師匠カッコいいし、銀子可愛いかったです。
そして泣きました。
私は決心しました。銀子のキャラを矯正する。やっぱり銀子はクーデレだからこそ輝く、そう思いました。
女の戦い
8月1日、俺、あいちゃん、天衣ちゃん、桂香さん、八一、銀子は再びパレスサイドビルに来た。
『あれが竜王の弟子……』
「本当に小さいな。』
『かわいい。』
『盤王の弟子もいるぞ。』
『彼女は清滝先生の娘さんらしい。』
『盤王が仕込んだ清滝先生の娘さん。どれくらい強いんだ……』
会場に入った瞬間にお客さんからの視線を集める。
「な……なんだか、まえよりすごく人が多くないです?」
「そ、そうね……」
あいちゃんと桂香さんが異様な雰囲気に怯えている。
「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。当たり前だけど、出場者控え室にはお客さんは入れないから静かだよ。」
「そうなんですか。……ここはなんか怖いです。」
あいちゃんはいつの間にか桂香さんの手を握っていた。
あまりにも将棋が強いから忘れがちだけどまだ小学三年生なんだよな。
将棋の世界では若さは才能の証。
俺や八一や銀子も比較的早い頃から注目されていたから分かるが、将棋の世界では若いうちから活躍すると、大人の期待と嫉妬と戦わなければならない。
あいちゃんや天衣ちゃんはこれからそういったものとも戦っていかなければならない。
それは下手したら対局よりも辛いものになるかもしれない。
目の前で怯えながら桂香さんの手を握るあいちゃんを見て、少しでも守ってあげたいそう思った。
『おい、盤王が来てるぞ。』
『お花用意しろ。』
「解説もお願いしよう。』
前回は八一がサプライズ出演だったが今回は俺がサプライズ出演ということになる。
会場のスタッフが慌ただしく動き出す。
もうすぐ運営の人に連れて行かれるな。
「平常心でね。」
「はいっ!!」
優しく笑いかけて送り出す。
そして隣の桂香さんにも最後の言葉をかける。
「行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
思っていたよりも短いやり取り。
でもそれでお互いに言いたいことは全部伝わっている。
桂香さんは俺の目をじっと見て大きく頷いてくれた。
俺と桂香さんとあいちゃんのやり取りを一歩引いて見ていたツンデレお嬢様にも話しかける。
「見守ってるから思いっ切り指してこいよ。」
「言われなくても指すわよ。……見てなさい。」
天ちゃんはいつも通りに見えるが、その顔に少し安堵の表情が混ざっているように見えるのは俺だけなのだろうか。
直後俺は運営の人に連れられて行った。
✳︎
出場者控室は不思議な空気に満たされていた。
表面上は和気藹々としているように見える。顔見知りの女流棋士達が屈託無くお喋りし、対局前とは思えないほど和やかなムード。
「......」
その異様な雰囲気の中で私は静かに時間が過ぎるのを待っていた。
何も考えずにただひたすら待ち続ける。何かを考えたとたんに不安に押しつぶされそうになるから。
「桂ちゃん」
そんな私に誰かが話しかけてくる。
私をそう呼ぶのはただ一人、私の大事な大事な友達、香酔千女流三級。
「......千ちゃん」
話したいことは山ほどあるのに、この場で会えることを二人とも楽しみにしていたはずなのに、言葉が出てこない。
話題は千ちゃんが関東に移籍するときに研修生みんなで歌った『栄光の架橋』の話になった。
「私はまだ、夢の途中にいるの」
千ちゃんは言った。
「大それた夢だってことは、わかってる。それはこの二年間で十分すぎるくらい思い知らされたから......負かされるたびに何度も将棋をやめようと思ったけど、でもやっぱり諦めきれずに、ここにいるの」
「......私もそうなの」
私は千ちゃんの顔を真正面から見る。二年前と何も変わってない。目の前にあるのは研修会で何年も一緒に頑張ってきた大好きな親友の顔。
「私もずっと夢を見てた。......でもねその夢がね、いつの間にか私だけのものじゃなくなってたんだ。」
「......」
千ちゃんは黙って私の話を聞き続ける。
「私が苦しんでるときは一緒に悩んでくれて、私が嬉しいときは一緒に喜んでくれる、そんな家族と一緒に私は今ここに立ってる。だからね......絶対に負けられないの。」
「そっか......だから桂ちゃんはそんなに強くなれたんだ。」
千ちゃんが小さく呟いた。
「じゃあ......決勝で」
「ええ。決勝で」
私と千ちゃんは、盤の前での再会を誓い合う。
私たちは知っていた。
その誓いが果たされる時_どちらかの夢が破れることを。
どちらの夢が破れるのかも_
8巻も出るらしいですね。
楽しみです。