ーーーピンポーンーーー
「はーい。」
こんな夜遅くに誰だろう。
ドアを開けると幼女がお鍋を持って立っていた。
「おじさん。作り過ぎちゃったんでお裾分けです。」
「あ!ありがとう、あいちゃん。」
「お鍋置くので失礼しますね。」
そう言うとあいちゃんは俺の家へと入って行った。
あいちゃんの割烹着姿はとても様になってるなぁ。
ドアを閉めてリビングに戻ってくると、あいちゃんが銀子の部屋である和室を開けようとしていた。
「チョット待って!」
「どうしてですか?」
「いや、どうしてというか何というか。」
銀子不在のうちに勝手に銀子の部屋にあいちゃんを入れさせたことがバレたら絶対殺される・・・
「今ここにはこわ〜いお化けがいるから絶対開けちゃダメだよ。」
あいちゃんが黙って俺を見つめる。
・・・我ながら苦しい言い訳だったか?
「そうなんですか怖いです〜>_<」
「そ、そうだね、だから開けないでね。」
あいちゃんが純粋な子供でよかった〜。
「まだ、夜ご飯食べてないんですか?」
「うん、今からコンビニで何か買ってこようかと思ってたところ。」
今日は銀子は対局で遅くなるため夜ご飯は別々に食べることになっていた。
「じゃあ是非今!私のカレー食べて下さい!」
「あいちゃんのカレーかぁ。美味しそうだね。」
そう言うとあいちゃんはその辺にあった皿にカレーをよそってくれてテーブルの前に置いた。
何でこんなに甲斐甲斐しく世話焼いてくれるんだ?
「さぁ是非食べて見て下さい。今!」
「う、うん……」
異様に急かしてくるな・・・
「いただきます。」
カレーを一口頬張る。
すると俺の意識がプツリと途切れた。
「・・・あれ?」
気がつくと俺は机に突っ伏していた。
「気がつきましたか?」
向かい側にはあいちゃんが座っていた。
どのくらい気を失っていたんだろう。
「いきなり倒れちゃうんでビックリしちゃいました。」
あいちゃんが天使のような笑顔で笑いかけてくる。
確かに八一があいちゃんにデレデレするのも分からなくないなぁ
「何で俺気失っただろう?」
「さぁ、どうしてでしょうねぇ?」
あいちゃんは肘をついて両手の上に顔を乗せる姿勢でこっちに天使のような笑顔を向け続けてくる。
「さぁ、続き食べて下さい!」
「う、うん。」
あいちゃんのカレーは確かに美味しかった。あの料理上手な桂香さんに匹敵するくらい美味しいカレーだった。
これからも下手すれば毎日でも食べたい。そう思ってしまう。
「美味しかったですか?」
「うん。とても美味しかったよ。」
「ありがとうございます!うれし〜です。」
そうやって無邪気に喜ぶあいちゃんはまさしく天使そのもので、将棋に勝って無邪気に喜んでいた幼き日の銀子に似ていた。
「かわいいなぁ〜。」
懐かしくなって無意識にあいちゃんの頭を撫でてしまった。
「ふぇぇぇ〜。」
あいちゃんがよく分からない奇声を上げた。
「あ!ごめん。つい銀子を思い出しちゃってつい……」
「い、いや大丈夫です。私もいきなりで少し驚いちゃっただけだし……」
あいちゃんが頬を赤らめて顔を覆う。
「今、おばさんを思い出してって言ってましたけど、おばさんも子供の頃ははしゃぐことあったんですか?」
「うん。銀子は今じゃあんな感じだけど昔はすんごい寂しがり屋で泣き虫だったし……」
銀子の思い出話をしていたらつい熱が入って喋りすぎてしまった。
途中からあいちゃん、ずっとメモ取ってたけど何に使うつもりなの・・・?
「あんまり遅くなると師匠が心配するので帰ります。」
「ああゴメンね。つい喋りすぎちゃって。」
「いい情報もゲット出来たからあいも嬉しいです。」
「・・・」
「あっ!?」
あいちゃんは突然ノートを落としてしまい中身が少し見えてしまった。
ーー好きな人を落とすにはまずは外堀から埋め・・・ーー
あいちゃんが焦ってノートを拾い上げた。
「今ノートの中……」
「何も見てませんよね?」
「いやちょっと……」
「何も見てませんよね?」
「は、はい。」
あいちゃんは来た時と同じ天使のような笑顔で帰って行った・・・
あいちゃんのノートの中には八一を落とすための様々な戦略が書いています。(今後再登場するかはわからない)
明日はバレンタインなので特別編を投稿します。
『清滝一門の長男』史上初の一日3本投稿です!
お楽しみに!!