そんな今日この頃。
研修会での対局から2日後桂香さんに日頃のお礼をしたいと呼ばれて福島駅前の喫茶店に来ていた。
喫茶店に着くと既に桂香さんが店前で待っていた。
待ち合わせ時間の10分前だったけど、もう既に来ていた。
「ごめんなさい、桂香さん。待った?」
「私も今来たとこよ。……なんかデートの待ち合わせみたいね。」
桂香さんはイタズラっぽく笑う。
これは桂香さんが俺をからかう時に出るものだと最近わかった。
俺をからかってるとはわかってる、わかってるけど、顔がニヤケてしまう。
「さぁさぁ。早く入りましょう。」
「うん。」
桂香さんと共に喫茶店に入る。
普段俺一人だったら絶対に入れないようなオシャレな店。
というか店内カップルしかいない。
席に通されてそれぞれ注文をする。
俺はコーヒー、桂香さんはカフェラテを頼んだ。
「この店カップルしかいないね。……俺たちも周りからカップルに思われてるかもね。」
いつもからかわれているお返しに、仕掛けてみる。
桂香さんはじっと俺の目を見てくる。
桂香さんと見つめ合う、何となく気恥ずかしくなって目を逸らした。
「私はカップルに間違われてもいいけどね。」
「え!?」
桂香さんはまたイタズラっぽく笑っている。
「何そんなに赤くなってるのよ〜。もしかして照れちゃった?」
うーん、俺はいつになっても桂香さんには勝てないのか……
「銀子は今日対局があるから来れなかったね。」
これ以上戦っても俺が、からかわれるだけだから仕方なく話題を変える。
「そうねぇ。だから今日誘ったんだけどね。」
「え?」
「何でもないわよ。」
コーヒーが運ばれて来て桂香さんと他愛もない話をする。
話題は知らない内に恋バナになっていた。
「桂香さんはモテてそうだけどなぁ。」
「そんなことなかったよ。全然モテなかったし……」
「ホントかなぁ。」
「ところて勇気くんは恋したことないの?」
「恋!?」
予想外の質問に驚く。
「恋かぁ……今まで将棋しかやって来なかったから女性と会うことがほとんどなかったんだよね。会っても将棋関係の人ばっかだし。」
「そうなの。……」
ここで桂香さんは俯いて沈黙した。
あれ?俺なんか悪いこと言ったかなぁ。
桂香さんはガバッと顔をあげて将棋の時みたいに怖い表情で俺を見てくる。
「け、桂香さん?」
「勇気くん!」
「はい!」
桂香さんの必死の剣幕に思わず背筋が伸びる。
「勇気くんは銀子ちゃんのことどう思ってるの?」
「銀子のこと?」
予想外の質問。
「銀子は、……物凄い寂しがり屋泣き虫だっただけど、最近は段々自立してきてて、努力家で、あ、でもまだまだ危なっかしくて……」
「違う、違う、そういうことじゃなくて。女の子としてどうかっていうこと。」
「女の子!?」
銀子を一人の女の子として見た時……
今まで銀子は妹って感覚で見てたからそんなこと考えたことなかった。
「うーん、よくわかんないけど、カワイイとは思う。見た目はまぁ言うまでもなく、性格もキツイところもあるけどそこがまた危なっかしくてカワイイと思うよ。あと、お願い事する時とかは……」
「ハイハイ、よーくわかりましたからもう十分です。」
「え!?桂香さんが聞いてきたんじゃんか。」
「もういいからいいから。」
なんか急に不機嫌になっちゃったよ。
女の子はよくわからない。
「じゃあ好きなの?」
「は!?」
何をいきなり聞いてくるんだ!?
銀子は妹だし、嫌いなわけないけど……好き……なのか?
「いきなりそんなこと聞かれてもわかんないよ。」
「ふーん、わからないんだ。まぁ今はそれでいいわ。」
桂香さんの機嫌が少し戻った気がする。
やっぱり女の子はよくわからない。
「あ、あともう一つ聞いていい?」
「なに?」
「わ、私のことはどう?」
「はぁ!?」
今度は桂香さん!?
「桂香さんも子供の頃からずっと一緒にいて……嫌いなわけないよ、でも……」
俺が口ごもっていると、桂香さんの顔が笑顔になる。
いつものからかう時の笑顔。
「あ!また俺のことからかってるでしょ。」
「アハハハッ。そんなに顔真っ赤にして怒らなくても、ごめんごめん。」
「それはやり過ぎだよ!」
マジで考えちゃったじゃんか、恥ずかしい。
「やっぱり怖くて聞けない……」
その後はまたいつも通り世間話をして解散になった。
銀子や桂香さんを一人の女の子として見るかぁ……。
この日から俺は徐々に銀子と桂香さんを女性として意識するようになっていった。
そろそろヒロインレースも加速さしていきたいと思っています。