清滝一門の長男   作:Rokubu0213

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開幕と言いながらまだ開幕しません。


開幕!マイナビ女子オープン

於鬼頭先生との研究会の翌日俺は、東京駅で八一たちを待っていた。

 

 

「おはようございます。兄弟子。」

「おはよう八一。あいちゃんも天ちゃんもやる気十分だね。」

「はいっ。頑張ります。」

「あんた今の呼び方なに!?」

 

 

あいちゃんは頭に必勝鉢巻きまでしてやる気十分だ。

天衣ちゃんも表面上はいつも通りだが、いつもよりもツッコミのキレがいいから、やる気十分ということだろう。

桂香さんは……さっきから一言も発していない。

目を合わそうと思ってもなかなか目が合わない。というか桂香さんが意識的に避けているように思う。

……やっぱり緊張してるのかなぁ。

 

 

5人でマイナビ女子オープンの会場へと向かう。

 

 

竜王である八一の突然の訪問に会場はプチパニックになり八一は運営の人に連れていかれた。

八一は俺に助けを求めるような目で見てきていたが、生憎俺もそういう公務は大嫌いなので気付かぬふりをして、あいちゃんと天衣ちゃんと桂香さんを連れて会場へと向かった。

 

 

「兄弟子〜」

 

 

八一の悲痛な叫びが聞こえた気もするが気のせいだろう。

 

 

「あの、桂香さん」

「……」

 

 

返事はない。

無視されているわけじゃない。

聞こえていないのだ。

その証にさっきから俺の手に引かれた方向にしか進まなくて時々周りの人とぶつかりそうになってる。

桂香さんの様子を見て改めてこの大会の重要性を認識した。

3人にとってこの大会は特別なものである。

あいちゃんや天衣ちゃんにとっては始めての大会。

桂香さんにとっては人生が掛かった大会。

 

 

✳︎

 

 

会場に入り、対局開始までの待ち時間になった。

3人の様子を見てみると性格が出ていてとても面白い。

 

 

「まったく、八一は肝心な時にどっか行っちゃう。使えないわね!」

 

 

天衣ちゃんはいつも通り八一に暴言を吐いている。

俺が翻訳してあげると、

『大会前なんだから私の側にいてよ……』

ということだろう。カワイイ。

 

 

「あんたなにニヤついてるのよ!」

 

 

天衣ちゃんは大会前でもいつも通りお嬢様だなぁ。

 

 

一方のあいちゃんは椅子に腰掛けて静かに気を高めている。

もう少し緊張するかと思ったが意外と肝っ玉が据わっている。

 

 

「はっ!?」

 

 

あいちゃんを見てると突如あいちゃんの目が見開かれる。

 

 

「ごめん。気が散っちゃったかな?」

「……師匠の近くに女の人がいます……」

 

 

いつものあいちゃんからは想像できない冷たい声。

 

 

私がこれから対局なのに師匠は女の人とイチャイチャして……」

「あ、あいちゃん大丈夫?」

 

あいちゃんの口からぶつぶつと滅びの呪文みたいなものが聞こえてくる。

メッチャ怖いんだけど……

 

 

だらぶち!!!

「うぉ!?」

 

 

いきなり大きな声を出されて驚いた。

た、大会前で気が立ってるんだろう。

そっとしておいてあげよう……

 

 

「……」

 

 

そして一番心配な桂香さんは……まだ一言も喋っていない。

会場に来てからは死んだ魚見たいな目で一点を見つめてる。

話しかけてもいいものか……?

俺があれこれ考えてソワソワしていると、死んだ魚みたいな目が突如生気を宿して大きく見開かれる。

 

 

「勇気くん!!」

「はいっ!!」

 

 

驚いて俺も大きな声が出てしまう。

桂香さんは緊張からか少し頬が紅潮していて目も潤んでいる。

なんというかいつもの余裕のあるお姉さんな桂香さんと違い、守ってあげたくなるような可愛さがある。

見つめられて目を合わすのが恥ずかしくなり逸らしてしまう。

 

 

「アドバイスちょうだい!!」

「アドバイス!?」

 

 

保護対象モードの桂香さんが可愛すぎて頭がうまく回らない。

 

 

「うーんと……いつも通りにやれば大丈夫だよ。」

「ウフフ、それ全くアドバイスになってないよ。」

 

 

いつの間にか桂香さんの顔にはいつものいたずらっぽい笑顔があった。

いつもの桂香さんに戻ってる……

 

 

「あ、そうだ!もし一斉予選を突破できたら勇気先生からご褒美欲しいなぁ〜」

 

 

顔の前で手を合わせてお願いする。

その仕草可愛すぎ!!

いやここで照れちゃダメだ。

またこれは俺をからかって楽しんでるんだろう。

 

 

「うん。何か考えとくよ。」

 

 

できるだけ冷静に答える。

 

 

「じゃあ私のお願い一つ聞いて?」

「お願い?俺にできることならいいよ……。」

 

 

なんだろうメチャクチャ高いバックとか買わされるんだろうか……?

つい昨日高い買い物もしたし、そんなに高いものは買えないんだけど……。

 

 

 

どんなお願いでも絶対に聞いてね……。絶対に絶対よ。頑張ってくるわね♡。」

 

 

桂香さんはウィンクをして愛用の定跡書を読み始めた。

……本当は緊張してないの!?

 

 

組み合わせの抽選が終わり、3人とも盤の前へと向かって行く。

あいちゃんは気迫と狂気が入り混じった足取りで。天衣は威風堂々と。

そして桂香さんは、なぜか楽しそうにスキップしながら行った。

 

 

ーーみんな頼もしいな。

 

 

3人ともおかしいところもあったが、あの様子なら本来の力が出せるだろう。




ちょっとずつあいちゃんと天衣ちゃんの出番が増えてきましたね。

僕の作品だと

あいちゃんが腹黒ヤンロリ
天衣ちゃんは王道ツンデレ

になってしまってますね。
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