加えたいなら炎魔法の使い手の協力が不可欠なのである。そのため彼女の発明所には複数の優れた魔法使いが常駐しているらしい。
とは言っても天才発明家の異名は伊達ではなくここ3年間で国宝級の魔道具をいくつも作成している。氷魔法を埋め込んだクールスーツ。育成魔法を使った植物の発育を高める土。果てには熱魔法と回復魔法を組み合わせた感染症の特効薬など挙げればキリがない。
不定期で行われる彼女の発明品の発表会は今では街の一大娯楽のひとつとなっている。たまたま街に出た時に彼女が販売会をしていたら俺も見に行く。その理由は大きく2つ。
まずひとつは純粋に彼女の発明品に興味がある。大抵は完成度が高く実用性に優れた逸品で舌を巻く。だが天才の性なのか時折あまりある才能が英国紳士的な方面に向かうことがある。
絶対起きられる目覚まし時計として売っていたものが爆音魔法と閃光魔法を織り込んだスタングレネードで半泣きの抗議者が殺到していたのは記憶に新しい。
いろんな意味で彼女の売るものは見ていて退屈しない。
そしてもうひとつはもし彼女に顔を見せなければ後でうるさいからだった。
「お!高瀬じゃないかー!」
彼女は俺を見つけ、笑顔を振りまいた。
俺は何故か彼女からライバル視されていた。
「あんた…もしかして…」
隣でかぐや姫が変質者でも見るような目でこちらを見ている。言っておくが俺はロリコンじゃないぞ!
販売会の説明後かぐやを連れてこっそり抜けようと思っていたのだがあちらは俺をしっかりマークしていたらしく正面から全力疾走でぶつかってこられた。俺もそこまで身長は高くないがいかんせん相手はほとんど幼女。身長差によって彼女の顔は俺のみぞおちの高さだ。何が言いたいか。ぶつかってこられると軽く意識が飛ぶのである。年上の威厳にかけて何とかこらえる。
「こは、、よ、よう、シーナ。元気そうじゃないか。」
「ふっふ、我に疲労などないのだっ!」
彼女は人前では普通だが俺と話す時は厨二病チックになる。多分彼女の素はこんな感じなのだろう。そのため時々彼女を天使だと言っている奴を見ると笑ってしまうのは不可抗力だと思う。
「どうだった、今日の我の聖道具は!今回は久々に神が舞い降りたのだ!」
今日の発明品は粘着魔法を用いた吸着力の落ちないただ一つのクイックルワイパー。神とはどうやらお暇らしい。なにか褒めてやった方がいいのだろうか。迷った末に正直に言うことにした。
「アイデアはよかったとは思うが…あれじゃ粘着力強すぎないか?絨毯とかすげー傷むぞ。」
彼女の目が大きく見ひかれる。
「ああっ!確かにっ!さすが我がライバルっ!ちょっと直して来るっ!」
目をキラキラさせて商品の方へかけていった。彼女の1番の能力はその魔法でも頭脳でもなく実行力だ。1度イメージが沸けば必ず形にしてみせる。
俺は異世界ものにありがちなかつての世界にあったものを伝えることでハーレムルートに入れるのではないかと彼女で実験したことがある。そのひとつに商品案として携帯電話を提案したことがある。あらかたの機能(主に電話機能)の説明をすると彼女は水を得た魚のようにはしゃぎながら作業を始め1週間も経たないうちにそれを作り上げた。いや、たしかに彼女は天才だと知っていた。しかし、彼女の才能は俺の想像を超えていた。
俺はできて最初期のケータイ、もしくはポケベルとかが作れたらすごいと考えていた。しかし。彼女が作ったのは手のひらにすっぽり収まる長方形の機械で液晶のした部分の真ん中には親指アイコン。そう。彼女はケータイをすっ飛ばして作ってしまったのだ。
―――iPod touch(第6世代)を。―――
…どうしてこうなった。まさかiPhoneすら飛ばすとは思わなかった。iPodはWi-fiがなければほとんど使えない。一体どこから彼女の頭にWi-fiという概念が生まれたのか。
あ、俺ですね。そう言えば言った気がする。
そして肝心の電話機能がなく、あったのはぷよぷよ、テトリスだった。彼女いわくゲーム面で魔法容量がつついっぱいらしい。誰だこんなしょうもない機能を教えたのは!あ、俺ですね、分かります。
それから時たま彼女にアイデアを貸しているうちにハーレムフラグは立たなかったもののライバル認定されてしまった。何故か敗北感。
「…あんたってロリコン…?」
買い物をし終え、街を出て帰り道。二人分の荷物で息絶えだえの俺に対して割と真剣な表情でかぐや姫が聞いてきた。
「バカ、俺はロリコンじゃねぇ。フェミニストだ。」
「…あんた、それ言うやつは変態扱いされるんだけど分かって言ってる?」
そんな馬鹿な!広辞苑じゃちゃんと「フェミニスト…1.女性解放論者。2.女性を大事に思う人。」という素晴らしい内容で紹介されているのに!
「広辞苑で調べたの?それ末期だよ!?」
酷い言われようだ。俺のどこが末期というのか。
「なんか…あんたに匿ってもらってたらあたしがどうにかなりそうで怖いわ。」
「ああ、それはないから安心しろ。」
「あんたやっぱロリコンでしょ!?あるいは熟女好き!?」
どこまで教養がないんだ!ロリか熟女かならロリに決まってるじゃないか!
「やっぱりロリコンなんだ…。」
このあと、ずっとじろ目されました。ついでに荷物は7:3ぐらいの割合でかぐや姫のものなのにひとつも持ってくれませんでした、まる。
前回せっかくうちわ職人に戻ったのにまた関係ない方に…。
なかなかバランスというものが難しいですね。もう少し出したいのですが。
そう言えばしっかり能力について書いてなかったので今回は少し能力を紹介しておきます。
(注)読み飛ばしOK
★うちわ魔法(柏 高瀬)…自分の作ったうちわに炎魔法や氷魔法、時間魔法など多彩な魔法を埋め込むことが可能。織り込む魔法の練度によって効果を調整することも可能。地味だが魔法の種類を扱う複合型という高度な魔法。
★コピー魔法(かぐや姫)…その名の通り自分の見た魔法を再現することが出来る。王女という立場上優れた魔法使いが周りに多く、使える魔法も優れたものが多い。
ただし、複数の魔法を同時に扱う複合型魔法はコピー不可能。
★創造物能力付随魔法(シーナ)…自分の作ったものに魔法効果を加える魔法。その時対象物は問わない。高瀬のように魔法効果を自分が持っている訳ではなく、加える魔法はその魔法使いの協力が必要。