「起きて、兄弟子。」
言葉とは裏腹にガンガン蹴られる足の痛みで起きた俺は目の前に悪魔がいるのを認識し、震え上がって目を覚ます。
「ど、どうした・・・銀子。」
「一緒に八一の部屋に来て。」
銀子の背後から立ち昇る黒いオーラを見た俺は最善手がyesしかないことを悟った。
乱暴に歩く銀子の後ろを着いて行き、2階下の八一の部屋に行く。
そして合鍵を使って中へ突入するとそこにはーー
八一と裸の幼女がいた
「通報しよう。」
「待って兄弟子!?」
✳︎
八一の必死の弁明を聞いた俺と銀子は彼女は雛鶴あいという名前で弟子にする約束をしたことを知った。
「黙れ小童」
「こわっぱじゃないですぅー!雛鶴あいっていう名前があるんですぅー!!」
そして銀子とあいちゃんが今喧嘩している。
「私のこと知らないの?将棋やってて?」
「しりませんっ!!」
ノータイムで否定するあいに、八一は慌てて説明する。
「この人は、女王、女流名跡の二冠を持ってる空銀子二冠、俺の姉弟子だよ。」
「師匠の姉弟子・・・つまりおばさん?」
「ぶちころすぞわれ」
「それで師匠この人は誰ですか?」
「エェッ、兄弟子も知らないの!?」
「始めまして、八一の兄弟子の山橋勇気です。あいちゃんのおじさんに当たるのかな。」
「勇気おじちゃん?」
カワイイーー、小学生の初々しい反応を見てると、こちらも自然と幸せな気分になる。
俺が幸せに笑っていると、右足を思いっきり踏まれた。
「イダッ。」
銀子が鬼のような目でこちらを睨んでいる。
銀子はさっきからみるみる機嫌が悪くなっている。
特に八一のことを『師匠』と、俺のことを『おじちゃん』と呼ぶたびに明らかに機嫌が悪くなっている。
同じことに気づいた八一がすかさず、手を打つ。
「あいや。あいちゃんや。」
「なんですか師匠?」
「俺を師匠って呼ぶのと、兄弟子をおじちゃんって呼ぶのやめてお願いだから。」
「え、えーとじゃあ・・・」
あいちゃんは両手を頭に当てて可愛く考え込む、そして上目遣いに俺と八一を見ておずおずとこう言った。
「やいちおにーちゃん♡ゆうきおにーちゃん♡」
八一は飲んでいたお茶を吹き出し、俺はあまりの可愛さに一瞬トリップした。
銀子が小刻みに震えている。今銀子の中で何が起きているのか!?
知りたいような知りたくないような・・・
「と、とりあえず、師匠の家に行こうか。」
俺はひとまず状況を整理するために師匠を頼ることにした。
✳︎
清滝邸に行くと既にあいちゃんのことは将棋連盟から連絡済みで、一時的に八一が内弟子として引き受けることとなった。
「チッ」
隣に座る銀子からの怒りのオーラが益々深まるのを感じる。コワイ。
その後あいちゃん歓迎パーティが急遽行われ、清滝邸には久しぶりに一門全員が集合していた。
「おじいちゃんと呼んでもいいんだよー」
師匠は早くもあいちゃんにゾッコンである。
「お父さん、今日はみんなで集まれてとても嬉しそうね。」
桂香さんはテキパキと食器を片ずけながら嬉しそうに話す。
「たしかに、みんなでこうやってご飯食べるのは俺がプロ棋士になって以来かぁ」
「懐かしいですね。」
「そうだな〜」
「そんな昔のことみたいに言わないで。」
「何か言いました姉弟子?」
「うっさい八一、頓死しろ。風呂入ってくる。」
そう言うと銀子は部屋を出て行ってしまった。
「まだ姉弟子機嫌悪いですね。」
「まぁ、いきなりライバル出現だもんな。」
「えぇ!?姉弟子にライバルができたんですか⁉︎そんな強い女流棋士が誕生したんですか!?」
八一よ、もう少し将棋以外のことを考えようとはしないのか!?
「全くもうちょっと将棋以外も成長して欲しいものね〜。」
「八一の将棋バカは筋金入りだからな。」
「勇気くん、あなたもまだまだよ。」
「俺もですか!?」
桂香さんは俺と八一を呆れた顔で交互に見る。
桂香さんから見れば俺もまだまだ子供みたいだ・・・。
笑いながら話していた八一は急に真面目な顔になり俺に向き合う。
「あの、兄弟子、本当に俺があいの師匠になっていいんでしょうか。成績も人気も兄弟子の方がありますし・・・やっぱり俺よりも兄弟子に弟子入りした方があいにとってはいいんじゃないでしょうか?」
八一の不安そうな顔を見て俺は思った。
ーーこの未熟で危なっかしい弟を助けるために俺は強くなると決意したんだーー
「八一に俺が師匠の内弟子になった時の話まだしてないよな?」
「え、はい聞いたことないです。」
恥ずかしからあんましたくないんだけどね。
俺は静かに昔話を始める。
jJSの可愛さを表現するの難しい