「元カノね。」
「いや違うよ!?」
銀子今までの話聞いてた?
「まぁ、そういうこった。俺はお前のこと思って身を引いたのによ、違う女教えやがって。」
「なんだって?」
「なんでもねぇよ!勇気の将棋を一番理解している女流棋士は俺だ。それだけは覚えとけよ。」
「「「……」」」
微妙な沈黙。
「も、もう今日は遅いし俺の帰りの新幹線もあるから行こうか?」
沈黙に耐えられなくなって口を開く。
「どーせ私は二番目の女ですよー。一番にはなれませんよー。」
桂香さんがネガティブモードになった!?
目から光が消えてるし……
昔からこのモードに入った桂香さんは面倒臭いとわかっている。
「なぁ銀子ど……」
桂香さんは一旦置いといて、正常な方の銀子に話しかけようとする。
「元カノ……」
銀子が無表情で俺の足に蹴りを入れてくる。
天衣ちゃんと違いこの攻撃はただただ痛い。
「痛い痛い!?だから元カノじゃないって言ってんだろう!?」
「うるさい。」
対話拒否!?
「おうおう、両手に花だな。」
「どこが!?」
燎はニヤリとしながら頭の中で何かを考えてる。
どうせロクなこと考えてないだろう……
「そうだな……俺も勇気の弟子に戻ろうかな。」
「「「はぁ!?」」」
俺と桂香さんと銀子が一斉に驚く。
「何言い出すんだよ!?というかそもそも俺はお前の師匠じゃない!」
「まだそんなこと言ってんのかよ。確かに研究会っていう形にはしてたけど、あれは完全に俺が教わってただろ。」
「でもなー。」
しかしここで、誰も予想できないことが起こった。
「今さら近づいてきてるんちゃうで。」
「「「え?」」」
突然コテコテの関西弁が聞こえてきて、関東在住の燎だけじゃなく、俺や銀子まで呆気にとられる。
「あんた、一回捨てといてまた近づくのは虫が良すぎるんとちゃいますか?」
声の主は桂香さんだった。
桂香さんは笑顔で燎に詰め寄って行く。
笑顔なのが逆に怖い。
「うぉ!?ん?ん?」
いつもは詰め寄る側の燎が逆に詰め寄られて、狼狽している。
攻められる燎、めちゃくちゃレアだな。
「うちは、子供の頃からずっと一緒にいてん。途中からやってきた何処の馬の骨ともわからん奴に勇気くんやるわけないやろ!!」
桂香さんは燎に向かって早口でまくしたてる。
こ、怖すぎる……
普通の女の子だったら泣きだしてもおかしくないほどの桂香さんの威圧感。
普通の女の子ならーーー
「あんっ!?お前良い度胸だなおい!!」
燎コワッ!?
「っ!?」
ここまで押せ押せだった桂香さんが少し怯んだ。
「子供の頃から一緒ってな、近すぎる方が逆効果なこともあんだよ。」
確かに、俺も桂香さんに将棋教える時どうしても手加減しそうになっちゃうもんな。
「そんな……」
何故か銀子にクリーンヒットした。
「そ、そんなことは……ないわよ。」
桂香さんの声が段々と小さくなっていく。
「ホントにそう思うか?」
「そ、それは……」
桂香さん沈黙。
「ったく、しゃーねーな。そこまで言うならマイナビを勝ち抜いてこい。俺に証明して見やがれ、あんたが勇気の一番弟子だって事をな!」
桂香さんをビシッと指差してバイクに乗って颯爽と走り去って行った。
燎さんカッケー
「け、桂香さんのあんな姿始めて見たな……」
「う、うん。」
俺と銀子がヒソヒソと話していると、今まで沈黙していた桂香さんがクルッと回って俺たちに叫んでくる。
「何やっとんの?はよ八一くんのとこ行くで!」
「「はいっ!!」」
桂香さんの意外な一面を見れた1日だった。
ちょっと短いんですけど、キリがいいので許して下さい。
次回からまたJS達が登場します。