臨時JS研から4日が経ち、再びおれの部屋には二人の幼女がいる。
しかし4日前とは違う点が一つある。
おれの部屋には二人の幼女と一人の中学生がいる。
「小童達とやるなんて聞いてないんだけど。」
「まぁそんなこと言わずに……」
銀子には研究会を家でやるから一緒にやらないかとだけ言っていた。
最初はあまり乗り気じゃなかった銀子だったが、研究会の相手が女の子だと言うと、一転して絶対に出ると言い張った。
銀子も同性の将棋仲間が欲しいのかもしれない。
「おば……空先生が臨時講師ですか?」
あいちゃんもついにおばさん呼びから成長した!
「そうだよ。おれが知ってる女流棋士で一番強い人は間違いなく銀子だからね。」
「……空先生にやけてます。」
「なっ!?に、にやけてないわよ!」
そう言ってはいるものの銀子の顔は、にやりと嬉しそうに笑っている。
「「ニヤニヤ」」
「なに見てるのよ!?」
あいちゃんと俺が生暖かい笑顔で見ていると銀子は恥ずかしかったのかそっぽを向いてしまった。
「ごめんごめん。でもそういうことだから、今日は4人で頑張っていこう!」
あまり弄りすぎても銀子が拗ねるのでこの辺で真面目な話に戻す。
そうするとここまで不機嫌そうに口を閉ざしていた天衣ちゃんが話し出した。
「ちょっと待って。私たちはマイナビを勝ち上がっていけば最後は空銀子と戦うのよ。敵になるかもしれない相手と研究会するなんて絶対に嫌よ!」
まぁ、天衣ちゃんはそう言うと思ったよ。
この子は全てを一人で背負っちゃうタイプだからなぁ。
ここらで少し、勝負師の先輩としてアドバイスしたあげたほうがいいな。
「あのね天衣ちゃん。」
「……なによ。」
俺の諭すような口調を聞いて少し天衣ちゃんの態度が丸くなった。
「確かに俺たち将棋指しは盤上では一人で戦わなきゃならない。でもね、盤上での戦いだけが対局じゃないんだ。今は研究がものを言う時代、だからこそ他人との研究はこれから天衣ちゃんが強い女流棋士になりたいならば絶対に必要なものになるよ。だからね?今日は練習だと思ってやろう?」
「……わかったわよ。」
完全に納得した様子じゃないけど、まぁ今日だけでも付き合ってくれるならいいか。
この子を変えるのは師匠である八一の役目だろう。
「じゃあ早速始めよう!」
第2回臨時JS研withJCが開催された。
字面だけ見たらこれやばいなぁ……
✳︎
「疲れ、ました……」
「そうね。少し休憩してもいいわよ。」
「そうだね。ちょうどさっき、八一の対局も終わったみたいだし、これで研究会は終了にしようか。」
「「ありがとうございました。」」
あいちゃんも天衣ちゃんも揃って挨拶してくれた。
なんだかんだで天衣ちゃんも礼儀正しい子だね。
俺はこれから戦場へ向かう二人に最後のアドバイスをあげる。
「二人にこの二回の研究会で、相手の心理を読む戦いを教えたね。」
「「はい。」」
「一つ注意しなきゃいけないのは、相手ばかりを見て、盤上が疎かになったら元も子もない、だから俺が教えたことは頭の片隅にでも置いておいて、長考する時の一つの手がかりくらいに思っておいてね。」
「あの……私、祭神さんに勝てますか……?」
あいちゃんは不安そうに聞いてくる。
「そうだね……。はっきり勝てるとは言い切れない。でも十分戦えるとは思う。」
可愛そうだが客観的な分析を述べる。
「そうですか……」
「別にあなたが勝つ必要なんかないわ。私が倒すだけだから。」
「!?空先生の出番なんて絶対に来ませんからぁー。空先生が戦うのは私ですからぁー。」
銀子とあいちゃんが喧嘩する。
ほんとこの二人はよく喧嘩するなぁ。
でも今の一言、俺には
『負けても必ず私が仇を取るから、気負わずに戦いなさい。』
に聞こえたのは気のせいかな?
「残念ね。空銀子を倒すのはこの私よ。」
天衣ちゃんもすかさず参戦する。
この子本当に負けず嫌いだな!?
3人で言い合いする様子を見て俺は少し安心する。
前よりは3人とも仲良くなったかな。
銀子ってあんまり、俺や八一や桂香さん以外と仲良くしてるところ見たことないし、兄である俺としては銀子にも俺たち以外の友達がいたほうがいいと思うんだよな。
「なに笑ってるのよ気持ち悪い。」
微笑んで3人の様子を見ていると、天衣ちゃんに突っ込まれる。
「いやーみんな仲良いなと思って。」
「「「仲良くないわよ!(です!)」」」
うん。みんな仲良くなってるね!
「ところで、おじさんと空先生に一つ聞きたいことがあるんですけど……」
あいちゃんが突然正座になり、爆弾を投下した。
長くなったので前編後編で分けました。
次回、あいちゃんに新たな属性が追加されます。