とても嬉しいです。
本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきますので引き続きお付き合い下さい。
太陽が高く上がりセミがジージーと鳴いているザ・夏という日に俺は布団の中で寝込んでいた。
理由は言うまでもない、先日川に突っ込んだからだ、あの後ずぶ濡れで帰った俺と燎は案の定この時期に揃って風邪でダウンした。
「ゴホッゴボッ。」
今何時だろう。時計を見ると午後3時過ぎ。
昼はもうとっくに過ぎてる。
風邪の時こそなんか食べなきゃいけないよな。
そう思って体を起こそうとする。
「大丈夫?」
乱暴にドアを開ける音が聞こえて銀子が肩で息をしながら居間に入って来た。
「だ、大丈夫だけどなんでいるの?」
公式戦がこんなに早く終わる筈はない。
「もう終わった。」
「お、おう。」
強過ぎだろ!?
銀子の手にはパンパンに膨らんだコンビニ袋が提げられていた。
「風邪なんでしょ?寝て。」
「え、ありがとう……」
バレてたのか。
「何か食べる?」
「うん、昼まだ食べてないから何か食べようかな。……っあ!?昨日の夕飯の余りがあるからそれ食べるよ。」
銀子には悪いが今銀子の料理を食べて生き残れる確率は低い。
俺は慌てて布団から飛び出そうとする。
「……パン買ってきたけど要らない?」
「パン?う、うん。じゃあパンもらうよありがとう。」
銀子はスタスタと俺の前にやって来て思いっきりまるで勝負手を放つように俺の前にパンを叩きつけた。
「あ、ありがとう。」
ペチャンコのパンを受け取って食べ始めた。
✳︎
ペチャンコのパンを食べ終えたが未だに体調は悪く頭も痛い。
銀子は対局時のセーラー服から部屋着へと着替えて居間に戻って来た。
「まだ体調悪い?」
「まだ良くはなってないかな。」
「そう。」
しばし沈黙。
「朝くらい自分一人で行けた。」
「?」
「体調悪いなら正直にそう言って寝てれば良かったじゃない。」
銀子は不貞腐れたように俺と目を合わせずに言った。
「いつまでも子供扱いしないで。」
「ごめん。」
どうやら銀子は風邪になったことを言わなかったことに怒っているようだ。
「いいわ。病人なんだから今日は素直に看病されて。」
「……お茶飲む?」
「さっき飲んだ。」
「そう。」
銀子がソワソワと周りを見回す。
「服、汗で濡れてるんじゃない?」
「さっき着替えた。」
「……そう。」
銀子はしょんぼりと俯いてまた周りを見渡す。
「熱は測った?」
「さっき……「頓死しろ!!」
銀子のキックがお腹にクリティカルヒット、パンが出そうになる。
「おまっ!?一応病人やねんけど……」
「うるさい。」
本当に俺を看病してくれる気あるのか……
「ところでこんな時期に風邪になるなんて災難だったね。」
「まぁ災難だったというか、万智と燎のせいというか……」
俺がぶつぶつと言うと、銀子の顔がみるみると険しくなる。
背後からは黒いオーラが徐々に立ち上がってくる。
「なんで供御飯さんと月夜見坂さんが兄弟子の風邪と関係してるのよ?」
背後の黒いオーラがみるみると大きくなる。
これはアカン。本気で怒ってる時だ。
「この前、燎と万智さんと3人で難波に行ってな……」
銀子に燎と万智さんとの尾崎ツアーの話をする。
銀子は無表情で俺の話を聞く。
「理由はわかった。」
銀子はそう言うと無言で俺の布団に入り込んでくる。
「何やっとんの!?」
驚いて布団から飛び出そうとするが、銀子に掴まれて逃げられなくなる。
「うつして。」
「……どういうこと?」
「風邪治すのは他人にうつすのがいいはず。」
「本当に?」
「……」
絶対嘘だなこれ。
「私もお兄ちゃんと同じ風邪になるの。いいからはやく。」
風邪で抵抗できない俺は銀子に引っ張られて布団へと寝かされる。
「ちょ、おい……」
銀子が目と鼻の先にいる。
銀子の体温、心音がダイレクトに伝わって来てドキドキする。
なんかすごいいい匂いもしてくるし。
心地よくて段々と眠くなってくる。
まぁ眠くなって来てもドキドキしてるから全く寝れないんだけどね。
寝てるのか起きてるのかよくわからない時間を過ごしていると、いつの間にか隣から規則正しい寝息が聞こえてくる。
「おにい……ちゃん。」
銀子の寝言が聞こえてくる。
俺今銀子に、お兄ちゃんって言われたよ!?
めっちゃカワイイ!!
目の前で無防備に眠る銀子の頭を優しく撫でる。
銀子の顔が幸せそうに微笑む。
銀子の顔を見ていると妙に体が熱くなってフラフラしてくる。
これは暑すぎる夏のせいか、はたまた季節外れの風邪のせいか。
それとも……
俺は無理やり思考を遮断して眠る努力をした。
今までよりは銀子のキャラクターを再現できていると思う。
……そうでもないかな?
取り敢えず次回からは本編に戻ります。