異世界なのにうちわ職人になりました。   作:柊彩

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冬の或る日

小春日和。俺の好きな言葉のひとつだ。なんか可愛いし。それは多分今日みたいな日を言ったのかもしれない。

 

冬にしては珍しく温かな今日は最高のスタートを切った。

 

いつも通りに6時に起きたが、頭がスッキリしており、しかもアリシアの寝顔が目の前にあった。ここは天国かそうなのか。

 

竹を取りに行くと降り積もった雪が少し溶け、水滴が光を受け輝いていた。

 

朝ごはんは俺の飯にしては超豪華な(昨日の残りの)おでん(大根のみ)だった。

 

実際、うちわ作りも普段よりうまく作れている気がする。

 

横を見るとかぐやとアリシアが『貼り』の作業をこなしていた。元から天使のアリシアと、容姿だけはいいかぐやはそこにいるだけで絵になる。

そんな美少女2人がせっせとうちわを作っているのだがまぁギャップ萌えということで。

 

仕事も一段落し、少し外に出てみた。

 

―麗らかな昼下がり。

―うちわを作る音が心地よく響き。

―美少女2人がそばで話している。

―なるほど。ここが天国というやつか。

―神様、俺もう死んでもいい。

 

「高瀬ー。貴様の宿命のライバルだぞー。」

 

と、そこで工房に近ずいてくる金髪の少女に声をかけられる。天才発明家のシーナだ。

 

どうやら天使が増えたようだな。やるじゃん、神様。

 

「神が我に与えし聖魔道具・名付けて『扇風機』だぞ!」

 

―なんだ。神様が殺しに来たのか。

…仕事無くして自殺させに来る神様とか、陰気だなおい。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「うんうんなるほど。羽を回して風を出す機械か。魔法を埋め込んでて温風と冷風がだせるのか。」

 

「どうだ?さすがのお前もすごすぎてなにもいえないのか? 」

 

すごいね。言葉は出ないけど冷や汗はさっきから止まんないぐらいすごいね。

 

…いやまて、これほんとやばい!こんなうちわクラッシャーが販売されたら俺の仕事総取りだよ俺無職だよ。くそっ!天使だと思ってたシーナがまさか天使(ラッパ装備ver.)だったなんて!誰だシーナに余計な知識与えたやつは!落ち着け!考えるんだ俺!そうだ!これ一個だけなら大丈夫だ!

 

「これって量産できるの?」

「ふん、われをみくびるなよ?1度作れたものは作れるに決まっているだろう?」

 

ちくしょう無理だったか!普通は1回作れたからと言ってできるとは限らないんだけどな?

 

「それよりもあそこにいるあ奴らは誰だ?」

「ん、あー。そういや紹介してなかったな、黒髪がかぐやで、緑髪がアリシアだ。うちの従業員だよ。」

「じゅ、じゅうぎょういん?」

なぜかシーナの声が震えている。

「ふ、ふん、戦力増強というわけか。毎日共に働いているのか?」

「まぁそうだな。一緒に住んでんだし働かせてるな。」

「いっしょにぃっ!?」

「うわわ、どうしたいきなり?」

「何でもないわっ!」

 

怒られた。なんなんだ?

 

「ふん!べつに貴様が誰とつるもうが構わん。どうせ我に敗れるのだからな。」

 

うーん、なんか元気がないな…。あ、これはもしかして…?

 

「はっはーん。分かったぞ。お前の魂胆。」

「ふぇ?」

「ズバリ!アリシアが欲しいんだろ?」

「…え。」

「残念だったなシーナ!アリシアは渡さんぞ!」

「…何言ってるのよ。」

 

あれ?違ったのか?同世代が恋しかったとか、アリシアの可愛さに見とれたとかかと思ったのだが。

 

「…じゃあかぐやか?かぐやならいいよ。」

「死になさい。」

 

背後に気配を感じた瞬間、俺の膝が死んだ。

 

 

「膝カックンっておま…!?」

不覚だった。まさか膝カックンがここまでダメージを負わせる技だったなんて。

 

「えと、かぐや、さん?」

「ええ。こちらはアリシア。あなたは街で確か…シーナさん、であってるのかしら?」

「あ!はい!」

 

患部をさすっていると隣でガリガリという音が聞こえてきた。みるとかぐやが足で地面を引っ掻いていた。どうやら文字を書いてるようだ。器用なやつだ。えと、内容は…

 

「扇風機ってどういうことよ?」

 

どうやら聞いていたらしいな。事態の重みを理解しているようでなにより。だがどうやって伝えるべきか。

 

「…へぇー、創造物能力付随魔法かー。面白い能力ね。」

「でもこの能力も完璧じゃなくて、高瀬さんみたいに自分一人で作れるわけじゃないんです。」

「いいんじゃないかしら?それでも。」

「え?」

「あなたのはみんなで作ってる感じじゃない?それって素晴らしいことっぴゃ!?」

「かぐやさん!?」

 

地面に書かれた文字になんとか答えようと思いついたのがかぐやの足に文字を書くことだった。我ながら完璧だな。なんかいいこと言ってたっぽいけどこっちが大切だし許してくれるはず。

 

「なにやってんのよ変態がっ!」

 

顔面を蹴られました。なんて暴力的なんだ!

