清滝一門の長男   作:Rokubu0213

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箸休めに桂香さんの話を一つ。


桂香にときめく盤王

盤王戦第1局から一夜明けて俺は自分の家に戻ってきた。

始めてタイトルを獲得した日は対局後の取材対応、打ち上げの結果ぶっ倒れてしまったため、対局後の公務には嫌なイメージしかなかったがやはり中々大変だった。

 

結局当日に帰るつもりが、長引いて対局した宿で一泊することになってしまった。

 

銀子に一泊することを電話したらなんか不機嫌になっていた。

銀子も今日から女王戦だし気が立っているんだろう。

できれば、行く前に応援してあげたかったんだけどなぁ。

 

 

見慣れたアパートの前までやって来ると、そこには桂香さんがいた。

 

 

「桂香さんありがとうございました。」

「あ、勇気くんお疲れ様。」

 

 

俺が対局でいない日は桂香さんに銀子の世話をお願いしている。

 

 

「ちょうど今、銀子ちゃん行ったところ。銀子ちゃん勇気くんに会いたがってたよ。」

「そうだったんだ。」

「もう朝ごはん食べた?」

「まだ。」

「じゃあ折角だから作ってあげようか?」

「うん!」

 

 

桂香さんが台所でせっせと朝ごはんを作ってくれている。

味噌汁の匂いが漂い、卵を割る音が聞こえて自然とお腹もすいてくる。

 

なんか夫婦みたいだな。

妄想でニヤニヤしていると桂香さんが目ざとく見つける。

 

 

「なにニヤニヤしてるの。どうせ夫婦みたいだなぁとか馬鹿なこと考えてるんでしょ。」

「そ、そんなことあるわけないでしょ、アハハハハ・・・」

 

 

やっぱり桂香さんには敵わないそう思った。

 

 

「どうぞ、召し上がれ。」

 

 

俺の目の前にはごはんと味噌汁に卵焼きとベーコン、清滝邸で暮らしていた時は毎日食べていたメニューだった。

 

 

「いただきます。」

 

 

まずは味噌汁を飲む。

 

 

「美味しいよ、桂香さん!」

 

 

昔と変わらない美味しい味に思わず涙が出そうになる。

 

 

「ウフフ、ありがとう。」

 

 

桂香さんはしばらく俺がごはんを食べている姿を無言で微笑みながら見ている。

 

 

「銀子ちゃんとの二人暮らしはどう?」

「ごはんを二人分作ったり買ったりしなきゃいけないこと以外は特になんの問題もなく過ごせてるよ。」

「ふーん、ご飯はコンビニ飯が多いの?」

「そうだね、最近はお互いに公式戦が多いから、基本コンビニ飯ばっかだね。」

「それじゃあ、栄養が偏って体に良くないわよ。・・・そうねぇ、勇気くんが盤王戦の期間中だけでも私がごはん作ってあげようか?」

「え!?いいの?でも師匠のご飯も作ってるのに俺たちの分までなんて大変だよ。」

「いいのよそれくらい。逆に私にはそれくらいしかしてあげられないから。」

 

 

桂香さんが寂しそうに言った。

 

 

「う、うんお願いしようかな。俺も銀子もめっちゃ助かるよ。桂香さんのご飯美味しいし。」

 

 

その後も俺と桂香さんは他愛もないことを話した。

桂香さんと二人きりというのはとても久しぶりな気がする。

 

 

「なんか悔しいな。昔は勇気くんと一番一緒にいたのは私だったのに今はもう銀子ちゃんや八一くんの方が一緒にいる時間長いもんね。」

 

 

確かに俺が盤王になってから一番会う機会が減ったのは桂香さんだ。

八一や銀子とはプロ棋士である以上会う機会が時々あったからそこまで会う機会は減らなかった。

 

 

「八一や銀子が内弟子になるまでは桂香さん俺にずっと構ってくれてたよね。」

「私も弟ができたみたいで嬉しかったのよ。勇気くんより小さい八一くんや銀子ちゃんが来てからは私も二人の世話が増えたから勇気くんに構ってあげられなくなっちゃったけどね。」

「正直八一や銀子に嫉妬してた時期もあったんだよ。」

「へぇー、そうなの初耳!」

 

 

桂香さんがイタズラっぽく笑う。

 

 

桂香さんと話していると落ち着く。不思議と素直になれる。

 

 

「じゃあそろそろ私行くね。」

「あ・・・うん。今日はありがとう。」

 

 

もう少し桂香さんと話していたかったが迷惑をかけるわけにもいかないので引き止めなかった。

 

 

俺の感情を読んだのか桂香さんは微笑んで俺の頭に優しく手を置いた。

 

 

「頑張ってるね。偉いぞ!」

 

 

優しく俺の頭を撫でてくれた。

 

 

桂香さんが帰った後も桂香さんの笑顔がしばらく頭から離れなかった。

 




桂香さんみたいな年上の女性に甘やかされたい!!


さて、次回は銀子ファン必見です!!
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