最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが
最近銀子の様子がおかしい。
最近銀子の帰りが異常に遅いのである。
「ただいま。」
今日も帰ってきたのは午後10時過ぎ。
前は学校が終わったらすぐ帰ってきていたのに・・・
一緒に住む兄として銀子が道を踏みはずそうとしているのなら正してあげなければならない。
「ここに座りない。」
意図的に威圧する。
「どうしたの?」
銀子はのそのそとやって来て俺の前に座った。
おかしい点は他にもある。
最近家に帰ってくるとひどく疲れているのだ。
銀子は自分の対局があった日もあれほど疲れては帰ってこない。
銀子が将棋以上に神経を使うこととはいったい何なのか・・・
「最近変わったことないか?」
まずは核心に迫らずに、銀子の心をほぐしていく。
将棋と同じで、攻めるには準備が大切なのである。
「特に何も。」
おぉ、穴熊のごとく硬いガードだ。
「最近少し疲れ気味じゃないか?」
歩を突き捨てるように軽く探りを入れる。
「そんなことはないと思う。」
銀子は眉をひそめて警戒度を上げている。
「じゃっじゃあ俺に相談したいこととかないのか?」
「何もない。」
の、ノータイムだと・・・!?
さすが、銀子。守りが尋常じゃないほどに硬い。
だが【中盤の鬼】と呼ばれて攻めに定評がある俺に崩せない守りなどない!
「なんで最近こんなに帰りが遅いんだ!」
「な、なんでもない。」
この日始めて銀子の表情が変化した。
よしっ、一気に攻めを繋ぐ。
「俺に言えないような事してるのか?」
「・・・」
銀子はついに黙り込んで俯いてしまった。
そしてポタポタと小さな雫が垂れた。
・・・
泣かしちゃった!?
「ご、ごめん銀子。チョット言い過ぎちゃった。」
「いきなり、怒るから・・・」
あわてて銀子をなだめる。
その後銀子の要望で頭を撫で続けてなんとか銀子を泣き止ませることに成功した。
「どうしても言いたくないこと?」
「兄弟子にはどうすることもできないこと。」
そう言うと銀子は和室へ行ってしまった。
✳︎
『ヤバくない?』
『通報しとく?』
『えーコワイよー。』
俺は今大切な妹に何か危険なことが起きてないか確認するため銀子を中学校から尾行している。
周りの中学生からは明らかに不審者に思われているが関係ない。
俺は何としても銀子の帰りが遅い原因を突き止めなければならないのだ!!
銀子は一人で迷いなく道を歩いて行き、俺もよく見知った場所の前で立ち止まった。
銀子は清滝邸にそのまま入って行った。
なんで清滝邸に寄ってるんだ?・・・
ここで俺の頭の中で今までの出来事が全て一つに繋がる。
つまり俺の読みはこうだ。
だから遅くまで清滝邸にいてなるべく俺と一緒にいる時間を減らしているのだ。
銀子は自分から二人暮らしをお願いした手前自分からは言いにくいのだろう。
分かった銀子・・・お前のために俺から二人暮らしの終わりを提案してあげよう!
・・・どうしてこんなに嫌われちゃったのかなぁ(泣)
俺は涙を堪えて清滝邸へと駆け出す。
「ゴメンよ銀子ぉぉぉ。今日からもう俺の家には帰ってこなくていいからねぇぇぇ。」
叫びながら清滝邸の中に入るとそこには驚いた顔の銀子と桂香さんがいた。
「いきなりどうしたの!?というか何でここにいるの?」
「分かったよ銀子、お前本当は俺と暮らすの嫌だったんだろ。明日には銀子の私物全部こっちに送るから今日からまたここで暮らしていいぞ。」
銀子が目をパチパチとさせている。
「何いきなり言い出してるの。明日からも兄弟子の家で暮らすから。」
「え?だってお前俺といるのが嫌でここにきてるんじゃないの?」
「違う!お兄ちゃんと暮らすのが嫌な訳ないじゃない。」
本当なのか!?
よかったぁ、銀子に嫌われてなかったよぉ〜
「じゃあなんで・・・」
銀子の後ろにいる桂香さんと目が合う。
桂香さんは気まずそうに目をそらした。
銀子がここにいる理由、そして銀子が俺にこれを内緒にしていた理由がわかった。
「将棋星人には関係のないことだから、帰って。」
「わ、わかった。ごめん。」
悔しそうに俯く桂香さんに俺は何も言うことができなくて、銀子に無理矢理外へと追い出される。
ーー将棋星人にはわからないことだからーー
銀子に言われた言葉と桂香さんの顔が頭の中をグルグル回る。
桂香さんにBがついたことは知っている。
銀子が言った言葉の意味もよく分かる。
・・・でも
思い出したのは桂香さんに誓った夜。
俺はあの夜みんなを、桂香さんを守ると誓ったんだ。
例え嫌われたとしても、俺は桂香さんの為に何でもしてあげたい。
だって俺は
今日から原作3巻の話に突入です。