清滝一門の長男   作:Rokubu0213

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桂香さん強化!臨時研究会

桂香さんと一緒に清滝邸へ行くと銀子が不安そうな顔で桂香さんを待っていた。

 

銀子は桂香さんを見ると、額を桂香さんの肩にすりつけてじゃれている。

 

 

「遅い。」

「心配かけてごめんね銀子ちゃん。」

 

 

桂香さんは銀子の頭を優しく撫でる。

 

 

「嫌われたのかと思った。」

「嫌いになるわけないでしょ。」

 

 

桂香さんに撫でられて銀子もようやくいつもの調子に戻る。

そこでようやく俺に気づく。

 

 

「あ。兄弟子……」

 

 

さっきのやり取りを見られたのが恥ずかしいのか顔を赤らめている。

 

 

銀子は俺が桂香さんに将棋を教えることを嫌がっている。

 

俺の才能に触れて桂香さんが将棋を止める後押しになってしまうと考えているのかもしれない。

桂香さんに限ってその心配はないと俺は思っているんだけどなぁ・・・

 

 

「あのさ銀子、俺も桂香さんを教えることになった。」

「・・・」

「私がお願いしたの。」

「桂香さんがいいなら・・いいよ。」

 

 

銀子は渋々ではあったが認めてくれた。

 

 

 

かくして俺と銀子による桂香さん強化会議が開催された。

 

 

「まずは、しっかり時間を使い切る練習をすべき。」

「いや、時間は余ってもいいんだから大事なのは指すテンポだ。少々悪い手でもこちらのテンポで指していれば優勢になることもある。」

「へぇー。」

 

 

桂香さんが感心した声を上げる。

 

 

「騙されちゃダメ桂香さん。それは天才の考え方。」

「イヤイヤ、テンポなんて才能関係ないだろ。」

「凡人はそんなに一定ペースで次の手は浮かばない。」

 

 

銀子と俺は桂香さんの育成方針で喧嘩する。

 

 

「ウフフフ、アハハハハハ。」

 

 

言い合う俺たちを見て桂香さんは嬉しそうに笑い出す。

それにつられて俺と銀子も笑い出す。

 

 

「なんだか、昔に戻ったみたいね。」

 

 

そういえば昔は桂香さんを取り合ってよく喧嘩してたなぁ。

 

 

「ほんと、そうね。」

 

 

銀子がニッコリと笑った。

 

こんなに楽しそうな銀子を見るのはとても久しぶりな気がする。

 

 

「八一もいてくれたらなぁ。」

 

 

俺の何気ない一言で空気が突如重くなる。

銀子は複雑な表情するし、桂香さんは懐かしそうに目を細める。

 

 

「さぁ、八一くんを驚かせるくらい強くならないとね!」

 

 

桂香さんが明るく言った。

 

 

こうして俺と銀子と桂香さんの臨時研究会が発足した。

 

 

 

✳︎

 

 

 

桂香さんと銀子との研究会は毎日行われた。

 

 

「大分いい将棋になってきてると思うよ。」

「そうかなぁ。あんまり実感わからないんだけど……」

「うん。桂香さんだけの将棋になってきてる。」

「みんなのおかげだね。」

 

 

桂香さんは嬉しそうに笑う。

それを見て俺と銀子の表情も自然と緩む。

 

研究会が始まってから俺と銀子と桂香さんの仲は格段に良くなった。

 

いや、昔に戻ったという方がいいかもしれない。

 

将棋を教えた後は師匠も含めた4人でご飯を食べてから帰るのが定番の流れになっている。

 

でも、密かに八一も一緒にいて欲しいと思う・・・

 

 

「ワシは・・・ワシで・・・」

 

 

師匠は飲み過ぎて完全にダウンしてる。

 

 

「桂香さん、師匠連れて行くね。」

 

 

俺は師匠をおぶって寝室へと連れて行く。

 

 

酒臭い・・・

 

 

「勇気・・・頼む、、ぞ……」

 

 

急に自分の名前を呼ばれて驚く。

 

 

「はい。任せてください。」

 

 

師匠を布団に寝かして静かに部屋を出る。

 

 

居間に戻ると桂香さんと銀子が練習対局している。

 

 

邪魔してはいけないので音を立てないように側に座る。

 

 

子供の頃から聞いていた心地よい駒を打つ音だけが居間に響く。

この音を聞いていると段々と眠くなって・・・

 

 

 

✳︎

 

 

 

「ウフフ、寝てる。」

「最近名人との対局に向けて研究頑張ってたから。」

 

 

銀子と桂香さんが話しているのを聞いて目が覚めた。

 

 

「本当に勇気君や八一君は住んでる世界が違うんだね……」

 

 

桂香さんの寂しそうな声が聞こえる。

 

 

「兄弟子はいつも自分のことより私たちのことを優先してくれる。」

「本当に優しい人だね。」

「でもその優しさは……」

 

 

銀子の言葉の最後の方は小さ過ぎて聞こえなかった。

 

 

「膝枕でもしてあげたら喜ぶんじゃない?」

 

 

桂香さんが突然すごい提案をした。

 

 

「で、できない。」

「じゃあ私がしてあげようかしら。」

「!?い、いや私が・・・や、や、や」

 

 

 

面白そうだからまだ寝たふりしてるけど。

 

 

一人が立ち上がる気配がする。

 

立ったのはどっちだ?

 

気配が俺のすぐ隣まで来る。

 

 

「お、お兄ちゃん・・・」

 

 

隣に来たのは銀子だった。

 

 

「フフッ。」

 

 

銀子の緊張している様子がこっちにまで近づいて来て思わず笑ってしまった。

 

 

「い、いつから起きてたの?」

 

 

銀子は顔を真っ赤にして焦っている。

 

 

「今だよ。今、今。」

 

 

銀子はジト目で俺を睨みつけて来る。

 

 

「ホントは最初から起きてたでしょ。」

 

 

ちょっと桂香さん!?

 

桂香さんは意地悪な顔をしている。

最初から俺が嵌められてたのか・・・!?

 

 

「ぶちころすぞわれ。」

 

 

この後銀子にボコボコにされた。




銀子のせいでクーデレキャラに目覚めてしまった。
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