アニメで月夜見坂燎の声優をやっているMachicoさんは、オープニングの『コレカラ』を歌っている人ですね。
個人的には今季のアニメで二番目に好きなオープニングです。(一位はゆるキャン△)
3人の様子を見送って俺は解説会の控え室に向かった。
控え室に入ると既に今日のパートナーが来ていた。
「ようやく来やがった。オセーよ。」
「ごめん。ごめん。」
俺は適当に謝りながら控え室に行く。
月夜見坂燎、昨年のマイナビ女子オープンの覇者である。
関東所属の棋士だけど、なぜかよく関西将棋会館に出現する。
「久しぶりだな。」
「ああ。」
「そういえば最近、女に将棋教えてるんだって?」
何でいきなりそれを聞くんだよ!?
「はぁ!?そうだけど……なんでお前が知ってんの?」
「万智から聞いた。」
「ああ。なるほど……」
万智さんと燎と俺は同い年で、小学生名人戦をキッカケに知り合って以来定期的に会う仲である。
燎とは一時期それ以上の関係だったが……
「オレをほっといて新しい女口説くタァいい度胸だな。」
ヤンキーみたいな絡み方をしてくるな……。
「いやいや!?ほっといたっていうかお前が勝手に離れて行ったんだろ。」
「ふんっ。そんな昔のこと忘れた。」
こいつ理不尽すぎるだろ……
「そろそろ時間なので……」
運営の方が俺たちを呼びに来たがドアを開けて固まっている。
「……もう少し待ちましょうか?」
「いや大丈夫です!!」
絶対修羅場と勘違いされてるだろ。
関係者の人俺をゴミを見るような目で見てたし。
解説場はありがたいことに満員御礼、俺と燎が入って行くと軽く歓声が上がった。
「みなさんわざわざ会場にまで足を運んでいただいてありがとうございます。」
「オメーら全員ヒマなのか?」
「何言ってんですか!?みんな解説を聞くっていう大事な用事で来てるんですよ。」
「それがヒマって言ってんだよ。」
燎との軽いやり取りでまずは会場を温める。
「解説は僕、山橋勇気と月夜見坂燎の二人でやっていきますのでよろしくお願いします。この解説は守りの手に対しては厳しい解説が待っていると思うので会場の皆さんも注意して下さいね。」
「守りの手なんて全部悪手だからな。」
ドッと笑いがおこる。
実は俺と燎のコンビは解説では割と人気の組み合わせである。
といっても燎が無茶苦茶なこと言って俺が焦るっていうのが基本構図なんだけどね……
「さぁ、進行の早い将棋から出来るだけ多く解説していきましょう。」
「じゃあまずはこれだな。」
燎が選んだ対局は桂香さんの対局だった。
コイツ絶対狙ってるだろ。
正直黙って桂香さんの将棋を応援したいと思ったけど仕事だから解説を始める。
「焙烙和美女流三段は非常に激しい攻撃が特徴ですね。守勢に回ると難しい戦いになるかもしれません。」
観客の前ではそう言ったものの、焙烙三段の将棋は実のところ荒い。
無理攻めを冷静に咎めていけば桂香さんにも十分勝機がある。
この対局は予想通り序盤から激しい展開になった。
「アマチュアの清滝桂香が、序盤から積極的に攻めているな。見てるこっちまでスカッとするような攻めだ。」
攻める大天使にここまで言わせているのは、あの桂香さんだ。
桂香さんは俺と銀子に教えてもらっているうちにどんどんと攻めっ気の強い将棋になっていた。
桂香さんの指し手にどんどんと力がこもっていく。桂香さんの駒音がする度に焙烙三段の戦意が削がれていっているのが見て取れる。
「ところで、山橋盤王。この清滝さんというアマチュアは盤王が教えているそうだが、今回一斉予選を突破できる可能性はどれくらいあるんだ。」
こんなに大勢の将棋ファンの前で俺に復讐する気かよ!?
『え!?あの人盤王の弟子なのか。』
『名前調べろー』
『イメージ通りだな』
『盤王はロリコンじゃなかったのか!?』
『馬鹿野郎!!盤王はセーラー服萌えだ!』
『巨乳がぁぁぁぁ。』
なんか無茶苦茶に言われてんだけど。
「いえ、清滝桂香さんは弟子ではなくて僕の妹弟子にあたる人なので時々一緒に将棋を指すんですよ。」
「研修会で勝った時、抱き合ってたらしいけどな。」
どこまで情報仕入れてるんだよ!?
『やっぱり歳上派だったのか!?』
『イメージ通りだな』
『巨乳がぁぁぁぁ』
俺のイメージってどうなってるの!?
「あ!勝ちましたね。最後まで攻めの姿勢を崩さない非常に力強い将棋だったと思います。さぁ、つぎ、次いきましょう。」
俺は無理矢理次の対局へと話を移した。
この後は何の問題もなく解説は終わり午前中の仕事は終わった。
✳︎
「なに勝手に喋ってんの!?」
控え室に戻ると同時に燎につめ寄る。
「いいじゃんいいじゃん。これでお前達は将棋ファン公認のカップルだぞ。」
「カップルじゃないから!!」
「男女の関係じゃないって言うのか?」
「ああ。」
「18歳の男が巨乳の女の近くに居てヤらないわけないと思うんだがなぁ。」
「お前はもう少し女子としての恥じらいはないのか!?」
「恥じらいなんかあっても将棋にゃ勝てねーんだよ。」
「はぁ。お前と話してると、どっと疲れるわ。」
俺は脱力して部屋から出ていく。
「本当に男女の関係じゃねーんだな。」
燎の最後の呟きは小さすぎて聞こえなかった。
原作キャラのキャラ崩壊がすごいことになってる気がする……