 

 

 

「へぇー。シーナちゃんはショートケーキが好きなんだ〜」

「はい!イチゴの酸味とクリームの甘みが…」

 

場所を移し工房の中。俺とかぐやが隣に並び、背中文字で会話をとる。もちろんシーナにはバレないように慎重に。

 

(なんで扇風機なんて作ってるのよ文明進歩しすぎでしょ!?これ大量に作られたらうちやっていけないわよ?)

(分かってるよ!でもだからって俺らの仕事がなくなるから売るのやめろとかいえねーだろ!?)

(変な意地張ってんじゃないわよ!)

 

表ではスイーツトークをしていながら裏で生々しいことをする。知りたくなかったが、これが大人の世界というものか。

 

(第一扇風機なんて簡単に思いつかないわよ!あんたなんか吹き込んだんでしょう?)

(俺だってわざわざ無職になる原因作りゃしねぇよ!)

 

「どうやって動かすのー?」

ふと、アリシアが扇風機に触り始めた。

「アリシア!ダメだぞ勝手に触ったら!」

慌てて引き離した。これで壊したら弁償代とか必要だし。

 

「…ふふ、いいよ、高瀬。アリシアちゃんに使わせてあげて。」

 

シーナが笑いながら言ってきた。いや、しかし…

 

「売り物傷つけちゃったらだめだろ…?」

「いいのよ。だってそれ売り物じゃないし。」

「え…?」

 

俺とかぐやは顔を見合わせる。売らない?このうちわクラッシャーを?

 

「なんで?絶対売れるぞ?」

うちわの代わりに。

 

「だってそれ売っちゃったらあなたのうちわが売れなくなるじゃない。」

 

「え…、いや、それは…そうだけど…。」

「高瀬は私のライバルだ。ライバルはライバルらしくいてもらわなければならんからな!」

むふー、とシーナは胸をはる。

 

「…じゃあなんで作ったの?」

かぐやが口を開いた。

「だってこれは最初っからこの工房にあげるつもりだったから。」

「え…。」

「高瀬言ってたじゃん。扇風機欲しいって。」

 

ふと、記憶が蘇る。

 

―それはかぐやたちが来るずっと前のこと。

―シーナが柏工房を訪れた時。

―夏の、とても蒸し暑い日だった。

―工房の中も例外ではなく。

「めっちゃ暑いな。扇風機が欲しいな。」

「扇風機?」

「おー。羽を回して風を出す機械なんだ。」

「?高瀬のうちわも出してるじゃん?」

「違うんだよ。扇風機ってのはな?手を使わないんだ。部屋に設置したらあとはリモコンって言うので操作できる。」

「へぇー。すごいんだね! 」

「ああ。扇風機欲しいわ〜。」

 

―――――――――

 

あ、元凶俺か。そういえば言ってたような。

 

「だから頑張って作ってみた!」

 

頑張ってって、すごいなこの子。

 

「それじゃ、うちのためだけに作ってくれたの?」

かぐやが震える声で尋ねる。

「そうだよー。売るつもりは無いから安心して。」

 

結局その扇風機は柏工房に寄贈され、シーナにはお礼に特上うちわ10枚と最高級ショートケーキをあげました。

ここまでで終わればよかったんだけど。

 

 

「…で?何かいいわけは?」

俺は仁王像のように立つかぐやの前に正座していた。

「えっとぉ。その。ちょっと軽い冗談と言いますか…。」

「ふぅん?軽い冗談で自分の仕事をなくしちゃう発明のアイデアあげちゃうんだ?」

「うっ、いや、でもほら、シーナは売り物にはしないって…。」

「それはシーナちゃんがいい子だったからでしょ?しかもこっちに気を使って売らないって言ってんのよ?恥ずかしいと思わないの?」

ぐうの音も出ない…!!

 

その日の晩ご飯は

かぐや&アリシア➡親子丼

俺➡親子丼(汁なし&具なし)だった。

 

そして当然のごとく扇風機はかぐやとアリシアのものとなった。

 

小春日和は…冬には変わらない…(泣)




UAを見ていると今日の朝から何人か見てくれているんですよね。単純な作者は(これ多少なりとも楽しみにしてくれてる人いるのかなぁ??)ってめっちゃ喜んだんです。あとから思えばそんなわけないわって感じてます。

深夜テンションは落ちた時とことん落ちるものなんですね。
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